180-参-法務委員会-010号 2012年07月31日

○委員長(西田実仁君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二十六日、難波奨二君及び谷亮子さんが委員を辞任され、その補欠として有田芳生君及び中村哲治君が選任されました。
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○委員長(西田実仁君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に金融庁総務企画局参事官三井秀範君、法務省刑事局長稲田伸夫君及び文部科学大臣官房審議官常盤豊君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(西田実仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(西田実仁君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○森まさこ君 自民党の森まさこでございます。
昨日、決算委員会で法務大臣に質問させていただきましたが、引き続き本日もよろしくお願いいたします。
まず最初に、東京電力の刑事責任について御質問をしたいと思います。
東京電力の第一原発事故、昨年の三月の事故でございますが、これに関しまして、東京電力の当時の幹部に対して刑事責任追及を求める動きがあります。昨年以降、東京地検に告訴、告発が出ているはずでございます。先月十一日には、福島県の住民約千三百人が集団で福島地検に告訴・告発状を提出いたしました。容疑は業務上過失致死傷と公害犯罪防止法違反であります。福島地検は告訴・告発状を受理せずに、判断を留保しました。検察当局はこれまで出された告訴、告発についても受理するかどうかの判断を留保しているという情報がございますが、これについて事実関係をまずお答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 今のところ、ただいま委員の御指摘のような告発状につきましては、福島地検でそれを受理したという報告は受け取っておりません。

○森まさこ君 福島地検及び東京地検で告訴、告発受理していない、その判断を留保しているということですけれども、告訴、告発がなされたのにそれを受理しない理由は何ですか。

○国務大臣(滝実君) 具体的な事情については私の方から申すわけにはいかないと思いますけれども、聞いておるところによりますと、内容についていろいろ修正をしたらどうかとかというような中身の問題について、形式的なことでしょうけれども、是正措置をしているんじゃないだろうか、こういうようには聞いております。

○森まさこ君 形式的な面で不備がございましたら、それは訂正して、例えば提出先が書いていないとか、そういうことでしたらば訂正をすればいいと思うんですけれども、基本的に告訴、告発がなされましたらそれを受理して、内容については捜査をしていけばいいのであって、こんなに長い間受理しないということは合点がいきません。
今、法務大臣がおっしゃったように、形式的な面で訂正をしていただいているので受理をしない、内容については問わないということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 一般論として申し上げれば、当然、告発でございますから、事件の特定性とかそういうようなことが整っているかどうかと、こういうことを恐らく検討しているんだろうというふうには聞いておりますけれども、中身について私どもが特別なことを報告受けているわけじゃありませんので、これ以上のことは差し控えさせていただきたいと思っています。

○森まさこ君 事件の特定性というのは具体的に言うとどういうことですか。

○国務大臣(滝実君) その辺のところは私どもも掌握しかねております。

○森まさこ君 掌握しかねることを答弁なさっていただきたくないと思うんですけれども、今、一般的なことで御質問しております。滝法務大臣、よろしいですか。
告訴、告発がなされたときに、形式面を審査してそれを受理するということでございました。今回のことと関係なく、一般的に事件の特定性が整っていないから受理しないということであれば、そういう御答弁でしたので、事件の特定性というのは一体何ですかと。今、傍聴していらっしゃる方に、インターネットで見ていらっしゃる方に分かりやすく説明してほしいんですよ。この部分が整っていないと受理できないんですよということを御説明をしていただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 私も、先ほど来申し上げておりますように、事件の中身について詳細に承知しているわけじゃありませんけれども、事件が、どういうように特定されているかどうか、そんなことを中心にして恐らく是正措置を求めていると、こういう段階のように聞いているわけでございます。

○森まさこ君 分かりません。今の御答弁では、聞いていらっしゃる国民の方が分からないと思います。説明をできない理由で受理をしていないのではないかと思われても仕方がないと思います。
どうあれ、形式面の是正をさせているということでありますから、昨年から出されているものが複数あるわけでございますので、こんなに時間が掛かるのもおかしな話です。その形式面を整えさせる是正を早くして、とにかく受理をしていただきたいというふうに要望します。
いかがでしょうか。大臣にお願いします。

○国務大臣(滝実君) 私の方から具体的な事件についてあれこれ言うのは、それこそ指揮権ということにもなりますから、私の方からは申しかねますけれども、ここでの議論のやり取りは当然伝わっていくと思っておりますので、私の方から特別な指示をしなくても、それはそれなりに伝わっていく話ではないかと思っております。

○森まさこ君 報道によりますと、検察幹部の一人が、受理をしない理由として、政府や国会の事故調査委員会による検証が続いているため、最終結果を待ち、捜査を進められるかどうか見極めると言っているとあります。政府も国会の事故調もその後報告書は出ましたけれども、この報告書が出ていないからといって受理をしないということがあったとしたら、これは大変なことだと思います。
大臣、受理をしない理由は、政府や国会の事故調査委員会の検証のせいではないですね。

○国務大臣(滝実君) その辺のことに関しましても、その理由について特に聞いておりませんので、私の方からお尋ねするというようなことではないというふうに思っております。

○森まさこ君 それでは、大臣に、大臣の御見解をお伺いしますけれども、告訴、告発を受理しない理由が政府や国会の事故調査委員会による検証であると、だとしたら、それはおかしなことですね。いかがですか。

○国務大臣(滝実君) 一般論として申せば、当然告発状に従って受理すべきものは受理するということであって、事故調だとか何かの様子を見ているとか、そういうようなことではないと信じております。

○森まさこ君 ありがとうございます。
今回の告訴・告発状の提出は、これまでの刑事告発と違って、告訴人全員が原発事故の発生当時県内に住んでいて、原発事故の被害を受けた当事者であります。先日、野田総理が大飯原発の再稼働を表明するなど、被害を受けた福島県民の民意について何も示されないまま事態が進行しています。
今回の福島地検への告訴・告発状の提出は、被害者自身で原発事故の責任の所在を問おう、刑事責任の所在を問おう、民事責任ではなくて、損害賠償の請求ではなくて、刑事的な責任を問おうと立ち上がったものであり、この切実な訴えについて検察がどうこたえるのかということは重要であり、福島県民が、国民が注目している問題であると思います。この点について、法務大臣の御見解をお示しください。

○国務大臣(滝実君) 当然、告発状を受理すれば、検察当局としては当然それについてきちんと法と証拠に基づいて措置をする、当然のことを恐らくこれから進めるんだろうというふうに思います。

○森まさこ君 先日、私、予算委員会でも取り上げさせていただきましたけれども、アメリカ軍が原発事故直後に軍用機を飛ばして汚染状況の実測値を測っていた。日本国ではSPEEDIが予測値を出しておりまして、この予測値さえも住民に知らされなかったということについては、政府の事故調査委員会で問題であると断定しております。さらに、発覚した実測値の隠蔽、実測値を住民に知らせなかった、被災町村の首長に示さなかった。このことについて、浪江町長は殺人行為にも匹敵するとの怒りを表明しております。
是非、国の方でそういった住民の思いを踏みにじるようなことがないようにお願いをしておきたいと思います。
それでは、次の質問に入らせていただきます。法務局の統廃合についての質問をいたします。
政府は、平成十一年の閣議決定で、法務局及び地方法務局の支局、出張所の整理統合を進めることを決めました。そして、その平成十一年の閣議決定の折に目標値を定めました。その目標値とは、平成十一年当時にあった数の半分までに減らすという目標です。
平成十一年当時は約千か所の法務局がございました。それを平成十七年度までにおおむね半減するという目標が設置をされました。千か所の半分ですから五百か所です。この目標は達成されましたか。

○国務大臣(滝実君) 五百か所の目標はクリアをしていると思います。

○森まさこ君 そのとおりです。平成十九年の末までに四百七十六か所に削減されましたから、当初の五百か所の目標は既に達成されております。
このように当初見込んでいた縮減規模が既に達成されたにもかかわらず、法務省は引き続き統廃合を強力に推し進めておりますけれども、その理由は何ですか。

○国務大臣(滝実君) この問題は、当時ございました広域市町村圏ごとに法務局を統合していこう、こういう構想であったわけですね。したがって、そのときの条件は、広域圏に大体一か所にまとめる、そして件数も一万五千件以下のところは統合してくるんだと、あるいは、広域市町村圏でございますから、元々あった出張所と新しく移管する場所との間が大体時間距離にして三十分程度、こういうような構想で出発いたしたものですから、そういう意味では全国的にかなり統合が進んできた。しかし、ほとんど手を付けられないところもある。今、その手を付けられずに残っているところを、従来からいろいろ地元と折衝してきた箇所について最後の仕上げをしている、こういう段階だというふうに認識をいたしております。

○森まさこ君 今大臣からお答えがあったことをまとめますと、当初の目標は達成されたけれども、当初定めた基準、これを満たすものについては更に整理統合をすべきであると、そういうお考えであるということですね。
目標を達成したけれども基準を満たすものを統合しなければいけない、その理由は何ですか。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、言わばオンライン化というような格好で大分技術的な進歩が利用できる、そんな状況になってきたものですから、この法務局を統廃合して、そしてオンライン化に掛けた言わば予算と申しますか、そういうものを導入して何とか合理化をしていこうと、こういうことでございます。
私の地元のことも言えば、私の地元も言わば最後まで残ったところが五、六年前にようやく統合されて、私の選挙区は合計三か所の法務局の出張所があったんですけれども、今全部なくなっておるような状況でございます。

○森まさこ君 基準を満たすものについては目標が達成された後もやることが合理化に沿うのだ、予算を削減できるのだ、そういう御答弁でございました。しかし、基準を満たしていないものまで削減しようとしているのではないですか。
私、平成二十二年にもこの法務委員会で質問をしましたけれども、福島県の須賀川出張所、これを統合しようとしております。その基準を見ますと、大臣が今おっしゃった基準は、一つは登記件数が一万五千件に満たない、もう一つは新しく統合される先まで三十分で行けるという、件数と距離です。
ところが、須賀川出張所については、今年度は五か月間の数値を見ても、今年度、一年たてば一万五千件どころか一万六千件を超える勢いでございます。もう一つ、距離について言えば、三十分で須賀川市から統合される郡山まで行ける町は一件だけであります。統合される市町村は八市町村ありまして、天栄村は五十二分、これは天栄村の役場から郡山の役場までですから、天栄村の一番端からすると一時間半ぐらい掛かるわけです。天栄村から五十二分、石川町から一時間、玉川村から四十三分、平田村から五十五分、浅川町からは一時間十七分、古殿町からは一時間二十九分でございます。どれも三十分以内に行ける距離にはございません。
件数も満たしていない、距離も満たしていない、それなのになぜ統廃合を進めるのですか。

○国務大臣(滝実君) 委員の御指摘では件数と距離と両方というように聞こえるわけでございますけれども、どちらか一方が充足していればそれで統合していこう、こういうところから出発いたしております。そして、時間距離の問題も、全ての市町村、所管内のいかなる場所からということでなくて、現にある出張所のポイントから移管する後のポイントまでの時間距離が大体三十分程度と、こういうふうに言っているわけでございまして、所管内の地域にはやっぱり距離の濃淡がありますからいろんなあれがあると思いますけれども、現にある出張所から移管先のところまでが大体三十分程度、場合によってはそれを超える場合もあり得る、こんなようなことで統合を進めてきたところでございます。
私の選挙区でも三十分をはるかに超えるところに移管をいたしております。

○森まさこ君 大臣は、基準の片方だけを満たせばよい、そしてその所要時間は今ある登記所から移管する登記所までの所要時間であるとおっしゃいました。そのように当時の民事行政審議会の答申に書かれておりますか。

○国務大臣(滝実君) 書かれているかどうかを私は確認をいたしておりませんけれども、そういうようなことでずっとやってきた、現に私も地元の問題でそういう角度から取り組んでまいりました。

○森まさこ君 いずれにせよ、今回は基準を両方満たしておりませんし、審議会の基準に書かれていないものを法務省が、又は政府が行財政改革のその数値を上げるためだけに勝手に運用してきたという疑問を持たざるを得ません。
当時の民事行政審議会の基準が書かれている答申のその他の部分を読みますと、過度の行政機能縮小が住民サービスの低下につながらないように、そういった視点も鑑みながらコストカットの部分を進めていくというふうに書かれております。ところが、今の状況を見ますと、コストカットの部分だけを過度に重視しまして、住民サービスの低下というところを見ていないと思わざるを得ません。
と申しますのは、今回挙げられている福島県の須賀川と二本松、これは被災地であります。福島県の中通りであります。福島県の中通りというのは今回の被災でどのような部分が一番被害を被ったか御存じでしょうか。

○国務大臣(滝実君) もちろん、この地域は、須賀川にいたしましても、須賀川市内自身が大きな被害を受けておりますし、また二本松市も、例えば浪江町が役場を二本松市に開設していると、こういうようなことで、まさに被災地そのもの、こういうように認識をいたしております。

○森まさこ君 御答弁不十分ですので補足をさせていただきますと、福島県の中通りは、地震の被害、地震による家屋倒壊、それから土地の境界のずれ、これが非常に甚大な場所でございます。ですから、今、登記業務というものが非常に大切になっている、そのニーズも高まっているところです。
福島県の土地家屋調査士会から陳情が行っていると思います。福島県の司法書士会からも陳情が上がっていると思います。今、土地家屋調査士、司法書士併せて、この土地と家屋の登記の訂正や変更に大わらわなんです。地元住民も被災をして、自分の自宅に戻れない、家族もばらばら、東京電力に対する損害賠償請求の書類一つ書くのも大変な状態、仕事も失って、通常の、平常の生活を送るのに今までどおりではいかない、非常な疲労感の中で毎日を過ごしています。その中でこういった行政サービスの拠点が統廃合されるということ、震災を受けた翌年に廃止をされて遠い遠い郡山に移転をしてしまう。ガソリン代だってままならなくなります。時間だって掛かります。私は、震災の翌年にやることではないと思います。
大臣、お尋ねしますけれども、今回のこの統廃合のターゲットに福島県がされましたけれども、岩手県、宮城県、この法務局の統廃合というのはここ三年の間にされていますか。それから、これからされる御予定がありますか。

○国務大臣(滝実君) 全国的に見ると、統廃合についてはやはり濃淡があるようでございます。福島県もそういう意味では大変遅れている地域と、今までの統廃合の流れの中では少し遅れている地域と、それから、あるいは岩手や宮城の場合にも地域によっては進んでいるところもある。こんな状況のように見ております。
そして、何も、震災の後何だと、こういうようなお考えだと思いますけれども、この福島県の二つの地域については震災前からずっと協議をしてきた。しかし、震災があったために昨年の年末までは動かないでじっとしていた、こういうような配慮もされているようでございます。最近になってようやく須賀川市の皆さん方とそろそろ協議を再開しようということで再開をしてきたと、こういうように聞いているわけでございます。
したがって、いろんな問題がかみ合ってまいりますけれども、やはり地元との間で協議が調えばそれに従って年来の懸案を解決していくと、こういうようなことでお考えをいただきたいと思っているわけでございます。

