183-参-国土交通委員会-004号 2013年05月21日
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
私の方からも、今回の法改正につきましては既に今いろいろとお話がございましたけれども、これまでの議論で余りされていないところを中心に御質問させていただきたいと思います。
まず初めに、先般、平成二十五年度の予算が成立したわけでございますが、その中にも盛り込まれております耐震対策緊急促進事業、国費で百億ということでございますけれども、これによりまして中央防災会議における地震防災戦略の耐震化目標というのがどのように達成されていくのか、予算が成立してそれがどのようにして具体的な形になるのかということをちょっと御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
御指摘の百億円は、従来行っております通常の耐震改修に対する補助、これは社会資本整備交付金等で行っているわけでございますけれども、今回、その補助率を耐震診断の義務化の建物についてのみ上げていくわけでございまして、この補助率の引上げの分を別枠で補助金として計上させていただいている、こういう趣旨のものでございます。
全体の九〇%の目標達成ということになりますと、その余の交付金の部分で対応するものも非常に多くなるというふうに思いますけれども、今回の義務化の対象はあくまでも大規模なものに限るということで、この数は現在大体四千棟余りだというふうに把握をしているところでございます。この四千棟に対してこの補助金は使われると、原則使われるということで、あとは避難路の沿道とか防災拠点の建物、こういうものにも使われていくということでございます。
診断と改修とどう振り分けるとか、細かいことを言い出すと切りがないのですが、ざっくりとしたことで申し上げますと、この百億円で大体千棟から二千棟の耐震診断、さらに三百棟から四百棟の耐震改修を行うことができるのではないか、別途の交付金は当然使うこと前提でございますけれども、初年度の額としてはそういうことで十分だというふうに思っているところでございます。
○西田実仁君 そうしますと、それが三か年ほど実施されていくということで、その三か年後にはどのぐらいになるんでしょうか。
○政府参考人(井上俊之君) 三か年後までに改修が全部終わるかどうかとかいろんな問題ございますし、制度自体は一応二十七年度までの制度ということで、まあ繰越しなんかもありますけれども、どうかということございます。これは進捗を見ながら、今年であれば来年度の予算要求、その次の年は再来年度の予算要求ということで、不足が生じることだけはないように、枠の問題もございますけれども、その枠の中で工夫もしながらしっかり計上してまいりたいというふうに思っております。
○西田実仁君 是非、緊急性が高いところでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
今回のこの法改正の中には、そうした公共的な不特定多数が集まるところの耐震診断の義務化あるいは診断結果の公表というのが盛り込まれておりますと同時に、全ての建築物の耐震化の促進ということで、マンションを含む住宅あるいは小規模建築物等についても耐震診断や必要に応じた耐震改修を行う努力義務というのが創設されております。中でも、耐震改修の必要性の認定を受けたマンションについては、大規模な耐震改修を行おうとする場合の決議要件が区分所有法の特例ということで緩和をされているわけであります。このマンションの、特に分譲マンションの耐震改修、また建て替えにつきまして今日はお聞きしたいと思っております。
実際に今現場で様々な方からお話をお聞きしますと、例えば、細かい話ですけれども、構造躯体に壁やあるいは筋交いなど、いわゆるバツ印のような、ああいう耐震部材を設置する耐震補強の場合、分譲マンションとして、お住まいとしてはなかなか好ましくないということもあってその合意形成が難しくなるということが実際は少なくないというふうにお聞きします。ですので、分譲マンションでありますけれども、自ら住まうのではなくて、例えばケースによっては事務所として貸し出すというようなことをもってすれば合意形成が図られるというような、そういうケースも聞くわけでございます。しかし、住まいではなくて事務所として貸すことになると、今度は住宅支援機構の支援基準から外れてしまってその支援が受けられないと、こういう問題を抱えているということを現場で聞くわけでありますけれども、耐震改修を、特に分譲マンションの耐震改修を進めていくには、こうした運用を緩和していくということも検討すべきではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
御指摘いただきましたように、ブレースが出てベランダの使い勝手が悪くなったとか、あるいは眺望が阻害されるということで、そういうことを忌避される方が多くなって耐震改修が進まないというようなことがこれまでもあったということでございます。私どももそういう認識をしております。
