財政金融委員会・第8号
【質疑事項】
議題 「信託業法の改正案」について
1.改正案の実施時期について
2.行為規制について
3.「取締役の兼職の規制(第16条)について
4.「信託専門店舗」の解禁について
5.営業保証金の目的等について
6.兼業規制(第5条7項)について
7.TLO(技術移転機関)の適格性等について
8.売掛債権の流動化スキームについて
9.「信託受益権の販売業者」の規制について
10.小企業への資金のパイプを太くすることと信託の活用事例は如何
11.知的財産の信託スキームについて
12.信託業界として法改正による今後の姿勢等について<>○西田まこと君 私の方からは、まずこの業法の改正の施行日につきまして、先ほど大塚委員からもお話ございましたけれども、改めて確認をさせていただきたいと思います。
先ほどの御答弁では、速やかに実施したい、あるいは早ければ年内施行も視野に入れたいと、こういうお話がございました。しかしながら、さきの衆議院での議 論でも、伊藤大臣からは、趣旨を徹底、しっかりとしたPRを行っていくだけではなくて、事務ガイドラインも含めてしっかりと改正し、的確な体制ができるよ うに体制整備に努めていかなければならないと、このようにもお話があったわけでございまして、特にパブリックコメント等の十分な時間も必要でございましょ うし、また、今回のこの業法改正におきまして行為規制も厳しくなっておりまして、それに対する業者としての備えも必要となってくるでしょうし、さらに、新 しく新規に参入してくる企業を設立しようと思えば、会社設立だけで何か月か掛かるわけでございまして、拙速は避けなければならないというふうにも思ってい るわけでございますけれども、改めて、この施行日につきましてどんなお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○副大臣(七条明君) 今も 先生からもるるお話をいただいたわけでありますけれども、本法案の成立につきましては、できるだけ早く、速やかに施行が可能となるように努めてまいりたい と、これが基本でございますし、年内の施行も視野に入れておかなければならないと、こういうふうに考えております。
が、しかしながら、本法案の 施行準備の必要性にもかんがみますと、必要に応じて、先ほど先生がおっしゃられておられます件等もありまして、関係の府令の作成だとかパブリックコメント も含めて所要の経過措置を設けることも、具体的には施行、やらなければならないということで、具体的には施行期日については今後十分に検討をした上で考慮 してまいりたいと考えておるところでございます。
○西田まこと君 是非そういう形で、この信託という仕組みが改めて世の中に広まって浸透していくためにも十分な体制を整えた上で施行されることを願ってやまないわけでございます。
次に、この改正による、今回の業法改正による新規参入の想定等につきまして先ほど来からお話もございました。基本的なお考えをここではお聞きしたいと思います。
かつてこの信託業法、信託法が導入されました、もうかなり昔になるわけでございますけれども、当時の議論を見てまいりますと、貴族院での議論におきまし て、当時、任意団体だった信託協会の会長さんが議員をされていて高橋蔵相に質問をされているわけでございますけれども、当時は大変に、500を超える信託 会社が多くて、中には信託という名前だけでいかがわしい商売をしているというような会社も随分多く見受けられたということで、この信託業法並びに信託法と いうものができたわけでございますけれども、そのときに当時の蔵相は、信用堅固な大なる信託会社が少なくして厳重に財産を保護してくれるようなことを望む というような答弁をされておりまして、つまり、やはり人の財産を預かって信託を受けるわけですので、しっかりとした会社にやってもらいたいと、そういう意 味ではそんなにたくさん増えなくてもいいんだと、そういうような、当時、80年以上前の御答弁でございます。
今回、この業法の改正におきまして は、当局といたしまして、数の問題は先ほども御議論ありましたので、基本的なスタンスというか、信託、人の財産を受託するという立場であり、しかしながら やはり広めていきたいということもございますでしょうし、その辺、どのような基本的にお考えをされているのか、お聞きできればと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、今回の信託業法、財産権の、受託可能財産の範囲を拡大をする、さらに、担い手である、信託の担い手である信託業者の範囲を拡大をする と、そういった形で新しい方々に参入をしていただく、新しいビジネスが起こるようにしていただきたいと、そういう気持ちがございます。
