国土交通員会・第7号 2006-03-30

【質疑事項】
1.宅地造成等規制法改正案について
2.危険な大規模谷埋め盛土の半減目標について
3.対策の推進と地域住民等の意見の反映について

○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
ただいまの大臣からも、専門家によれば地震の活性期に今入ってきたという御指摘がございました。今回のこの法律改正によりまして、国土交通省といたしましては、この危険な大規模谷埋め盛土の宅地造成につきまして、先ほどあくまでも概略的な推定であるということで約千か所全国にあると報告されているわけであります。そして、この約千か所につきまして、今後10年で、先ほどの大臣の御指摘ではございませんが、地震が大変に活性期に入ってきているということも踏まえて、今後10年間でこれを半減しようという、そういう目標をお立てになっていらっしゃるわけであります。
まず、局長にお聞きしたいと思います。今後、どういうスケジュールでこの10年間で半減というのを目指していくのでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) このまず目標でございますが、今後10年間で半減させるという目標でございますが、これは先ほど申しました総合的な宅地防災対策に対する検討会の最終報告におきまして、全国一千か所程度の存在すると想定されます危険な大規模盛土造成地について今後10年間でその数を半減させるということを目標とされているわけでございまして、国土交通省といたしましてもそれを目標に対策を実施してまいりたいと考えてございます。
この目標達成に向けまして、もちろん公共団体等と連携を取りながら進めていく必要があるわけでございますが、予算上の問題といたしましても、予算で御審議いただきまして通していただきましたけれども、来年度予算におきまして既存の造成宅地に係る変動予測調査、ハザードマップと地下水排除等の大規模盛土の滑動崩落事業について支援します宅地耐震化推進事業、この創設が盛り込まれたところでございます。
こうした目標を多くの関係者と協議しながら、改正法の適切な運用、この予算補助制度、ハザードマップ作成、適切な情報公開、あるいはこれによります防災意識の向上、各種施策を総合的に実施しまして、目標達成に向け努力をしていきたいという具合に考えてございます。単純に言えば、10年間に500ですから、1年間に50、単純に計算をすれば50程度をなくしていくということになろうかと思います。

○西田まこと君 先ほど予算の話もございましたが、大変な御努力もいただきまして、新規の予算を確保して今回この宅地の地盤防災についての予算が含まれました。
今、単純に計算すれば年間に50か所というお話ございました。今、平成18年度予算につきまして、当初11億円の要求をされたと思いますが、結果として3億円という結果になっていると承知しております。この3億円でどの程度、何か所ぐらい、特に危険度の高いところからおやりになるということになると思います。何か所ぐらいできるんでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) 50か所と、単純に言えば50か所でございますというお話ししましたが、先ほども申し上げましたように、例えば1か所当たり8千万とすれば、それに国費率4分の1とすれば10億円程度になるわけですね。来年度の予算は3億円の予算が付いてございます。これは、制度改正の初年度で来年度あるということ、それから改正法の施行が半年間であるということ、そういうこともありまして、パイロット的に調査や事業を実施する地方公共団体をまずは支援したいと考えてございます。地方公共団体にヒアリングをした結果では、まず平成18年度は独自の予算で予備的調査等を実施し、本格的な調査、事業等は平成19年度に国庫補助を受けて実施するとしている団体もございます。
今後、平成19年度に必要になる予算額等は、これはまた来年度の、平成19年度予算概算要求時までに検討してまいりたいと考えてございますが、この3億円の中身でございますが、1億円がハザードマップ作りになってございまして、2億円が宅地の実際の工事に考えてございます。
ハザードマップにつきましては、国費が1億円の、補助率3分の1でございますんで3億円、ハザードマップとして事業費は3億円、それから工事の関係は、国費が2億円でございまして、4分の1で、これは4倍しますと8億円程度ということでございまして、具体的に何か所とは決めてございませんけれども、先ほど、ハザードマップであれば、横浜、神戸であれば2千百万とか申し上げましたけれども、10か所程度ぐらいの予算は確保できているのかなと、それから工事費も、先ほど言いましたように、1宅地8千万ということであれば10か所程度の予算を確保されているのかなというのが概略感じているところでございます。

○西田まこと君 今年はパイロット的にやっていくということで大体10か所程度というようなお話もございました。来年から本格的におやりになっていくと。
先ほどちょっと聞き忘れましたが、今後10年間で半減させるということでございますが、そうすると残りは、やはりこの地震の活性期に入っているということを考えると、もっとスピードアップしていくことになるんでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) できればそういう具合にしていきたいと考えてございますが、当面はこの10年間の目標達成に向けて努力をしていきたいというように考えております。