今回の法改正の中では、まずこういう工法の自由度を高めるために、外付けフレーム工法ということで、外側に柱、はり造って床面積も増えてしまうというケースが、従来はしゃくし定規にこれは容積率違反だから駄目ですよというふうにしておりましたのを、公共団体が耐震性が足りないと認めたマンションについてはオーケーですということで緩和をさせていただきました。
それから、補正予算で補助金も、今年度いっぱいの取りあえずは限定措置でございますけれども、従来の補助金に加えて三十万円の上乗せ措置をとっておりまして、これはマンションについても適用されるということでございます。
さらに、決議要件が、普通は二分の一なんですけれども、工法によっては四分の三の特別多数決議が要るということで、これも二分の一に緩和をしていったというようなことでございまして、これらによって、マンションについても、まあ格段にとまで言ってよろしいかどうかはあれですけれども、格段に進むようにしたいと思っておりますけれども、相当効果があるんではないかというふうに思っております。
それから、公庫の、金融支援機構のお話があったかと思いますけれども、これちょっと要件等を詳しく調べてみなければいけませんが、例えば事務所の転用自体、住宅という用途の中でおやりになるのか、あるいは住宅地の中で立派に事務所なんていう看板は、これそもそも基準法上も掲げられないわけでございますので、ちょっとその辺のところはつまびらかでございませんけれども、実態にできるだけ合って、活用がよく進むような運用が基本だとは思いますので、勉強すべきところがあればこれは勉強させていただきたいと思います。
○西田実仁君 是非、実態に合わせて耐震改修を促していく観点でお願いしたいと思います。
建て替えというふうになった場合には、やはりこの住み替え費用の捻出、あるいは資金調達など、多くの障壁がございます。例えば、建て替えを促すためには、今、総合設計制度というのがあって、公開空地など市街地の環境の整備改善に資すると認める場合には容積率の割増しなどの規制緩和がなされております。
この制度は、現状、マンションの建て替えということについてどの程度活用されているのかをまず確認したいと思います。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
事実関係だけ端的にお答えを申し上げますが、平成二十三年末までの工事完了をしたマンション建て替え、これが全部で百七十七件ございました。それで、悉皆でこのデータが全部あればいいんですけれども、残念ながらなかなか全部集まり切っておりませんけれども、実はこれについてはアンケート調査をやった経緯がございまして、百十二件から御回答いただいております。
この中で、総合設計をやったものは十四件ということでございます。地域別に見ますと、多いところでは東京都が八件、横浜市が二件、その他、大阪、札幌、川崎、新潟が一件と、こういうような分布になってございます。
○西田実仁君 今後、この老朽化したマンションの建て替え需要というのは増える一方であるというふうに思います。
今御指摘をいただいたこの総合設計制度などの活用も含めまして、こうした建て替えによる処分床の増床など、国におけるスキームづくりということが待たれるというふうに思っておりますけれども、大臣といたしまして、この分譲マンションの耐震改修又は建て替えについて、それを促す施策、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 総合設計制度で今も十四件ということで答弁をいたしましたけれども、余りにも少ないということの中には、決議するときの条件が厳しかったり、あるいはもう本当に腹を決めてここは耐震改修に本格的に乗り出さなくちゃいけないということを決断ができないというようなことも、様々要因があろうと思います。しかし、ここはやっていかなくてはいけないということの中で、容積率を割増しするとか決議要件の緩和とかということは極めて有効であろうというふうに思っています。
東京都では、建築計画の優良さに応じて高さ制限というものを、あるいはまた容積率の緩和というのをしているという状況がございますものですから、これらを含めて前進をさせるということが極めて重要だというふうに認識をしているところです。これらの事例が案外知られていないということもありますから、こうしたことも周知徹底して、今後更に積み上げて、何ができるかということも含めて検討させていただければというふうに思っているところです。
○西田実仁君 是非、御検討をお願いしたいと思います。
