財政金融委員会・第14号 2005-06-09

【質疑事項】
1.カネボウの経営再建スキームについて
2.カネボウの株主責任について
3.監理ポスト入り銘柄の急増とその基準について
4.金融庁の企業会計審議会で議論されている、監査法人による「企業統治監査」について<>○西田まこと君 公明党の西田まことでございます。今日は、お三方、大変にありがとうございます。
まず、最近の様々な企業不祥事に関しまして、今日御出席いただきました皆様方の機関並びに組織の役割がいろいろと変わってきている、その過程なんだろうなというようなことを思っておりまして、しかしながら一般論とかしても仕方ありませんので、具体的にカネボウの例を引きながら、それぞれの役割がどういう変貌の過程にあり、またどういう役割を今後担っていくのかということに関しまして確認をさせていただければと思います。
まず初め、産業再生機構さん、機構さんに関しましては、6月6日の日に第三者割当て増資、カネボウ化粧品を引受先とする第三者割当て増資、総額200億円がなされたわけでございますけれども、このカネボウの経営再建スキームそのものについてまずお聞きしたいと思います。
時間に限りがありますので端的に申し上げますと、今回の第三者割当て増資によりまして、機構はカネボウに対して議決権保有比率が31.9%、そしてカネボウ化粧品が第1位の株主になって37.9%、機構はカネボウ化粧品に86%と、こういうことでございます。
ちょうど1年前になりますけれども、2004年の5月に、機構の再建スキームはそもそもカネボウ化粧品とカネボウ、それは繊維及びその他というふうに分けているわけですけれども、カネボウとカネボウ化粧品を分離して再建をするというスキームでたしか始まったわけなんですよね。ところが、今回、第三者割当て増資によりまして、実は分離してそれぞれを再建していくというスキームが私から見るともう既に破綻してしまったんではないかというふうに思えてならないわけなんです。というのは、正にカネボウ化粧品に収益の貢献を大いに期待するというこの再建スキームに今回の第三者割当て増資によりまして変質してきているのではないかというふうに思っております。
元々証券市場では、このカネボウグループにつきましては化粧品が稼ぎ頭であるということは随分言われていましたし、それによって厳しい財務体質を糊塗してきたんじゃないかといううわさはもう絶えず言われてきたわけでございまして、そもそもこの経営再建スキームの当初の段階から化粧品事業と繊維とその他事業、こう分離して再建を図っていくというスキームに無理があったんではないかというふうに感想として思うわけですけれども、社長、いかがでございましょうか。

○参考人(斉藤惇君) 簡単にだけ申し上げますけれども、まず、先生御案内のように、我々は常に受け身でございますので、まず持ち込まれ方が、メーンバンクとそれから事業会社さんが化粧品だけをまず最初に持ち込んできたということであります。我々は、もうあのとき御案内のとおり非常にうわさが出ていまして、いろいろまずいことが起こったとかいうことで、非常なスピードでお客さんがどんどん離れていくとか代理店が離れていくとか、もう毀損が非常に激しくて、このままほっておいたんでは確かに化粧品は非常に窮境になるなというような状態で持ち込まれたということでありますので、まずは化粧品のバリューをちゃんと見ましょうということからスタートしたということは事実でございます。
同時に、我々見ましたときに、化粧品という事業と、カップヌードルですとかプラスチックですとか、いろんなものを作っておられました。相乗効果がほとんど考えられないということで、これは分離してサポート体制に入ると。化粧品だけのバリューでカネボウ全体を再生するという理論的な根拠はぴちっと出ておりました。仮にほかの、化粧品以外のものが価値がほとんどないとしても、支援計画の基準には十分合うという、これは数字的な基準があるわけでございますが、そこにマッチしておりましたので、まずは手順といたしまして化粧品からスタートをいたしたということがあります。
当然、持ち込んだ側は、最初は本体の方のデューデリジェンスを余りやらないで何とか済まないかというような話もあったんですが、我々はそれは絶対受けられないと。ここは、先生御案内だと思いますけれども、大変なやり取りを銀行や事業会社とやりまして、我々は3ヶ月掛けて本体の方を調査して、結果的には980億の債権放棄を金融機関に要請したということであります。
化粧品の方はどんどん再生が進んでいっておりまして、いつでもエグジットできるようになっておりますが、だんだん合繊とか、めん類ですね、天然繊維とかいうものを、事業を少しずつ譲渡しております。相乗効果が出ないために、今シャンプーみたいな、ホームプロダクトと申しておりますが、そういうものと、それから特殊な食品、アイスクリームですとか、そういうものでございますが、それから漢方、この3つの事業に集約していこうという戦略を取っておるわけであります。最初は化粧品とかファッションにもう少しバリューが出るであろうかというような見方ありましたけれども、もう限界利益が赤字になるというような状況でございましたので、これはもう譲渡しないと全体が駄目になってしまうということで譲渡を今進めてきたと。ちょうど終わり掛かったところでございます。
そうして残ってまいりますと、実は化粧品と非常にダブる、特に商標でございますね、ここはルールをつくっていたわけでございますが、現実にはこのごろ新しい薬のような化粧品のようなものを本体が開発したと。しかし、カネボウという名前が付けられないというためにマーケティングがうまくいかないとか、こういう問題が出てきたり、もういよいよエグジットが目前に迫っておりますが、これをばらばらにエグジットしまして、ばらばらに買手が出て、商標問題がぶつかってしまって、同じようにカネボウという名前を使った場合は、結局、毀損するということで買手が価値を付けてこないおそれがあると。そうすると、先ほどのお話じゃありませんが、我々が最初に入れました政府保証のお金が毀損するおそれが出てまいりますものですから、資本提携みたいな状況で全体的なバリューを上げようという戦略に変えたということであります。