○森まさこ君 大臣、もう一度お尋ねしますけれど、大臣は民主党政権になって何人目の法務大臣でいらっしゃいますか。

○国務大臣(滝実君) この場でも申し上げましたけれども、七人目でございます。

○森まさこ君 ずっと福島県と協議をしてきたと今おっしゃいましたけれども、それは役所の方に吹き込まれたことではないですか。私は、二十二年にこの話が持ち上がって、法務委員会でも質問させていただきました。そのときに基準を満たしていないじゃないかということを私が言ったらその後延期をされたんですよ。そして震災になったんです。
この問題で首長と私は話をしましたよ。各関係首長みんな怒っています。司法書士さん、土地家屋調査士さん怒っています。皆さんおっしゃっていました、協議なんかない、震災の後みんな忙しくしていたら、つい先月辺りに来て、もう決まったことだからと言い渡されただけだということなんです。
今日も古殿町の方が国会議事堂の中の食堂に来ていますから、私はそこでお話をしてからここに参りました。古殿町の議会の方々も古殿町長も怒っています。石川郡の中に五つの町村がある。それを二つに分けて、古殿町から郡山まで時間が掛かるんですから、それでしたらば、だったら白河の方に半分だけ分けて、残り半分は郡山にすればいいじゃないですかと、そういうことを言ったというんです。震災の後、この地域がめためたになって、今まとまって企業を誘致したり復旧復興しようとしているときに、何で登記所がばらばらになるんですか。またがる場所に企業を誘致できないじゃないですか。
この福島県の中通りには大きな問題があるんです。私は、民主党政権が総合的な目でこの復旧復興対策をしていないことに非常に怒りを覚えていまして、昨日の決算委員会でも言ったんです。法務省だけで統廃合の話をどんどんどんどん進めているけれども、一方では、復興交付金はこの中通り地方、特にこの石川郡とか須賀川の法務局管内、二本松の辺りには復興交付金が交付されていないんです。地震の被害が甚大なところにちっともお金が行っていないんです。復興交付金というのは、民主党政権が言いました、使い勝手の良い、何にでも使える、復旧復興に役に立つ交付金だと。首長さんたちはみんな期待をしていました。ところが、蓋を開けたら一次も二次も津波の地域だけなんですよ。津波の地域は確かに被害が甚大ですけど、地震の被害も物すごく大きいんです。
この統廃合される須賀川の市役所、どういう状況だか御存じですか。

○国務大臣(滝実君) 私は、昨年の四月の五日に須賀川の市役所へ行ってまいりましたから、言わば、一月足らずの中で須賀川市の市役所、あるいはその周辺、あるいはため池の決壊場所、それがどういう状況であったかということは当時見てまいりました。

○森まさこ君 つまり、須賀川の市役所は全壊で今ないんです。ため池も決壊して津波と同じように人がお亡くなりになりました。津波と同じ状況の被害です。ところが、そういったところへの手当てが不十分なんです。復興交付金の手当てが全くされていない中で、法務局の統廃合だけが物すごいスピードで進められている。復旧のスピードが遅い、遅い。そして、統廃合だけがどうしてこんなにスピード速いんですか。非常に違和感を感じます。被災地にもっと苦しめと、もっと困れと言っているようにしか思えないんですよ。
しかも、統廃合、もう決まったということで、首長さんたちが、それじゃ、その代わりにどんな緩和策をくれるんですかと言っても、それさえ何もないんですよ。例えば、機械を入れる。須賀川には機械を入れると言ったそうですけど、今言ったように一番困るのは石川郡でしょう、遠いのは。二時間ぐらい掛かるようなところに、そこに機械をくれと言っても、それはくれない。登記をする機械、登記が出てくる、証明書が出てくる機械一つ置かないんですよ。
また、司法書士会からも陳情が出たと思います。商業登記簿謄本が取れるのは福島県で一か所だけです。だけど、これから企業立地しようとするときに、被災地から福島市になかなか車で行けるような状況に住民が今ないときに、せめて郡山辺りにもう一つ商業登記扱わせてくれないか。それについてもノーアンサーですよ。何も答えがない。どんどんどんどん縮減する方向のことだけが進められていく。被災地への寄り添いとか思いやりが全く感じられないんです。
法務大臣、法務大臣が何か一つぐらいやってくださいよ。七代目の、七人目の民主党法務大臣です。この本当に心もない、涙もない縮減を見送ってください。震災の翌年にやらないでください。せめて二、三年据え置いて、被災地についてはですよ、被災三県はです。そのぐらいの御決断をしていただきたいと思います。いかがですか。

○国務大臣(滝実君) 今いろいろ御指摘にありましたけれども、須賀川の場合には震災を受けたということもあり、地域的な事情もあって、今回初めて、実は一か所に統合するんじゃなくて、今委員が御指摘になったように、郡山市と白河とにですか、二つに分けて地域を統合する、これは地元の要求に従ってそういうようなことをしようかと、こういうような話をしているというふうに聞いております。
したがって、震災だからということで昨年の年末まで話合いを中断していたのを、とにかく地元と話ができればと、こういうことで、その後もう一遍仕切り直しをして今日まで来たと、こういうふうに聞いているわけでございまして、中身も震災の地域にある程度配慮をした統合案かなと、こんな感じをいたしております。
それで、今委員も御指摘になりましたけれども、須賀川市には登記謄本を取れるような窓口はつくると、こんなことも配慮をしているやに聞いておるところでございます。

○森まさこ君 全く御理解いただいていないということが分かりました。
年末まで話を中断するって、年末まで話合いなんかできる状態でも何でもないんです。そして、年明けの新年会でですよ、新年会で、土地家屋調査士政治連盟の新年会、司法書士政治連盟の新年会で、それぞれ会長がこの法務局の統廃合だけは絶対阻止すると挨拶しているんですよ。そんなもの、年末まで待ってもらってそれでもういいなんて誰も地元住民は思っていません。
それから、郡山と白河に分けるのは、これは私たちの、福島県民の方の要望ではないんです。今日は町村会の研修会が町村会館で開かれているということで、私はその白河と郡山に分けられた首長さんと話をしてから来たんですよ。みんな嫌がっているんです。でも、それしかないという最終通告を受けたからのまざるを得ない、これからは被災地に復興交付金をお願いする立場だから反対できない、そういう声なんです。大臣は、もっと被災地の声をよく聞いて御英断をしていただきたいと思うんです。
先ほどから、後ろに控えた方から紙が出てくるとその紙を読む、その繰り返しですけど、紙を読んでいるだけじゃなくて、大臣自身のお気持ちで、私が今質問したことを聞いて何か一つぐらい御決断をしていただきたいと思います。いかがですか。

○国務大臣(滝実君) 私が真っ先に現地へ参りましたのは田村市、須賀川市でございました。したがって、そのときの強烈な印象はそのまま持続しながら、この問題についてもずっと聞いてきたところでございます。
委員は千葉法務大臣のときからこの問題に当委員会でいろんな御指摘をされている、こんな事情も私も認識をしながら、そして地元でいろんな話がまとまってくる、そういうことを歓迎しながら、この問題を処理すべきだと、こんな感じで今いるところでございます。

○森まさこ君 では、大臣、今までずっとこの問題について大臣と私の考えは平行線です。昨日の決算委員会でも平行線でした。
そこで、一つ御提案をしますが、大臣、もう一度だけ地元の首長さんたちと、それから司法書士会の会長さん、土地家屋調査士会の会長さんと会っていただけませんか。そして、本当のお気持ちを聞いて、その上で最終決断をしていただきたいと思います。いかがですか。よろしくお願いします。

○国務大臣(滝実君) いろんな場面があり得ると思います。

○森まさこ君 お約束をしていただけたものと信じたいと思います。
次の質問に移りたいと思います。残り時間少ないですけれども、法テラス出張所の設置についてお伺いをしたいと思います。
被災が起きまして、この法テラス、現在ある事務所以外の出張所を政府がつくってきたけれども、被災三県の中で福島県にだけはつくってこなかったということをこの委員会でも何回も御指摘をさせていただきました。そうしましたら、今と逆のことが起きました。今質問したのは、中通りの地震が物すごく大変な地域、そこから登記所を奪っていくという話です。今度は、政府は何ですか、私はずっと言ってきた、津波が甚大な地域の浜通りに出張所つくってくださいよ、そうしたら、浜通りにつくらないで中通りに更につくるというんですね。今度決まったことについて御説明していただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、福島県には二か所つくりたいというのがかねがね法テラスが考えてきたことでございます。
今般、二本松市の方に、地元の皆さん方がここでどうだろうかというような御提案あるいは御示唆もあって、取りあえずは二本松に出張所をつくろう、こういうことで地元との話がまとまりかけていると、こういうものですから、私も二本松へ行ってまいりました。そして、二本松市が持っている施設を法テラスの出張所の施設として提供しよう、こんな話もあるものですから、改めてお礼言上をしてきたというのが実情でございます。
しかし、あと、条件が許せば、今委員が御指摘のように津波に最も近いところでどこかないかということであれば、それはこれからの話がまだ付いていないものですから、これからの余地を残して取りあえず二本松でどうかな、地元の方もそれで何とかと、こういうような空気もありますので、取りあえずはお礼言上に行ってきたところでございます。

○森まさこ君 時間もあと一分ということなので、私の思いを述べさせていただいて終わりますけれども、やっていることが逆なんです。中通りの登記所を奪い、浜通りには法テラスつくらない。福島県の法テラスは、そもそもの法テラス事務所は福島と会津にあるんです。中通りと会津にあって、浜通りに元々ないんです。出張所をつくるんだったら浜通りに決まっているじゃないですか。浜通りの方々がいっぱい自殺しているんですよ。南相馬市とかいわき市につくってほしいという地元の声が大臣のお耳に届いていないということが残念でなりません。
私の今日の質問を聞いて大臣が真摯な御検討をしていただくことを希望いたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。

○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
今日は一般調査ということでございますが、先般、七月二十七日に参議院本会議で、当委員会で採決いたしました裁判所法の一部を改正する法律が可決、成立をいたしました。本委員会の各委員の先生方、あるいは法務当局にも届いていると思いますが、いろんな方々が運動をしておりまして、給費制是非続けてもらいたいとか、そういう方でございますが、例えばこの司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会、労働者福祉中央協議会、これは笹森さんが会長をやっていたところでございますし、あるいは山口二郎さん、北海道大学教授、あるいは本多良男さん、クレ・サラ被害者連絡会の事務局長であるとか、そういう人たちがつくっている連絡会でございますけれども、その市民連絡会の中で、この衆議院における附帯決議の趣旨にのっとり、フォーラムに代わる新たな合議制の組織を市民参加による開かれた検討の場とするよう求めるとともに、法曹を志す者の立場に立ち、給費制の復活はもとより、法曹養成制度全般にわたっての根本的な見直しによる改革、改善を行うよう強く要望する、こういうような声明を送ってまいりました。
別にこれで質問しようという話ではございませんけれども、本当、かなり心配して、注目をして、この新しい合議体における議論というものを見守っているという状況にあるわけでございまして、この法律、成立したわけでございますが、一年間という期限付でございますが、しっかり議論をしていただきたいなというふうに思うところでございます。
今日は、その裁判所法改正案の審議の中でも取り上げられたわけでございますが、法科大学院の現状について様々な問題点が指摘されているわけでございますが、私も新聞記事で、これ五月のゴールデンウイークのときでしたが、日経に載っていたんですが、明治学院大学法科大学院の本年度の入学者五名という、去年が二十九名、二年前が四十八人という、急激に減って、結局撤退が事実上決まったという、そういうような新聞記事に接しました。これはえらいことだなというような、もちろん適性試験の志願者もかつての五分の一以下になっているという状況もあるわけでございます。
そんな法曹養成全体の状況の中で、文科省中教審の大学分科会法科大学院特別委員会、今年の七月十九日に法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策についてという、そういう提言を行い、そしてこれを受けて文科省が二十日の日に、法科大学院教育改善プラン、こういうものを策定いたしまして、その改善方策を明らかにして、迅速、着実に改善に取り組むというふうにしているわけでございます。
具体的に、じゃ、どういうふうにやるのかというと、公的支援の見直し、すなわち補助金の削減ということになるようでございますけれども、この点について何点か伺いたいと思います。
去る平成二十二年九月十六日に、自主的、自律的な組織の見直しを推進するために、入学試験の競争倍率、それから新司法試験の合格率、この二つのメルクマールといいますか、指標として、補助金の削減を行うというふうにされておりました。これによって、本年度は六つの法科大学院が補助金が削減されることになったわけでございますけれども、この減額する目的、組織見直しの推進というふうに言われておりますけれども、要は統廃合あるいは間引き、こういうことなんでしょうか。この補助金減額の目的について、文科省にお伺いをいたします。

○政府参考人(常盤豊君) 文部科学省におきましては、今御指摘いただきましたように、平成二十二年の九月に法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しということで、新しい仕組みを設けたわけでございます。
この仕組みといたしましては、深刻な課題を抱えます一部の法科大学院に対しまして、一定の指標を設けて、御指摘をいただきましたが、一定の指標を設けて、これに該当する大学院については公的支援を見直すことで、自主的、自律的な組織見直しを含む改善を促進することによりまして、法科大学院教育の質の改善を図るということを目的としているものでございます。
この仕組みについては平成二十四年度予算から対応するということで、二十四年度の対象校は、これも御指摘ございましたけれども、六校となっているところでございます。

○魚住裕一郎君 それで、先ほどの改善プランについてという中では、今の入試の競争倍率、それから新司法試験の合格率に加えて、入学定員の充足状況、これを新たな指標として追加することとしているわけでございますが、これを追加する理由と、それからまた効果といいますか、もちろん文科省として期待している効果、どういうふうに考えているんでしょうか。

○政府参考人(常盤豊君) 現行の公的支援の見直しにつきましては、前年度までの司法試験合格率が三年連続して全国平均の半分未満であることと、それから前年度の入学者選抜における競争倍率が二倍未満であること、こういう二つの指標の双方に該当した場合、公的支援の見直しの対象になるという仕組みでございます。
この現行の公的支援の見直しに関しまして、中教審法科大学院特別委員会におきまして現状等確認をいたしましたところ、ここ二、三年で競争倍率二倍未満の法科大学院は減少傾向にある一方で、入学定員と実入学者数の乖離が大きくなっているという指摘がございました。このように、入学定員と実入学者数との間で大きな乖離を抱えた状況を放置しておくことは適当ではないということから、更に自主的、自律的な組織見直しを促すために、新たに入学定員の充足状況を指標といたしまして追加する措置を講じる必要があるという提言をいただいたものでございます。
入学定員の充足状況を指標として追加した場合には、課題を抱える法科大学院におきまして、入学定員と実入学者数との大きな乖離を是正すべく、例えば現行の入学定員を実際の入学者数に即した規模に改めるなどの組織見直しの効果が期待できると考えております。

