財政金融委員会・第11号 2005-04-21
【質疑事項】
議題:保険業法等改正案に関する件
1.共済について
2.トラブル防止策について
3.少額短期保険業者について
4.契約者保護について<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
今日は、まず初めに、いわゆる認可あるいは無認可問わず、根拠法あるなし問わず、共済と言われるものにつきまして、特に90年代、実態がなかなか分からないといいながら、総務省さんの調査等を見ますと、やはり90年代に入って急増していると。年々倍増しているぐらいにかなり急速に増え出しているということが言えるんではないかと思いますけれども、まず、この共済が90年代に入りまして増え出したその背景にあるものがどんなものがあるのか、これについてまずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
この共済、いわゆる根拠法のない共済、先ほど御指摘もありましたように、総務省の調査によっても最近相当増えております。
この原因というのはなかなか、いろんなことがあろうかと思いますので必ずしもすべてのことが分かっているわけではございませんけれども、1つ、法律上、先ほど来私ども申し上げていますように、なかなか、特定の者を相手にする、あるいは不特定の者を相手にするというところが必ずしも明確でなくなってきているといった状況があるといったことも1つあると思います。したがって、そういう意味で、何といいますか、保険業法の適用の外にあった部分があったということでございます。それから、あとはいろんな形での、最近保険商品に対するニーズがいろいろな形であるということだと思います。そういった形でいろんなニーズを、保険会社が必ずしも供給できない商品を供給をしてきたと、そういった観点もあるかと思います。
いずれにいたしましても、いろんな原因でこういった共済が増えてまいりまして、それによってトラブル等もまた一方で増えているという状況だというふうに考えております。
○西田まこと君 正にこの90年代、先ほど来お話もございましたけれども、保険会社が相次いで破綻をする、この一方で共同自治の原則で共済が地歩を固めてきたと、こういう事実もあるんではないかというふうに思うわけでございますけれども、認可、無認可ということでいえば、認可保険会社であるところでも東邦生命とか第百生命とかつぶれたところもありますし、あるいは認可共済と言われるところでも、先ほど来お話もございましたけれども、四日市とかあるいは佐賀でも破綻しているところもあると。そういう意味でいきますと、認可、無認可、認可だから絶対大丈夫だとかいうことは当然ないわけであります。
そういう意味では、この共済、今急速に増え出して、90年代増え出してきたわけでありますけれども、今回の法改正の意義という大きなテーマになりますが、共済が増え出してきた背景にある消費者の利益というものは今回の法改正でどのように担保をされているのか。まず、これを大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(伊藤達也君) 根拠法のない共済につきましては、その規模やあるいは形態というものの多様化が進み、特定の者を相手方として保険の引受けを行う共済事業と、それから不特定の者を相手方とする保険業とを区別することが容易ではなくなりつつあるわけであります。また、近年、共済に関しましては、事業者が所在不明である、あるいはマルチ商法的な勧誘が用いられているなど、国民生活センターへの相談件数も増加をいたしております。
こうした状況を踏まえまして、今回の改正案では、保険業法の適用範囲というものを見直して、そしていわゆる根拠法のない共済につきましても原則として保険業法の規制対象とするとともに、一定の事業規模の範囲内で少額の短期の保険のみを提供する事業者につきましては登録制等の新たな規制の枠組みというものを創設をする、このことによって消費者の利益の保護を確保するための仕組みというものを整備をさせていただいたところでございます。
今後は、金融庁といたしましても適切な検査・監督を通じて、これらの規制の実効性というものを確保しながら契約者の保護というものを図っていきたいというふうに思っております。
○西田まこと君 他に根拠法のある共済につきましては制度共済として今後も続けていくということになるわけでありますけれども、例えば、経産省所管の中小企業等協同組合法に基づく共済、あるいは生協共済等々、厚労省であるわけですけれども、これよく指摘されることでありますけれども、いわゆる無認可共済と規制面では全く同じではないかという実態がそうした制度共済には見られるところもあるわけですね。例えば、募集規制の問題、あるいは募集人登録制度や監査法人による外部監査等々、今回規制の対象に無認可共済の方は入るわけですけれども、制度共済ではそこまで厳しく様々な規制がないものが残って、そして無認可共済の方が逆に規制の厳しい対象に入ってくると。これは実際に、幾ら無認可共済を厳しくこれから規制に入れていくということにしても、逆に規制の抜け道になるんではないかと、こういう指摘も中にはあるわけでございますけれども。