ただ一方 で、拡大一方ということではやはり受益者あるいは関係者の保護というのが十分でないということでございますので、そういった観点から、様々な行為規制ある いは財産的な規制、そういったもの、あるいは参入規制、そういったことを設けているわけでございまして、そういったある意味で両者のバランスを取った制度 になっているというふうに考えております。
○西田まこと君 次に、行為規制についてですけれども、第27条で規定されております信託財産状況報告書の作成義務につきまして、どういった場合にこの作成義務が要らないのか、不要なのかということについて、具体的に幾つか項目を挙げていただければと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
御承知のように、今御指摘のように、信託財産の状況報告書を交付するということになっているわけでございますが、例えば委託者が投資等に関する知識、経験 を有する適格機関投資家等である場合には、やはり受託者から説明を受けなくても信託契約の内容とかあるいは信託に起因するリスクを十分理解をし得るわけで ございますので、そういった場合には信託会社に過度のディスクロージャーを課す必要はないということで、そういった場合には要らないということになってお ります。
○西田まこと君 ディスクロージャーが大事なわけでございますけれども、それはもちろんただではございませんで、ディスクロ自体 はやはりコストが掛かるということもありまして、顧客によっては、信託報酬料を下げてもらう分、そのディスクロはもう省いてもらいたい、できる限り少なく しても結構だという場合もあろうかと思うんですけれども、これはあれですか、そうしますとこの27条で規定されている信託財産状況報告書の作成義務につい ては、相対の顧客との取引の中で、今のような適格機関投資家以外でもそうした契約条項であればある程度省いても構わないということになるんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、私ども、今の法案あるいは内閣府令において、そういった適格機関投資家である場合等はこの信託財産状況報告書の交付義務は免除するということを検討をいたしたいというふうに思っております。
そういった面から申し上げますと、個人でどうしても要らないといったことについて、そこはやはり元々の信託の趣旨から考えて、やはりそういった信託財産報告書というのを交付をしておくというのが重要ではないかというふうに思っております。
○西田まこと君 ちょっとよく分からないところがありますので、ほかのところもお聞きしますけれども。
先ほど大塚委員との議論の中で出たものだと思いますけれども、取締役の兼職の制限につきまして16条で定められているわけで、その具体的なものが府令で更に規定されているということが、たしか4つほど挙げられていたかと思います。
その上で、そのうち、その挙げられていた規定されている項目は、要するに兼業する業務の信託業務に与える影響、並びに信託業務との関連性、こうしたこと が、この2点から府令では規定されていると理解したわけでありますけれども、1つだけ、先ほどその取締役が営もうとする事業が主としてその家族により営ま れる場合という、ほかの項目とはちょっと違和感があるというか、信託業務との関連性ということが非常に強調されている中で、家族が営んでいるものが必ずし も信託業務と関連していない場合も数多くあると思うんですけれども、そういう場合も構わないということなんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
この規定は取締役が営もうとしている業務の規定でございますので、その取締役が営もうとしている事業が主としてその当該の取締役の家族などによって営まれ ている場合、そういったことでございます。こういう場合には、実質的にはその取締役本人が行っているのと同視し得る場合も多いというふうに認められること から、この場合についてもやはり兼職の承認が必要ではないかというふうに考えまして、こういった形になっているわけでございます。
ただ、その際 に、実質的にもその家族によって営まれておりまして、当該取締役はその重要な事項についてのみ指示をすれば足りると認められるような場合には、これは信託 会社の経営に悪影響を及ぼさないと認められるところから兼職が認められることになるというふうにする予定でございます。