○魚住裕一郎君 充足状況というか、具体的に、定員に対する、何割ぐらい、何%ぐらいというふうに考えるんでしょうか。

○政府参考人(常盤豊君) 法科大学院における組織見直しの更なる促進方策といたしまして、今申しましたように、入学定員の充足状況ということを新たな指標として追加する措置を講じる必要があるということを中教審の法科大学院特別委員会で御提言をいただいているところでございます。
文科省といたしましては、現在、この指摘を踏まえまして、入学定員充足状況を新たな指標として加えた公的支援の更なる見直しにつきまして、その具体的な割合あるいは他の指標との組合せ方などにつきまして、現在、精査、検討をしているところでございます。
いずれにいたしましても、公的支援の見直しが深刻な課題を抱える法科大学院に対する自主的、自律的な組織見直しを促す観点から適切な指標となるように十分検討していきたいと考えております。

○魚住裕一郎君 要は、いろんな、定員を減らせよという、そういう圧力を掛けながら補助金を削っていくという、そういう形になるわけでございますが、この新聞、私読ませていただいた日経の五月九日の記事の中で、補助金を奨学金に充てる法科大学院は多いというような表現ぶりもあったんですね。
それを奨学金に充てることの当否は別といたしまして、現実にもし補助金が削減されることになった場合、学生が奨学金を受けられなくなったり、あるいは優秀な教員を確保することが困難になって教育レベルが下がってしまうと。今でも合格者のレベルが下がっているという指摘もありますけれども、更に下がっていくんではないのかというふうに、そういう影響が生じかねないというふうに思うわけでございますが、文科省としてはこの点はどういうふうにお考えでしょうか。

○政府参考人(常盤豊君) 現行の公的支援の見直しにおける減額につきましては、その対象校が仮に国立大学でございましたら、国立大学運営費交付金のうち、法科大学院の設置のときに措置した額から学生経費相当分を除いた額、基本的には教員配置のための経費の一部を考慮して減額を調整するということにしております。私立大学におきましても、国立大学運営費交付金と同程度の額を目安に減額を調整するという仕組みとなっております。
文部科学省といたしましては、このような公的支援の見直しを受けた法科大学院について、教育の質の確保に向けて、速やかに自主的、自律的な組織見直しに取り組むことを促してまいりたいと考えております。
また、公的支援の見直しの仕組みを設けて以降、この影響ということでございますけれども、各法科大学院における競争倍率の改善が進んでいるというような、いわゆる入口での質を改善するという点では一定の機能を果たしているものというふうに考えております。

○魚住裕一郎君 先ほども御答弁ございましたけれども、既に募集停止を決めた法科大学院五校ございますね。大宮法科大学院とか姫路獨協とか駿河台、あるいは神戸学院、明治学院。今の改善プランによって新たに減額条件が加えられるわけでございますが、今まで以上に撤退とか統廃合が加速される可能性がもちろんあると思うんです。絞った方がいいという、そういう圧力でございますので、そういう方向性に行くのではないのかな。
ただ、在籍している学生にとってはえらいことになるなと思うんですね。自分の大学院が補助金の減額の対象になるかとか、本当にきちっと教育といいますか、法曹養成の質が確保されるのか。やっぱり大学院生が落ち着いた教育環境といいますか、そしてまた、レベルを確保していく必要があるかと思いますが、その点十分に補助金減額についても配慮をしていくべきだというふうに思うわけでございますが、配慮点といいますか、文科省はどういうふうにお考えでしょうか。

○政府参考人(常盤豊君) 法科大学院における学生募集停止などの撤退や統廃合の決定は、当該法科大学院がそれぞれ置かれている状況等を踏まえて大学の自主的な判断ということで、そういう判断に基づいて行われるものであると理解をしております。
その際の対応といたしましては、委員御指摘ございましたけれども、まず、在学生に対する教育が十分に行われるように配慮するということが必要であるというふうに考えております。教育環境や教育の質の確保について、従来どおり確保していくよう各法科大学院において取り組んでいただきたいというふうに私ども考えております。
なお、この補助金の削減でございますけれども、この中で、例えば競争倍率の指標ということを取ってみますと、あらかじめ具体的基準を示している中で、大学においてその指標を守るといいますか、そういう機会があるわけでございますので、そういうあらかじめ指標を示すことによって各大学において教育の質の確保のために適切な対応をしていただくということが基本であるかなというふうに思っております。

○魚住裕一郎君 本当に何でこういう情けないような状況になったのかなとは思うんでございますが、司法制度改革やって新しい法曹養成の制度をスタートさせる、その段階で、法科大学院卒業生は七割ぐらいは司法試験に、新しい司法試験に合格すると、そういうような形でスタートしたはずなんですよね。ただ、各大学、法学部をお持ちの大学は、それは法科大学院がなければうちのこの学部のブランド力が落ちてしまうと、そういう危機意識といいますか、そういうので皆さん手を挙げたと思うんですよね。
一方で、法曹という職業人というか、プロフェッションといいますか、そういう養成するわけで、単なる教育というそういう場だけではないと思うんですね。イギリスだったら、法曹養成は本当、職業人のinnsで訓練しているわけであって、大学教育とはちょっと違った在り方が本来の私は筋ではないのかなと思っております。
文科省の方は、法科大学院、手を挙げたところは認定のその基準を達していればみんなオーケー出してしまった。だから、それは当然、総定員が増えるに決まっている。だからこそ、逆に、文科大臣と法務大臣が連携をして、その辺を絞れるようにしようというのが連携法だったわけですよね。だから、我々から見ると、文科省は一体何やっていたのとともに、法務省何やっていたのと。もう縦割り行政のままで、あなたにお任せねと、こういうふうにしか見えないわけなんですね。
だから、本来、例えばアメリカであれば、ロースクールって千人規模ですよ、普通は。あるいは、韓国だって、頑張って絞って、そして新司法試験が八割方通るようにしてあるわけですよね。だから、ちょっとこれは本来、司法の場に多くの人材を来てもらうという趣旨から逆に今おざなりになってしまったなというふうに思っております。
ただ、そうはいっても、これだけスタートして、今を踏まえて少しでも良くしていくということは絶対に必要なんであって、それはもう各立場で改善策を模索していく必要があるんだろうとは思うんです。
そんな中で、七月十三日ですか、日弁連は、法科大学院制度の改善に関する具体的提言を取りまとめたということがあったわけでございますが、この大学院制度、これは統廃合と入学者総数の大幅な削減を促進すると、そういう言い方をしてございますし、また、司法試験制度についても、例えば受験回数を当面の間五年五回等に緩和する等々具体的に提言をしている。あるいは、この多様性も、地方の法科大学院また夜間の法科大学院ということも言及があるわけでございますが、法務省も文科省も、この日弁連の提言は、具体的提言、もう目を通されていると思いますが、これについての御所見、文科省並びに法務大臣にお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(常盤豊君) 今御指摘いただきましたこの七月の日弁連の提言におきましては、法科大学院の統廃合と学生定員の削減、あるいは教育の質の向上のための諸方策、未修者教育の強化など種々御提言をいただいているところでございます。これらの指摘の中でも、定員適正化のために入学定員充足率に関する基準を設けること、あるいは法学未修者のために教育内容、方法等の改善を図ること、こういう点は文部科学省としても特に重要なものであると認識をしております。
文科省といたしましては、中教審の法科大学院特別委員会の提言も踏まえまして、翌日、法科大学院教育改善プランというものを策定をいたしました。現在、現状認識といたしまして、法科大学院の間で非常に差が広がっているという状況、あるいは、法学の未修者と既修者との間の差がまたこれも大きくあるというような状況があるというふうに認識をしております。
そういう中で、法科大学院教育について、これまで非常に優れた、法科大学院を中核とする法曹養成制度という新しい仕組みの中で優れた成果も上がってきているのも事実でございますので、そういう辺りの積極的な発信をいたしますとともに、課題を抱える法科大学院につきましては、入学定員の適正化、教育体制の見直し等を加速化させていく、さらに未修者教育を充実する、そして、トータルといたしまして法科大学院教育の質の改善ということを何よりも促進をしたいというふうに考えてプランというものを策定をいたしました。これを是非、速やかに実行することによりまして、法科大学院教育の質の向上に努力していきたいというふうに考えております。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、出発点で法学部を持っている学校はほとんど法科大学院を目指した、そういう雰囲気だったと言わざるを得ません。ただ、法学部を持っていても、教員が充足できないところは諦めたというのが実態だろうと思うんです。
しかし、今考えれば三千人は多かったということでございますけれども、当初の理念としては、みんな、それはいいことだというふうに思ったに違いありませんし、我々もそういうふうに考えておりました。しかし、意外と、社会の隅々まで法曹資格を持っている人たちが活躍する場所が広がらなかったと、こういうことでございます。したがって、今の状況の中では、やはり法科大学院の中でこれ以上法曹教育を続けられないというところは多少縮小ぎみに収束をしなければしようがないと、こういうような段階を迎えていると思います。
しかし、当初の目的は、単なる弁護士、検察官、裁判官だけでなく、企業、公務員、幅広く法曹資格を持っている人たちが日本の社会に広がることが大切だというところから出発しているわけですから、その理念は堅持しながら、当面、どうやって家を小さくして何とかすみ分けていくかと、こういうようなことを現実問題として着手しなきゃいけない、こんな思いをいたしております。

○魚住裕一郎君 当面の現実的な対応はそうだと思いますが、ただ、やっぱり競争社会でもありますし、これはもう日本国内だけじゃなくて外国とやらなきゃいけないし、知的財産権にしてもあるいは労働紛争にしても、やっぱり多くの法的な素養を持った人材が各所に行かないと世界の中で太刀打ちできないなと。その理念自体は本当に、それを持ちながら、単に絞ればいいというだけではないというところを是非踏まえて策をやっていただく、善処していただきたいと思います。
次に、最近、検察改革ということで大きく取り上げられておりますけれども、先般、検事総長が替わりました。また、今月の頭ですか、この一年間、可視化の試行をされてこられた検証結果の公表があったところでございます。
ただ、検証結果に関して、笠間前検事総長、適切な取調べを研究するためにも可視化は続けるとする一方で、供述が得られにくくなったという、そういう指摘があったというふうに報道がされております。
ただ、いずれにしても、部分的録画は有効であるというような、そういう取り調べる側の論理を優先させるといいますか、そういう検察の論理が全面的に出たなというふうに思っておりまして、やはり全面的可視化を原則とすべきではないのかなというふうに私は考えるものでございますが、この部分的な録画で事足れりとするような、そういう検察の発想というか、そこを変えないと、意識改革というか、そこが一番大事だと私は思うんですよね。
この点、大臣はいかがですか。

○国務大臣(滝実君) 基本的には今委員のおっしゃるとおりだと思いますね。やはり目標は全面可視化。ただ、全面可視化といっても、今の取調べの実際に当たっている人たちから見ると、なかなかどうしたらいいかもう一歩踏み込めないところがあるんではないだろうかなと。したがって、トレーニングを通じて、全面可視化の中でも十分に警察官あるいは検察官がふだんと同じように意識せずに相手側から話を引き出す、そんなトレーニングということも必要だということは検察改革の中でもうたっているわけでございます。
要するに、基本的には全面可視化ということを目指しながら、結局は、やっぱり画面の前では言葉がスムーズに出ないとかというようなまだ相当なハンディがある人、ハンディを感じる人たちがいるということですから、そこのところは突破するようなトレーニングをして全面可視化を目指すというのが本来の姿だというふうに思っております。

○魚住裕一郎君 引き続き試行ということが継続されると思いますけれども、更に試行対象を拡大をしていくということでもございますが、今回、この検証結果を、内部検証だけなんですよね。第三者がやっぱり関与して、もう少し客観性を持ったそういう形でやっていくべきではないかと。これは衆議院の法務委員会でも質問になったわけでございますが、引き続き行われる検証にもこの第三者的な立場の方を加えていくべきではないかと思いますが、大臣の御答弁を求めたいと思います。

○国務大臣(滝実君) やはり、可視化先進国と言われるところの実際のところをもうちょっとみんなで見に行って、可視化は恐るるに当たらないと、取調べの側から言ってですよ、そういうような中で進めるべきであろうと思います。
第三者の問題も、今回は、やはりそれがプライバシーに影響するとか、あるいは言いたいことがしゃべれないとか、そんなことをいろいろ気にして内部の人間だけで検証したというような結果に終わっていますけれども、やはりそれはもうちょっとオープンでやらないとなかなか世間の評価が定まらないという面はあるだろうと思いますから、それはやはりこれからの問題として意識して取りかかっていかなければいけないというように思います。

○魚住裕一郎君 単なる可視化だけではなくして、先ほど申し上げたように意識改革というのが一番大事だと思いますけれども。そういう中で、「検察の理念」という、検察官の倫理規程ですか、そういうのが制定されたということは、去年の、一年前のことですよね。これ、理念って、まあ変な話だけど、こんなことをやらなきゃいけねえのか、情けねえなという感じもするわけでございますが、具体的にどう徹底しているんですか。
何かそれを縮小コピーして常に持ち歩いていると、政治家の行為規範を議員手帳の中に刷り込んであるような。これ持ち歩いたって別に「検察の理念」が実現できるわけではないわけであって、やっぱり教育というか、常にお互いに意識しながらやっていくことが一番大事かと思いますが、ちょっとその点、大臣、どうお考えなのか、御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 「検察の理念」をお守りとしていてもしようがないわけでございます。やはり、だけれども時がたつと、あのときに何でそういうことを言ったかという事実関係から出発するんだということを忘れないためにも、これは拳々服膺して事あるごとに、あの前田事件にいたしましても、今回の田代事件にいたしましても、そういうようなものを、事実を踏まえたものを前提として常に拳々服膺すると、こういうことに尽きると思います。