○西田まこと君 この規制する場合、あるいは監督を行うのは都道府県が行っていくということであります。指定区域につきましてハザードマップを作成して、その後、都道府県がこうした造成宅地防災区域を指定していくという、そういう仕組みになっております。
そういう意味では、今の大きな目標を達成していくためにも、指定する主体である都道府県に対しまして国としての取組の方向性あるいは指針というものをしっかりと出していく、それによって地方公共団体の取組を促していくという、こういうことも必要になっていくと思われますが、それ、具体的にどのようなことをお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) 御指摘のとおりでございます。公共団体、都道府県等が進めていく必要があるわけでございますんで、都道府県等の担当の皆さん方がまず十分この必要性を認識してもらわなくちゃいけません。この特に谷埋め盛土の造成地の危険性というのについては、これまでもそうでございますが、地方公共団体の防災担当者でも十分認識していない場合が多いんじゃないかという具合に我々考えています。そういう意味では、国からの十分な情報提供をしていくということが必要であろうと考えてございます。
国土交通省は、これまでも地方公共団体と制度改正の方向性について意見交換する機会を設けてまいりましたし、本省の担当官が各公共団体へ直接出向きまして、各地域の状況を踏まえまして今後の取組方針等について意見交換も重ねてまいってきてございます。
今後、ハザードマップの作成だとか造成宅地の防災区域指定等に係る適切なガイドラインというのも作っていきたいと考えてございます。また、それを公共団体に通知していく。そして、本省、各地方整備局、連携しまして、地方公共団体が必要な指定や調査等を実施できるよう働き掛けを行ってまいりたいと考えてございます。特に、地域ブロック単位で地方公共団体に集まっていただきまして情報交換をいたしまして、ああうちではこうしている、おたくはそこまで行っているんですかというようなことをやることによりまして、お互いに相互に啓発し合う場というものを設けるというのも1つの効果的な場のというか、やり方ではないかというようなことも考えております。

○西田まこと君 この現行法において、宅地造成工事規制区域内の宅地所有者に対します改善勧告というのは大体年間に200件から400件ございます。現行法でもそうした規制がこの規制権者である都道府県からなされているわけであります。
これ今、大体この改善勧告、年間200から400件ぐらいなされていますが、実際これ改善、どの程度されているんでしょうか。どういう現実を掌握されているんでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) 現行法に基づきます勧告関係でございますが、都道府県知事等が災害の防止のため必要があると認める場合に宅地所有者等に対して行うこととされているものでございます。これは、本事務は地方公共団体によります自治事務として行われておりますが、国といたしましても、毎年梅雨どき前等にちゃんと点検をしてくださいというような通知、技術的助言といってございますが、これを毎年出してございまして、勧告に係る措置が的確にとられているか否かについての確認を行ってくださいというようなことを指導いたしてございます。
勧告を出した後の宅地における対応は各地方公共団体ごとに異なりますが、例えば兵庫県だとか大阪府なんかは、毎年5月の宅地防災月間中に宅地防災パトロールというものを実施しておりまして、その中で、兵庫県の場合、前年度に勧告を行った宅地についても点検を行っていると聞いてございます。これと同様の取組が多くの地方公共団体において行われているところでございまして、本法に基づく勧告の実効性を確保するための対策が適切に取られているものと考えてございますが、実際どの程度が改善されているかということでございますが、200件近く勧告されてございます。擁壁の軽微なクラック等で勧告を行う場合も多いわけでございまして、巡視点検の結果、状況が悪化していない場合、あるいは被害の程度が軽微であると思われる場合は改善命令まではいっていないと、勧告を繰り返し出すという運用をしている公共団体も多いようでございます。
各地方公共団体とも、勧告を発した宅地については巡視点検を定期的に行っているところであり、危険が切迫していると判断される場合には、年間数件でございますが、改善命令に至っているという状況でございます。

○西田まこと君 こうした改善勧告を受けた地域の宅地防災工事融資資金というのが住宅金融公庫であると思います。これを使って改善をしていくというスキームになっていると思います。しかしながら、この住宅金融公庫の宅地防災工事資金の融資実績を見ますと、毎年大変に融資実績が少ない。大体年間で2件とか4件ぐらいしかない。これが今現行法におきます実績として残っているわけでございまして、新たに法改正をして、様々都道府県に対するフォローアップをしていくというお話もございました。
しかしながら、それを受けてこの公庫の、今度は機構の宅地防災工事融資資金を受ける場合に、余りにも実績が少ないという過去の経緯がございまして、これはやはりこの融資条件の見直しとかもっと利用しやすくするとかいうような改善が必要なんではないでしょうか。

