国土交通委員会 第18号 2009-06-18

質問要旨
1.協調減車の成功イメージについて
2.減車の促進により、タクシー運賃は下がるか
3.利用者満足度といったサービスの質の指標について
4.累進歩合制度の問題点について

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。一昨日に続きましてまた質問させていただきます。
まず一番初めに、今日は副大臣にお聞きしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
今回の特措法が成立をしたときにいろいろな問題点や課題ということは前回私も指摘させていただいたわけでありますけれども、そうした問題点あるいは課題ということも大事なんですが、この特措法がうまく機能していったときにどういう社会というかどういうイメージになるのかということもしっかりと踏まえておく必要があるんじゃないかというふうに私は思っております。すなわち、地域において協調減車が進んでいった場合に、事業者あるいは乗務員さん、そして利用者と、それぞれのお立場がありますけれども、特に利用者にとって今回の特措法がうまく機能した場合にどういうメリットがあるのかということをきちんと知っていただくという必要があるというふうに思っております。
業界にかかわっていらっしゃらないごく普通の生活をしている利用者の方々にとってみますと、タクシーの問題がこれだけ大きく出ているというこの今回の国会の審議、もうすべてを知っている方というのはもちろん少ないというふうに思います。しかし、町に出てまいりますと、以前に比べてタクシーが駅に随分いっぱいあるなとか、あるいは報道、テレビ等でタクシーの中で寝泊まりをしている運転手さんがいるんだなとか、そういうことはもちろん聞いたり見たりしているとは思いますけれども、なかなかこのタクシー問題ということについて理解を深める機会はそうは多くないと思います。
したがって、今回の特措法が成立したときにこういういいことがあるんだと、利用者にとっては。また、成功すれば、地域において協調減車がうまく進めば、こういうふうにして利用者の人にはより多くのメリットが得られると。こういうイメージもどんどん広報していかなきゃいけないんだなというふうに思っておりますので、まず副大臣にお聞きしたいと思います。
今回の特措法が成立をして、うまく成功した場合に利用者にどういう具体的なメリットがあり得るのか、お聞かせいただきたいと思います。

○副大臣(加納時男君) 今回の法律が成立し、協調減車が成功した場合の需要者のメリット、そしてそのイメージという御質問でございます。
現在、タクシーをめぐる問題というのは、例えば経営収支の赤字化、それから運転する方の労働条件の劣悪化、賃金格差あるいは長時間労働ということがあります。それから過度な運賃競争、それからまた事故の増大、環境の悪化、いろんな問題が生じておりますが、これらの根本にあるものは何か。一言で言うと、それは実は特定地域等における供給の過剰にあると思います。ですから、今まさに西田委員が御指摘なさった協調減車というのはその有力な解決策になる。
協調減車が成功したときのイメージという御質問ですけれども、地域の需給バランスが改善されるだろうと。そのことがどういうことを生み出すのかと。タクシー事業の経営の健全化が図られる、運転者の方にとっては労働条件の改善が見込まれる、それから、御質問にありましたユーザーの方、乗客の方々にとっては、サービス、安全の両面での向上、レベルのアップ、改善が図られるというメリットがあるものだと考えております。

○西田実仁君 ありがとうございます。
今御指摘いただいたように、減車が協調で進みますと運送効率が上がる、そうすると単位当たりの輸送の原価が下がる、したがって適正原価プラス適正利潤が下がるということだと思うんですね。
端的にお聞きしたいんですけれども、そうなりますとこれは運賃が下がる、つまり成功するとこれは運賃が下がっていくんだということは言えるんでしょうか。

○政府参考人(本田勝君) まず、昨今、平成18年以来、全国各地で運賃改定の申請がされてきております。具体的には19年から実施をしてきておりますが、今回のこの一連の運賃改定の趣旨でございますけれども、これはタクシー運転者の労働条件の悪化をこれ以上進めてはいけないと、これを改善しようということで運賃改定、つまり値上げが行われてきておるわけであります。
このこととの関連で申し上げますと、供給過剰地域で減車を促進し適切な需給バランスを確保するということになれば、期待される効果として、まず第一に、タクシー一台当たりの営業収入が今よりは良くなる、少なくとも悪化しない、できれば良くなる。そういたしますと、まさに歩合制賃金という仕組みの中で運転手さんの労働条件も改善されると考えますので、今までやってきておりますような運転手さんの労働条件の改善のために運賃値上げを行う、この必要性はなくなってくる、それを一つ期待したいと思います。それが値下げに通ずるかというのは今一概に申し上げられませんけれども、今起きておりますような運賃値上げの圧力、これはその部分については減るであろうと。
第二に、やはり輸送効率が向上いたしますので、車両コストあるいは空車走行に伴う燃料費のコストは削減されると思いますから、こういう意味からも運賃改定、値上げを行う必要性は乏しくなってくるものと考えます。

○西田実仁君 そうすると、この法律が成立すると、一部の報道で格安タクシーと言われるものがこの秋以降値上げされるんだと、そういう可能性が出てきたという報道が一部ありますけれども、これは事実とは違いますね。