まず、実態として、生協の共済を1つ例に挙げさせていただきますと、募集規制や外部監査につきましては、これはなされているんでしょうか。
○政府参考人(大槻勝啓君) お答え申し上げます。
生協が行う共済事業につきましては、一定の地域や職域でつながる方々が相互扶助の精神に基づきまして自発的に組合員となって共済制度を利用し合うというものでございます。その指導監督に際しましては、そういった生協の特徴を踏まえつつ行うということが必要であると考えております。
今お話の出ました募集規制等についてのことでございますけれども、まず、組合員の加入推進に関しましては、生協法に基づく通知におきまして、共済契約を締結する際に真実でないことを告げたり重要なことを告げないといった行為を行ってはならないと、こういったことや、一般消費者に対する広告宣伝に当たっては、組合の理念や運営原則、組合活動の特色を中心といたしまして、単に商品内容のみの広告宣伝とはならないものとすることといったことを定めまして、各生協に対して指導を行っているところでございます。
また、適切な事業運営の確保に関しましては、生協法におきまして、監事が業務執行、財産の状況につきまして監査を行うこととされておりますけれども、生協の信頼性を高めるために、通知によりまして組合の事業規模に応じて公認会計士又は監査法人による監査を受けるよう指導しているところでございます。
○西田まこと君 そうした指導をしているんですけれども、完全になされてはいないということでしょうか。
○政府参考人(大槻勝啓君) 募集あるいは外部監査につきまして先ほどお話を申し上げたところでございます。例えば加入推進という点に関しましては、生協法令あるいは通知に基づきまして私どもとしては適切に行われているものと承知をしているところでございますけれども、その具体的な方法、実態ということにつきましては、例えば職域を単位といたしまして組合員である従業員が説明会を開催するといったような方法が行われるなど、各組合ごとに様々な形が取られているものと思っております。
一方、外部監査の導入につきましては自主的な取組が行われているところでございます。具体的には、大規模な生協におきましては外部監査が実際に行われているところでもございますし、また、複数の組合で構成する連合会におきましては、自主基準を設けまして、一定規模以上の生協では外部監査を行うと、そういうふうにしている例などが見られるところでございます。
○西田まこと君 中には、制度共済が今回の規制の対象から外れるということもありまして、無認可共済を嫌っている団体が生協を例えば設立して、そして制度共済の方に入っていくと、こんなようなことも聞かれるわけでございますけれども、これはどういう形で指導されていくんでしょうか。また、そういう可能性というのはあるんじゃないかというふうに御指摘申し上げたいと思いますけれども、金融庁の方はいかがでございましょうか。
○政府参考人(大槻勝啓君) 先ほど生活協同組合に関する考え方、募集規制あるいは外部監査につきましての実態等を説明を申し上げたところでございます。生協が行う共済事業の考え方はもう先ほど申し上げたとおりでございまして、そういった生協の共済事業につきましては、組合の特徴を踏まえた規制といたしまして消費生活協同組合法によりまして様々な事項が定められ、必要な規制を行っているところでございます。
今後とも、私どもとしては、共済契約者としての組合員の保護を図る観点から適切な指導監督を行ってまいる考えでございます。
○西田まこと君 経産省さんの方の中小企業等協同組合法に基づく共済でございますけれども、これにつきましては商品審査制度やあるいは責任準備金制度は基本的にはないということでよろしいんでし
ょうか。
○政府参考人(野口泰彦君) お答え申し上げます。
中小企業等協同組合法におきましては、先生御指摘のように、事業協同組合が共済事業を行うことは可能でございますが、共済事業を行う場合も含めまして、組合は、中小企業等協同組合法に基づき、事業年度ごとに事業報告書、財務諸表を所管行政庁に提出する義務がございます。また、所管行政庁は報告徴収、検査、監督上の命令をすることができることとされておりまして、そういったことから所要の規定が整備されております。組合運営に疑義があると思われる組合に対しましては、組合の所管行政庁がこれらの手法を用いて適切に対処することが基本と考えております。
