196-参-内閣委員会-019号 2018年06月14日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。今の熊野議員に引き続いて御質問させていただきます。
 このTPP11に関しましてまず私が取り上げたいのは米中の通商摩擦への対応ということで、そういう切り口でお聞きしたいと思います。
 本年五月四日、北京で米中の通商協議の初会合が行われました。ムニューシン財務大臣、ライトハイザーUSTR代表、ロス商務長官、ナバロ大統領補佐官に、中国側は劉鶴副首相が出席して米中の通商協議が始まりました。その課題は、中国の市場開放であり、知財権の保護であり、為替調整や内需拡大というものも取り上げられております。
 保護貿易というのはもちろん許されるわけではありませんが、実際に中国の市場が閉鎖的であるということを言う定量的な指標があることも事実でして、今日お配りをさせていただきましたのが、OECDが一九九七年に開発しました外国直接投資の制限指数であります。この指数は一に近づけば近づくほど規制が強いことを示しておりまして、逆にゼロに近ければ近いほど規制が弱いということを意味しております。
 これを見ますと、日本は二〇一七年〇・〇五二、アメリカは〇・〇八九、OECDの平均は〇・〇六六なのに対しまして、中国は〇・三一六、参考としてインドも掲げましたが、〇・二一二と高いということが見て取れるわけでございます。
 こうした背景の下で米中通商摩擦の協議が始まりまして、中国としては、この対米貿易摩擦に先んじて、既に企業への打撃軽減策として五月から、法人税四千六百億元超、七百二十三億ドルの減税を実施し、増値税率、消費税ですけれども、付加価値税ですが、製造業を一七から一六へ、運輸・交通、建築を一一から一〇%などへ実施しております。一方、アメリカの方も、レーガン政権以来の大規模減税、十年で一・五兆ドルというのを実施しているわけであります。
 この米中通商摩擦の先行きにつきましてはまだ不透明でありますが、仮にこれが激しくなったときにどういう影響を及ぼすのかということも考えておかなければならないと思います。
 そこで、主要国の対米輸出、対中輸出のGDP比を見ますと、対米で最も多いのはメキシコ二八%、カナダ一九、ベトナム一九、香港一三、シンガポール七、台湾六、韓国五、中国三、日本は二・八%であります。対中国輸出、これは当然香港が一番大きく九三%、それからシンガポール一五、ベトナム一四、台湾一四、韓国九、マレーシア八、日本は二・七%ということであります。
 米中通商摩擦によりまして米国の対中輸入が削減を仮にされ、かつ中国以外からの輸入も削減される、あるいは、中国も対米輸入及び米国以外からの輸入も削減するということを想定しますと、最も影響を受けるのは、対米、対中輸出依存度の高いベトナムあるいはシンガポール、メキシコ、マレーシアでありまして、これはいずれもTPP11加盟国であります。また、台湾や韓国などTPP11への加盟希望国への影響も大変に大きいということも分かります。
 この米中通商摩擦の行方は予断を持つことはできませんけれども、今後この波及効果をできるだけ軽減するには、TPP11の早期発効、そしてその拡大というものが急務ではないかということも知らされるわけでございます。
 さらに、日・EUの経済連携協定は昨年十二月に既に合意をし、今夏には署名し、一九年春まで発効を目指すというふうにされておりますし、日中韓FTAの交渉加速化ということも先般の日中韓サミットでも一致してございます。
 まず茂木大臣にお聞きしたいのは、この米中通商協議が始まりました。この行方はなかなか予断を持っては見られませんが、その波及効果をどう見るのか、また日本としてどう対応していくのか。七月から大臣自らが交渉として大変御苦労いただく日米通商協議ということにも加えまして、やはりTPP11の早期発効とその拡大ということがこうした課題に応える意味でも大事ではないかと思いますけれども、御所見をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(茂木敏充君) 西田委員の方から各国の投資制限の数字も具体的にお示しいただいたところでありますが、強制的な技術情報の開示であったり外資系企業に対します差別的なライセンシングなど市場歪曲的な措置、これは日本にとっても深刻な懸念でありまして、これまでも日米で様々な協力を行ってきているところであります。また、日本はルールに基づく多角的な貿易体制を重視しておりまして、各国の措置がWTO協定と整合的な運用となることを求めてきているところであります。
 その上で、米中の通商摩擦についてお話があったところでありますが、もちろん誰も対抗措置のエスカレーション、こういったものは望んでいないと思っておりますし、世界のGDPの第一位、そして第二位の中国が様々な摩擦が生じるということは世界経済全体にとってもマイナスの影響と、こういったものも懸念をされるところでありまして、引き続きまして、米中間での事態の進展、こういったものを注視をしてまいりたいと考えております。
 日米は、四月の日米の首脳会談におきまして、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、いわゆるFFR、これがスタートすることになったわけでありますが、これは、日米間の貿易、投資を更に拡大させ、そして公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域を実現するための方策について議論をするものでありまして、この協議の場、これを通じまして、日米両国が、日米二国間の問題だけではなくて、これはアジア太平洋地域の問題についてもいかに協力すべきか、建設的な議論を行っていきたいと思っております。
 世界的に保護主義、こういったものが台頭する中で、TPP11、これを推し進めるということは極めて重要だと考えておりまして、既にメキシコは先月国内手続を終えるなど、予想以上のスピードで各国の手続というのが今進んでいるところであります。
 我が国におきましても、昨日、TPP11の協定は承認をいただいたところでありまして、TPPの国内法案についても早期に成立できるよう政府としても全力で取り組みまして、TPP11の早期発効に向けた機運を高めていきたい、こんなふうに考えているところであります。
 このTPP11、六か国が国内手続を終え、そして寄託国にそれを通知し、六十日で発効ということになるわけでありますが、発効しましたら、このTPPの新しいハイスタンダードなルールを世界に広めていくと、こういったことが視野に入ってくるわけでありまして、こういった観点から、南米のコロンビア、さらにはアジアにおきましてはタイ、インドネシア、台湾、さらに英国、こういった様々な国や地域がTPPへの参加に関心を示していること、歓迎をしたいと思っております。
 新規加盟に対します対応方針、こういったことについても、我が国が主導して必要な調整、今後行ってまいりたいと考えております。