一つ気になるのは、今いわゆる耐震基準、昭和五十六年というのを基準にして、それ前とその後ということで言われるわけでありますけれども、実はその前に、昭和四十六年にも旧々耐震基準というのがあって、そのマンションも大変多いわけでございます。そうした昭和四十六年の旧々耐震基準マンションの速やかな耐震化ということを進める緊急性はより高いのではないかと思いますが、今回の法改正ではそこは余り基準としてはないわけでありますが、これどういうお考えなのかをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(井上俊之君) 御指摘のとおり、建築基準法の規定は、今は新耐震ということで昭和五十六年でざっくりと切って、それ以降のものはいろいろ改正はありましたけれどもおおむね安全だと、それ以前のものは危ない可能性が非常に高いので診断をしてくださいと、こういうことになっておりますけれども、実は四十六年に、例えば柱の帯筋というのを規定強化をするとか、地震の体験を経ながらちょこちょことそれ以前も強化をしてきたという歴史がございます。
それで、古いものについてはそういう意味で今のものと基準が違いますので、新築のものは耐震設計法で保有水平耐力比、これは一が満点なのでございますけれども、この指標を直接使わずに、帯筋の足りないようなものも含めて評価できるようにIs値という指標を採用しています。このIs値は、四十六年以前、あるいはそれよりもっと前の、前の基準のときのものも含めて同じ物差しで測れるようにいたしておりますので、このIs値の内容に沿って改修設計をしていただくということであれば、古いものについても現行の規定の中で十分に対応できるのではないかというふうに考えています。
○西田実仁君 マンションに関しまして、今日は内閣府の方にも来ていただいておりまして、二つほどお聞きしたいと思います。
私は地元は埼玉県なんですけれども、川の多いところでございまして、荒川、利根川とか大きな川があるわけです。二百年確率の水害では、こうした川のはんらんということによって多くの地域が水没してしまうという洪水ハザードマップもできております。今回、東日本大震災の津波被害ということを受けて、埼玉の県民でも大変にこの水害に対して危機感を持っております。そこで、埼玉では大規模な水害時の避難場所としてマンションが大変有力ではないかという声が上がっておりまして、いわゆる垂直避難ということが求められているということであります。
こうした大規模水害時での住民の近隣マンションへの避難協定を始めといたしまして、マンションの役割の再認識をすべきではないかと思いますけれども、その取組について内閣府にお聞きしたいと思います。
○政府参考人(佐々木克樹君) 御指摘のように、垂直避難という概念、非常に特に水害の場合、重要かと、こう思っております。今現在、災害対策基本法の改正を国会に提案させていただいておりますけれども、その中でも、そういった垂直避難を含めた安全確保措置という形で市町村長が指示なりできるようにという改正案を盛り込まさせていただいているところでございます。
一方で、一方でといいますか、具体的な取組といたしましては、中央防災会議の大規模水害対策に関する専門調査会が平成二十二年に取りまとめました提言では、こういった垂直避難の考え方で高層マンションを活用した取組というものも提言をされているところでございます。昨年九月には、特に首都圏の大規模水害対策大綱というものを防災会議で決定をいたしまして、その中で民間ビルやマンション、立体駐車場等の緊急避難に利用可能な施設の管理主体との利用協定の締結の推進といったようなことも盛り込んでいるところでございます。
今後、関係省庁、自治体とも連携しながら具体的な利用促進策を進めてまいりたいと思っております。
○西田実仁君 最後にもう一つ内閣府にお聞きしたいと思いますけれども、マンションの防災対策につきまして、直下型地震の場合、エレベーターあるいは室内への閉じ込め事故の多発が予想されております。エレベーター用の防災キャビネットの備付け、あるいはドア開閉のためのバール、油圧ジャッキ等の装備が必要になってくるわけでありますけれども、こうした装備に対する、それぞれの自治体のマンション向けの防災対策としてあり得ると思いますけれども、国としてどのように支援をしていくおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(佐々木克樹君) マンション、特に高層住宅等については、長期地震動による対策ですとかいろんな、あるいはエレベーターの停止による閉じ込め、それから高層ビルにおいてのライフライン途絶によるいわゆる高層難民、住民の発生といったようなそれぞれ特徴のある被害が想定されているかと思っております。
このため、私どもとしましては、今回、今年度の予算におきまして、住宅建物等における地震防災対策の推進経費という予算を要求させていただいております。建物自体の耐震性というのは国交省を中心に関係省庁で進めていただくということと併せまして、実際の建物内でのいろんな家具の備付けの問題ですとか、いろんなフェーズごとによってのハード、ソフトの対応策というものが考えられるかと思っておりますので、こういったものの調査研究を今年度進めていきたいと、こういうふうに思っております。
○西田実仁君 終わります。