○西田まこと君 今回の業法の改正で信託専門店舗というものが解禁をされる方向であるということが衆議院でも議論されておりました。
これ自体は、兼営法の信託銀行が銀行業務を行わず、信託のみを、信託業務のみを行う店舗を想定しているということでございますけれども、やはりこれは元本 を保証する業務と保証はしない業務ということが立て分けが非常に不明であるということで、お客様にとって誤認を防止していくということが大事であると、こ のような御指摘もあるわけでございますけれども、具体的にこの誤認を防止するためにどんな手だてが想定、考えられているのか、顧客に対する誤認防止策につ いてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) 先生御指摘のように、誤認防止というのは大事だと私ども思っておりますが、今現在、どういう形で、誤認防止措置を何らかの形で設けたいと思っておりますが、その措置について私ども検討しているところでございます。
○ 西田まこと君 是非、その同じ店舗で、信託専門店舗といっても、今回この業法改正でいろんな信託契約代理店とかあるいは受託販売業とか信託会社とか、様々 その名前が新しく出てきておりまして、その中で信託専門店舗といきなりこう言われても、恐らく普通のお客さんにとっては元本保証かどうかということも含め てよく分からないのが実態だと思いますので、是非具体的にその誤認をしっかり防止するということを改めて強調させていただきたいと思います。
続 きまして、先ほどもちょっと議論出ましたけれども、営業保証金のところで、信託受益販売業者として既に今宅建業者等が行っているところもあるわけでありま すけれども、この営業保証金、宅建業者として既に宅建業法の中でその営業保証金1千万円を既に積んでいるわけでありますけれども、改めて、今回この業法が 改正されることで、信託受益権販売業者として登録した場合に、その営業保証金を重ねてやはり積まなければならないということでよろしいでしょうか。
○ 政府参考人(増井喜一郎君) 御指摘のように、宅建業者、建物取引業者が信託受益権を営業して販売する場合には、この信託受益権販売業の登録が必要でござ います。この場合、宅地建物取引業法における供託に上乗せして本法案によります供託をする必要があるということでございます。これはやはりその信託受益権 を購入する顧客の保護の観点から、信託受益権販売業者としてもやはり営業保証金を供託をしていただくということが必要な措置であるというふうに考えている わけでございます。
○西田まこと君 続きまして、兼業規制なんですけれども、第5条7項に、「他に営む業務を営むことがその信託業務を適正かつ確実に営むことにつき支障を及ぼすおそれ」という記載がございます。
信託業に新たに子会社として参入する場合はそんな問題は起きないわけでありますけれども、そうではなくて、既に他の業を行っていて信託業務に新たに参入す る場合、この信託業務の比重というものについては、当然のことながら、最初いきなり、その信託業務の業務範囲がいきなり大きくなるわけはないわけでござい ますけれども、そうしますと、他に営む業務の方が比重として非常に大きくなってしまう、こういうことになってしまうかと思うんですけれども、ここで、兼業 規制で言うところの信託業の比重につきましては、どのぐらいバッファーというか、3年なら、あるいは5年とかあるいは1年とかの期間にこれだけ信託業務の 範囲が広がっていけば、あるいは比重が高まっていけば兼業規制には引っ掛からないと、そういうように考えておられるんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
兼業規制については、やはり信託業務の適正な遂行の確保、財務の健全性の確保、本業への専念といった観点から、やはり原則として他業を禁止した上で、信託 業務に支障を及ぼすおそれのない業務であって信託業務と関連する業務について兼業可能というふうにしたわけでございます。
で、その具体的な兼業 基準については府令において具体的に規定をすることを予定をいたしておりますが、具体的には、例えばその信託業務の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそ れがないこととして、その基準の中で人員配置等兼業業務の執行体制の状況に照らして、兼業業務が信託業務に付随するものとなっていることというのを条件に しようとしております。
