財政金融委員会・第9号

【質疑事項】
議題:日銀の報告書に関する件
1.日銀の量的緩和政策について
・日銀短観について
・札割れの意味するところについて
・量的緩和施策の副作用の認識について
・正常な金融政策に戻す際の状況と条件について<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。どうかよろしくお願いいたします。
午前中も様々な議論がございまして、私の方はまず日銀短観につきましてお伺いしたいと思っております。
総裁からも、午前中、賃金につきまして下げ止まりという御指摘もございまして、これから上がっていくのではないかというような御指摘もあったと記憶してお りますけれども、まず、今回のこの日銀短観における労働市場、特に雇用判断DI、これを見ていくと、全産業ベースでバブル崩壊後初めてこの雇用判断DIが 過剰から不足へと転じたということが非常に大きな特徴の1つかというふうに思っておりますが、まず総裁の方、この現下の労働市場の需給につきまして、こう した雇用判断DIを見ながら、どのような見方をされているか、お聞かせ願えますか。

○参考人(福井俊彦君) グローバル化が著しく進展しております先進国の経済の特徴として、景気が回復したりあるいは拡大してもなかなか雇用面の改善に過去と比べればつながりにくい、こういう特徴を引きずりながら動いていると思います。日本経済も全く同様でございます。
現在の景気回復の局面におきまして、企業部門で生産が増え、企業所得が増え、そして次の企業投資が増えるという、この1つの好ましい循環メカニズムのほか に、もう1つは、やはり雇用が増え、そして雇用者所得が増え、消費につながるという、もう一方の循環メカニズムもしっかりしてくるということが非常に重要 な要件であります。
したがいまして、この後の点について私ども非常に注意深く状況を見守ってまいりましたけれども、少し後ればせではございます が、やはりこういった雇用面の改善、着実に進展し始めている。委員御指摘のとおり、短観の雇用過剰感というのはごく小幅ながら、約12年ぶりだったかと思 いますが、不足超に転じたというところに典型的に表れていると思います。
雇用だけでなくて、雇用者所得の面でも明確に下げ止まったと、これから は緩やかに上がっていく可能性の方が強いと見ておりますので、現在の景気の踊り場状況を脱し、着実な景気回復につながっていく上の1つの重要な条件が今回 の短観で、この場所において確認されているというふうに思っております。

○西田まこと君 今後についてでございますけれども、今御指摘の 景気循環的な意味での雇用の需給の、まあ逼迫というほどではないでしょうけれども、過剰から不足へと転じたということは、循環面でもございますけれども、 同時にその構造的に、生産年齢人口がこれから急速に、団塊の世代の引退ということも現象的にはあるわけでございますけれども、生産年齢人口の急速な高齢化 ということを背景にした労働市場のこれまでとは異なる面もあろうかと思いますが、今後について、この労働市場の今後についてどのような見方を現在されてい ますでしょうか。

○参考人(福井俊彦君) 日本の労働市場は、ずっと以前の段階で大方が認識しておりましたその労働市場の硬直性という点 は、実際、事態の進展の中で、意外に日本の労働市場は弾力的あるいは流動的な面があるということが次第に確認されてきたと思います。今後、人口動態の変 化、特に労働力供給態様の変化ということが今後の日本経済の成長経路あるいはダイナミックス形成の上で非常に重要なポイントだと、御指摘のとおりでござい ます。
高齢者に対しても様々な形で新しい労働機会が提供されていかなければならないということが一方であると思いますが、若年労働者に対して は、より生産性が上がるように、技術的な、あるいは、単に技術ではなくて、より広く知識、創造が可能になるようなイノベーションを身に付けるというふうな 労働者教育ということが非常に重要になってくるというふうに思っております。

○西田まこと君 この労働市場の変化に加えて、物価を見る場 合には特殊要因も見なきゃいけないだろうと思いますけれども、1つ、CPIが一部注目されているというか、そこに着目して金融政策を取っているわけでござ いますけれども、この特殊要因ですね、特に公共料金等の引下げがこのCPIに与えている影響、これについてはどのように見ておられますでしょうか。

