財政金融委員会・5号 2007-03-20
【質疑事項】
1.格付け機関の行動規範について
2.消費者金融大手の収益悪化見通しへの評価
○委員長(家西悟君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
委嘱審査並びに平成十九年度における財政運営のための公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として財務省主税局長石井道遠君外十四名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
以上で質問を終わります。
○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
今日は委嘱審査ということで、私の方からは、特に金融面でございますけれども、クレジット市場におけます基本的な情報インフラとされる格付機関の行動規範につきまして今日はまずお聞きしたいと思います。
この格付機関というのは、言うまでもなく本来的には投資家のために存在をし、投資家あるいは市場に代わって債権などの返済能力を評価する機関であるということでございまして、最近は格付の対象は、中央政府もそうですけれども、政府系金融機関とかあるいは地方公共団体とか、事業会社はもちろんですけれども、非常に多岐にわたってきているというふうに思います。
しかしながら、社債の発行自体が全般的に少なくなっていく中でいろいろな格付に、いわゆるこの機関、なぜ機関と言うのか、会社だと思いますけれども、あえて機関と訳しているわけでありますけれども、その格付機関が乗り出してきていると。中には、保険会社のように、会社の財務状態の判断指標がいいから販売している保険商品もお得というふうに宣伝する材料になっているケースもございまして、ちょっと本来の格付の意味合いとやや違うのかなと思うような節もあったり、あるいは、格付機関が企業に対して半ば押売販売かのように思わせるような、疑わせるような事例も漏れ聞こえてくるわけでございまして、あるいはまた、企業なり金融機関がどの格付機関から格付を取るかということについて、旧来の銀行系列とか様々な社会的な友好度などによってある種の、言葉は適切ではないかもしれませんが、談合のようなそういう体質もあるやにも聞くことがございます。
こうした問題点が潜在的にせよあるんではないかというふうに私は思っているわけでございますけれども、金融庁といたしましてあるいは大臣といたしまして、この格付機関という、今の日本における格付機関のありよう、これについてはどんな問題意識あるいは現状認識をなさっておられるのかをまずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(三國谷勝範君) お答えいたします。
御指摘のとおり、格付が適正に行われることは重要な市場のインフラであると承知しております。したがいまして、格付機関におきましては、いわゆるチャイニーズ・ウオールと申しますか、利益相反を防止する措置、こういったことが大変重要であろうかと考えております。特に、例えばコンサルティング業務など格付業務と利益相反の関係になり得る業務との間で情報等の適切な分離が行われることが重要であると考えております。
こういった認識の下におきまして、証券監督者の国際組織でありますIOSCOがございますけれども、ここでは、平成十六年に信用格付機関の基本行動規範というものを公表してございまして、この中で、信用格付機関の独立性と利益相反の回避などにつきまして具体的な指針を定め、格付機関に対しまして、この指針に沿って自らの行動規範を策定し、公表することを求めているところでございます。
これを受けまして、我が国の格付機関であります格付投資情報センターあるいは日本格付研究所、それから大規模な格付機関でありますムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズあるいはフィッチと、こういった機関はそれぞれ自らの行動規範を策定、公表しているところでございます。
○西田まこと君 今、私が最初に申し上げました様々な、漏れ聞こえてくる様々な格付機関をめぐる問題点ですね、仮にこれがあるというふうに金融庁として判断なさった場合に、その予防あるいはその是正策が必要になろうかと思いますけれども、その場合にはどのようなことをなさるんでしょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) まず、いずれにいたしましても、格付機関が自らそういった行動規範を遵守していくことが大事であろうかと思っております。
現在、IOSCOにおいて格付機関によります行動規範の遵守状況、こういったことについてのモニタリングが行われておりますが、先般IOSCOが公表した資料によりますと、私がただいま、先ほど申し上げましたような機関、こういったところはこのIOSCOの行動規範におおむね沿った形でこの行動規範を策定しているという具合に承知しております。
