国土交通委員会・24号 2006-06-13
【質疑事項】
○政府参考人の出席要求に関する件
○建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○国土の整備、交通政策の推進等に関する調査
(航空機の運航における安全確保に関する件)
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
まず初めに西松参考人にお聞きしたいと思いますが、事業改善命令後のいろんな対応をなさっているというお話がございました。一連のいろんな整備不良を始めとした様々な問題につきまして、よく言われること、今質問でも出たと思います。私も昨日、たまたまある銀行家の人と懇談をしておりまして、やっぱり組織の持っている問題点というのが大きいんではないかというところに落ち着くわけであります。そこでよく言われるのは、いわゆる派閥の問題が大きいんじゃないか、結局、団結をするといっても、なかなかそれができていないんじゃないかという指摘をよくされます。
この派閥ということにつきましては、西松参考人、報道では、もうそんなに派閥をつくっているいとまはないと、時間がたてば解決するだろうと、そんな暇がないんだから、時間がたてばそんな派閥なんてできなくなる、こういうふうにコメントをされておられました。一方、御社の社外取締役である諸井虔さん。諸井さんは、今年二月の社長退陣要求に対するいわゆる内紛劇について、企業に悪い遺伝子が組み込まれていると思わせるほどだと、遺伝子治療が必要だと、こういうふうに社外取締役としての発言をされておられました。つまり、遺伝子としてそういう悪い遺伝子が組織の中にもう既に組み込まれちゃっているんだと、で、また起きた、こういうような多分趣旨だと思うんですね。
そういう社外取締役の御発言と西松参考人が言われているところの時間がたてば解決するというところとは必ずしも同じじゃないというふうに思っておりまして、この派閥ということについて、また団結するということを言われておられましたので、御所見をお聞きしたいと思います。
○参考人(西松遙君) 私が派閥は解消すると申し上げたのは、先ほども幾つか、何人かの先生から御指摘があったとおり、今断崖絶壁にあるわけでありまして、これ以上後ろはないという認識にあるわけで、これは我々アドミニストレーションにいる人間はもうみんなそういう意識あると思います。そういうことで、派閥争いなんかやっていたって、会社がなくなっちゃおしまいという、そういう意味をもって、時間がたてば解決すると言ったのは、その場で申し上げたのは、そういう意味での、何といいますか、そういうことをやっている時期じゃないという趣旨で私は申し上げているつもりでございます。
それから、諸井先生のおっしゃった遺伝子が組み込まれているということであるとすると、これは解決の糸口がないという、逆に言うとそういうことになってしまうんで、どういう真意で諸井先生がおっしゃったのかちょっと私も直接確認したわけではありませんけれども、遺伝子が組み込まれているとすると対策がないということになっちゃいますので。
私は必ずしもそんなふうには実は思っていないわけでありまして、それは個々人がその気になって危機意識を持って対応するというところがこの派閥解消の最も重要なポイントだと、こんなふうに私は認識をしておりまして、そういった方向に向け、一致団結して会社運営ができるようにやっていきたいと、こんなふうに私自身は思っておるところでございます。
○西田実仁君 この諸井社外取締役が言われているのは、正にその遺伝子の治療が必要だということを言っているわけでありまして、だからもう対策のしようがないということではないわけで、しかも御社の社外取締役ですから、一般的な評論家が言っているわけじゃございませんで、ですから私もあえて引用しているわけでございます。
そこで、結局、社内の派閥の問題もそうですけれども、労組の問題もよく指摘されておりまして、労使の会話、現場との対話ということも随分指摘されておられました。
具体的に、団結という言葉で言うのは簡単で、団結しようと言うのはだれでも言えますけれども、実際に団結しようと思うとこれはどんな組織でも実は大変なことであります。それはもう私どももいろんな場面で、組織において団結するということはいかに言葉で言うほど易しくないかということを感じているわけでありまして、何をもって、また労使の会話も含めてでございますけれども、団結をしていくのか、そういうためにどういう努力を特にされておられるのか、これについてまたコメントをいただきたいと思います。
○参考人(岸田清君) 労使の関係、先生のおっしゃるとおり弊社におきましてはかなり多く、九つという形で組合を抱えております。実際に懸案事項もございます。
今日の場は安全ということで、安全に関しましても、安全のキーは、組織は幾らでも施策が打てますが、基本的にそれを実施するのは現場でありまして、現場が実行しない限り航空会社の安全もないということを踏まえれば、当然のことながら現場の力をどれだけ発揮さしてやるかということは、ある意味労使関係にもつながると思っております。そういう意味では、弊社の場合、確かに数の多さと、それから今までの歴史もございます。現場と経営ということを、そういう観点からも、ある意味それはアドバイザリーグループの提言にございますとおり、労使の協調、協調路線というのは必要であろうと思っています。