○参考人(福井俊彦君) 最近では、委員御指摘のとおり、電力料金とか電話料金とかいうふうなところが言わば特殊要因という形でCPIを押し下げる要因になっております。
特殊要因ということではございますけれども、これは規制緩和を背景とするものでございます。日本経済がこういったグローバル化進展の下での厳しい環境の中 できちんと力を発揮していくために必要な規制緩和、その結果として起こる、従来硬直的であった物価項目が動くようになって下がるということは、これ全体を 含んで実勢としての物価水準を我々は把握しやすくなったということだと思います。
したがいまして、特殊要因だからといってこれをいたずらに除外して判断するというよりは、むしろこれを含んで実勢の物価の動きがどうかというふうに認識していくのが基本ではないかというふうに考えています。

○西田まこと君 そうすると、特殊要因であるからそれは省いて、この特殊要因分を除いて物価の基調がどうなっているかという見方はしていないということでしょうか、確認ですけれども。

○ 参考人(福井俊彦君) 物価全体の水準としての実勢を見る場合には、余り特殊要因だからといってこれを排除しない方がいいというふうに私は思いますけれど も、刻々と物価の、変化という意味では、特殊要因が介在してきますと、そこで屈折が起こります。したがって、変化としての趨勢はどうかというふうな場合、 それを見ようとするような場合には、取りあえず一時的な屈折をもたらす要因というのは除外をして、実勢としてのトレンドがどういうふうに変化しているかと いうふうに判断するのも一つの価値ある見方でありますので、その点では両様用いなければならないというふうに思っています。

○西田まこと 君 この4月、今月28日には展望レポートが発表されるわけでございますけれども、短観以降のいろんな指標を加味しながら検討していかれるんだと思います けれども、この展望レポートにおきましては、やはり、今、冒頭御指摘申し上げました労働市場が発するシグナルというものは大変重要ではないかと私は見てお りますけれども、総裁、いかがでございましょう。

○参考人(福井俊彦君) 昨日発表いたしましたけれども、この4月の末から私どもが発表いたします展望レポートにおきましては、これをカバーする期間が、単に2005年度だけではなくて、2006年度、これから2年度にまたがった展望を出そうということになりました。
したがいまして、そういうふうな労働市場の構造的な変化も含むこれからの変化をきちっと織り込みながら、景気循環的な回復の動きがどうなるかということも しっかりとした土台の上に展望を描くことが可能になったのではないかと一応思っています。そういうふうに努力をしたいと思っています。

○西田まこと君 続きまして、午前中も議論ございましたけれども、札割れ、いわゆる札割れの意味するところにつきまして改めてお聞きしたいと思います。
これ、総裁の言葉をおかりして、午前中のお言葉をおかりしますと、金融システム不安を内包したデフレーションというのが収まってきつつあるんではないか、 だけれどもデフレそのものは続いていると、こういうお話だったと思いますが、札割れそのものについては量的緩和政策の限界と指摘する声もある一方で、その 実態を見ますと、やはり個々の銀行や金融機関が市場で独自に資金を調達できるようになったと、いわゆる金融システム不安が払拭されたということを意味して いるんでありましょうし、金融機関同士での相互不信が解消に向かって、不測の事態に備えてそれほど積まなくてもよくなったと、このように理解しているわけ でございますけれども、こうした理解でよろしいんでしょうか。

○参考人(武藤敏郎君) 正に委員御指摘のとおり、札割れというものの背景には、金融システム不安の後退という状況の下で金融機関の流動性需要が減少している、金融市場に資金の余剰感が強まっていると、そういうことが背景だというふうに思います。
したがいまして、そのこと自身は決して悪いことではなくて、むしろ金融システムをめぐる状況というものが大きく改善しているということの結果でもありますので、前向きに、そういう意味で前向きに受け取ることができるのではないかと思います。
もっとも、その札割れというものがこの量的緩和の当座預金目標残高維持というものに対して何がしかの影響を与えるわけでございますけれども、ただ、その観 点から見ましても、今のところこの量的緩和の30兆から35兆円という維持には支障がないと、そういう状況であるというふうには認識しております。