今先生の御指摘のように、仮に今まで既にその兼業業務を営む会社が信託業務を開始する場合というのもそういった問題が起 こるわけでございますが、具体的にそれじゃ兼業が認められる信託業務と他業との比率についてどうかという御質問だと思いますが、これを具体的な数字、お示 しすることはやはり困難な感じがいたします。
業務制限の趣旨というのは、信託会社が信託業以外の他業を営むことによって本業がおろそかになった り、他業の失敗によって信託会社の経営を危うくするといった事態が生じるおそれを防止するということであることを踏まえますと、なかなか数字をお示しする のは難しいわけでございますが、こういったいろんな事情を総合勘案して、あくまで信託業がやはり主業であると、主業となる必要があるというふうに考えてお ります。
○西田まこと君 主業といっても、新たに参入してくる企業にとっては、当然今まで業があって、新たに参入をしてくる会社にとって は実態的には主業には最初はならないですね、やっぱり。スタートした時点でゼロから始めるということになります。この場合でも認められるというふうに考え ればいいんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) 先生御指摘のように、既に別の他業をやっている場合にはゼロから始まるわけでございますから、おっしゃるとおりだと思います。
そういった場合には、私どもとしましては、今度の審査基準の中で、既に兼業業務を営む会社が信託業務を開始する場合には、信託業務の開始後合理的な期間内 に付随する業務になるようになること、要するに信託業務が主業になるようになることということを基準としようと考えております。
○西田まこと君 それは、将来、となればいいと。そこに特に1年とかあるいは2年とか3年とか、特にその期限は設けないということでしょうか。
○ 政府参考人(増井喜一郎君) はい。特定の期限を区切ってと申すつもりはございません。ただ、合理的な期間内というのがあると思いますので、相当、何10 年も掛かるということでは、それはやや問題なのかもしれませんが、考えられる合理的な期間の中で付随的なものになるということでございます。
○西田まこと君 続いて、その担い手としてのTLOにつきましてお聞きしたいと思います。
TLOがこの信託業務を営む場合には、確認ですけれども、最低資本金は、特にそれは基準としてはないと、要らないと、供託金は必要ということになろうと思います。
大学内で開発された様々な知的財産を信託するということでTLOがその担い手として今回期待されているわけでありますけれども、例えば大学で今いろんな開 発をされている場合には、必ずしも大学内の人だけでやっているわけではなくて、例えば地元の中小企業と共同開発をしたりというケースが間々見られるわけで ありますけれども、そうした地元の中小企業と共同開発した知的財産権につきましてもこのTLOが信託、受託ができると、このように考えていいんでしょう か。
○政府参考人(増井喜一郎君) 今先生御指摘のように、TLOもいろいろな形があるかと思いますが、TLOが地元と共同して開発した特許権等をTLOに信託し得るかという御質問だと思います。
これは大学等技術移転法の枠組みに該当するかどうかという問題でございますが、これは担当の省庁に確認したところ、そういった場合でもこの枠組みに入るというふうに聞いております。
○ 西田まこと君 続きまして、今回、この信託業法の改正の意義として、担い手を拡大し、また受託財産を拡大していく、自由化していく、2つの自由化というこ とがうたわれているわけでありますけれども、特に、私の考えとしては、この信託という仕組みを広めていく上に当たって、特に2つの点が必要だと思っており ます。
1つは、中小零細企業がこのスキーム、信託という仕組みを活用できるようにしていくということが大事であるということ。そしてもう1つ は、機関投資家等大きな投資家だけではなくて、ある意味で個人投資家等もこの信託というスキームを使ってそこに参画してくるということがこの信託という仕 組みを日本にもっと広めていくことにつながっていくんではないかというふうに思っておりますので、この2つの大きな点についてお伺いしたいと思います。
まず、中小零細企業とこの信託という仕組みにつきましては、午前中、新井先生からも御指摘がございました。今まで、この信託業法が改正される前にもう既に中小企業の資金調達の一つのスキームとして一括信託システムということが利用されてきているわけであります。