しかしながら、昨今の状況もございますので、こうした現行法の適切な運用に加えまして、さらに制度上対応が必要か否かにつきましては、今後、こうした状況あるいは共済事業を行う組合の実態も十分踏まえながら検討していく所存でございます。
○西田まこと君 今の御答弁によりますと、そうすると、今回の無認可共済の規制が法改正でなされようとしているわけでありますけれども、その規制に、法改正に歩調を合わせてやっていく、規制を整備していくということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(野口泰彦君) お答え申します。
今お答え申し上げたことと重なりますが、昨今の状況変化もございますので、こうした現行法の適切な運用に加えまして、さらに制度的な対応が必要かどうかにつきまして今後検討していくということでございます。
○西田まこと君 消費者の方からしますと、監督官庁の違いとか、あるいは今回の少額短期保険業者とか、あるいは保険業者とか、そういういろいろ専門的なことはなかなか分かりにくいわけでありまして、結局、そうした根っこのところがどう違おうが、同じ、ある意味で横並びで商品を選んでいく、こういうことになってくるわけでありまして、様々なトラブルの防止策あるいは対策等につきましてはかなりやはり省庁横断的な対応を取っていかないと、一消費者からすると非常に困ったことになるんではないかと。
今回のこの法改正によっても、そういうことを今経産省あるいは厚労省さん、それぞれの所管の制度共済、今度新しい少額短期保険、普通の保険、こういう様々な違いがある中でトラブル対策、トラブル防止策、これについてはやはり金融庁さんが中心になるのかもしれませんけれども、省庁横断的にやはり対応していただくことが是非とも必要ではないか、それが消費者の保護にもつながるんではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでございましょうか。
○国務大臣(伊藤達也君) 先ほど今回の制度設計をさせていただいた背景を説明をさせていただいたわけでありますけれども、今回の制度設計をさせていただきましたのは、根拠法のない共済というものが急増をしている、そしてその事業内容や規模というものも多様化して、また国民生活センターへの相談というものも増えてきている。こうした中で、やはり早急に契約者保護の仕組みを整備する必要があるということで、私どもとして必要な規制というものを課させていただいたところでありますけれども、委員が今御指摘をされましたように、やはり契約者保護という観点からすれば各省庁と連携を図っていくということは極めて重要なことでありますので、私どもとしても、金融取引上の消費者保護の観点から、必要に応じて関係省庁とはよく連携を取り、相談をしながら対応していきたいというふうに思っております。
○西田まこと君 是非、実のある形で契約者保護を図れるような連携をお願いしたいと思います。
少額短期保険業者に関しましては様々なことがやはり政令で決められておりまして、御確認をさせていただきたいことも幾つかあるものですから、ちょっと細かい点ですが、お聞きしたいと思います。
まず、この少額短期保険業者に対する外部監査につきましては、義務となる事業規模、事業者の規模ですね、これは外部監査を必要とされる、あるいは義務付けられる業者というのはどのぐらいの規模からになるんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
昨年の12月の金融審の第2部会報告でございますが、こちらでは、「開示される書類の適正性を確保するため、一定以上の規模の事業者については外部監査を義務付ける。」というふうにされております。今回の改正案におきましては、こうした考え方に基づきまして、資本の額等が一定額以上の株式会社あるいは相互会社について会計監査人の設置等を義務付けることといたしております。
具体的にその資本の額が幾らかということでございますが、これは政令で定めることになっておるわけでございますけれども、保険の引受けを事業として行っておるわけでございますので、一般の会社より開示書類の適正性を確保する必要性は高いと考えられる、こういったこと等ございます。
今の一般の会社というのは、現行商法では資本金5億円以上の株式会社が会計監査人の設置を義務付けられておりますので、そういったことも踏まえまして、3億円程度とすることを想定をいたしております。
○西田まこと君 次に、この無認可共済の中には、再保険として外国の再保険会社に出している共済も現状少なくないわけでございますけれども、どういう場合に今回この法改正の中で海外の再保険会社に再保険していいのかについて、ちょっと実務的な話ですけれども、お聞きします。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