○政府参考人(本田勝君) 報道で議論されております点は、もう一つの問題としての過度な運賃競争。過度な運賃競争によって、やっぱり供給過剰と同様に、そこで働いておられる運転者の方々の労働条件が悪化していくという問題がございます。
この点については、衆議院での法案の修正も含めて、やはりもう少し厳格な審査をすることによって過度な運賃競争については抑制すべきであるというお考えが示されております。そういう中におきますと、過度な運賃競争の結果としての低廉な運賃については、我々としては今まで以上に厳格な審査は要ると思っております。

○西田実仁君 先ほど、利用者に加えて乗務員さんあるいは事業所のそれぞれのメリットの話も副大臣からいただきました。具体的に何年そうなったら掛かるのかということはあるかもしれませんが、一つのやはり期待される効果、また成功のイメージといたしまして、例えばタクシーの乗務員さんの平均賃金が今まで全産業平均よりこんなに低いという数字はもう何度もお聞きしましたけど、大体全産業の平均ぐらいになるとか、あるいは実車率もこのぐらいというような、一番いい形の、まあ五割とか、分かりませんけれども、そういう何かイメージというかはお持ちなんでしょうか。

○政府参考人(本田勝君) 現時点では、今先生が御質問になりましたような形での定量的なイメージというのは持ち合わせておりません。ただ、今よりは悪化することを防止し、今よりは改善をしたいということでございます。

○西田実仁君 是非今より、今は一番良くない状態になっているから改正をするわけでしょうから、もっと良くなるということもまたウオッチをしていきたいというふうに思います。
そこで、大事なのは、成功する条件としては、やっぱり何といっても市場に任せたんではうまく需給がバランスしないねということで今回特措法というのができるわけでございます。かといって、以前のような需給調整に戻すわけでもないと。つまり、需要に合わせて供給量を上下させていくという、ちょうどいいところになるようにどうしていくのかという大変難しい実は、本来市場に全部任せてうまく調和できればそれはいいのかもしれません、そうじゃないからこういう特措法ができているわけですね。そうすると、まず需要がどのぐらいあるのかということとか、あるいはその需要に今供給が合っているのかというようなことを、どこまでやるかという問題はあると思いますけれども、そのまま単にほっといて、何か月に一遍、協議会をもっとやるということではなくて、かなり正確にそうした需要なり供給ということを、供給の方はある程度分かるかもしれませんけれども、押さえておく必要があるというふうに思うんです。
以前、審議会の答申でも、タクシー事業を巡る諸問題への対策ということで、今後講ずべき対策としてIT等を駆使してシステムを導入すべきだというような提案もなされていました。これちょっと最後に聞こうと思っていたことですけれども、関連ですからついでに聞いてしまいますけれども。
こうした例えばGPSを使って需要供給の調整をうまくやっていくとか、あるいは、待ち時間が短縮したということを規制緩和のメリットとしてよく言われましたけれども、実は調べてみたら、これインターネットのウエブ調査か何かで2000人ぐらいにやったことを根拠に言っているわけですね。もうちょっと正確なメリットを把握するやり方、例えば定点にウエブカメラか何かを置いて待ち時間がどのぐらい本当にあるのかとか、そういう、すべてのところというわけにはもちろん財政的にも難しいとは思いますけれども、市場に代わって今度は需給をきちんとバランスさせるということを人為的にある意味で調整をしていくというやっと形になるわけですから、そうしたインフラの整備ももっと今まで以上に進めていかなければいけないんじゃないかと、こう思いますけれども、いかがでございましょうか。

○政府参考人(本田勝君) 御指摘になりました二点はいずれも、タクシーのサービスを向上する、特に消費者からタクシーを選択していけるような環境を今よりは整備していくという視点にとって重要だと考えております。
まず第一に、IT等最新の技術を駆使したシステムの導入という点につきましては、今までもGPSを活用して個々のタクシーの位置を把握し効率的な配車ができる、利用者の方から見れば非常に効率的に配車がされてくるというメリットがありますが、これに対しては国としても一定の支援を行ってまいりました。まだまだこの分野は技術革新が非常に顕著なところでございますので、答申にもございますとおり、国は自らこうした取組を積極的に推進するとともに、事業者団体等が行う取組に対して積極的に支援を行うべきであると、こう指摘されておりますので、今後、答申に従って支援の在り方について検討してまいりたいと考えております。
二点目の、私ども確かに、御指摘のとおり、利用者サービスといったときにその質について何をもって観測していくのか、できれば定量的なものというのは確かに望ましいと思っております。まさに御指摘のとおり私どものアンケート調査という形でしかやりようがなかった分野でありますが、やはりタクシー事業の現状あるいは需要、さらにはサービスの質に対しての要請、これを正確に把握するためには可能な限り客観的な指標で把握することが重要だと思っております。
ちょうど、昨年の審議会の答申を受けて、利用者によるタクシーの選択制の向上に関する検討委員会を近々設置をして、その検討を進めることとしておりますが、本日の御指摘も踏まえ、この委員会では利用者サービスの質についての指標も大きな検討課題とさせていただきたいと思います。