簡単に申し上げますと、委託者である中小企業は、例えば100社とか200社とか束ねて、それをある1社の商社とかに売り掛け債権を持っているわけであり ますけれども、それを束ねた形で信託銀行に信託をして、それを信託受益権として投資家に小口化して売っていくと、こういうスキームがあるわけでございます けれども、ここの関係において、委託者たる中小企業は個別に投資家との契約になっておりまして、この売り掛け債権を資金化していく、まあ簡単に言えば手形 の割引みたいなものですけれども、その関係の中において反復継続して行っていくわけでございまして、反復継続ということになりますと、この信託受益権販売 業に当たるということにもしなってしまえば大変なことになってしまうというのが今日午前中の新井先生の御指摘だったと思います。この点、一応確認ですけれ ども、そういうことには当たらないということなのかどうかということを確認をしたいのが1点と。
もう1つ、同じようなこの仕組みの中で、実際に はこの売り掛け債権の債権の回収、サービサー業務としては、形上だけとはいいながら、中小企業がこの売り掛け債権を回収する形になっておりまして、そうし ますと、これは外部の委託先ということにも当たってしまうのであれば、これまた大変な中小企業には負担になる、いろんな行為規制が掛かってきてしまうと。 こういうことになってきてしまうわけでありまして、実態に合わせてこれは解釈をして、運用していただくということが大事だと思っておりますけれども、この 一括信託システム、中小企業が頻繁に利用しておりますこのシステムと今回の信託業法の改正についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) この法案におきましては、信託受益権の取引の安全を確保するために信託受益権販売業者というのを位置付けまして、登録制の下でその適格性をチェックする仕組みということになっていることは先ほどから御説明しているとおりでございます。
したがって、その中小企業が所有する信託受益権を営業として自ら直接投資家に販売することになった場合には、やはりその中小企業は信託受益権販売業者として登録が必要となりまして、営業保証金を供託しなければならないと、そういうことになるかと思います。
しかし、これに対して、中小企業が、自分が所有する信託受益権について勧誘あるいは契約締結等の販売に関する対外的な行為の全部を第三者に委任し、自らは 全くそういった対外的な販売行為を行わないという場合には、これは、中小企業自体は販売を行わないわけでございますから、受益権販売業者には該当しない。 他方、その委託を受けた第三者が受益権の販売業者として登録が必要になってくるというふうに考えております。
現行の実務では、中小企業の有する売り掛け債権について受託者となった信託銀行がその委託に基づいて当該信託に係る受益権を投資家に販売するというスキームになっておりますので、どちらかというと、こちらの、後者の方になるというふうに考えております。
それから、法22条1項に規定します信託業務の委託先としての第三者に該当するか否かということでございますが、これも第三者が信託財産の管理又は処分に関する権限を有すると認められるか否かによって判断するのが適当だというふうに考えております。
定型的なサービスを利用する場合や単純な事務処理を行わせる場合にはこれには該当しないというふうに考えておりまして、具体的には個々の業務ごとに判断す る必要がございますが、仮に、その中小企業が信託に出した売り掛け債権を自ら信託会社の委託を受けて回収する場合において、その委託の内容が、例えば単に 債務者から支払金を自らの口座において受領する、そしてその金銭を受託者の口座に振り替えるというようなことにとどまるのであれば、これは単純な事務処理 というふうに考えられますので、先ほど申し上げましたように、第三者には該当しないというふうに考えることも可能ではないかというふうに考えております。
○西田まこと君 是非、今、既にかなり中小企業の資金調達に役立っているスキームを更により良くしていくためにもそうした運用をお願いしたいと思います。
この信託の普及啓蒙ということにつきましてちょっとお聞きしたいんですけれども、今申し上げましたとおり、中小企業の経営者の方々にこの信託業法あるいは 信託ということをお聞きしますと、まず返ってくる答えが、まず信託というのは何だという回答であり、また信託銀行というのは一体何をやっているんだという ぐらいになじみがなかなかないというのが実態であろうかと思います。