○西田まこと君 私が申し上げているのは、行動規範にどう書いてあるかということではなくて、現実がどういうことが起きているのかということで、まあ仮に問題点が起きた場合に、この第三者格付機関の自主性あるいは公平性ということと行政指導的な通達との関係をどのように考えておられるのかということをお聞きしているわけでありますが、この点いかがでございましょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) 現在、私どもで、企業内容等の開示に関する内閣府令におきまして指定格付制度というのを取っておるところでございますが、これは指定格付機関による格付を一定の目的のために金融行政上利用するものでございまして、金融庁が指定格付機関を規制、監督する制度ということではございません。
いずれにいたしましても、格付機関は、金融商品取引法はこれからでございますが、あるいは証券取引法、こういった法律にのっとりまして適正な活動をしていくことが重要かと考えておりまして、私どもといたしましては、そういった中で格付機関の行動といったものを十分注視しながら対応してまいりたいと考えております。
○西田まこと君 今おっしゃったいわゆる指定格付機関というのは、五つ指定をなさっておりますね。今おっしゃったように、指定の意味ですけれども、これはどういう意味なんでしょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) この指定でございますけれども、金融庁長官がその格付実績、人的構成、組織、格付の方法及び資本構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して有効期間を定めて指定したものをいうということになっているわけでございます。
これに基づきまして、例えば銀行の自己資本比率規制、あるいは銀行等保有株式取得機構によります特別株式買取りの対象株式の要件、こういったものにつきまして、この発行登録制度の利用適格要件等におきまして利用をしているものございます。
○西田まこと君 この指定というのは、決して監督をするとかいう意味合いではない、あるいはその格付機関がどういう機関かということを評価するものでもないということだと思いますが、であるならばなぜ指定するのかというふうに逆に思っておりまして、市場で市場の評価を待つ、あるいは市場での競争原理に任せるということであるならば、あえて指定をする意味がよく分からない。指定するんだけれども監督はしないあるいは評価もしないというところでちょっと意味合いが分からないんですが、もう少し教えていただけますか。
○政府参考人(三國谷勝範君) まず一点目は、先ほど申し上げましたように、銀行の自己資本比率規制あるいは株式買取りの対象株式、こういったことによりまして一定の例えば要件の合った対象株式、格付をもらったものを対象株式にするといったことがあるわけでございますが、その際に、金融行政上、こういった指定された格付機関、こういったものの格付というものを利用しながら行政上行うというものでございます。
したがいまして、私どもは、市場にいろいろある情報の中で、こういったものを指定することによってそれを利用している一方で、一方、指導監督につきましては、今申し上げましたように、これを直接監督すると、こういった性格のものとして現在位置付けているものではございません。
○西田まこと君 しかしながら、仮の話で恐縮ですけれども、何か問題点等が起きた場合には何らかの是正策を、是正措置をとるということなんでしょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) 格付機関は、基本的に市場の評価によりましてその利用あるいは選別がなされていくものであると承知しております。したがいまして、基本的にはそういった市場の評価の中でこういった格付機関が適正な業務活動を行っていく、これが基本になるものと考えております。
○西田まこと君 表面的にまだ問題が露出しているわけじゃございませんけれども、先ほどおっしゃったいわゆるチャイニーズ・ウオールですね、この八〇年代後半の格付機関設立に当たりましては、格付対象に関する情報を格付機関外部に漏らさないという意味でのチャイニーズ・ウオール原則というのの遵守が言明をされてきたわけですね。
しかしながら、指定されている格付機関の中には新聞社系の格付機関もございますが、ここにおきましてはその新聞社の記者の方とかが出向されている事実もあるんじゃないかというふうに思います。また、人事交流も格付機関と新聞各社の間で当然ある。実際、今見てみますと、会長とか副社長さんも新聞社から来ているわけでございます。
こうしたチャイニーズ・ウオールということと、今申し上げたような報道機関と格付機関との人事交流ということ、この点はどんなお考えでしょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) この格付機関の組織構成とかそういったことについては直ちに、いろいろな行政上、それが容喙するものではございませんけれども、先ほど申し上げましたようにこの格付機関、こういったものの業務の適正性を確保するということは大変大事なことでございます。
したがいまして、IOSCOにおきましてもこういった問題意識の下に行動規範ということを公表いたしまして、それに即しまして自ら方針等を公表してもらい、そしてそれにつきましてはIOSCOにおきましてもそういったモニタリング等を行っているところでございます。