○魚住裕一郎君 終わります。

○森ゆうこ君 国民の生活が第一、森ゆうこでございます。
質問の順番を少し変えさせていただいて、二番目の質問からさせていただきたいと思います。
昨日の決算委員会、本日、法務委員会に御出席の先生方の中でも、特に与党の先生方で、昨日の決算委員会に御出席の先生方も多数いらっしゃいます。
昨日の決算委員会で、私は、最高裁、裁判所の経理のずさんさというものを実物の証拠をもって提示をさせていただき、また会計検査院からも、支払調書等があったとしても、あるいは請求書、納品書等があったとしても、実態を調べてみないと必ずしも本当にそのような支払が行われたのか、そのような経理処理が行われたのかは分からないという、かつての検査について御報告をいただいております。
そして、昨日の決算委員会におきましては、東京第五検察審査会、二〇一〇年九月十四日に起訴議決を行った東京第五検察審査会の十一人の審査員、この年齢が、検察審査会事務局が最初に発表したときには三十・九歳、十月四日。そして、十月十二日には三十三・九一歳。これは十一人の審査員の年齢を十一人分足して十一で割るところを十人分しか足さなくて十一で割ったという大変お粗末な理由を説明をされまして、そして、その訂正を一回で済ませればいいものを、さらに翌日の十月十三日、その年齢の基準日を就任日から起訴議決を行った日に変更したとして再び変更いたしまして、十一人の平均年齢が三十四・五五歳という年齢になりました。
しかも、この年齢が、一回目の起訴相当の議決を行った検察審査員十一人、全く別の人たちの集団でございますが、その十一人と小数点第二位まで全く同じ三十四・五五歳というあり得ない数字であったということから、この検察審査会、起訴議決を行った検察審査員十一人は本当に実在したのか、幽霊審査会ではないかということで、大変多くの国民の皆様から疑念の声が寄せられ、私はずっと調査をしてまいりました。
そして、昨日の決算委員会におきまして、最高裁の説明がおかしい、与野党共に先生方からそのような声が上がり、そして、私どものこの疑問を払拭するには、少なくとも、検察審査員、起訴議決に参加した検察審査員十一人の生年月日を情報開示すべきであるというふうに要求をさせていただきました。
改めてお聞きをいたします、最高裁。東京第五検察審査会において二〇一〇年九月十四日の起訴議決を行った検察審査員十一人の生年月日の情報開示を求めますが、いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(植村稔君) お答えをいたします。
今委員御指摘のとおり、昨日もお答えしたところでございますが、東京第五検察審査会では、議決に関与いたしました審査員の生年月日については非公表としていると承知しております。
その理由につきましては、東京第五検察審査会によれば、検察審査員の生年月日をお一人お一人明らかにするということになりますと、審査員の方々のプライバシーの保護の観点から望ましくないというふうに考えて、審査員の生年月日については非公表という扱いにしているというふうに承知をしております。

○森ゆうこ君 その答弁に対して、与野党問わず、委員会に御出席の先生方からおかしいと、おかしいという声が上がったわけでございます。
生年月日それ自体を情報開示したところで、どうやって、じゃ、どうやってその個人を特定できるんですか。それのどこがプライバシーに影響するんでしょうか。本当におかしな説明だというふうに思いますけれども、質問しても同じ答えしか返ってきませんので、これ時間の無駄なんですね。
先ほどるる申し上げましたこの検察審査員十一人の平均年齢の奇々怪々、三回も発表し直した。これを逆算してみましても、どう考えてもそういう年齢の審査員がそろうということがないと専門家が計算して言っているわけですので、少なくとも私は、これだけ私のところ、毎日多くの国民の皆さんから、これを何とか情報開示させて、そしてこの問題を明らかにしてもらいたいという要望をいただいているわけでございます。
検察審査員十一人の生年月日を開示していただくよう、これは、この法務委員会として、理事会で合意がございますれば理事会だけで開示していただいて見るとか、そういうことは十分可能だというふうに思いますので、委員長にお願いを申し上げます。そして、各会派の理事の先生方にもお願いを申し上げますけれども、是非、このまず東京第五検察審査会の二〇一〇年九月十四日の起訴議決を行った検察審査員十一人の生年月日、情報開示について、理事会でお取り計らいをお願いしたいと思います。

○委員長(西田実仁君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をさせていただきます。

○森ゆうこ君 続きまして、同じ問題なんですけれども、検察審査会、この九月十四日に起訴議決を行った東京第五検察審査会でございますが、検察審査会法四十一条の六の二項によれば、起訴議決、強制起訴につながる起訴議決、つまり二回目の起訴相当、起訴議決、これを行う前に、この二回目の審査において起訴議決を行う前に、必ず事件を担当した検察官が出頭して、そして説明をしなければなりません。これは、これを行っていないと検察審査会法違反であるということは既に予算委員会等でも御答弁をいただいているところでございます。
九月十四日の起訴議決の前に、これ、齋藤隆博当時特捜部副部長が行って説明をしたということになっているわけですけれども、齋藤副部長御自身がその当時捜査に協力していた民間人に対して、東京第五検察審査会のこの起訴議決の前に行う説明に出かける、出頭する直前に民間人に対して、これから東京第五検察審査会に説明に行ってくるというふうに言ったということを、私はその民間人から直接伺っております。そして、その場には複数の民間人がいたということも聞いております。
この問題について、私はずっと追及をし、そして求めてまいりましたけれども、出張記録、徒歩の出張記録があるにもかかわらず、この齋藤検察官の出張の記録がない、それは運用で必ず作ることになってはいないからだとか、様々な言い訳をして、きちんとした情報開示がされません。
そこで、ただ、先回の七月二十四日の予算委員会において、法務省刑事局長は、この齋藤検事が東京第五検察審査会へ出頭した、そのときの東京第五検察審査会から東京地検特捜部あてに発出された検事の出頭要請文があるということは明言されました。
法務省刑事局長、この出頭要請文、提出をお願いいたします。

○政府参考人(稲田伸夫君) お尋ねは出頭要請書自体を提出できないかということだろうと思いますが、この出頭要請書は刑事訴訟法四十七条に言います訴訟に関する書類に該当いたします。刑事訴訟法四十七条本文は訴訟関係書類の公判開廷前における非公開の原則を定めておりまして、その点で提出いたすことは困難であると考えております。

○森ゆうこ君 その言い訳というか、その答弁は全く納得できません。齋藤副部長自身がそうおっしゃっているんですよ。つまり、九月十四日の前に、まあ行かなかったとは言っておりませんけれど、行ったのは九月末であると。また、最近、その民間人に対して、私の追及は正しかったのであるという趣旨のことをおっしゃっているというふうにお聞きをいたしております。
刑事局長がその検察審査会から受け取った出頭命令書を開示されないということですけれども、最高裁の方にお聞きをいたします。東京第五検察審査会が発出した出頭命令書でございますので、東京第五検察審査会にもその控えがございますけれども、それを提出していただけませんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(植村稔君) 東京第五検察審査会によりますと、これは一般論でございますが、検察官の出席を求める文書につきましては、個別事件の審査に関する文書でございまして、検察審査会法二十六条に定める会議非公開の趣旨によって提出することができないというふうに考えておられるというふうに承知をしております。

○森ゆうこ君 行政文書、事務連絡の文書だというふうに思います。確かに検察審査会法では議事は非公開、会議は非公開とするというふうに書いてありますけれども、この起訴議決を有効たらしめるための検察官の起訴議決前の出頭について、これだけ疑念が寄せられているわけですので、しかも本人がそういうふうに言っているわけですから、確実に九月十四日の前に出頭して説明をしたと、検察の捜査は正しかったのである、検察が起訴できなかったのは証拠が不十分だったからであるというふうに説明に行ったわけですけれども、何で出せないんでしょうか。これ、もう何度もやりましたし、いつもこういうお答えでございますので、らちが明きません。
委員長、お願いでございます。法務委員会理事会においてこの件に関して協議をしていただき、法務省そして最高裁から齋藤検察官の出頭命令書、出張記録等々、この件に関する情報開示を委員会にしていただきますように協議をお願いいたします。

○委員長(西田実仁君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。

○森ゆうこ君 それでは、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
次に、東京第五検察審査会に東京地検特捜部が提出したいわゆる捏造捜査報告書につきまして、前回質問させていただきましたけれども、続けて質問させていただきます。
まず、その捜査報告書というものでございますけれども、捜査報告書というものは全ての事件について作るんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 捜査報告書、これは一般にでございますが、捜査活動の結果を報告する形で書面化しているものでございます。したがいまして、個々の事件においていかなる捜査活動を行い、これをどのようにして証拠化するのかということについて、それぞれの事件の事案の内容や捜査状況に応じて個別具体的に判断されるというようなものでございまして、一般論としてどういう場合にとか、どんな事件にということを申し上げることは難しいと思いますが、必ずしも全ての事件について捜査報告書を作成していると、義務付けられているわけでないことはこれは間違いないわけでございますが、じゃ、作らない場合が多いのかと言われると、そうでもないんだろうと、かなりの事件において捜査報告書というのは作られているんだろうというふうに思います。

○森ゆうこ君 この捜査報告書についての最高検察庁、六月二十七日の報告の中には、捏造であると、こういううその報告書を検察審査会に提出する、そういうことがあってはならないと東京地裁の判決で厳しく批判されたわけでございますが、この捜査報告書の読み手という表現が何度か出てくるわけですけれども、この捜査報告書の読み手というのはどなたなんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) お尋ねはその田代元検事が作成した捜査報告書に係るものだろうと思いますが、この報告書は東京地検における上司を名あて人として作成されたものでございまして、その意味からすれば、第一次的にはその名あて人は上司であり、まあ検察官は一体として捜査活動を行っておりますので、その上司らを含む検察官らに対する報告文書として作成されたものであるということになると思います。その意味で読み手は上司らということになると思います。
ただ、これを作成した後は証拠書類となり得ることから、起訴された事件においては、例えば証拠開示によって、弁護人でありますとか、同意される場合には裁判官がお読みになることもあると思われます。また、不起訴とされた事件にありまして検察審査会に申立てがあれば、検察審査員等がこれを読む可能性があり得るものというふうに承知しております。

○森ゆうこ君 ということは、今回の捜査報告書の作成は、そもそも検察審査会の審査員十一人の、言わば法律には素人の一般国民から、有権者からくじで選ばれる十一人の素人の検察審査員が密室で読むということを想定して作られたと、そういう意味ですね。

○政府参考人(稲田伸夫君) まず、この報告書自体は田代元検事自体が作ったものでございまして、その当該田代元検事は、主任でありました木村検事から、石川氏が供述調書の作成に応じた経緯を捜査報告書にまとめるように指示されたことから、上司への報告用であろうというふうに考えて、上司への報告用であろうなどと考えて捜査報告書を作成したというふうに最高検察庁においては認定したものと承知しております。

○森ゆうこ君 今の御答弁の、田代検事はこれは上司の報告用だというふうに思ったという御答弁ですけれども、それは直接確認されたんですか。田代さんは、多分これは上司への報告書だろうというふうに思ってこの捜査報告書を作ったというふうに、最高検のこの捜査あるいは調査に対してお答えになったんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいまの点は捜査にもかかわるものでありまして、不起訴にした事件の証拠関係にかかわるところでございますので、子細についてお答えするのは差し控えさせていただきたいと思いますが、今回の件につきましては、最高検察庁において、田代元検事を始めとする関係者から事情聴取を行った上で、捜査、調査を遂げたものでございますので、そのようなものとして御理解をいただければというふうに思っております。

○森ゆうこ君 そのようなものとして御理解くださいって、そんな答弁納得できませんよ。何言っているんですか。
最高検としてこの報告書は責任を持って提出したんじゃないんですか。どっちなんですか。田代さんはそう言ったんですか。捜査は捜査でしょう、でも調査はきちんと報告しなきゃいけないじゃないですか。答えたんですか、そういうふうに。最高検のやった調査というのはそんなにいいかげんなものなんですか。ちゃんと答えてください。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいまも申し上げましたように、最高検察庁においては、田代元検事を始めとする関係者から事情聴取を行った上で、今回の捜査結果、調査結果を取りまとめたものであるというふうに承知しております。

○森ゆうこ君 具体的な質問をしているんですよ。具体的にきちんと答えてください。田代さんはそう言ったんですか、言ってないんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども申し上げましたように、最高検察庁においては今の事実関係を認定したことは間違いございません。その上で、個別の関係者の供述内容につきましては、先ほども申し上げましたように、不起訴事件の内容の証拠関係にわたるところもございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

○森ゆうこ君 いや、何言っているんですか。これはあってはならないことが起きたわけでしょう。最高検として責任を持って調査して、そして報告書を出し、調査の結果、問題なしということでこういう報告書をまとめられたんじゃないんですか。ただ、一部、不用意にというか、問答形式でありもしないことを書いてしまったので、それについては減給処分。
きちんと調査したんですか。今の答弁、全くおかしいですよ。ただ、ここだけ何度もやっているわけにいかないので、また次回聞きますけれども、きちんと次回までに調査をした監察官に聞いてきてください。そういうことを言ったのかどうか、聞いてください。
報告書の読み手は誰か。要するに、検察審査会の十一人のメンバーも想定していたということなんだろうと思いますけれども。そうしますと、齋藤検事の報告書、齋藤副部長の報告書に下線が引いてある理由は何ですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) この報告書は、原案を佐久間元部長が作成したものでございまして、それを最終的に齋藤が確認をして署名をしたものでございますが、この佐久間が起案した際に、小沢氏への報告などに関する石川氏らの供述については、小沢氏の事件に係る起訴相当議決において共謀に関する直接証拠と位置付けられている重要な証拠であり、他方、検察はそのやり取りについて具体性に欠けるなどと評価していたので、そのやり取り部分などが検察審査会に分かりやすいようにするため、その一部にアンダーラインを引いたと認めたものと承知しております。

○森ゆうこ君 つまり、素人の国民が密室の検察審査会でその捜査報告書、アンダーラインが引かれた捜査報告書を読んで、そのアンダーラインの部分が重要だと、アンダーラインの部分が重要だというふうにその検察審査員たちが認識する、そういうふうにするためにアンダーラインを引いたということでよろしいですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ちょっと言葉の使い方の問題なんだろうと思いますけれども、捜査報告書の中にはいろいろと証拠の引用の部分がございまして、それぞれにおいて、その石川氏の供述の信用性を評価する上でのいろいろな部分がございます。特に、アンダーラインを引いた部分についても、そういう意味で重要な部分ということから、こういうアンダーラインを引いたというふうに承知しているところでございます。