今回、この信託業法の改正に当たりまして、当局といたしまして、この信託と いう仕組み、あるいは今回の信託業法ももちろん含めてでありますけれども、特に中小企業の経営者の間にどのように広めていくのか、どのように啓蒙していく のか、あるいは啓蒙するおつもりがあるのかということについてちょっとお聞きしたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) 御指摘のように、信託という言葉は必ずしも一般になじんでいるとは限らないという感じがいたします。
そういう観点からも、この法案が施行の際には、やはり一般の方にどれだけPRしていくかというのが非常に大事だと思いまして、私ども自体もいろんな形で、 地方では財務局もございますし、金融庁自体の広報にも努めたいと思いますし、特に中小企業の方々に対しては関係の諸団体にも御協力をお願いをしたいという ふうに考えております。
○西田まこと君 特に、この信託というスキームを使って中小企業はこんなメリットがあるという成功事例というかモ デルケースみたいなものを、やっぱりその仕組みを抽象的に何か説明してもなかなか手触り感というか手ごたえがあるものではございませんので、そうした、こ の信託を使った資金調達等々につきまして成功事例等をしっかりと伝えていくということが一番理解を深めていくことになるんではないかと思いますので、その 点、是非お願いしたいと思います。
そして、今、既に新聞報道等もございますけれども、今、東京の大田区の産業振興協議会、財団法人でございます けれども、信託銀行と契約をして、中小企業の知的財産の侵害を守るためにこの信託という制度を使おうと、こういうことで今着々と準備を進めているようでご ざいまして、私も先般そのお話をお聞きしてまいりました。
なかなか、資金調達をしようという、一番いいんですけれども、中小企業の経営者もそれ をすぐに考えるわけですけれども、そうはいっても、なかなかいろんな評価とかの問題、先ほど来から議論あるとおりでございまして、そう簡単ではないと。む しろ、中小企業が持っている知的財産をいかに外部の様々な人から守っていくのか、侵害からいかに守っていくのかということが、この実は信託というスキーム が非常に役に立つということで、今、大田区ではその試みを進めているところでございます。
そこに当たりまして、これは本当にいいのかどうかは分 かりませんけれども、実際には、その中小企業にとっては、自分が持っている知的財産を例えば信託銀行あるいは信託会社に信託をして、そして侵害から防ぐ、 パトロール、いろんな侵害がないかパトロールすることにも、自分たちではできない中小企業が信託銀行という大きな会社あるいは信託会社という大きな会社に 委託をして、そうした侵害から守っていくということを考えているわけですけれども、そこで問題になるのは、やはり信託の手数料ということがやはり大変に問 題になってまいりまして、中小零細企業、いろんな財産を持っている、知的財産を持っているんですけれども、これを委託しようと思っても信託手数料等がなか なかネックになって広まっていかないという懸念もあるのかなというふうにも思っておりまして、知財立国という標語を掲げている我が日本といたしまして、特 に中小企業が持っている知的財産等を生かしていくということから、こうした信託手数料等も含めた、この信託というスキームを使うに当たっての公的な支援 等々を考える余地はあるのかどうか、御意見を賜れればと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) おっしゃるように、この信託のスキームを利用しやすくするという意味で手数料というのは大変大事なことだと思います。ただ、手数料を、何といいますか、人為的に引き上げる、引き下げるというのはなかなか難しいというふうに思います。
ただ、今回、新たにこういったスキームを作りまして、新しい業者が次々と参入する、そういうことによっていろんな形での競争が生まれ、多様な信託の商品、 信託のスキームが生まれ、その結果、手数料が下がるということは非常に大事だと思っておりまして、そういう意味でも、新たないろいろな方々の参入というの が期待されるところだというふうに考えております。
したがって、何となく、公的なものを使うということは、これはいろんな御議論があると思いま すので私どもがあれこれというふうに決め付けて申し上げるのはいかがかと思いますが、やはり一方で、公的な関与があるということはその分だけ市場をゆがま せる可能性もあるということも考えながら、よく検討しなければならないというふうに思います。