○西田まこと君 今大体理解できましたけれども、カネボウに関する株主責任、先ほどもちょっとお話ありましたけれども、この6月6日、片山執行役員はこのように言っておりまして、今言われたとおりなんですけれども、正に一体で再生を図っていくんだと。
その際に、私が大変に気になるのは、4月13日に発表されたこのペーパーでも、先ほどの上場廃止をやめてくれというペーパーでもそうなんですけれども、非常に、普通、経営破綻した会社の株主に対する以上に大変に温かい思いやりというのがちりばめられておりまして、先ほど言った片山執行役員も、例えば一体で支援するというときに、複数の方法を挙げているんですね。スポンサー企業にカネボウ株のTOBをしてもらう可能性、あるいは売却後のスポンサー主導での株式再上場、あるいは支援企業の株式とカネボウ株式と交換する、そういう複数の方法を挙げて、大変な配慮を株主に対してしていると思います。
例えば西武鉄道の株主に比較して果たしてこれはどうなんだろうかと。あるいは、カネボウの再建が大変に難しいという状況の中で、機構の保有株式売却先であるスポンサー企業にこうした今のカネボウの株主への配慮というのを、配慮が逆に言うと非常に重い条件になってしまうというようなことになりはしないのかということを懸念するんですけれども、その点、端的にちょっとお答えいただければと思います。

○参考人(斉藤惇君) 先ほどもちょっと申しましたけれども、窮境に陥ったときの株主に対しては99.7%の減資をしておりますので、今の問題は、その後とかですね、新しい株主が入ってきているわけでありまして、その方々は、例えば変な話ですけれども、1000円とか、そういうことで取引をなさっていたわけであります。いろんな理由でデリストだということになりますと、そういう方々の流動性が消えてしまうということは、やはりある程度上場会社としては責任があるなと思っておりまして、1つの方法は、エグジットいたしますときに、相当数株数を持っておりますので、多分TOBみたいな形になるんではないかと。これは限定はできませんけれども、一応想像しております。
そうしますと、買手が全部100%買いましょうという形で出てきましたときに、今の株主の方もそこへ応じて出る方法がございますよというお話をしただけでありまして、何か特別に今の株主に何か優遇するとか、そういうことではございません。