○西田実仁君 大変に重要なこれから日米通商協議もございますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
 次に、中小企業のFTA等の活用についてお聞きしたいと思います。
 世界の経済連携というのはFTAとかEPAですけれども、加速度的に重層化、複雑化しております。例えば、日本とマレーシアとの間では、日・マレーシアEPA、日・ASEAN・EPAに加えまして、これが、TPP11ということが加わっていけば、こうしたものが法的には併存し続けていくということになります。
 そこで、まず外務省にお聞きしますが、日本が関与するFTA、EPAのうち、既に発効済みのもの何件あり、ほかに署名済み未発効、交渉妥結未発効、さらに交渉中のものは幾つあるのか、事実関係をお聞きしたいと思います。

○政府参考人(林禎二君) お答えいたします。
 我が国が関与いたしますEPAのうち、既に発効済みのものは十五件ございます。それから、署名済みですが未発効のものが二件、交渉は妥結しておりますが未発効のものが一件、実質的に交渉中のものが四件ございます。

○西田実仁君 また、この輸出入の申告の際に付されるHSコード、これは各国ごとにおよそ幾つぐらいあるんでしょうか、財務省にお聞きします。

○政府参考人(柴崎澄哉君) お答えいたします。
 各企業がEPA税率を適用する場合に利用しますタリフラインにつきましては、各EPAにおきまして国ごとに規定されております。
 例えば、TPP協定におきましては、我が国が設定しているタリフラインの数は九千三百二十一となっておりますほか、各国が設定しているタリフラインの数はおよそ一万前後となっております。

