財政金融委員会・19号 2007-06-19
【質疑事項】
議題 電子登録債権法案
1.法案が中小企業の資金繰りの改善に果たす役割について(大臣)
・中小企業にとっての使い勝手
A初期導入コストへの支援について
B電子債権記録機関へのアクセス
C利用手数料(水準と課金方法)
・中小企業が電子記録債権での支払いを希望した際、支払い企業から確実に振り出してもらえるか、(債務者である親事業者が意図して遅らせることを回避させる措置)
・電子記録債権を自由に譲渡できるか。
2.売掛債権担保融資について(中小企業庁)
3.電子手形を実現する際の実務上の課題について(金融庁)
・不渡時のペナルティ
・現行制度からの移行期間における不渡情報の共有
・原簿情報の参照権限
・電子債権記録機関の業務規程について
4.認証セキュリティ対策について
・長期にわたる債権データの改ざん防止について
・情報システム化の詳細をつめる体制について
5.電子債権記録機関について
6.その他
・法案の名称について
・印紙税収への影響について
○委員長(家西悟君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
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○委員長(家西悟君) 電子記録債権法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
今日は電子記録債権法案につきまして、まず初めに、先ほど来からお話ございますけれども、この法案が中小企業の資金繰りの改善に果たす役割というお話が先ほど大臣からございました。そういうことを大変期待しているわけでありますけれども、であればなおさらのこと、中小企業にとって使い勝手の良い仕組みにしていく必要があると思います。そういうことの中小企業にとっての使い勝手の良さということにどう配慮していくのか、仕組み上のことも含めて、まず大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(山本有二君) 電子記録債権の利用や記録機関の設立は正に民間の経済活動の中で自由に判断されるべきことでございますが、特に金融庁として、これら支援策のために予算の措置を講じることは想定はしておりませんが、特に中小企業金融や中小企業の決済コスト、そういった面につきまして、この法案によりまして電子記録債権制度が中小企業支援につながればと期待するところでございます。
○西田まこと君 例えば、いわゆる電子記録原簿は、法案の中では磁気ディスクでなければならない、こう定めがございます。例えば、中小企業がこの原簿にアクセスする場合に、これは必ずインターネットでなければならないのか、それとも、例えばファクスとか電話とかでもアクセスが可能なのかどうか。こういう原簿へのアクセスということも使い勝手ということにも含まれるのではないかと思うわけですけれども、この点はいかがでございましょうか。
○国務大臣(山本有二君) 電子記録債権制度は新たに創設される制度でございますので、中小企業も含めた利用者が安心して使えるものになることが望ましいところでございます。
このため、例えばファクス等での記録機関への請求を行えるようにすること、記録機関の業務を委託し身近な取引銀行等で窓口サービスを受けられるようにすること、こうしたことを通じて記録機関による利用者への配慮が求められるところでございます。こういった点、実現したいというように思っております。
○西田まこと君 初期コストをいかに小さくしていくのかということについてお聞きしたいと思います。
中小企業にとって、この仕組みに参加をしていく際のコストを最小化する。今ございます税制の中では情報基盤強化税制というものが、高度な情報セキュリティーが確保された情報システムに対して適用されているところでございます。今回の電子記録債権につきましても、一定のこうした仕組みに参加する際の投資がこの情報基盤強化税制の対象にもなり得るのではないかと思いますが、財務省、いかがでございましょうか。
○政府参考人(古谷一之君) お答えを申し上げます。
今回の法律によりまして事業者の方で電子記録債権に対応するためにどういう設備投資が必要になるのか、必ずしも現段階では明らかではございません。
御指摘がございましたように、高度なオペレーションシステム、データ管理ベースソフトウエア等につきましては情報基盤強化税制の対象に現在なっております。そのほかにも、中小企業者に対しましては、一定の機械装置あるいはコンピューターソフトウエア等につきまして中小企業投資促進税制といった特別の措置もございます。
こういったものの対象になるのかどうかも含めまして、今後、金融庁あるいは事業者サイドからのお話を聞かせていただきながら、必要に応じ検討させていただければと思っております。
○西田まこと君 是非とも、この仕組みをスムーズに定着させていくためにも様々な検討をお願いしたいと思っております。
利用手数料についてお聞きしたいと思います。
この水準、また課金方法についてはこれから様々なビジネスモデルの中で検討されていくんだろうというふうに思いますけれども、先ほど来からお話があるとおり、印紙税のコストがないというメリットが強調されるのであれば、当然印紙税のコストよりも低くなければ意味がないんだろうと率直に思います。例えば、契約金額で一千万円超ですと、印紙税、いろいろございますけれども、〇・〇二とか〇・〇四ぐらい%のコストになるわけでございますので、そうすると、一回当たり、大体それよりも低いと考えると、〇・〇一とかそれ以下でないと余り意味のない仕組みになってしまうと思います。