○西田まこと君 今のこの大田区のケースで もそうなんですけれども、個々の中小企業はそもそも信託銀行と余り付き合いがないと。午前中も信託協会の会長さんがおっしゃっていましたけれども、店舗数 が少なくて信託銀行そのものも中小企業と余り接点がないと。このマッチングをさせていくために財団法人たる大田区の産業振興協議会というのが機能している わけでございまして、そこが自分の区内にある中小企業がどんな知的財産を持っているのかということをプールして、それをつないでいくという役割を果たして いるわけであります。
この場合に、こうした大田区の財団法人のような公的な機関、ここが例えば信託の契約代理店をやろうとした場合にどういうこ とが、それが可能なのかどうかということもよく正直言って分からないんですけれども、やるには非常にふさわしいんですけれども。でも、実際、法律を読むと 信託会社に所属するということになってしまう、それは公的な機関としては無理じゃないかと。だけれども、この中小企業と信託会社ないしは信託銀行をつなぎ 合わせようと思えばそうした真ん中に入る機関も必要になってくるというのが実態でございまして、ここをどう考えたらいいのか、もし御所見がございましたら お伺いしたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
具体的なスキームを承知しておりませんので、こ こで確定的にこうだというふうに申し上げる材料はございませんけれども、いずれにいたしましても、現行のスキームでいろいろな知恵を出しながら、新しいい ろいろな形での中小企業の資金調達、そういったスキームをお考えになられるということは非常に重要なことではないかというふうに考えております。
○西田まこと君 後でこの大田区の、そんなに難しいスキームじゃございませんので、ちょっと事前に言っていればよかったんですけれども、昨日たまたま急に聞いたものですから、申し訳ございません。後でそのスキームをお渡しして、是非検討いただければと思います。
最後になりますけれども、もう1つ、この信託という仕組みを広めていくために大事だと申し上げた個人投資家向けのお話でございますけれども、これは、先ほ どの御議論で大臣、伊藤大臣からもお話がございました。この行政の縦割りの弊害が信託の発展を妨げてはならないと、こういう御発言があったわけでございま す。
そして、今回の業法の改正のねらいのひとつとしては、受託可能財産を広げていく、こういうことがあるわけですけれども、個人がこの信託受益 権を例えば購入しよう、個人投資家が購入しようと、こういうふうになった場合に、やはりなじみがあるというものでいえば、今、既に動きがあるのは、例えば 映画というのがあるわけでございまして、映画の信託を、スキームを使って制作費等を調達をしてということがすぐ考えられるわけですけれども、これは、もう 御存じのとおり、商品ファンド法というのがあって別途規制がされていて、映画そのものの信託というものは今の中ではなかなかできないと。
せっか くこの受託可能財産を広げながら、映画だけではなくて、馬とか鉱物権とか、様々この商品ファンド法で個別に規定されているわけでありますけれども、こうし た個人投資家をもっと取り込んでこの仕組みの中に参入、参画をしてもらうという意味でも、また、先ほど来大臣がおっしゃっている縦割りの弊害を取り除いて いくということからも、例えば商品ファンド法とこの信託業法の今回の改正との調整みたいなものについて今後どう進めていかれるのか、最後にお聞きできれば と思います。
○国務大臣(伊藤達也君) 先ほども答弁をさせていただきましたように、やはり行政の縦割りの弊害というものが信託の発展に大きな障害になってはいけないというふうに思っております。
今、商品ファンド法との関係ということがございました。私どもも、この法律との関係というものは十分整理をしながら、この枠組みが積極的に活用していただけるように対応をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
また一方で、今金融審議会においては投資サービス法についての議論も本格的に精力的な議論をしていただいているところであります。機能別、横断的な枠組み というものを設けて、そして利用者の視点に立った枠組みというものをしっかり作っていくということは非常に重要なことだというふうに思っております。
こうした枠組みを整備をしていくためには、様々な論点があることは事実でありますけれども、多くの専門家の方々に参加をしていただいて、また国会でもこの 問題についてはいろいろな御指摘をいただいておりますから、そうしたことも踏まえて私どもとして精力的に検討していきたいというふうに思っているところで ございます。
○西田まこと君 質問を終わります。ありがとうございました。