○政府参考人(柴田高博君) 現行、宅地防災の融資制度がございます。実績がそれほど多くないということは事実でございますが、ただ、今回は法律に基づきまして区域を決め、そこをかなり重点的に耐震化工事を進めていこうとするわけでございます。
これが進んでいけば、2分の1は公費で対応できるわけでございますが、残りの2分の1は自己負担となるわけでございまして、そうした場合にかなりこの住宅金融公庫の宅地防災融資というのが私は有効に使われていくんではないかという具合に考えておりますし、期待をいたしているところでございます。

○西田まこと君 今おっしゃったように、自助努力がこれ求められて、指定した区域に住んでいる人は自助努力が求められていくわけですが、こうした改正案の趣旨を個々人に、宅地の所有者にどう伝えていくのか、具体的にお聞かせ願いたいと思います。

○政府参考人(柴田高博君) まず、造成宅地の防災区域の指定に先立ちまして、まずハザードマップを作りまして公表しまして、この地域、この宅地は危ないんですよということの必要な情報開示をまず行っていくこととしております。その際、地震時に崩落等の危険がある造成宅地の盛土造成地の判定基準については、なるべく分かりやすいガイドラインを作成いたしまして、技術的助言としまして地方公共団体に通知するほか、広く公表してまいりたいという具合に考えております。
そのような形で宅地の危険性に関する正確な情報を幅広く住民と共有し、その内容を各地域ごとに地方公共団体や専門家等から丁重に説明、住民と対話を重ねていくいわゆるリスクコミュニケーションを進めていくこと。これで、具体的にこの宅地が危険だと指摘された場合でも、住民がただいたずらに不安を抱くだけではなくて、必要な対策の実施に向けてやらなくちゃいかぬねという取組が進められますように、こういう環境整備を図っていくことが必要であろうという具合に考えておりまして、各公共団体にはよく指導していきたいという具合に考えております。

○西田まこと君 そうした危険な盛土のハザードマップを作成してそれを公開していくということですが、この地域がその指定を受けているかどうかということに加えて、その指定を受けた地域がどの程度今耐震補強がなされているのかという進捗度合いも含めてきちっと公開していくということが必要だと思うんですね。
そこに新しく土地を購入しようと思う人もいるわけでありまして、いつまでにやるのかという、今、国土交通省で例えば橋梁の耐震補強についてはそういうプロセスも公開していると思いますけれども、そうしたことも含めて、指定されているか指定されていないかということだけではなくて、それに対してどう対処を取っているのかという、また今どこの地点まで来ているのかということを含めて公開すべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。

○政府参考人(柴田高博君) 大規模の盛土造成地につきましては、地震時の危険性というのが必ずしも十分認識されてないという状況にございます。御指摘のとおり、宅地所有者だけではなく、新たに宅地を購入される方々に対しましても幅広く必要な情報開示を行うことは重要であるという具合に考えております。
今後、宅地防災に関します各種の情報を、地域広報への掲載あるいはホームページの活用、これらによりまして、不動産関係の事業者も含め、幅広く国民に提供し、宅地防災知識の普及に努めていく必要があろうと思っております。また、こういたしましたリスク情報の公表やそれに伴う混乱等を回避するためには、この造成宅地の変動予測の前提、根拠、こういうものを明らかにするということ、さらには、宅地所有者等による危険への対処方法や行政における対応策を併せて周知することが望ましいと考えております。
したがって、今後作成いたします宅地ハザードマップに係るガイドラインの中で、そうした留意事項を明記していきたいという具合に考えております。

○西田まこと君 この造成宅地防災区域の指定につきましては、今言われたようなこのリスク情報をどう開示していくのかという中で、例えば宅建法ですね、施行令を改正することによって重要事項説明の対象に加えるべきではないか、その宅地が指定されているかされていないかということも含めて、ということも検討されてはいかがかと思いますが、いかがでございましょうか。

○政府参考人(柴田高博君) 宅地建物取引業でございますが、不動産の購入者が知らないで取引することによりまして後で重大な不利益をもたらすおそれのある一定の事項について、必ず購入者に説明すべき重要事項として列挙いたしてございます。
今回の法改正によって新たに設けられますこの防災区域につきましては、不動産の購入者にとって重要な関心事項になり、その区域内であるかどうかは客観的に示すこと、こういうことも可能ではあろうかと思います。しかしながら、一方で、宅地の耐震性そのものの評価ということについてはなかなか難しい部分もあるわけでございまして、何をどこまで説明できるか等の観点から更に検討していく必要があるんではないかと思っております。

○西田まこと君 いずれにしても、個人の自助努力が大変に求められるような法改正になっておりますし、まさかそういう指定されると思ってなかった宅地の所有者の人も出てくるわけでございまして、そういう意味ではこの危険度の周知徹底、これは国が枠組みを決めて終わりではもちろんなくて、都道府県に対しましてもきちっと、技術的な助言も含めて、きめ細かくやっていくということを求めて、終わりたいと思います。ありがとうございました。