しかし、印紙税の場合は一回払えばいいわけですけど、これが電子債権の場合、譲渡されるたびに仮に課金されるとなると、一回分は印紙税も低いけれども、三回、四回と重ねていくうちにいつの間にか印紙税よりもコストが上がってしまうと、こういうようなことにもなってしまいます。
こうした利用手数料の水準、またその課金方法、これについても中小企業に対する配慮というものも必要だと思いますので、民間のことであるとはいうものの、この仕組みを定着させていくに当たってどういうような考え方を当局としては持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(山本有二君) 電子記録債権を利用する際の手数料水準は、記録機関の経営判断によって決まるものでございます。記録機関の取り扱う電子記録債権の量、システムの開発・維持費、現在の手形利用に係る諸経費等、様々な要因を勘案した上で設定されることになるものと考えております。
手数料の課金方法につきましては、記録機関の経営判断により決まるものでございますが、記録機関が業務規程等を定める中で利用者への利便性にも配慮しつつ設定されることになるわけでございます。
いずれにいたしましても、こうした利用手数料の水準、課金方法について、中小企業にとって使い勝手の良い制度になるように努力してまいりたいと思っております。
○西田まこと君 是非、その業務規程を決める際に、今大臣が御答弁いただいた中小企業への配慮というものが十分に行き渡るようなきめ細かい支援なり助言をお願いしたいというふうに思います。
中小企業が電子記録債権での支払を希望しても、支払企業から確実に振り出してもらえるかどうかが大事になってくるということは先ほども御指摘がありました。特に、中小企業にとって、親事業者が意図的に遅らせるようなことがあっては、せっかく中小企業が利用しようと思っても電子記録債権を利用することができないということになります。
先ほどの質問の中では、御答弁で、それは民間というか、インセンティブ、利用した方が得になるという大企業もあるので、そういうふうに自然にいくんじゃないかというような御趣旨の御答弁があったかと思いますけれども、しかしこれ、事中小企業と大企業という関係でいきますと、そうした自然の流れに任せる的なことだけではもしかしたら電子記録債権市場というものが十分に機能しないという懸念もございますので、これについてどういうようなお考えをお持ちなのか、もう少しお聞かせいただければと思います。
○国務大臣(山本有二君) 電子記録債権制度は、下請中小企業を含む事業者の資金調達の円滑化を図るために創設されるものでございます。手形に代わる事業者の支払手段としての利用ニーズが想定されているわけでございます。
ここで、下請中小企業の資金調達が円滑化されるためには、債務者であります親事業者等の協力は正に不可欠でございます。親事業者が意図して支払を遅らせることのないように、国民への周知徹底等を通じ、事業者の理解を深めていくことが大変大事な観点であろうというように思います。
また、下請法の運用ルールの整備ということについてでございますが、親事業者等から支払を受ける下請事業者の実態にも配慮しつつ、今後、公正取引委員会も含め関係方面と適切な連携をしてまいる所存でございますので、また御指導よろしくお願いいたします。
○西田まこと君 是非そうした整備を進めていただきまして、これまでの様々な中小企業、下請企業の資金繰りが大変に親企業によって妨げられている面もありましたので、それが今回改善されることを是非とも期待したいと思います。
今回の手形を電子手形にしていくということは、すなわち売り掛け債権の電子化、電子指名債権ということに向けて、その応用ということになると思いますけれども、今後進んでくるんだろうというふうに思います。
ここで、売り掛け債権担保融資についてお聞きしたいと思います。
これは、二〇〇一年の十二月に売り掛け債権担保融資保証制度が創設をされまして、これまでの保証承諾件数というものは一兆一千億余りになっているわけでございます。しかし、当初、この制度が創設されたときには年間で二兆円ほどの規模の保証を想定していたというふうに中小企業庁長官の答弁でも国会でございました。しかし、実際にはそこまで進んでいないということがあろうかと思います。
なぜ売り掛け債権担保融資が普及していないのかというその現状、そして今回の法案が成立することによってこうした売り掛け債権担保融資の普及にどれほど効力があるのかということについて、二つお聞きしたいと思います。
○政府参考人(加藤文彦君) お答え申し上げます。
売り掛け債権担保融資保証制度につきましては、今先生のお話ございましたけれども、平成十三年十二月、制度創設以来、本年四月末までの五年四か月で五万五千件以上、約一兆二千四百億円の実績を上げておりまして、不動産担保や個人保証に過度に依存しない中小企業の資金調達の円滑化に大きな役割を果たしてきたというふうに認識しております。
当初、年間二兆円というようなことも考えたことございましたけれども、実際、金融機関における事務負担の問題、あるいは売り掛け債権に譲渡禁止特約が付けられている場合があることなど、同制度の利便性につきまして、徐々に改善してきておるわけでございますけれども、更に向上の余地があるものと考えております。
このため、今国会で成立させていただきました中小企業信用保険法の改正によりまして、流動資産担保保険制度を創設し、制度の対象となる担保の種類を売り掛け債権に加えまして棚卸資産まで拡充するとともに、事務負担の問題につきましては、担保徴求の方法について、従来、個別の売り掛け債権ごとに担保設定を要するとしていたところでございますけれども、売り掛け債権全体につきまして集合的に担保設定をすることを可能にするなど、金融機関あるいは中小企業側の事務負担の軽減を図ることを検討しているところでございます。