○森ゆうこ君 意味がよく分かりませんね、今の答弁は。
つまり、本当は検察審査会というのは、検察の行った不起訴の判断、これは正当であった、検察は恣意的に不起訴にしたわけではない、一生懸命捜査したけれども、起訴にするに足る十分な証拠がなかったということで不起訴にして、それに対しておかしいというふうに言われて、今度、起訴議決をする前には、いや、我々がやった捜査は正しかったんです、不起訴にしたことは正しかったんですと、自らが弁明に行くわけでしょう。その検察審査会に対して、何でこういうふうにアンダーラインを引いた、そのアンダーラインの部分は、つまり我々は起訴できなかったけれども起訴してくださいと、そういう部分を強調したところにアンダーラインが引かれておりますけれども、おかしいんじゃないでしょうかね。
それで、田代検事が、度々、これ本当にこうおっしゃったんですか、記憶がごっちゃになった。まず、この記憶がごっちゃになったというフレーズを度々繰り返したのかどうかということと、記憶がごっちゃになった、そして、五時間に及ぶ捜査、取調べ、全くメモも取らずに、記憶がごっちゃになったと言って偽の捏造捜査報告書を作る。それを信用できるとしたわけですね。
その田代検事の記憶がごっちゃになったという、そういうフレーズを使ったのかどうか。その記憶がごっちゃになったという説明を、これは信用できるというふうに最高検は判断し、そして滝法務大臣もそれを了承したわけですけれども、この記憶がごっちゃになって、メモも何もない五時間分の取調べの状況等を報告書に書いた。これは何で信用できるというふうにしたんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) まず、先ほどの答弁、若干不正確かもしれませんのでもう一度申し上げますが、アンダーラインを引いた部分が必ずしも石川供述の信用性を肯定する部分のみならず、減殺する部分についてもアンダーラインが引かれているという意味で、価値中立的なアンダーラインの引き方であるというふうに私どもとしては考えております。それが一つです。
それと、今の田代検事のごっちゃになったという説明に関する部分でございますが、それにつきましては、刑事事件の観点からは、これを覆して故意があったというふうに認定することは困難であるというふうに判断をしたというのがまず捜査の結果でございます。
それから、監察調査といたしましては、このような思い違いをしていた可能性はあるものの、一定の疑念は残ると言わざるを得ず、具体的なやり取りの記憶として明瞭でない部分があったにもかかわらず、問答式で整理して記載したことは不適正と言わざるを得ないというふうに帰結しているところでございます。

○森ゆうこ君 全く日本語になっていないというふうに思います。
皆さん、先生方も御存じないかと思うので申し上げますと、今私が議論をしております田代検事の捏造捜査報告書、そしてアンダーラインが引かれた齋藤検事の、齋藤副部長の捜査報告書、これは佐久間当時の特捜部長が自ら書いたというふうにも言われておりますけれども、そういう捜査報告書、木村検事の捜査報告書、そして石川議員の録音、取調べを隠し取りした録音の反訳書、これは全てインターネット上に五月の連休中にロシア語のサイトにまずアップをされて、そしてそれが国内のある人のサイトに集約されて、もう国民の全てが見られるような状況になって実は大変な騒ぎになっていると。
誰が見ても今の刑事局長の説明がおかしいというふうな内容でございまして、ちょっと具合が悪くなりそうなんですけれども、検察官というのは、私は、我が国において最も難しい試験を通過する。試験を通って、そして、それはただ勉強ができたとかって、そういうことではなくて、本当に正義感にあふれ、この国に法と正義、我が国が法治国家として、そして我が国が本当に民主主義国家として成立をすると、その基盤を守るという、もう非常に尊い使命感に燃えた、そういうすばらしい人たちが司法試験に合格し、秋霜烈日のバッジを付けているんだというふうに思っておりますけれども。難しい試験を通って、この日本語になっていない言い訳ばかりを繰り返す、そんなためにそのバッジを付けていらっしゃるわけではないというふうに思うんですけれども。
大臣、大臣に伺いますが、私がなぜここまでこの問題にこだわっているのか、恐らくなかなか分かっていただけていないようなので、ちょっとお聞きします、通告していないんですけれども。検察官の独任制といいますか、検察、それについて、検察権行使の権限主体と検察官は言われているわけでございますけれども、このことについて、大臣のお考えをお述べいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) やはり検察官というのは、基本的には一人一人が独任制の立場で、いろんな、あちらこちらからのいわゆる圧力、そういうものに左右されずに、独任制ですから、一人一人が独立した判断を行う、これが検察官としての使命というふうには理解をいたしております。

○森ゆうこ君 根拠になる条文もお答えをいただきたかったというふうに思いますけれども、その一人一人が独立をして、検察庁法第四条によれば、全ての検察の権限を一人で行使をできる、基本的には、条文からすればですね。もちろん、一体となってやるという、いろんな制約は掛かっているわけでございますけれども、それだけ重い権限、そしてその裏に責任があると。
ですから、この検察官、非常に重い存在であるというふうに思いますし、その検察官が記憶がごっちゃになってこんなでたらめの捜査報告書を提出する。そして、それが意図的ではないと簡単に判断をして、そして組織的な関与も疑われている中、このようないいかげんな報告書を出して終わりにしようとする。これは私には全く理解できません。
もう一度よく考え直していただきたいと思いますし、今日、通告した質問、まだ部分的にしかできておりませんので、次回また一般質疑等でお聞きをしたいと思います。
以上です。

○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
今日は、今の森委員の質疑と同様、検察の在り方について質疑をさせていただきます。
このところ、最高検の検証、例の厚生労働省の元局長の事件を受けまして、平成二十二年十二月二十四日に検証が出されております。そして、それを受けて、また法務省の中で検討会議の提言、そして大臣の名前で発出されました検察の再生に向けての取組、一連のものが出ておりますが、これまでこの委員会で集中審議といいますか、そういったものはまだなされていないんですけれども、なかなか取り上げる機会がなかったものですからここまで来たんですが、今日はこの検察の在り方そのものについてお尋ねしたいと思っております。
私自身、今、独任制の話もありましたけれども、今回の検察の在り方がまさに問われているのは、検察官あるいは検察庁そのものの在り方に本来は根差しているのではないかと考えております。逆に言えば、この最高検の検証ですとか、ある特定の事件においてどういったものがあったのか、そしてそれに対して現行法の枠内で、対症療法的にと言ったら失礼ですけれども、幾つかの改善を図っていこうというものであって、抜本的な検察官というものの在り方そのものには踏み込んでいないというふうに感じております。
ここは立法府ですので、まさに検察庁法あるいは刑事訴訟法を含め、しっかりと本来の検察官の在り方というものを議論していかなくちゃいけないと思っておりますので、今日はその観点から質問させていただきます。
まず、大臣にお尋ねいたしますけれども、検察官の仕事というのはそもそも一体何なのか、これについてお尋ねいたします。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、刑事関係法規がきちんと実効性を持っているか、そういうような観点から職務を構成をする、そしてそれに基づいて起訴するものは起訴する、こういうことが検察官としての最大の仕事、こういうふうに思います。

○桜内文城君 先ほども指摘がありましたが、独任制という珍しい、行政組織にしては珍しい仕組みが依然として続いております。恐らく経緯としては、この検察庁法、大変古い法律でもありまして、戦後すぐ、まだ国家行政組織法ができる前に作られた法律でもありますので、言わば組織として誰が処分権者なのかとか、そういったものをちゃんと定める前に独任制のような規定ぶりになったのじゃないかなというふうに感じております。
一方で、今現在、実際の職務の運用としましては、検察一体の原則と言われるものとかもありますし、そういった意味では、単に一人の独断でもって全てのこういった処分を行っていくというよりも、組織として全体としての不公平が生じないような、そういう努力もされておるとは思うんですけれども、これやはり、検察官の権限、独任制というのもそうなんですけれども、他国との比較において見れば、例えば刑事訴訟法二百四十八条の起訴便宜主義、これも一定の裁量があってしかるべきとは思いますが、その限界というものがこれまでしっかりと議論されていなかった、あるいは限界というものが認識されていなかった、それが私、ここ最近のいろんな事件の根底にあるように感じております。
検察官の裁量について、私、大変疑問に思っておりますのが、この委員会でもこれまで何度も取り上げさせていただきましたが、一昨年の尖閣事件の折の、あのとき、まさに独任制ということもあるのかもしれませんけれども、那覇地検の次席検事の独断でもって日中関係への配慮という、刑事訴訟法の文言を使えば犯罪後の情況というものを無限に広く解釈して、そこに検察官の裁量権を認めていった。
やはり、裁量というのはあくまでも法の趣旨に照らして限界があると考えるわけですけれども、その辺、大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。検察官の裁量について。

○国務大臣(滝実君) 今委員は尖閣の事件を引き合いに出されましたけれども、あの事件でも、私どもは当時、報道でしか情報がありませんでしたけれども、例えば外務省の担当官を呼んで事情を聴くとか、そんなようなことも報道では伝えられているように、独任制といっても自分だけの判断で物事を処理していくわけじゃなくて、いろんな意見を、独任制は独任制として、職務を責任を持って遂行するための情報に基づいた判断をしている、これがあの尖閣のときにも出てきた検察官の姿ではなかったかなと、こんなふうに受け止めております。

○桜内文城君 であれば、なおのこと、独任制というのを見直すべき時期に来ているんではないのかなというふうに考えます。これは私だけが言っている話じゃありませんで、例の最高検の検証の中でも、例えば特捜部の独自捜査事件を検事長指揮事件とするという提言、検証の中でなされております。これこそ、まさに独任制の弊害を除去するために、一人で全てを処分するということではなく、組織として合議の上決めていくという制度がやはり必要じゃないかということなんですけれども。
今の検察庁法というのは先ほど言いましたように大変古い法律なんですね。そしてまた、後ほどもっと詳しく聞きたいと思うんですが、特捜部の設置根拠、法的な意味でいえば、検察庁事務章程という、今で言えば恐らくこれは省令に当たるものだと思うんですけれども、こういった古い規程の中で非常に茫漠とした文言でしか書かれていない。
組織の在り方、合議制にしていくですとか、行政機関であるのは間違いないところですので、その点、今のような最高検の検証が出てもなおこの独任制というものを維持していく理由というのが実質的にあるのかどうか、これは立法論にかかわりますので、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 確かに、委員の御指摘のとおり、検察官の在り方というのは、我々は刑事訴訟法の中で言わば講学上の問題としてまず教えられるというところから出発しているわけでございまして、実際に検察官業務に携わった者以外はそれで終わりということが、基本的な知識、経験の限界だろうと思います。しかし、今おっしゃったように、独任制といっても上司の指示権というのは、指揮権というのは当然あるわけでございますから、先ほどのお引き合いになりました検事総長が云々というところは、やはりそういう独任制であっても検事総長が言わば指示する、そういうような権限というものは当然、検察庁法の中で認めている。
したがって、独任制といっても、それはやはり一つの組織体としての指揮命令系統はあるんだろうというふうに理解するのが適切じゃないだろうかなという感じは持っております。

○桜内文城君 いや、そこが法的に明らかになっていないので尖閣事件のような、一体誰が処分したのかというような、まさに日本政府として誰が意思決定したのかというのが曖昧になってしまうんですね。
政府の意思決定の責任を明らかにするという意味でいえば、この独任制を維持すべき部分、あるいはそうでない部分というものをはっきりさせないと、これ、一体誰が考えたら那覇地検の次席検事が外交関係に配慮して処分の是非を決めるのか、こんな意思決定あっていいはずないんですね。
そしてまた、もう一つ、先ほどの起訴便宜主義に関する検察官の裁量権、これも、犯罪後の情況、これ、法の趣旨に照らせば、まさに今回、今回といいますか、尖閣事件でいえば公務執行妨害事件に関して、それに関する犯罪後の情況というものを考慮する権限はあると思いますよ、裁量権の範囲として。
しかし、それを大きく超えて日中関係への配慮ということを、それは裁量権の範囲外だと、通常、刑事訴訟法というものを全体の趣旨に照らせば考えるんですけれども、それを、むしろ政府あるいは法務省も含め、そういった詭弁というか、裁量権が無限に広がるような解釈をそのままにしておいて、そしてまた独任制というものを何もいじらずに、このように運用として特捜部の独自捜査事件のみ検事長指揮事件とするとか、こんな小手先のことをやっても駄目だと思うんですよ。いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(滝実君) もちろん、今委員が御指摘になったような一つの考え方というのはあるんだろうとは思います。
ただ、今までの独任制ということによって個々の検察官がそれぞれ独立した判断をする、その利点というものはやはりこれまでの経験の中で培われてきたということも大切にしなければいけない、そういうふうに私は受け止めております。

○桜内文城君 逆に、他の行政機関の場合、個人としての責任が明らかにならないのでかえって無責任な行政が横行しているという弊害もありますので、独任制が絶対に悪いと言うつもりはありません。しかし、こういった事件も起こしていく人がいるという意味でいえば、これはほかの行政機関であれ、あるいはほかの民間企業という組織であれ、必ずやはり倫理観というものが問われなくちゃいけないわけですね。倫理観というものをどういうふうに規制するか。これ倫理ですので、まさに法で規制するわけにいかない。
であれば、まさに仕組みとして、その独任制というものを見直していくですとか、あるいは刑事訴訟法上の起訴便宜主義という裁量権の範囲というものをきちっと厳密に規定していくですとか、こういったことがないと検察の再生というのは私はあり得ないと思います。また、そこに手を触れずに、小手先で今の現行法の枠内で幾らか工夫しましたというのであれば、これはまさに国民からの信頼を回復するということは私は不可能だと思いますけれども、その点についてもう一度お尋ねいたします。刑事局長も手を挙げていらしたので、刑事局長も一言どうぞ。

○政府参考人(稲田伸夫君) 前提事実だけ御説明をさせていただきたいんですが、確かに、検察官の独任制というのが検察庁法上認められているのは先ほどから御指摘のとおりでございます。
ただ、それに対しまして、検察庁法七条では、検事総長に全ての検察庁職員の指揮監督権を認めておりますし、検事長には高等検察庁とその管内の地方検察庁、区検察庁の職員の指揮監督権を認めております。
このように、まず、通常の行政官庁と同様に上司による指揮監督権が認められておりますし、さらに、検察庁法独自のものといたしまして、十二条で、事務引取り移転権というのがございまして、検事総長、検事長又は検事正は、その指揮監督する検察官の事務を自ら取り扱い、又は他の検察官に取り扱わせることができるということにしておりまして、独任制ではございますが、それぞれのその独任制の検察官が訴訟活動等の行為を行おうとするときにはこの指揮監督に付されるわけでありますし、場合によっては事務引取り移転権ということで取扱いを取り上げられてしまうということはあり得るというような形で、検察官同一体の原則という形で、行政としての一体化といいますか均斉化を図れるようにしているという実情にあるということを御理解いただきたいと思います。