先ほど私が述べましたとおり、答えはかなり現場のところにあると思いますので、その現場の声を聞くという意味合いで組合の声も一つだと思っております。そういう発言もしておりますし、それに対しまして、やはり労使双方が歩み寄る必要はこの問題の糸口であろうと思っております。
ただ、きっかけといたしますと、当然のことながら会社側も幾つかの施策、話し方をもってそれは解決するという手段を取るものだと理解しておりますし、今後もそういうやり方で、現場力を引き出すという意味合いで労使関係も対応していきたいとは思っております。
○西田実仁君 やはり、私もそんなに偉そうなこと言えませんけど、安全文化をいかに組織の中に確立していくのかということを考えたときには、正にそうした現場の人たちが一番ノウハウとかいろんな問題点も押さえていらっしゃるわけですから、そこの意見が自由に言えて、しかもそれがしっかりと組織の中で、大きな組織ですけども、くみ上げられていくということが、まあ難しい困難な事業だということは分かりますけれども、そこがなければやはり安全文化は確立できないんだろうというふうに思います。
また具体的にお聞きしたいんですが、整備の問題で、特に海外への委託ということが問題にされることがございまして、特にTAECO社とかSASCO社といった会社への海外委託をされていますね。これについてはいろんな問題も既に指摘されております。その不完全検査についてどう対処するのかということで、具体的に専門スタッフを常駐させるというような施策ももうされていると思いますが、もっと増やしていくというお考えもあるやに聞いておりますが、その点、いかがでございましょう。
○参考人(岸田清君) 整備の問題に関しましては当然、まず基本的な考え方を言いますと、航空会社の安全を守るための二つの大きな柱は、当然運航と整備と考えております。特に、機材の整備に関する問題点は、当然整備による質という答えだと思っております。
また、先生のおっしゃる意味合いで、海外委託の問題でございますが、今の私の観点から、基本的に航空会社としては整備から出てくる機材の品質だと思っております。その品質が完全に航空会社の品質に担保されるものであるならば、それは、いわゆるそれは海外であろうと自社整備であろうと、それは航空会社の選択のうちの柔軟性の問題だろうと思っています。
また、弊社におけます海外委託に関しましては、先生の御指摘のとおり、現地、TAECOとSASCOと、こういう形でシンガポールと中国のアモイに置いておりますが、実際に弊社におけます整備力を持ってその質を一応は担保する形で見ております。また、両社におきましても、先生のおっしゃるとおり、弊社から技術員を派遣しておりますし、また領収検査ということでは、現在弊社が持っております技術力で最終的な領収を確認しているシステムになっております。そういう意味では、海外委託という問題を離れまして整備の質自体は担保されていると私は思っております。
○西田実仁君 今お聞きしたのは、既に出されているわけですけれども、これをもっと完璧なものに、問題が起きているわけですから、その常駐スタッフをもっと増やしていくお考えなのかどうかということをお聞きしたんです。
○参考人(岸田清君) 失礼いたしました。
そういう意味では、現状で直ちにスタッフを増やすという案は現状では持っておりません。ただ、先ほど私が述べました趣旨で、もし不足分、過不足があるということであれば、それは人的配置も考えざるを得ない時期があるかとは考えております。
○西田実仁君 スカイ社の西久保参考人にお聞きしたいと思います。
この四月二十四日に出されました業務改善計画書におきまして、一番最初の方に安全推進委員会というのを設けられて、様々な現場の業務経験者の方も交えて直接いろんな意見を言う場をつくっていると。実際に、西久保参考人もそこに中心となって参画されているんだと思うんですね。いろんなことをお聞きになっていらっしゃると思います。そういう現場で業務に携わっている方から安全ということについていろんな御意見をお聞きしながら、ああ、こんなこともあったのかと、ああ、こんな、思いもしなかったけれどもこういう問題もあったのかというようなことで、特に所感がございましたらお述べいただきたいと思います。
○参考人(西久保愼一君) 前回の安全推進委員会では、スタッフを増やして二回目ですが、そのときに当社で起こしました運航のトラブルについての議論を行いました。その際に、従来は各部門の責任者のみが出ておりましたが、今回は実際に現場に働く人間が出たために、その改善の手法についてやはり現場の者にしか分からない、そういった意見が出ております。
お恥ずかしい話ではございますが、地上係員が機内に体の不自由な方を案内して、その対応をしている間にドアクローズがなされた、そういったケースがございました。その際に、現場の方からどういう事情で見えにくかったのかとか、あるいはその確認の行う際のそれぞれのセクションの連絡の悪さが臨場感を持って我々は話を伺うことができました。これは、御指摘を受けて改善をした中でかなり我々にとってもその有効性を感じた部分でございます。
○西田実仁君 この委員会で三月には学識経験者の方や専門家の方をお招きして参考人への御質問をさせていただきましたが、その際にも先生から出たのは、墓標安全ではなくて予防安全が大事であるということで、今様々指摘されている点は、多くは金属疲労につながっていくような整備不良というようなお話が中心だったと思います。