○西田まこと君 せっかく来ていただいていますので、東証の鶴島社長にもお聞きしたいと思います。
先ほどもちょっとお話ありましたけれども、私、その上場基準もさることながら、監理ポスト入りする銘柄が大変に多くなっているということを危惧しておりまして、この5年間見ただけでも、今年はまだ6月1日現在でしか分かりませんけれども、監理ポスト入りした銘柄が38銘柄ございまして、そのうち8割近い26銘柄は上場廃止という形になっているわけなんですね。投資家からすると、ある日突然このように上場廃止になっていくという大変に予測し得ない不利益を投資家が被らないようにするためには、どういう基準で監理ポスト入りするのかということが明確になっていなければならないというふうに強く思うわけなんです。
これにつきましては、6月1日に日本テレビと小田急の例を引かれまして、名義株につきましては監理ポスト入りする基準というのを3つほど挙げられておりました。しかしながら、決算の訂正とか、いわゆる従来型の不祥事についてどういう基準で監理ポスト入りするのかということがいま1つ明確ではないというふうに思います。思いますし、傍ら、先ほどの機構さんの4月13日のペーパーにもあるように、カネボウの直近決算ではちゃんと自発的に正常決算化の努力をしているんだから上場廃止しないでくれと、こういうふうに要請をしておりまして、具体的にお聞きしたいことは、カネボウの例でいいますと、機構さんからそういう要請があったと。それに対して、東証としては上場廃止決定に際してどういうふうにして機構からの要請を扱い、どういう機関がどういう権限でどういう議論をしてどういう基準で監理ポスト入りを決めていくのか、あるいは決めてきたのか。カネボウにおいても最終的に上場廃止にしたのかということをやはり明確にすることが投資家の予測可能性を増すんではないかと、このように思っているわけですけれども、その点、いかがでございましょう。

○参考人(鶴島琢夫君) カネボウについて申しますと、昨年の10月でしたか、調査委員会というのができまして、そこで虚偽記載、内部調査の結果、虚偽記載が行われたという事実が公表をされました。
我々の廃止基準では、虚偽記載があった場合に、それが重大であれば、重大な影響があれば廃止をするという上場廃止基準がございます。これに該当するおそれがある、あれだけの虚偽の数字が出たわけですからこの廃止基準に該当するおそれがあるということで監理ポストに割り当てたわけです。その監理ポストに割り当てている間にその重大性を審査を我々はするわけですけれども、これは、調査委員会はああいう形で公表をされましたけれども、実際に本当の数字が固まりませんと我々はその判定ができないということで、カネボウの方に対しては早く公認会計士がちゃんと見た正確な数字を出してください、そして公表してくださいということをずっと要請をしてまいりました。それが先般出てきたということで、正確な数字を基に我々は判定をさせていただいて、そして上場廃止という措置をとったということであります。

○西田まこと君 最後に藤沼会長にお聞きしますけれども、先ほど大塚委員からもお話ありましたが、今金融庁の企業会計審議会ではいわゆる企業統治監査というものをこれから適用していこうということが審議、議論されておると承知しております。この従来の財務諸表のチェックも、外部監査の限界というものが随分この一連の企業不祥事の中で言われてきていることに加えて、さらに、単なる数字ではなくて、いわゆるガバナンスの監査までをしていくんだという方向性で今議論されているわけですけれども、従来の財務諸表の外部監査も大変難しい、限界があるとか言われる一方で、更にもっと大きな役割というものが今非常にこの監査法人に期待をされている時代だと思います。
そういう意味で、どう監査体制を強化していくのか、どう人材を育成していくのかという御決意を最後お聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

○参考人(藤沼亜起君) 藤沼でございます。
財務諸表が正しく作られるかどうか、先ほど言いましたように、まず第1は経営者の責任だと思います。監査人はその財務諸表が正しいかどうかについて監査をして監査意見を表掲すると、こういう立て付けになっていると思います。経営者は今、アメリカで御承知のようにエンロン事件等がありまして、企業改革法、そこではやはり財務諸表の適正性について経営者がやっぱり宣誓を求めるべきだと。その前提として、経営者が内部統制というものを自らチェックして自己評価をする、それを監査人に検証してもらうと、こういう構成になっておりまして、日本でもやっと企業の経営者が、財務諸表が適正かどうか、自分がそれを宣誓しなくちゃいけない。これは当初自主ルールで始めておりますけれども、これがその経営者が適正性があるかどうかということを言うには、経営者自身、自分の会社の内部統制がきちっと機能しているかどうかということを確認しなくてはいけない。
そういう面で、監査人も、財務諸表だけの監査証明ということ以外に、内部統制にも踏み込んで、経営者の内部統制の構築、それに基づく評価、それを監査人が検証するという、こういう内部統制の報告書の監査制度というものはどうしても必要だというふうに私は思っておりまして、そういうことが制度化されれば、会員の教育等を含めてきちっと仕事をしていきたいというふうに思っております。

○西田まこと君 ありがとうございました。