○桜内文城君 刑事局長、真面目な方なので余り悪く言いたくないんですが、だから駄目なんですよ。
今おっしゃったように、検察一体の原則というか組織として仕事をやるという部分と、それから検察官独任制の部分と、これをうまく使い分けているわけですよ。その悪例の一つが、大変大きな悪例の一つが尖閣事件のときの那覇地検の次席検事の勝手な処分ということになっているわけですよ。本当は日本政府が、外交関係に配慮するのであれば、それはまさに日本政府自体が考えなくちゃいけない問題ですよ。一地検の次席検事が処分できるような案件じゃありません。そこのところを、裁量権の限界も明らかにせずに責任の所在を曖昧にして、このような大変大きな権限を持つ検察官の在り方というのが今まさに信頼を失ってきているということなんです。ですので、法律としてはまさに刑事局長がおっしゃったとおりだけれども、その法律の規定をうまく場合によって使い分ける、こういった在り方が良くないということを指摘しておきます。
もう一つ、ちょっとここは大事なところなのでもう一度大臣にお伺いしたいんですけれども、今この尖閣事件を例に取りまして何回か申し上げてきましたが、やはり起訴便宜主義というものについては、これ諸外国を見ましても起訴便宜主義がないわけじゃないんですね。ないけれども、非常に限定的に運用されているといいますか、どちらかというと起訴法定主義といいますか、まさに行政機関として法の執行をしっかりやっていく、裁量権というものを余り大きく認めずに、おのずと限界があるということで検察官の仕事がなされてきているわけですよ。ある種、今の日本の起訴便宜主義、刑事訴訟法二百四十八条、絶対悪いとは言いませんけれども、やや世界的に見ても特異な条文となっております。
やはりここは、検察官の、検察の在り方というのを考えるのであれば、この起訴便宜主義の範囲あるいは裁量権の範囲というものをきっちりと法的にも決めていく必要があると思うんですけれども、今後そういった議論を行うつもりはありますでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 基本的に、検察改革の中で、今まで、起訴便宜主義についてもう一遍根本に立ち返って議論をしようと、こういうような段階ではございません。
しかし、今委員が仰せのように、起訴便宜主義も全くの便宜主義、検察官の考え方一つでもって動くわけではなく、過去のいろんな事件の中でおのずからこういう場合には猶予をするんだというようなルールが自然にでき上がってきている、これが日本における検察の実態じゃないだろうかなと思います。
ただ、そうはいっても、きちんとしたルールが必ずしも明示されているわけではありませんので、そういう意味では何がしかの見直しというか議論というものは常にしていく必要はあるかもしれません。

○桜内文城君 起訴便宜主義といいますか、検察官の裁量の範囲を明確化していくということと、そしてもう一つ、やはり検察官の在り方、検察庁の在り方を考え直していく上で考えなくちゃいけない論点といたしましては、やはり独自の捜査権ということがあるかと思います。
各国の制度等々を見ておりますと、検察官が独自に捜査を行う場合というのは非常にまれなんですね。日本の場合、刑事訴訟法上、独自の捜査権というものが規定されておりまして、だからこそ特捜部のような独自捜査を行う部署があったりするわけですけれども、この起訴便宜主義というか、検察官の裁量の広さと、そして自分でもって捜査できる、これが相まって今回のような不祥事、犯罪を検察官が起こしたんではないのか。
これは大きな原因だと思うんですけれども、その評価を大臣にお尋ねいたします。

○国務大臣(滝実君) 検察の在り方の検討会でも、独自捜査について存続すべきかすべきでないか、こういう議論があったことは記憶を持っているわけでございます。その際にも、やはり抑制的ではございますけれども、独自捜査というものの意味、過去における流れを見れば、あながちそれを全廃するというようなことをするとやはり悪が眠ってしまう、こんな意見も恐らくあったんでしょう。少なくても特捜は、その対象は限定して考えるにしても、特捜は特捜としての在り方を残すと、こういうようなことを検察の在り方検討会でやってまいりました。
したがって、今そういうような議論を踏まえた上でなお引き続き議論はしていく必要があるかもしれませんけれども、取りあえずの結論は、抑制的ではありますけれども残すということで結論は出ておりますので、なお引き続き、今のような指摘の線に沿った議論は続けていく必要はあるだろうと思います。

○桜内文城君 時間が短いのでまた次に持ち越しますけれども、やはり捜査権というのは、国家による個々の国民のプライバシー権を始めとする自由権に対する侵害にももちろん当たるわけですよ。もちろん、そこは法に従って、刑事訴訟法なりあるいはその他の法令に従って捜査を行っていただくということもこれはあってしかるべきですが、しかし、先ほど言いました、ずっと言っています独任制であるとか、あるいは起訴に関する裁量権の広さ、そこの反省も全くなされていないわけですよ、尖閣事件のこの後においても。
そういった点で、検察の在り方というのは、表面上のことだけではなく、独任制あるいは裁量権あるいは独自捜査権、そういったものについてこれからも触れていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
以上です。

○田城郁君 民主党の田城郁です。
今日は一般質疑ということですから、冤罪ゼロ社会をつくるためにはどうしたらよいのかという私のこだわりの観点で、主に最高裁判所の皆さんに質問をしていきたいと思います。
日本人なら誰でもこの日本社会から冤罪をゼロにしたいと思っているということは当然ですし、誰一人これを否定できる人はいないというふうに思います。しかし、冤罪は後を絶ちません。足利事件や布川事件が数十年を掛けて無罪を勝ち取り、最近では、ゴビンダさんの東電OL事件が再審、決まりました。高知白バイ事件は冤罪の典型例ですけれども、まだまだ再審には至っていないと。厚労省の村木さんも罪人にされようとしました。国民の生活が第一の小沢代表も、依然としていわゆる被告人とされる立場に立たされたままであります。ほかにも、刑が確定してもなお無罪を訴えている人はたくさんおります。鈴木宗男新党大地代表しかり、JR浦和電車区事件の七名しかりでございます。
遅々として進まない、今、先生方からも御指摘のあった地に落ちた検察の改革は徹底的に進められなければなりませんが、冤罪が成立する最後の場面は、有罪か無罪かを言い渡す裁判所です。裁判所及び裁判官が、証拠を改ざんされようが、捏造された捜査報告書を提出されようが、調書に別人の指紋が押されていようが、うそ偽りを見抜き、裁判所と裁判官の良心によって冤罪を未然に防ぐ力が備わっていれば、これほど冤罪が量産させられることはないのではないかと私は思います。そのような状況下で三審制は有効に機能しなければならないし、機能していないとしたら更に更に司法制度改革を推し進めなければならないと私は思います。
そこで、具体的な質問に入ります。
我が国の三審制の意義と最高裁判所の役割について、基本的な認識で結構ですので、滝法務大臣にお伺いをいたします。よろしくお願いします。

○国務大臣(滝実君) 今委員が三審制の意義ということでお話しになりました。日本の場合には三審制ということにはなっておりますけれども、それぞれの段階で違う立場から審議をすると、そういう意味では単純な三審制でなく、それぞれの段階ごとにポイントが違う、そういう意味での三審制だろうと思います。それだけに、日本の三審制というのはやはり誇るべき司法、裁判制度というふうに私は理解をいたしております。

○田城郁君 ありがとうございます。
では、同様の質問を最高裁判所にも質問いたしますが、日本の裁判手続においていわゆる三審制が採用されておりますが、その認められている意義について最高裁においてはどのように認識をしているのか、一審、二審、三審、それぞれの役割についてお伺いをいたします。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) お答え申し上げます。
各審級の裁判所の役割につきましては、まず、原則といたしまして、第一審及び第二審は、具体的な法的紛争につきまして事実を認定した上で法律を解釈、適用して判断をすると、こういった役割を担っておりまして、これに対しまして、第三審である最高裁は、最終審の裁判所といたしまして、憲法違反や憲法解釈の誤りの有無、判例違反の有無、あるいは重要な法令違反の有無などの法律問題について判断する役割を担っているというのが基本であるというふうに認識しておる次第でございます。
ただし、刑事事件につきましては、量刑が著しく不当である場合であるとか、あるいは判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある場合であって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときには、その適切な救済を図るため原判決を破棄することができるとされておりまして、こういった役割をも担っておるものと認識しておる次第でございます。

○田城郁君 今の内容はホームページなどでも確認をできることでございますけれども。
では、最高裁には多くの役割が期待をされております。最高裁の判事は非常に忙しい、そのようにお聞きもしておりますが、最高裁判事は年間どれくらいの事件数を担当しているのか、教えてください。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) お答えいたします。
平成二十三年に最高裁判所において終局いたしました事件数でございますが、まず民事及び行政事件が四千八百五十四件、刑事事件が二千二百八件となっております。

○田城郁君 その中で、最高裁が法廷を開かずに棄却決定した数といいますか、割合はどのくらいになっておりますか、教えてください。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) 先ほどの平成二十三年の事件で申し上げますと、民事及び行政事件につきましては、終局した四千八百五十四件のうち、法廷を開かずに棄却決定等した事件は四千六百四十三件、割合は約九五・六%でございます。これに対しまして、刑事事件につきましては、終局した事件は二千二百八件でございますが、このうち取下げ及び被告人死亡等の終局が相当数ございますので、残ります千七百六十二件のうち、法廷を開かずに棄却決定がされたという事件は千七百三十六件、その割合は約九八・五%となっております。

○田城郁君 最高裁におきまして審理手続の流れはどのようになっているのでしょうか。全ての事件について最高裁判事が合意して決めるのか、あるいは持ち回りで行うようなものになっているのか、その仕組みと件数のデータがあれば教えてください。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) お答えいたします。
一般的に、最高裁判所が受け付けた事件につきましては、各小法廷にまず事件が配填された後、これは各調査官の調査に付することになります。調査官は、調査に付された事件につきまして、必要な判例の調査、学説調査を行いまして、その結果を報告にまとめた上で裁判体に提出いたします。
裁判体では、まず裁判長が事件の記録、先ほど申し上げました調査官の報告書の内容等を検討いたしまして、これは裁判官が集まって合議して審議を行うか、あるいは書面を順次持ち回る方法で審議を行うかといった審議の進め方について検討いたしまして、そのいずれかを選択するわけでございます。
そのうち、裁判長が書面で順次持ち回るという形で審議を行うのが相当と判断した場合でありましても、裁判体を構成するその他の裁判官が集まってまたこれは合議すべきであるということになりましたら、これは裁判官が協議をいたしまして、最終的にどのような審議の方法を取るかということを決めておるというところでございます。
こういうことでございまして、最終的にどのような形で合議を、審議をするかということについては、事案の内容に応じて各裁判体が決めておるところでございまして、最高裁判所といたしまして、その点についての統計は取っていないところでございます。

○田城郁君 大まか何%ぐらいが合議だなと、何%ぐらいが、何割ぐらいが持ち回りだなとか、そんな感覚的なことも、もし感覚していれば、特にどうのこうの言うわけじゃありませんから、是非、何か感覚的につかんでいるようでしたら教えていただければと思います。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) 私も実は調査官の経験等もございませんので、ちょっと確たることは申し上げにくいんでございますが、最高裁判所に、先ほど申し上げましたように、上告理由に当たるものか当たらないかということでいきますと、相当部分が上告理由に当たらないということが明らかな事件も含まれておるように承知しておりますので、そういったことからいたしますと、持ち回りで行う事件についても相当数あるのではないかというふうな認識ではございます。

○田城郁君 ありがとうございます。いずれにしても、最高裁の判事さんが膨大な事件の資料全てに目を通すということは非常に難しいというふうには思います。
そこで、最高裁判事を補佐する仕組みについてお伺いをいたします。
最高裁判所には裁判所調査官が置かれ、裁判官の命を受けて事件の審理及び裁判に関して必要な調査そのほかの法律において定める事務をつかさどるというふうに定められておりますが、最高裁判所調査官の配置あるいは人数、どのような方が充てられているのか、具体的な職務の内容なども含めて、重複する部分もあるかもしれませんが、お伺いをいたします。

○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。
現在、最高裁判所に裁判所調査官としております者は総勢で三十八名でございます。この最高裁判所調査官には、先ほど総務局長が答弁いたしましたとおり、その職務の性質から見まして相当程度の裁判実務の経験を積みました下級裁判所の判事の中から人選して適任者を充てておるというところでございます。

○田城郁君 その内訳といいますか、例えばずっと裁判官をやっておられる方とか、あるいは行政官の方からなられる方とか、検事さんからなられる方とか、そのような内訳というのは、もし教えていただければお願いいたします。

○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 今申し上げました最高裁の裁判所調査官三十八名は、いずれも裁判官の出身の者でございます。ただ、その者の中には、いわゆる外部経験として法務省やその他の行政官庁に出向した経験のある者も含まれておるところでございます。

○田城郁君 要するに、判検交流の経験があるということでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 今申し上げましたとおり、法務省、それからその他の行政官庁等に出向した者でございます。したがいまして、広い意味での判検交流ということには当たるかと思いますが、いわゆる訟務検事をした者は現在はおりません。
ただ、私どもといたしましては、訟務検事として出向した者は現在おりませんけれども、広く外部経験の有意義性ということは考えておるところでございますので、これまでに外部経験としてどのようなことをしてきたかということと、最高裁判所の調査官としてふさわしい能力、資質を備えているかということとは別問題ではないかと考えているところでございます。

○田城郁君 いや、そこを特に問題だというふうにこれから進もうとは思っていませんので、安心してください。
最高裁判所の調査官は、調査の結果、意見を付すというふうにお聞きしておりますが、調査官の意見の法的性質はどのようなものでしょうか。また、調査官と判事の関係はどのような関係になっているでしょうか。教えてください。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) お答えします。
調査官の作成する報告書でございますが、これはあくまで裁判官の命を受けて事件に関する調査を行うわけでございます。その調査の結果の報告は、あくまで裁判官の判断の参考資料を提供する趣旨で行われております。
今御指摘の調査官の結論に対する意見でございますが、これは法令上、調査の結果、意見を付すものとはされていないわけでございますが、その中で、調査官が判例や学説での調査結果との関係で上告棄却等が相当ではないかというような意見を付すこともあるわけでございますが、これはあくまでも調査結果の説明の一環としてなされるものでございまして、裁判官は裁判官としてそれぞれ記録や資料等を精査いたしまして、審査、検討を行っているものと承知しております。

○田城郁君 新聞記事やあるいは雑誌の司法関係の記事などを読むと、例えば、元東京高裁裁判官の濱弁護士などはこのようにお話をされております。
ちょっと引用してみますが、最高裁では上告趣意書のセレクトも調査官が代行してしまう。つまり、最高裁の裁判官が目を通す前に、受理理由には当たらないとしてふるいに掛けてしまうため、実際に法廷の俎上に上がるのはごく僅かなのです。しかも、事件の調査官報告書には報告の枠組みを超えて法理論が書かれるばかりか、調査官が判決の起案までしています、実際に最高裁の判事が筆を執って判決文を書くのはまれです。実質的に日本の裁判は二審制なのですということを元高裁の裁判官で弁護士の方が指摘をしているわけですけれども、これは実質的に裁判官の判断をスルーして、調査官によって最高裁の判断が下されているというふうに、この実態が事実だとしたらですが、そのような状態にほかならないのではないかというふうに思うわけです。
裁判官の合議、審理があれば冤罪性に気が付く可能性も非常に高いというふうにも思いますが、それがなされていない。事実上、三審制は成り立っていないのではないかというふうな疑念も湧いてくるわけですが、最高裁はいかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。