先ほど来御説明をいたしておりますように、少額短期保険業者というのは、その扱う商品が保険金額が少額でかつ保険期間が短期というそういった保険のみを引き受けるわけでございます。この業者が業務範囲の中で引き受けた保険に係る再保険につきましては、これは自ら保有することが認められたリスクをどう管理するかという問題でございますので、契約相手方の保険会社を一律に制限する必要はないというふうに考えております。
他方で、今回、既存の事業者、現在根拠法のない共済を営んでいる事業者で、今回少額短期保険業者の登録を受けた者の中には、移行の円滑化を図る観点から、再保険によって少額保険を超えるリスクを移転することを前提に、法施行日から7年間は少額保険を超える保険の取扱いを行うことができるという経過措置を設けております。
この経過措置に係る再保険につきましては、保険業法で少額短期保険業者が保有することが認められる範囲を超える保険リスクの管理の問題でございますので、これにつきましては、やはり契約者保護を図るべく、その契約相手方を原則として当庁の監督下にある国内の保険会社に再保険をいたしておりまして、その国内の保険会社に再保険をすることが困難であるなど一定の要件を満たす場合にのみ、金融庁の事前承認を得た上で、海外の保険業者、外国保険業者に付することができる、こういう仕組みにしているところでございます。
○西田まこと君 あと、やはり販売形態でよく問題になるいわゆるマルチレベルマーケティングと称する販売形態でございますけれども、今回の法改正により、こうした売り方というのはどのような扱いになるんでしょうか。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
今回の改正案でございますが、いわゆるマルチレベルマーケティングによる保険募集そのものは直接は禁止はしておりません。ただ、現行の保険業法におきましても、保険募集の適正性を確保するために、保険募集人の公正な保険募集を行う能力の向上を図るための措置義務、あるいは保険募集人登録制度、保険募集人の重要事項の説明や虚偽表示の禁止などを含めました行為規制、さらには保険募集人の不適切な説明等に伴う保険会社の方の使用者責任、こういった様々な規定が設けられておりまして、今回新設をいたします少額短期保険業者につきましても、これらの保険会社に対する規制と同じ規制が課せられるという形になっております。
したがいまして、この少額短期保険業者につきましても、これらの規制に対応するために、保険募集を行う者には適切な教育指導を行って、保険契約に関する十分な知識を有する者を保険募集人とした上で、虚偽の説明あるいは重要な契約事項を告げない行為の禁止などといった契約者保護のルールの下で募集を行うということになりますので、やはり十分な知識を有しない者によります連鎖販売取引、マルチ商法といった、そういった不適切な保険募集は抑止されるものと考えております。
○西田まこと君 この契約者保護ということをるるお話を今していただいているわけでありますけれども、少額短期保険業者に対しましては、いわゆる保険会社に適用しておりますソルベンシーマージン基準に基づく早期是正措置は求めないと、こうしているというふうに理解しておりますけれども、なぜこの少額短期保険業者に対しましてはこうしたソルベンシーマージン基準に基づく早期是正措置を求めないのか、またそれに代わる指標というのは消費者、契約者保護という、あるいは商品を選ぶ際の様々な基準を契約者の方々にも示す必要があるわけでございまして、これに代わる指標を、どんなことを考えておられるのかということを最後お聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(増井喜一郎君) お答え申し上げます。
ソルベンシーマージン比率による規制ということでございますけれども、これは保険金等の支払能力の状況に係る客観的な数字、数値といたしましてソルベンシーマージン比率を算出いたしまして、この比率の数字に応じて、保険会社に対して適時適切な経営対応を求めると、こういう仕組みでございます。
今回の改正案でございますけれども、少額短期保険業者につきましても、事業内容なども踏まえまして、保険金等の支払能力の状況を示す指標を内閣府で定めまして、これに基づいて適時適切に経営対応を求めることを想定をいたしております。
その具体的な内容でございますが、これは少額短期の保険の引受けのみを行うという事業の特性がございます。また一方で、保険会社の今の申し上げましたソルベンシーマージン比率の仕組み、そういったものを踏まえながら、今後パブリックコメントを付すなど、関係者の御意見等も幅広く伺いながら検討してまいりたいというふうに思っております。
○西田まこと君 終わります。