○西田実仁君 ありがとうございます。
残った時間、あと五分ですけれども、累進歩合制について確認をさせていただきたいと思います。
いわゆるこの刺激的賃金、累進歩合制度、これは何が問題であるというふうに認識をしているんでしょうか。また、指導の状況はどのようになっているんでしょうか。

○政府参考人(渡延忠君) お答えいたします。
タクシー運転者の賃金につきましては、先ほどお話がありましたとおり、いわゆる歩合給が取られているケースが多いわけでございます。その中の幾つかのものを累進歩合制度とまとめて呼んでおります。
具体的には、水揚げ高等に応じて歩合給が定められている場合に、その歩合給の額が非連続的に増加するもの、これをいわゆる累進歩合給と呼んでおります。このほか、水揚げ高等の最も高い方、あるいはごく一部の労働者しか達成し得ない高い水揚げ高等を達成した方のみに支給するいわゆるトップ賞というもの、又は水揚げ高等を数段階に区分し、その区分の額に達するごとに一定額の加算を行ういわゆる奨励加給、こういったものを総称して累進歩合制度と呼んでおります。
賃金制度につきましては、本来労使により自主的に決定されるべきものでございますが、ただいま先生刺激的というお言葉をお使いになりましたですが、このようないわゆる累進歩合制度につきましては、労働者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあることから望ましくないものとして、平成元年の労働基準局長の通達でこれを廃止するよう指導を行っておるところでございます。
二点目、指導の実績についてのお尋ねがございました。
平成17年から19年の3年の数字で申し上げます。タクシー運転者の労働時間等の改善を重点として監督を実施した件数で申し上げますと、17年には911件、このうち累進歩合ありとして指導の対象となったものが817件、18年には同様に932件のうち118件、平成19年には同様に712件のうち80件であったところでございます。
以上でございます。

○西田実仁君 そうやって指導されて、いったん改善計画書を出して、また指導されるというケースはあるんでしょうか。

○政府参考人(渡延忠君) こうした賃金制度の改善につきましては、元々賃金制度が労使の自主的な話合いで取り組んでいくべきもの、また、近時においては賃金制度の改定に伴ってコンピューターシステムの改正を併せて必要とするというようなことがありまして、是正に時間が掛かるケースはございます。
これらのものについては指導を行いまして、その進捗を確認するよう努めておるところでございます。

○西田実仁君 要するに、指導して改善をしたんだけれども、何年かたったらまた指導されるというケースがどのぐらいあるかとお聞きしたんですけれども、それは余り把握されていないようですので。
いずれにしても、これは労使間で決めるという、しかも通達で指導ということですから、おのずと限界もあるんだろうというふうにも察するわけであります。しかし、局長通達で廃止すべきものとしているわけですね、この累進歩合制という制度自体は。ですから、何度も何度もというのが、どれだけその指導を受け続けてもまた指導を受けるみたいな会社があるのかよく分かりませんけれども、そういう廃止すべきものとして指導の対象になっているそういう賃金制度をなかなか改善しないということは、そこに勤めようと思う乗務員さんにとってみれば、そういう会社なのかどうなのかというようなことを知るすべも実はないわけですね。公開もしていないでしょうから、その指導されたということについて。
しかし、これで本当にいいんだろうかというふうに乗務員さんの立場から、乗務員さんがそれを望んでいるケースもあるかもしれませんから、そこはちょっとなかなか難しい労使で決め事だとは思いますけれども、しかし、局長通達で廃止すべきものとして指導も何度も受けているような会社であるということを知って入社するのと、知らなくて入社して後からびっくりするのとでは違うと思います。
そこをちょっと、その辺、本田局長の方、こうした累進歩合制度ということ、刺激的賃金、やめるべきだと言われていても、何度も仮にやっているような会社かどうかということを乗務員さんにも何か知ってもらえるような手だてというんですかね、そういうことが必要じゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(本田勝君) タクシー運転者の賃金体系、多くの場合、御指摘のとおり歩合制あるいは非常に複雑なものが絡んでくる関係で、その内容がタクシー運転者自身にとっても分かりにくい、あるいは実は利用者からも非常に分かりにくいといった議論がございました。その結果、昨年の交通政策審議会の答申を受けまして、タクシー運転者の方の賃金等の問題につきましてはこの3月からタクシー事業における賃金システム等に関する懇談会で議論を開始しておりますが、その答申においては事業者等による情報開示の在り方についても指摘がされております。具体的には、事業者による労務管理の在り方、あるいは営業収入に対するタクシー運転者の賃金率、それから賃金制度の実態などの事業者等による情報開示の在り方についても検討されるべきであるという宿題をいただいております。
したがって、御指摘のようにタクシー事業者自らが自社の労働条件を公表すべきかどうか、あるいは公表するとしてどんな手法でどこまで行うべきかについては、この懇談会の中で検討を進めてまいりたいと、かように考えております。

○西田実仁君 終わります。