○最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君) 先ほども申し上げましたとおり、調査官は、裁判官が事件に関する判断権を有しておるわけでございまして、その判断をする上で参考となる法令、判例、学説等に関する調査を行います。で、その報告をしているものでございます。
通常の場合、調査官は論点に関する関係法令の解釈に関する主要な裁判例であるとか主要な学説等を収集して、これを裁判官が利用しやすいような形で整理をいたしまして、さらに、事件の争点に関する法令の適用、判例の適用についての考え方を分析、整理するという形で、これはあくまで裁判官が実際に事件を審理、検討、判断をされる際の参考に供するという形で作っているものでございます。
それを受けた裁判官におかれましては、委員の御指摘ではございますけれども、その内容を十分精査をし、必要に応じて事件記録も検討されて、審議の在り方、あるいは中身の判断等も含めて、裁判官自身において適切に判断をされているものと承知しております。

○田城郁君 度々引用で申し訳ないんですが、この方も元裁判官の方ですね。
朝日新聞、昨年の十一月三十日の新聞に載っておりますが、要するに、女川原発とかほかの原発の二つの裁判について扱っている方でありますが、当時のことを印象に残っているかということをインタビューされて、いや、ほとんど記憶にありませんよと。でも、それはそういう仕組みになっているから仕方がないんですよと、調査官が今のようなことでやるからということを前提にして、さきに挙げた二件の原発訴訟についても合議を開いて議論した記憶はありませんから、恐らく調査官の意見どおりに上告棄却となったケースだろうと思いますと。まあ形式上は、最終的には最高裁の裁判官が判をべたっと押すことはするんでしょう。しかし、十分に審理をして、そして自分の記憶に残るほどいろいろ思考して、そして結論を出しているというような実態には、このほかにも幾つかの文献なりそういうものを読めば、そういう実態にはないなというふうに思うわけです。
ですから、もう時間が参りましたのでまとめますけれども、この実態は、憲法で保障されている国民の権利、差し当たり、この場合は第三十二条、裁判を受ける権利、第三十七条、刑事被告人の権利、第八十二条、裁判の公開、こういうものが権利としてはあるわけですけれども、それを超えて、下位である裁判所法に基づいた調査官の運用がなされているのではないでしょうかということです。調査官の調査だけで上告が棄却をされる、そういうことは司法制度の根幹にある三審制度を否定する実態があるのではないかと、そのようにも問題提起をいたしまして、私の質問を終わります。以上です。
ありがとうございます。

○小川敏夫君 最高検察庁の、平成二十四年六月二十七日の、この「国会議員の資金管理団体に係る政治資金規正法違反事件の捜査活動に関する捜査及び調査等について」という報告書でございます。
まず、大臣にちょっとお尋ねしますが、これは国民に対する報告だと思うんですが、私、探しましたところ、法務省のホームページには探したところ載っていないんですが、これはどうでしょう。やはり法務省、国民に対する報告なんだから、法務省のホームページに載せてしっかりと告知すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。

○国務大臣(滝実君) 私も、かねがねそういうような感想を持ってはいるんでございますけれども、言わばプライバシーにかかわるような中身がこの報告書に随所に出てくると、こんなことで、本来公表したんですよね、マスコミにも公表しましたし、もちろん国会の議員さん方にもみんな見てもらっている、しかし、ホームページに出すのはいささかどうだろうかと、こういうような判断がございまして、ホームページにはアップしていないというのが状況でございます。
問題は、このプライバシーに関するものをどういうふうに考えるかということに集約をされる話でございますけれども、今のところは、ちょっとそこのところにちゅうちょするものがあると、こういうことでございます。

○小川敏夫君 やはり裁判所から、事実でない記載があるということで、また、あってはならないことだという大変厳しい批判をいただいたことで、国民が言わば大変に関心を持っている案件に関する報告でありますから、やはりこれは国民に対して、国民はなかなかこの報告の現物を入手するというのは困難でありますから、やはりホームページにこれを載せて広く告知することが重要ではないかというふうに思っております。
では、この報告書の中身について、当局でも結構ですけれども、質問させていただきます。
前回も聞きましたが、前回はなかなか調査中ということで余り具体的な答弁がなかったんですが、今日は少しその中で、一つについて少し明らかにしていきたいというふうに思っております。
この平成二十二年の五月十七日付けの田代検事の捜査報告書、これ、やはり一番は、裁判所からも指摘されたように、事実でない記載があるということが問題の本質でございます。この検察庁の報告書でも、その点について、六ページの三項ですか、「田代報告書の記載と本件録音記録との不一致の有無」という題目で述べております。
どうも、不一致の有無というと、何か不一致があるのかないのか、まあ結論的には不一致がないかのような結論になっているんで、ここは到底、恐らく国民のほとんどが納得できないようなことじゃないかと思うんですが、ちょっとそこのところについてお尋ねさせていただきます。
まず、この報告書は、六ページの(3)のアですね、田代報告書の記載と本件録音記載との間における趣旨の不一致の有無ということで取り上げている部分があります。これについて、「検討を要する記載は、別紙4のとおりであるが、」ということで、捜査報告書についてのこの別紙4の記載について報告は意見を述べておるわけであります。
それで、まず、事実関係だけ当局にお尋ねしますが、この別紙4という報告書の記載、これと比較対応した実際の取調べの録音反訳に出てくるその言葉というのはどういう言葉なんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) その点につきましては、七ページから八ページまで、ちょっと今長いものでございますので、失礼しました、の部分、あるいは八ページの部分等に記載していると、八ページから九ページにかけて記載しているようなところに当たるわけでございますが、そこらに記載されているところがあるというふうにお答えをさせていただきたいと思います。

○小川敏夫君 八ページ、九ページは言わば検察庁の評価、意見に関するところでして、言わば、この六ページで、さっき言ったアの(ア)でaとbということに分けてあって、「田代報告書における記載の概略」というのが六ページの真ん中のaですね、ここで田代報告書における記載というものを取り上げていると。このbで、「実際の取調べにおけるこれに相応するやり取りの有無」ということで、実際の取調べの言葉というものを取り上げておるわけです。ですからここで、aとbで、報告書の記載とそれから実際の取調べにおけるそのやり取りというものを取り上げて比較しているわけです。
私は一つの事実として、意見や評価の部分はいいです、この比較対照したその言葉について、bの方では、じゃ、まあ私が答えますけど、「うーん。なんかヤクザの事件、ま、検事も言ってたけどね。あのー。Bさん、ヤクザの事件と同じなんだよって。」というふうに供述者が供述したというのが比較対照の言葉として、一つの事実としてこう記載されておるわけです。
まず確認ですが、この供述者がこうした比較対照としてこういう趣旨で述べた言葉というのは、この二行のこの言葉、これだけでほかにはないということでよろしいんですね。

○政府参考人(稲田伸夫君) これは証拠の中身に具体的に入ってまいりますので、どの程度まで御説明できるかというところではございますが、このやり取りというのは非常に何度も話をしていた者同士の間の非常に、端的に言うと、何といいますか、お互いの中身が分かった者同士の言葉のキャッチボールでございますので、非常にストレートにこの部分、この部分というのを特定し難いところがございまして、今の部分も、確かにストレートに分かりやすい部分ということでここを引いてきているわけですが、その前提としてどういう話があってこういうふうになったというところがございまして、そういう意味で、ストレートに当たるのはここの部分ということはそのとおりだと思います。

○小川敏夫君 なかなか評価が入っている話ですけれども、しかし、これは「勾留中の取調べを回想する発言」というふうになっているわけです。「勾留中の取調べを回想する発言」というのは、録音反訳書五時間十分見ても、この部分しかないんですよね。ほかにありますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 具体の証拠の中身にかかわりますので、その点につきましてはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○小川敏夫君 いや、だって、調査報告書で国民に対して報告したその中身について聞いておるわけですよ。
この調査報告書は、では、この調査報告書の中身について議論すると、言わば取調べの回想について述べた部分というのは、この実際の録音反訳の中では、「うーん。なんかヤクザの事件、ま、検事も言ってたけどね。あのー。Bさん、ヤクザの事件と同じなんだよって。」という部分だけしか書いていない。一方で、これに対照する捜査報告書、これの記載は別紙4ということになっている。
大変申し訳ないけど、時間が掛かって結構ですけれども、別紙4をちょっと読み上げていただけませんかね。時間が掛かって結構です。

○政府参考人(稲田伸夫君)
田代報告書に記載されたやり取りのうち、本件録音記録上、同趣旨のやり取りがなされているかについて検討を要する記載
記載㈰
本職 例えば、A先生に対する報告とその了承や、定期預金担保貸付の必要性の説明について、貴方がどういう形で供述して調書を録取したか覚えていますか。
B だいたい覚えていますよ。
確か、逮捕された次の日でしたから、今年一月十六日土曜日の夜の取調べでは、収支報告書の不記載などにつき、A先生に報告をして了承を得たことや、A先生からの四億円を表に出さないために定期預金担保貸付を受けるという説明をして了承を得たことを大まかには話したと思いますが。
私が、「収支報告書の記載や定期預金担保貸付については、私自身の判断と責任で行ったことで、A先生は一切関係ありません。」などと言い張っていたら、検事から、「貴方は十一万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは、貴方がAの秘書だったという理由で投票したのではなく、Bという候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをしていたら、貴方を支持した選挙民を裏切ることになりますよ。」って言われちゃったんですよね。
これは結構効いたんですよ。
それで堪えきれなくなって、A先生に報告しました、了承も得ました、定期預金担保貸付もちゃんと説明して了承を得ましたって話したんですよね。
本職 そうでしたね。
それで、翌日一月十七日の日曜日、更に具体的にその状況を確認した上で、供述調書を録取しようとしたら、貴方は「E先生から、土日は絶対に供述調書に署名したら駄目だと言われているので勘弁してください。」と言って、供述調書を作成させませんでしたよね。
B 確かに、そう言いました。
本職 そして、一月十八日月曜日、土日は貴方の言うとおり供述調書は作らなかったが、今日はこれまでの供述内容を調書にしますよと言うと、貴方は、「実は、今日も接見でE弁護士から、「どんな内容の調書であっても署名してはならない。例え供述したとおりのことが書いてあると思っても、どういう使われ方をするか分からないから、署名は拒否するように。」ときつく言われたんですよ。検事、本当に申し訳ないんですが、もう一日待ってもらえませんか。」などと言って泣き付いてきましたよね。
B そのとおりです。
結局、一月十八日も供述調書は作成せず、一日待って十九日になっても、「今日の接見でも、E先生から署名拒否を強く指示されたので署名できない。」などと言って、ごねていたじゃないですか。
B そうでしたね。
でも、検事から、「供述していることが事実であって、そのとおりの内容が供述調書に取られているのであれば、署名拒否する理由はないでしょ。」と理詰めで来られて、私もそのとおりだと思ったので、最後は、私が「調書に署名したことは、E先生には内緒にしてください。」とお願いして、この日に供述調書を作ったんでしたね。
記載㈪
本職 本日の供述内容については……

○小川敏夫君 ㈰だけでいいです。

○政府参考人(稲田伸夫君) ㈰だけでいいですか。失礼しました。

○小川敏夫君 ですから、この捜査報告書というのは取調べの状況の事実を言わば報告する文書なわけですよ。実際の取調べにおいては、まあこれも趣旨が違うんだけど、少なくとも、この調査報告書の中でも、それに該当する実際の取調べの言葉というのは、「うーん。なんかヤクザの事件、ま、検事も言ってたけどね。あのー。Bさん、ヤクザの事件と同じなんだよって。」と。これだけしかないのに、今延々と、長々と読んでいただいた捜査報告書のこの中身の言葉になってしまうと。これで同じだと言えるんですか、これ。少なくとも捜査報告書に出てくる言葉というのは、そのストレートの言葉は何にもないですよね。
ただ、両方とも一月の取調べを回想した言葉ですねという、確かにこれ、捜査報告書に書いてあることも一月の取調べのことを述べている。この実際の中の、「うーん。なんかヤクザの事件、ま、検事も言ってたけどね。」と。これは一月の取調べのときに言っていたことを言っているんだから、まあ一月の取調べのことを回想しているという意味では、両方とも一月の取調べのことを回想しているということはこじつければこじつけられるということで一致する部分はあるけど、中身が、今言った、この「うーん。なんかヤクザの事件、ま、検事も言ってたけどね。あのー。Bさん、ヤクザの事件と同じなんだよって。」と、言わば供述者のAさんが言ったその言葉だけで、さっき言って、さんざん長い間読んでいただいた、延々と長い言葉で事実の報告としてこういうことが出てくるということが、これは誰がどう見たってあり得ない、おかしいと、こう思うんだけど、どうなんですか、ここのところ。

○政府参考人(稲田伸夫君) この発言、今委員の方から後でおっしゃられました、その「ヤクザの事件と同じ」という発言は、勾留中における田代元検事の説得文言中の、「ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなこと」との間に共通点があるということから、当該発言がその該当するものというふうに認定をしたというふうに承知しているところでございます。
いずれにいたしましても、この田代元検事と石川氏との、その当時の、五月十七日の取調べの中での会話というものが、非常に抽象的といいますか、具体性に欠けるようなところが表面上はある。それは、彼らから見れば、非常に分かりやすい、長い間の取調べの中身を回想しているところであったというところに帰するんだろうと思いまして、そういう点から、田代がそういうものを、取調べ段階の供述を思い出していたというふうに理解することもあり得るのではないかというふうに考えたということでございます。

○小川敏夫君 別紙の4に書いてある、これはあくまでも取調べの状況の事実を報告する文書ですから。それで、別紙の4をえらく長々と書いていただいた、そこの言葉は全くないんですよ、実際の取調べの中に。
ただ、取調べを回想したというこじつけをしようと思ったら、五時間十分の間にさっきのこの一つのフレーズだけあったというので、まず、この別紙4で述べていただいた発言そのものが存在しないんですよ、実際の取調べの中に。しかし、それを取調べ、存在すると、そういうやり取りがあったといって報告書で述べたのがこの田代報告書です。
それで、裁判所は事実でない記載があると、あってはならないことであると、しかも検事の記憶違いという証言は信用できないと大変厳しく断罪しているわけです。だから、やはりこれ、記憶の混同だといってこれを蓋してしまうというのは余りにも客観性を欠いたことだというふうに思います。
その指摘を言って、私の質問は、今日は時間来ましたので終わります。