最後にお聞きしたいのは、最近、日本ではまだ起きておりませんけれども、いわゆる飛行機の中に組み込まれている組み込みソフトのバグによる故障ということについて、それに対してどういう対応をされているのかということをお聞きしたいと思います。
昨年の八月でございましたけれども、マレーシア航空ですが、ボーイング社の機体であります、インド洋の上空で自動操縦による飛行中に急上昇したと。パイロットが自動パイロットを解除して、そうしたら加速しながら急降下したということで事なきを得たわけですけれども、実は、これは数週間前にバージョンアップしたソフトウエアが誤動作を惹起したと。しかも、これは就航後もう十年たっている機体なんですね。でも、そこでバグが発生をしたと。また、昨年二月には、同じようなバグによる燃料供給の突然停止ということがヴァージンアトランティック航空でも起きておりまして、こちらはエアバスでございます。コンピューターのこうした誤動作とか組み込みソフトのバグによって故障が起きてくるという事例が、金属疲労とは違う種類の問題としてこれからもっと増えていくだろうと思うんですね。
言うまでもなく、航空機の歴史は自動化の歴史でありますし、様々なところで自動化がなされておりますので、一機の中にソフトウエアのステップというんでしょうか、百万ステップぐらいだった時代からもう今五百万とか非常に増えている。そういうところでバグが起きた場合には後で大変なことになってしまうというふうに思うわけであります。
こうした潜在的なバグも増えているという状況の中で、こうした事態に対するトレーニングやバックアップシステムの搭載等についてどういう対策を打っておられるのか、大前参考人でしょうか、お聞きしたいと思います。
○参考人(大前傑君) お答えします。
今先生から御指摘ありました件ですけれども、当社機ではトリプルセブンという機体を持っていまして、正に同じような機体で同じシステムを持っております。
航空機のシステムに関してはその性能を上げるためにバージョンアップというのはよくやりますので、そういう意味でソフトを入れ替えるという行為が時々ございます。これは性能を上げるための目的でございます。ただ、残念ながら、どうしてもその中にバグが入ってしまうとかいろいろな問題がありまして、本当は起きてはいけないような不具合が起きることもございます。
ポイントは、それがワールドワイドに、また全フリートに広がるということは極めて怖いということでございまして、一番我々がポイントなのは、最初に起きたときにその原因をしっかりまずつかまえて、何が悪くてどうしていったら直るかということをしっかり把握して原因対策を取るということですね。同時に、同じ機体を運航している会社にその情報を流していただいて未然にその現象が発生するのを防ぐという取組がございます。これは、既にこの件では航空局さんからはTCDをいただいていますし、それからFAAからADという形でアラートの情報をいただいて、改善なり点検の指示をいただいています。
こういう形で、この不具合が一点で収まってしまうような対策をしっかり取ろうというのが航空界の整備でございまして、これを徹底してやって大きな事例に至らないように頑張ってまいりたいと考えております。
○西田実仁君 同じ質問でございますけれども、JALの岸田参考人でしょうか、お聞きします。
○参考人(岸田清君) 基本的には同じ考え方でございますが、航空の安全、安全というのは基本的には危機管理でございまして、どんな危機が潜在的にあるのか、それが将来致命的な形で事故とかそういう形にならないように食い止めるというのが安全にかかわる者の仕事だと思っておりまして、その意味では、今、大前さんおっしゃったような形での情報共有が一番重要だろうと考えています。
その上で、危機管理の中で一番厄介なのはやはりヒューマンファクターと、それから、今先生おっしゃったような形でいうと想定できない形のトラブル、すなわち、これだけIT化してきますと、ソフトウエアのバージョンアップ等に伴いますバグ等は地上で再現がなかなか困難になっております。ですから、実際の運航に供した場合にどんなトラブルが出るかはかなり不明なところがございまして、かといって、それは決して大きなトラブルにつなげてはいけないわけで、そのためのバックアップシステムといいますか、ある意味で、ファイアウオールと我々呼んでいますが、多重の防火壁を設けてそれが致命的な事故にならないように、すなわちハードでできるものはハードで対処する。また、最終的には航空機、マン、マシンの関係ということは、要は人間と機械との兼ね合いでございます。人間のヒューマンファクターに関しては、そのエラー、それが起きたときにはハードで、またシステムでそれを防止するシステムになっております。
逆に、今先生がおっしゃったような、私が申し上げたようなトラブル、なかなか情報が少ないようなトラブルに関しましては、最後のとりでとなるのが人間の力だと思っております。そういう意味で、パイロット等のいわゆる乗組員ですよね、航空機乗組員に対する教育等は欠かせないわけでして、双方に抱えながら、運航の安全に関しては防火壁をつくっているものだと、そういうふうに考えております。
○西田実仁君 終わります。