○西田実仁君 こうした複雑かつ重層化する経済連携網を中小企業が利用しようとしますと、幾つもの壁に阻まれます。
 まず第一に、外国に輸出しようとしますと、日本側の輸出用HSコードを物品に付さなければならないため、HSコードの正確な把握は不可欠であります。加えて、相手国の税関当局から輸入許可を得るためには、相手国での輸入申告の際に付されるHSコードも必要になります。今御答弁いただきました国別に約一万品目のHSコードを正確に把握した上に、日本が関与するFTA、EPA、発効済みのものでも十五件ということでありますので、膨大な、掛け算でいいますと、HSコードの把握が求められます。
 第二に、世界中に張り巡らされましたFTA、EPAのどれを利用することが自社にとって有利なのかの判断が必要になります。今回のTPP協定でもそうですが、例えば関税について、カナダ向けの乗用車は現行税率六・一を五年目に撤廃、ニュージーランド向け工業製品は七年目までの撤廃等々書かれているんですが、完全撤廃までの税率スケジュールを把握しないと比較考量はできません。輸入開始時にはベストな特恵関税率だったFTAが、二年後には別のFTAより条件が劣位に置かれるケースが生じるということがあるわけです。
 例えば、ある日本の衣料、着るものの製造販売会社がベトナムから綿織物を輸入する場合、輸入開始時には日・ASEAN・EPAを利用することがベストの特恵関税率だったものが、その二年後には日本・ベトナムEPAの関税率の方が低くなって、日・ASEAN、日・ベトナムEPAの間で関税の逆転現象が起こってくるわけですね。これに気付かないと関税削減効果を逸してしまう、使い漏れということになります。
 ジェトロでは、こうした世界の関税率情報のデータベースを提供しているんですね。日本に居住している人なら誰でも無料で利用できるということで、私も登録してみました。ちなみに、このデータベース、アメリカのフェデックス・トレード・ネットワーク社が有料で提供しているデータベースでありますが、ジェトロとの契約により日本の居住者は無料で利用できると書かれています。このジェトロの関税関連ウエブには、フェデックス社の提供するデータベースで今申し上げた各国の関税情報が入手できるんですね。HS番号をクリックすると輸出国別の税率も確認可能なんです。
 しかし、私も登録していて、ふと思いました、住所とか名前とか書いて。なぜアメリカの会社のデータベースに私の個人情報を提供しなければ世界各国の関税情報が入手できないのかと、何でそんな仕組みになっているのかと。しかも、フェデックスというのは、御存じのとおり、まさに貿易に関わっている世界的な会社でありまして、これだけ日本が関与するFTAやEPAが増えてきており、今後も増えていく中、やっぱりこれ自前のデータベースをしっかり構築していかないといけないんじゃないかと。日本人の個人情報がそのままフェデックスに流れていくのにちょっと抵抗を感じながら登録して、しかし便利だなと思って見ていたんですけれども、その点いかがでしょうか。

○政府参考人(渡辺哲也君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、ジェトロにおきましては、我が国の事業者が輸出入する際の関税率を容易に検索できるように、アメリカのフェデックス社と契約いたしまして、同社が提供いたしますデータベースにより関税情報を提供しているところでございます。
 先生御指摘のように、フェデックス社のサイトは有料でございまして、一人一年間契約しますと約四千ドル取られるところでございまして、この有料の関税の情報の閲覧ベースをジェトロがフェデックス社と契約をいたしまして、その上で国内の利用者の方に無料で御利用いただいていると、そういう仕組みになっております。ちなみに、二〇一七年には三万八千件以上の御利用をいただいているところでございます。
 フェデックス社のデータベースは世界百七十五か国における関税率をカバーする非常に網羅的なものでございまして、先生御指摘のように、いろんなEPAとかございますので、それを把握するという意味では代替するものはないというところでございます。ジェトロにおきましては、自前で独自のシステムを構築するよりも、このデータベースを活用するということにしているところでございます。
 ただ、議員御指摘のとおり、データベースを利用するに当たりましては、氏名と会社名、それから会社の住所、それからメールのアドレスを同社に登録してIDの発給を受けると、そういう仕組みになっております。これは、ジェトロとフェデックス社との間の、を通じて登録された日本の国内の居住者であるということを確認する仕組みということでございます。
 先生御指摘いただきましたように、同社との契約は一年ごとでございますので、来年度の契約に当たりまして、登録情報の範囲を更に小さくするとか、そういうことを交渉する等、検討してまいりたいと思います。

○西田実仁君 このデータベースでは、対日本の税率も、EPAやFTAの種類とともに税率の引下げスケジュールが分かるようになっているんですよ。しかし、私も実際にクリックしてみました。すると、まずこの表が崩れていてもう非常に分かりづらいです。本当に分かりづらいです。そして、日本・ベトナムEPAを利用するのがよいのか、それとも日本・ASEAN・EPAを利用する方が得なのか、比較考量できないんですよ。一つ一つ全部自分で調べていって、年数を何年目とか見ていくと、逆転するのがいつなのかというのも、ぱっと、あっ、このときまでは日・ASEANがいいなと、これから先は日越がいいなというようなことが比較考量できないと、さっき申し上げたような使い漏れになってしまうわけであります。
 一輸入国対一輸出国という検索になっているんですけれども、多輸出国対多輸入国ということの検索が可能になるようシステムインフラを整えないと中小企業は利用しにくいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(渡辺哲也君) 御指摘いただきましたように、表示の見やすさ、それから中小企業の方々が分かりやすい形で、今どの税率を使ったら一番関税が低いのか、WTOの税率なのか、あるいはベトナムですとバイのEPAもございますし、それから日・ASEANもございます。それから、これからTPP11の税率も適用されることになって、それをどれを一番使ったらいいかというのを見やすくお示しするというのは大変重要なことだと思っております。
 それから、関税率の逆転ということでございますけれども、このフェデックスのサイトは、最終税率は出ていて年ごとも出ているんですけど、この時点でこの年度でどっちを使ったら、どれを使うのが一番有利かというのは必ずしも見やすくないわけでございまして、中小企業の方々が一目で見て今どれを使ったらいいのかということがはっきり分かるように、来年度の契約に当たりまして対応を検討してまいりたいと思います。