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
東電女子社員の殺害事件について、東京高裁は今日の午前中にゴビンダ元被告への再審開始決定に対する検察側の異議を却下いたしまして、再審開始決定が維持されることになりました。非常に異例の早期の結論になったことに、私は裁判所の意思は非常に明らかだと思います。特別抗告をすることなく速やかに再審を開始するべきだということをまず申し上げておきたいと思います。
この事件では、元被告の血液型と異なるO型の付着物が被害者の女性の胸から検出をされたという、捜査段階の血液型鑑定結果は再審請求審で初めて明らかにされました。さらに、被害者の体内に残っていた体液の鑑定の結果、元被告でない人物のDNA型が検出をされ、これが有罪判決の根拠が崩れたということになったわけであります。もし公判のときにこれらの証拠が出されているならば、有罪判決には至らなかったということを東京高裁は結論付けたわけですね。
この再審審理の中で、それまで検察が隠してきた重要な証拠が開示をされたというのは、布川事件もそうでしたし、福井の女子中学生の殺害事件でもそうだったわけであります。私は、こういう一連の事件を見たときに、これまでも繰り返し求めてまいりましたけれども、検察官の手持ち証拠の全面的な開示、少なくとも証拠の標目については開示をすると、このことの必要性がますます明らかになっていると思いますけれども、まず、大臣の所見をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 平成十六年の刑訴法の改正で証拠開示についても新しい方向が出されたわけでございます。そこでは段階的に開示をしていくと、こういうような趣旨だったろうと思います。
したがって、現在と昔の話とは多少ずれるところがあるだろうと思いますけれども、そういう意味では、新しい刑訴法の考え方に従って弁護側と検察側とがこの証拠開示をめぐって訴訟を進展させる、そんなことが今求められているのかなというような感じをいたします。

○井上哲士君 新しい刑訴法の下で拡大をされてきたと、こういうことが言われるわけですが、それでもまだ足りないということは繰り返し出されております。
少なくとも検察官手持ち証拠のリスト、標目を明らかにしろということを質問いたしますと、プライバシーの侵害の弊害等問題がある、必要性、合理性について検討する必要があるということもこの間答弁をされてきたんですね。
当局に聞きますけれども、今年の六月に行われた裁判員制度に関する検討会で、日弁連の代表の報告の中でも、公判前整理手続で存在をしないと検察が言っていた証拠が実は存在をするということが後になって分かったというケースが幾つもあるということが報告をされております。こういう捜査機関の手持ち証拠の一覧表が作られて、かつそれが被告人側にも交付されるようになれば、こういう証拠の存否をめぐる混乱回避、防げるんじゃないかということも言われているわけでありますが、こういう点から見ても私は十分に必要性、合理性があると考えますけれども、その点、いかがでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいまのお尋ねは、検察官の手持ちの全証拠のリストの開示という制度を導入したらどうかということだろうと思います。
この点につきましては、平成十六年の法の改正の立案過程におきましても、このようなリストを被告人側に開示する制度について検討がなされたところではございますが、供述調書、鑑定書、証拠物といった証拠の標目だけが記載された一覧表を開示してもそれだけでは意味がない、他方で、証拠の内容、要旨まで記載した一覧表を開示するものとすると、手持ち証拠を全て開示するのに等しく適当ではないと考えられること、さらには、手持ちの全証拠について一覧表させること、特に今申し上げた証拠の内容、要旨まで記載した一覧表させることは捜査機関の過重な負担になるものとして現実的ではないというような主張が、などの問題点があって相当でないと考えられ、被告人側の訴訟準備が十分なされ得ることも踏まえつつ採用されなかったものというふうに承知しているところでございます。

○井上哲士君 あの当時から全く同じ答弁の繰り返しなわけでありますが。
そういう中で、今私は、この間のそういう実践の中で、検察官が当初は存在しないと言っていたものが出てくるというようなことが現に起きていると、だからこそこういうことを新たにもう一回検討すべきだということを申し上げているわけであります。
これまで冤罪をなくすために、取調べの全過程の可視化や検察官の手持ち証拠の全面開示、さらには証拠の標目を開示することなどを求めてまいりましたけれども、今日は特にこの再審事件における証拠開示の問題に絞ってお聞きしたいと思います。
我が国裁判制度は三審制度を取っているというのが先ほども議論にありましたが、更にその上で再審というものがあるわけですね。この再審制度の目的というものは一体何か、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(滝実君) これは白鳥判決でもその基準というか考え方が示されているわけでございますけれども、事実認定の不当を是正する、こういうことでございますから、再審というのは、まさに今回はそういう趣旨で再審が決定された、こういうふうに受け止めております。

○井上哲士君 つまり、冤罪からの救済であり、真相の解明ということがこの再審制度の目的なわけであります。
では、その再審制度がその目的を果たすために一体何が検察に求められているのかと。
福井女子中学生の殺害事件の再審開始決定の際にも私質問をいたしまして、再審請求において検察官手持ち証拠の全面開示ということを求めました。当時の平岡大臣は、法令にのっとって適切に証拠の開示が行われるということも、検察の基本規程の中で法令の遵守ということを明記させていただいておりますので、その趣旨にのっとって適切に対応するということを私としては期待をしております、こういう答弁でした。
再審請求事件に関する答弁で当時の大臣がこの検察官基本規程を挙げられたということは、当然ながらこの再審事件に対応する場合もこういう検察官基本規程が適用されるんだと、こういう理解でよろしいわけですね。

○政府参考人(稲田伸夫君) 「検察の理念」を作成しましたときの考え方といたしまして、具体的な捜査、公判における行為規範を定めるものではなく、職務の指針となる心構えとして定められたものでありますが、ここに示されたその精神及び基本姿勢につきましては、再審における検察官の活動も含め、検察官の職務遂行全般において指針とされるべきものというふうに考えております。

○井上哲士君 再審も含めるというお話でありました。
この規程の中には、被疑者、被告人等の主張に耳を傾け、積極、消極を問わず十分な証拠の収集、把握に努め、冷静かつ多面的にその評価を行うと、こういうふうにも述べているわけであります。
平岡大臣は先ほど紹介した答弁で、法令の趣旨にのっとった適切な対応を期待しているというふうに述べられました。再審請求手続においては、我が国には証拠開示に関する規定がありません。それから、証拠調べ手続に関する規定もない。専ら裁判所の訴訟指揮に委ねられてきたわけですね。
その下で、今の再審請求においては、先ほど言われましたような新しい刑訴法に基づく証拠開示すら保障されていないというのが現実なわけであります。刑訴法の改正で公判前整理手続と、それにおける証拠開示制度が導入をされました。これ、まだまだ不十分だと、全面開示しろ、標目を掲示しろと、こういう声も関係者から多いわけでありますが、少なくとも一定程度開示が広がったというのは、これは事実だと思うんですね。
まず、確認しておきたいのは、この刑訴法改正というのは裁判員制度の導入に伴って裁判手続の迅速化、効率化ということが一つの目的でありました。ただ、それだけではないと思うんですね。やはり、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにするという刑訴法の第一条に定められた目的に資するものだと、こういうことを確認してもいいでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 平成十六年の刑事訴訟法の改正によりまして、公判前整理手続が創設され、証拠開示の拡充が行われたわけでございますが、その趣旨は、争いのある事件につきまして、あらかじめ事件の争点及び証拠を十分に整理し、明確な審理計画を立てた上で、裁判所の的確な訴訟指揮の下、争点中心の充実した審理を集中的、連日的に行うことができるようにすることなどにより、刑事裁判の充実、迅速化を図るというものでございます。
そういう意味から、刑事訴訟法第一条の目的に沿うものというふうに承知しているところでございます。

○井上哲士君 かみ砕くとどういうことなのかということなんですが、布川事件や東電の女子社員殺害事件の再審決定にかかわった元東京高裁判事の門野博さんが判事時代に書かれた論文がありますけれども、こう書かれています。
公判前整理手続における証拠開示制度は、単に裁判手続の効率化のみを目的としただけのものではなく、検察側と被告人、弁護人側との証拠収集能力について決定的な格差があることを前提として、デュープロセスの観点から、そのような両当事者間の証拠収集における格差を是正し、裁判の公正を図り、冤罪を防止することを目的としていると考えられると、こう言われておりますが、こういう裁判の公正を図り冤罪を防止することという目的が当然ながら含まれていると、こういう認識でよろしいでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、再審制度自体は不当な事実認定から被告人であった者を救済するということにあろうかというふうに思います。
その意味におきまして、再審請求審の考え方もその点に基づいて行われるべきものと思いますが、他方で、通常審と再審請求審を比べますと、通常審とは違いまして、再審請求審は、既に当事者主義的な訴訟構造の下で検察と被告人側とが攻撃、防御を繰り広げて、かつ立証責任を負う検察官により合理的な疑いを超える証明がなされたという手続が終わって、一旦その有罪の判決が下されたという前提の下に行われているわけでございまして、そういう点で再審請求審と通常審というのはやはり異なるものがあると言わざるを得ないところがあるというふうに考えております。

○井上哲士君 それは次にお聞きすることの答弁だと思うんですが、私、今聞いたのは、平成十六年の刑訴法改正の目的の中に、裁判の公正を図り冤罪を防止することということが当然含まれますねということを確認をしたわけであります。

○政府参考人(稲田伸夫君) 十六年の改正の目的というのは、先ほども申し上げましたように、充実した審理の下、集中的、連日的に審理を行うことにより、刑事裁判の充実、迅速化を図るということが第一義的にありまして、それが結局のところ刑事訴訟法第一条の目的に沿うというふうに承知をしておるところでございます。
その意味において、先ほど委員の御指摘の点について違うというふうに申し上げるつもりはございませんが、第一の目的というのは先ほどから申し上げているところにあろうかと。その結果として、刑事裁判が適正に行われるということにあろうかというふうに思っているところでございます。

○井上哲士君 違うということではないということでございました。
そうであるならば、冤罪の救済と真相解明という再審制度の目的、検察官の持つ役割、そして裁判の公正を図り冤罪防止をするという改正刑訴法の趣旨、こういうことに鑑みれば、当時、現在の公判前整理手続による証拠開示が行われていれば開示されていた証拠については速やかに開示されるべきではないかという質問なんですが、それに対する答弁は先ほどありました。
そこで、答弁の中で、つまり検察側、弁護側が防御と攻撃を尽くした、そして有罪が確定したものだというお話があったんですね。しかし、先ほど引用した門野さんのお話にありますように、検察側と被告人、弁護人側との証拠収集能力については決定的な格差があるんですよ。法改正前はもっとひどかったわけですね。今もオリンピックやっていますけれども、攻撃と防御をやるときに同じ条件でやってこそいけるわけで、片方側に大きなハンディがある、これはしかも人権問題でありまして、その結果、十何年というような身体拘束を受けたということになっているわけですね。
私は、そういう片方に大きな不利があるというような条件で、攻撃、防御を尽くした、手続を尽くしたなどととても言えないと思うんです。だからこそ、それを是正した今の、一定是正をした新しい刑訴法に基づいて証拠を開示して真相解明を行うというのは当然だと思うんですけれども、改めていかがでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 再審請求審における証拠開示と、その十六年改正による証拠開示の在り方というのをどういうふうにリンケージさせるのかというところがちょっとなかなか分かりにくいところもあるようにも思いますし、現実に、その十六年改正後のやり方についてはそれを検察側としても十分頭に入れた上で対応しているものとは思いますが、それはそれぞれの事件の中でどういう証拠構造の下で確定裁判が行われたかということがやはり基本にあるわけでございまして、それを踏まえて、検察当局としては、再審開始事由が存在するかどうかを判断するために必要と認められるか否か、あるいはその請求人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分に主張されたか否か、あるいはその関係者の人権、名誉の保護と今後の捜査、公判に対する影響などを勘案しつつ対応しているものというふうに承知しているところでございます。

○井上哲士君 先ほど紹介した門野氏はこうも述べられているんですね。再審事件についても、もしその事件において、公判審理の段階で、今回の新法による公判前整理手続等が行われていたとすれば開示されたであろう証拠については証拠開示がなされてしかるべきであろうと、こういうふうに言われました。その後、この考えはこの東電女子社員殺害事件の再審請求審を担当した二人の判事にも引き継がれて、今回の決定になっているわけですね。
ところが、実際にはどうかと。あの福井の女子中学生の殺人事件では、弁護団が未開示証拠の開示を求めましたけれども、検察が当初拒否をして、名古屋高裁が異例の二度勧告をしてやっと重要な証拠が開示されたわけですね。この東電女子社員殺害事件については、二〇〇五年の再審請求の後、弁護団がこの鑑定可能な物証全ての開示を求めましたけれども、検察がこれを拒否をいたしました。その後、体液が保管されているのを検察側が明らかにしたのは、再審請求の弁護士が証拠開示を求めたもう三年八か月後だったんですね。しかし、さらにその後に遅れて、元被告の血液型と異なる付着物が検出されたという捜査段階の血液型鑑定結果の存在が明らかになったと。
いずれも、これがもっともっと早い段階で出てくれば、こんなに長い間元被告を拘束する必要もなかったわけでありまして、東電OL事件では、高裁が新たな資料を対象にしてDNA型鑑定を行わなかったら命令を出すぞと、こういうことまで言ったのでやっと検察が応じたということが複数の報道でされているわけです。
私が言いたいのは、こういう姿勢をもう変えるべきだと。やはり再審請求において、少なくとも今の新しい刑訴法の下では開示されるべきものについては、こういう高裁の強い、裁判所の強いあれがなくても進んで明らかにするということが、本来の再審制度の在り方からいっても検察の在り方からいっても必要ではないかと、こう思うわけでありますが、改めてどうでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 個別の事件における対応の問題になりますと、これは私どもの方からお答えするのはどうかとは思いますけれども、先ほども申し上げましたけれども、やはり確定審がある再審請求審、確定審の存在を前提とする再審請求審であるということがまず前提にあって、その中で再審開始事由が存在するかどうか、その主張の内容等を踏まえた上で、その存否に必要だと認められるかどうかというような点について勘案しつつ、また、開示を求めるその証拠がどの程度の関連性を有しているかというような点に関する請求人の方の主張等に鑑みながら対応していくということになるんだろうと思います。

○井上哲士君 二〇一一年六月の法務委員会で当時の江田大臣が、布川事件で見る限り、当時は様々な公訴側に不利な証拠が開示されないというようなことがあったということがうかがわれますと、こういうふうに言われております。そういう被告側に不利な裁判が行われた下で確定をしているものなんですね。それを私はやっぱりきちっと見直すのが再審の役割だと思います。
一旦有罪判決が確定したものは成果とみなして、新しい証拠があっても覆したくないと、こういう姿勢は、検察基本規程の中にあるような、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。」と、こういうことにも私は反すると思います。
根本的な転換を求めるべきだと思いますが、最後、大臣の見解をお聞きして、終わりたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 具体的なことに立ち入るわけにいきませんけれども、資料の鑑定技術そのものも恐らく変わってきている。そんな中で、新しいものがどれだけ生かされるかということもこの問題にはあるんだろうと思います。しかし、中身は、不当な事実認定というものをどう是正するかというのが再審のそもそもの趣旨でしょうから、検察当局はそういった趣旨を体して裁判に臨むというふうに信じております。

○井上哲士君 終わります。

○委員長(西田実仁君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後四時三十二分散会