180-参-憲法審査会-006号 2012年05月30日
○西田実仁君 御指名ありがとうございます。公明党の西田実仁でございます。
今回のこの東日本大震災と憲法の議論で明らかになったことについて私なりにまとめさせていただきますと、大震災で統治機構が機能不全となり、人権保障上の重大な問題が生じたことは明らかであります。参考人として出席をいただきました福島県双葉町の井戸川町長は、憲法十三条、幸福追求権が妨げられている、また二十五条、生存権も妨げられているとして、自分たちは棄民か、基本的人権が損なわれていると、そのように切々と訴えておられました。私の地元の埼玉にも今も双葉町の皆様方がおられまして、そのことは目の当たりにしているところでもございます。
今後、予想される様々な非常事態に向けまして体制整備が不可欠であり、人権保障のための統治機構の在り方についてより踏み込んだ議論が必要であるというふうに私も思います。ただし、非常事態において、居住移転の自由や営業の自由等一定範囲の人権の制限が必要となる場合もあり得るが、その場合も国民の生存を確保するという、やはり国民の人権を守るということを目的とすべきであると考えます。
その意味から、棟居参考人が言われました生命、自由、幸福追求という価値の序列に従った比例原則という考え方は非常に参考となる御意見であったと私は思っております。すなわち、非常事態におきましては、国は生命を守るという最上級の人権を守るために、国家はその他の人権を今の価値の序列に従って制限をするということに整理されるのではないかと思われます。
非常時における人権の制限というものは、あくまでも国民の生存を確保するという国民の最上級の人権を守るためという目的こそが大事であり、それとは無関係の国家の利益を守るためでないということは確認をしておきたいと思います。つまり、国民主権の原理に立つのであれば、国民の利益と無関係な国家の利益というのはあり得ず、人権制限の根拠もやはり人権保障に求める以外にはないのではないかと思われます。非常時においてこそ国民主権の徹底が必要であり、そうでなければ内容不明な国家の利益を守ることを理由に強権が発動され、広範な人権制限が行われる危険が生じてしまうのではないかと思われます。
なお、国家緊急権につきましては、なぜ国家なのか、緊急とはどのような事態なのか、またそれが権利なのか、誰が助かるのか等々について更に議論を深める必要があるのではないかというふうに思われます。また、そうした権利を国家に認める際には、事後的に立法府による行政監視機能をより強めていく必要があると考えております。現行憲法六十六条、また七十三条、これから更に踏み込んで、内閣は法律を誠実に執行しなければならないという義務規定や、あるいは、国会は内閣による法律の執行の状況を常時監視しなければならないといった立法府による行政監視という機能をより強めていくといった議論も憲法上規定する必要があるのではないかというふうに考えております。
以上でございます。