192-参-憲法審査会-002号 2016年11月16日
○会長(柳本卓治君) 西田実仁君。
○西田実仁君 初めに、我が参議院憲法審査会の初代会長を務められました小坂憲次氏が十月二十一日に逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。
我が党は、人類普遍の原理ともいうべき国民主権主義、基本的人権の尊重、恒久平和主義の三原理を骨格とする憲法は優れた憲法であると積極的に評価しております。三原理は将来にわたって不変のものとして、これを堅持していくべきと考えます。
参議院憲法審査会の前身とも言える参議院憲法調査会では五年間を掛けて日本国憲法に関する調査報告書を作成しており、憲法審査会はそれを踏まえて議論することが当然と言えます。
そこでは、自民、当時の民主、公明、共産、社民の五党で、共通又はおおむね共通の認識を得られたものとして、憲法の三大基本原則は戦後半世紀以上の年月を経て我が国に定着しており、これを今後も維持すべきであるとの共通認識が記されております。また、現行憲法は基本的に優れた憲法であり、戦後日本の平和と安定、経済発展に大きく寄与してきたと高く評価する旨も共通の意見として示されております。
確かに、現行憲法の制定過程をめぐっては、GHQの関与は極めて大きく、押し付け憲法であるとの意見も憲法調査会では示されております。しかし、憲法ができるまでの過程をつぶさに見ると、決して一方的な押し付けではないことは明らかであります。
GHQから示された総司令部案では一院制であったものが、日本国政府内の検討によって二院制に変更されております。昭和二十一年四月十日、婦人参政権が認められて初めて実施された総選挙を経て出された憲法改正草案には、参議院の緊急集会について規定されております。衆議院、貴族院それぞれで修正議決も行われ、今から七十年前の一九四六年十一月三日に日本国憲法は公布されました。
何より、制定当時の責任者としての経験をつづった吉田茂著「回想十年」には、押し付けられたという点に、必ずしも全幅的に同意し難いとして、こう述べておられます。
なるほど、最初の原案作成の際に当たっては、終戦直後の特殊な事情もあって、かなり積極的にせき立ててきたこと、また内容に関する注文のあったことなどは前述のとおりであるが、さればといって、その後の交渉経過中、徹頭徹尾強圧的若しくは強制的というものではなかった。
ただ、憲法も法規範である以上、新しい時代に対応した改正があってしかるべきとの立場から、憲法の施行時には想定できず、憲法改正しか解決方法がないような課題が明らかになる可能性もあります。
公明党は、改正について、現行憲法を維持した上で、改正が必要になった場合に新たな条文を付け加える形の加憲という方法を主張しております。
憲法審査会が活動を開始してから五年が過ぎました。この間、参議院選挙は二回行われ、一票の格差をめぐって司法の厳しい判断が続いております。さきに行われた参議院選挙に対する高裁判決では、違憲状態が合憲判断を上回り、合憲とした結論も含めて投票価値が平等であるとの判断は一つもありませんでした。投票価値の不平等は存在するけれども、参議院が立法府としてその改善に努力しているとの評価からの合憲判決でした。
とすれば、法律にうたって自らが誓った抜本改革への議論を進めなければなりません。その際、衆議院と参議院の選挙制度における投票価値が違ってもよいとは言えないことは現行憲法に明らかです。
公務員の選定、罷免権は国民固有の権利であり、民主主義の基礎を成す重要な人権です。それが憲法十四条の平等原則で担保されています。その上で、それぞれの院の特徴から選挙制度をつくり出すべきであります。まずは衆参それぞれの役割を明確にして、その上で、それらを担う人材をどう選ぶかという選挙制度の議論を進めていかなければなりません。現行憲法上、選挙制度はあくまで法律事項です。本末転倒の議論は避け、しかも法律で誓った二〇一九年次期参議院選挙までに抜本改革の結論を必ず得なければなりません。
国民主権に基づく二院制と議院内閣制という仕組みの中で、第二院の参議院は第一院の衆議院を具体的にどうバックアップすればよいのか。国民主権が参議院改革の基本の視点であり、改憲論議においてはなおさら国民主権の徹底が必要です。
そう考えれば、当然、衆議院議員も参議院議員も全国民の代表という性格付けが適切ではないかと私は考えます。主権は国民全体にあるからです。参議院議員も全国民の代表であるからこそ、参議院には、衆議院が解散されていても、国に緊急の必要がある場合の緊急集会の規定が置かれていると言えます。緊急集会が参議院に置かれることとなった経緯や規定の制定理由を見れば、緊急集会は第二院の参議院が第一院の衆議院をバックアップする典型であることは明らかです。
参議院改革については、これまでも様々な議論がありました。二院制を支持する者の共通認識は、参議院は行政監視機能をより重視すべきであるということです。良識の府である参議院は、公共の利益の実現を目指し、党派を超えて努力すべきです。特に、解散のない六年という長い任期を与えられている参議院は、行政の組織、人事に対する統制という観点が重要であり、政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院という新たな観点から国会の行政監視機能を見直すべきではないか。本年二月の本審査会に続いて、こうした議論をこれからもしっかりと行っていきたいと考えます。
以上です。