また、債権譲渡禁止特約の解除につきましては、これまでにも中小企業庁が中心になりまして、国の契約につきましては中小企業の要請を受けた場合に特約を解除するなど、中小企業のニーズに対応できる措置を講じてきております。民間の企業に対しましても、例えば本年三月に全国五百六十以上の事業者団体に対しまして、下請事業者への配慮につき親事業者に対する指導をお願いいたしましたが、その際にも売り掛け債権の譲渡につき適切な対応をするように求めているところでございます。
こういった対策を講じまして、売り掛け債権を担保とした流動資産担保融資保証制度の一層の普及が図られていくものと考えております。
○西田まこと君 電子記録債権がこれで成立することになれば、今後、今おっしゃった売り掛け債権担保融資についても、この普及の後押しということにもつながるんではないか、その大きな契機になるんではないかと思いますが、この点いかがでございましょうか。
○政府参考人(加藤文彦君) 売り掛け債権担保融資保証制度との関係で、電子記録債権の活用につきましては、中小企業そして債務者側の電子記録債権に対するニーズ、あるいは先ほどから御議論がございますが、手数料を含めた使い勝手といったところが重要なファクターになると思っております。
このため、現時点で中小企業庁として活用の有無についてまだコメントしにくい面がございますけれども、電子記録債権の利用方法や普及状況を見据えつつ、中小企業者にとって不利にならないことも含めて、中小企業金融の円滑のための方策について検討してまいりたいと思っております。
○西田まこと君 次に、この電子手形を実現していく際の実務上の幾つかの課題についてお聞きしたいと思います。
一つは、不渡り時のペナルティーの話でございますが、これについては先ほど御答弁ございました。今の現行の手形と電子手形が併存して、今後、手形は、今も減ってきているわけですけれども、より減っていくだろうと、そういう中で一方電子手形が増えていくと。現行制度と電子手形制度が併存していく中で、両制度間での不渡り情報をどう共有していくのかということについてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(三國谷勝範君) 御指摘の電子記録債権に関します不渡りとの関係、手形との関係等の問題でございますけれども、これはこれからの電子記録債権の実践的な活用方法をにらみながら、利点、問題点のバランスに配慮した十分な検討が必要と考えておりますが、その検討に際しましては、御指摘の手形の不渡りと電子記録債権の不渡りが併存して同時に存在するようになった場合、そういった場合の取扱いにつきましても考慮が必要かと考えております。
○西田まこと君 あと、原簿情報の参照権限の問題についてお聞きしたいと思います。
現在では、原簿に登録された債権情報は、当事者、すなわち債権者、債務者しか参照できないわけでありますけれども、債権の決済をする際に金融機関が当該債権情報を参照できないと資金決済できないわけでございまして、必要に応じて適宜当事者ごとに原簿情報の参照権限を設定、付与する検討が必要ではないかと思われますが、この点はいかがでございましょうか。
○政府参考人(三國谷勝範君) 今回の制度におきましては、債権者からの申請により支払等記録を行う仕組みのほかに、記録機関、債務者及び金融機関が締結する口座間送金決済に関する契約、これに基づきまして記録機関が職権により支払等記録を行う仕組みを設けているところでございます。
この口座間送金決済におきましては、金融機関は、記録機関から支払期日、支払金額等の電子記録債権に係る情報を受け、その情報を基に債務者口座から債権者口座へ送金等を行い、金融機関からの送金結果の通知を受けて、記録機関が職権により支払等記録を行うこととされております。
このように、金融機関への支払期日等の情報提供によりまして、債務者からの支払と支払等記録が円滑に行われる仕組みを確保することで債務者の利便性を確保する、こういった措置も講じているところでございます。
○西田まこと君 最後に、この認証セキュリティー対策についてお聞きしたいと思います。
情報システムの観点、電子債権記録機関についてのビジネスモデルはどうなるのかという議論は既にございました。加えて、セキュリティー対策ということも大変重要な問題だと思っております。電子記録債権の情報システム化に当たりましては、当然認証セキュリティー対策を施さなければならないという中で、例えば、非常に長期にわたる債権データの改ざんをどう防止するのかということについてお聞きしたいと思うんです。
具体的には、住宅ローンとか償還期限の長い債権を原簿で管理する場合に既存暗号技術の陳腐化が起きる可能性もあると。そういう場合、長期にわたって債権データを保存し、改ざんを防止していくための手だてということが必要になってくると思うんです。こうした長期にわたる債権データの改ざん防止策ということについては、現状ではどんなことが考えられておられるんでしょうか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(三國谷勝範君) 記録機関におきましては、業務の始まりからその後の技術の進歩に対応してセキュリティー水準の確保に向けた適切な対応が求められるところでございます。したがいまして、その業務を行うに当たりまして、不正アクセス等に対しますセキュリティーの水準の確保を含めまして適正な対策、体制を構築していく必要がございますけれども、当庁としてもそういった点を日常の検査監督、こういったことを通じて適切にフォローしてまいりたいと考えております。
○西田まこと君 この情報セキュリティーの問題は大変に重要でございますので、是非とも慎重によく監督をしていただきたいというふうに思います。
ちょっと早いですけれども、以上で終わりたいと思います。