いずれにいたしましても、市場の信用、市場の選択あるいは市場における競争、こういったことの中におきましてこの格付制度が本当に有効あるいは適正なものとして定着していくということが必要であろうかと考えております。
○西田まこと君 この格付機関の重要性というのはこれからどんどん増していくというふうに思いますので、今後この格付機関がきちっとクレジット市場の中で適切に機能していくということが大事だと思っておりまして、今のちょっと議論をお聞きいただいて、大臣の方から一言、この格付機関、日本における格付機関の位置付けと今後のありようということについて御所見をいただければと思います。
○国務大臣(山本有二君) これまでの議論で明らかになりましたように、市場の透明性や健全性を確保する上におきましては格付機関における健全性が何より大事であろうという御指摘、そのとおりでございます。
今後、そういう観点から、この市場の一つの大きな役割を担う格付機関に対して金融庁も注視していきたいというように考えておるところでございます。
○西田まこと君 もう一つの話題ですけれども、消費者金融につきましてでございますが、この消費者金融についてはさきの国会でも法律が通りまして改正がなされるということになったわけでございますが、その後の様々な影響、またフォローもきちっと議決をした国会としてもしていかなきゃならないというふうに思うわけであります。
まず、現状でございますけれども、消費者金融の今度金利規制、変更がございまして、いわゆる大手と言われるところの収益状況ですね、明らかに収益が悪化になっているというふうに報道等もなされておりますけれども、この現状をまずどう評価なさっているのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(佐藤隆文君) 御指摘いただきましたとおり、大手貸金業者、相次いで本年三月期の業績予想を下方修正していると、全体として大幅な下方修正になっているということでございます。例えば計数的には、大手五社で申しますと、合計ベースで経常利益二千五百二十四億円に対しまして特別損失が一兆八百七十六億円ということで、当期純利益の見通しとしては九千三百九十億円の赤字と、こんな数字になっております。
このような貸金業者の業績修正は、御案内のとおり足元における過払い利息の返還請求、これの急増、そしてまたこのことに対応するための引当金の計上と、こういう要因が大きいというふうに存じております。
○西田まこと君 そういう中で、大手の何社かがまとめている数字を見ますと、いわゆる成約率が、申込みに行って断られるあるいは成約できるという、成約できる場合の成約率、これがかなり直近でいきますと下がってきているというふうに報道なされておりますけれども、まずこの現状、どう見ておられますでしょうか。
○政府参考人(佐藤隆文君) 定量的に統計的なデータを持ち合わせておりませんけれども、業者から聞こえてくる話といたしましては成約率が一般的に下がっていると。言わば審査、貸出しの審査が慎重になっているということは言えようかと思います。
○西田まこと君 報道ベースですけれども、大手四社の一月の新規融資申込み者数からしますと成約率は前年同期で二割ぐらい下がって、成約率として四四%ぐらいになっているということですね。実数でいきますと、七万六千人がいわゆる申込みをしたけれども融資がお断りというふうにされたという現状があるわけでございます。
こうした前回の改正はもう大変に重要な意義のあるものだったわけですけれども、その影響を、特に新たにどうしても必要な人、融資を受けなければならないと思って申込みに行ったら断られてしまって、じゃその後どうするのかという問題も当然起きてくるわけでございまして、ここで対策本部長でもございます大臣にお聞きしたいと思いますけれども、こうした融資を断られる方がこれから普通に考えれば増えてくるんだろうというふうに思いますので、こうした方への対応をどうしていくのかということはもうかなりスピードアップして考えていかないと、変な方にかえって行ってしまうんじゃないかということを大変心配するわけでございまして、この点につきまして今現状でどのような対策を考えておられるのか、そのスケジュールももし、可能な範囲でお答えいただければと思います。
○国務大臣(山本有二君) 先般の貸金業法の改正で上限金利が引き下げられました。そして、新たな過剰貸付規制が導入されたことでもございまして、御指摘のとおり、貸金業者から借入れ可能だったリスクの高い借り手の一部が新たな借入れを拒否されるという事態があることは否定できないところでございます。
このため、借り手への悪影響を緩和する観点から、カウンセリング体制の更なる充実やセーフティーネット貸付けの拡充、そういったものが重要だと考えております。このことにつきまして、昨年末に関係大臣をメンバーとして設置されました多重債務者対策本部の下で、有識者会議によりまして具体的な検討が行われているところでございます。
〔委員長退席、理事峰崎直樹君着席〕
有識者会議での議論を踏まえまして、具体的な対策を盛り込んだ多重債務者問題改善プログラム、これを今春をめどに策定することとなっておりまして、関係省庁とも連携して早急に検討を進めてまいりたいと考えるところでございます。
○西田まこと君 終わります。