○西田実仁君 是非こういう、TPP11、これからもどんどん増えていくわけですから、重層的、複雑化していく経済連携協定を中小企業がもっと使いやすく、本当に。これ、そもそも英語だけなんですよ。そんなの当然、フェデックスですからね。それも普通の中小企業、抵抗ある人も多いと思いますよ。そういう意味で、システムインフラをしっかり整えるということも大事だということを申し上げております。
 三つ目に、中小企業にとって課題になるのは、原産地規制が複雑であり利用しにくいことです。
 実際、今日お配りした資料にも、FTA利用上の問題点の中には、原産地基準、原産地判定、原産地証明書の発給等が課題であることがジェトロの調査で分かっております。
 この経済連携協定を用いて関税を減免して輸入を行う場合、原産地証明が必要なんですけれども、その原産地証明の真偽を確認する検認と言われる一種の監査がございます。FTA先進国とも言われる韓国では、二〇一二年三月に米国とのFTAが発効、EUとは二〇一一年七月に暫定発効、その発効五年経ずして、既に米国やEUから多数の検認を受けていると聞いております。コンプライアンス対応の問題であります。
 この事実関係を財務省にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(柴崎澄哉君) 韓国がEUや米国からどの程度検認を受けているかという御質問でございますけれども、韓国の関税庁が二〇一五年の十二月二十八日に公表した資料がございまして、これによりますと、韓国が二〇一四年にEUから受けた検認数は二千八百二十二件、同年に米国から受けた検認数は四百八十二件となっているものと承知してございます。

○西田実仁君 まさに、二〇一一年、EUの間接検認が六十七件と私は把握しておりますけれども、それが二〇一四年には二千八百二十二と今おっしゃいました。また、アメリカの直接検認、二〇一二年には六十九件だったのが、今は、御説明だと二〇一四年四百八十二件と急増しているわけですね、やっぱり年数がたつと、この検認。したがって、中小企業のコンプライアンス対応というのは非常に大事になってきます。
 そこの支援をどうしていくのかということを、もう時間がないので、最後大臣にお聞きするために説明で済ませますけれども、新輸出大国コンソーシアムというのを経産省で、中小企業、中堅企業に対して様々な専門家がこれ支援するという仕組みを既につくっておられます。
 最後に大臣にお聞きしたいと思います。
 今、中小企業のFTA等の利用について、特にシステムインフラの整備ということを申し上げました。様々な協定が結ばれても、やはり中小企業がみんな使うということもすごく大事だし、そのためのいろんな整備、支援ということが必要ですが、特に私は今日はこのシステムインフラの整備のところに着目をしてお聞きをいたしました。中小企業の海外進出を支援するためにこうしたシステムインフラも含めた支援を更に進めていくべきではないかと思いますけれども、茂木大臣の御見解をお聞きして、終わりたいと思います。

○国務大臣(茂木敏充君) 西田委員御指摘の点、極めて私、重要だと思っておりまして、これは単に通商のデータベースだけの話ではなくて、例えば検索でもそうです、それからEコマースでもそうですけれど、巨大なプラットフォーマーと、これが生まれることによって世界的に寡占化が進む、データの世界ではそういったことが起こっているわけでありまして、そこの中で日本がどういう立ち位置に立って、日本の企業にとってメリットのあるようなデータベースを作っていくのか。
 先ほどの関税のお話も聞いていますと、例えばホテルでしたらトリバゴでやればどのホテルが一番安いとか分かるわけでありまして、中小企業にとっても簡易に様々なものが比較できるようなものを作っていく必要があると思っております。
 そういった意味において、日本、先ほどの答弁にもありましたように、既に十幾つの経済連携協定結んでおります。たしか、日・シンガポールが最初で、十五、六年前になるんじゃないかなと思いますけど、そういったものをやはりできるだけ一覧的に中小企業の皆さんにとっても見やすいものにしていく、同時に、我々様々な形で各地での説明会であったりとか個別の相談も受けているわけでありまして、個別の中小企業がどういう点に関心を持っていらっしゃるのか、どういう情報があったら見やすいのか、こういったこともしっかり把握をした上で、丁寧な情報提供、そして説明に心掛けていきたいと思っております。

○西田実仁君 終わります。