○ 西田まこと君 そうすると、そうした金融システム不安からくる様々なデフレーションというものは払拭されつつあるという基調からしますと、これは、こうし た札割れは今後も増えるというか、札割れが生じるということは、今の基調でいきますと今後もあり得るということでしょうか。

○参考人(武 藤敏郎君) 今後の状況につきましては、今申し上げましたその札割れの背後にある金融システム不安の後退、流動性需要の減少というものがどのように推移し ていくかということに懸かっているわけでございますが、現時点で見る限り、基本的に改善の方向に向かっているというふうに考えておりますので、その意味で は札割れの現象というものが、これは頻度なり、それから起こるタイミングというのもいろいろ、必ずしも常時起こるということではないわけでございますけれ ども、そういう状態は続くということが十分あるというふうに考えておくべきことであろうと思います。

○西田まこと君 この札割れ現象の本当の意味ということで今お聞きしたわけでございますけれども、一言で分かりやすく言えば、非常時対応の量的緩和政策というのはその解消の機会をつかみつつあるというふうに理解しておりますけれども、総裁はそれでよろしいでしょうか。

○ 参考人(福井俊彦君) 金融システム不安を内包したデフレないしデフレリスク、そういう局面が変わりつつあるということは確かでありますが、一方で、これ から本当にデフレを脱却していくために大事な経済全体としての前向きの動きが十分強まるかどうかと。強まりつつあると思いますけれども、まだ十分でないと いうことでありますので、ここは現行の枠組みは維持しながら、民間部門の動きをしっかりサポートしていく必要はまだ大きく残っているというふうに思ってい ます。
したがいまして、札割れ現象というものに対しては、場合によって何がしかの対応が必要になるかもしれないということではございますが、大 量に流動性を供給し続けるという基本的なフレームワークは断固崩さないでデフレ脱却の目標を達していきたいと、こういう姿勢でございます。

○西田まこと君 では、午前中これも議論ございますが、量的緩和政策の功罪というのが当然あるわけで、功につきましては今いろいろお話しありました金融システム不安というものが払拭されてきたと、これは非常に一番大きなことだというふうに思います。
一方で、その副作用につきましても様々な指摘も既にあるわけでございますが、まず具体的な数字としては、この日銀の国債保有残高の直近値をまず確認をさせていただきたいと思います。

○参考人(白川方明君) 3月末、本年3月末の国債の残高でございますけれども、99兆1千億円、概数でございますけれども、99.1兆円でございます。

○ 西田まこと君 まあ100兆円に迫りつつあると、こういうことだろうと思いますが、これも確認ですけれども、結果的にこの日銀法が禁じている国債引受けに これがつながっているんじゃないかというような指摘もあるわけですけれども、これについてはそうではないという、どういう説明になるんでしょうか。

○ 参考人(白川方明君) 現在、日本銀行は物価安定の下での持続的な経済成長の実現を目指しまして量的緩和政策を実行しております。短期国債を含めまして、 長期国債の買入れは、そうした目的を達成するために、日本銀行の自主的な判断と責任の下、金融調節の一環として円滑な資金供給を図るべく今行っているもの でございまして、これは財政ファイナンスを目的とするものでは、これはございません。したがいまして、日本銀行が多額の国債を保有しているということが例 えば財政法の趣旨に反すというものではこれは全くございません。
それから、特に長期国債の買入れでございますけれども、これは中央銀行として先行きの金融調節面での十分な対応能力を確保するという観点から、日本銀行の長期国債の保有額が銀行券発行残高を超えない範囲でこれを実施しているところでございます。

○ 西田まこと君 3月末に日経新聞の「経済教室」にも須田委員が論文を書かれておりまして、危機対応モードを脱すべきときだという、脱すべきときというより も、それを視野に入れるべきだという、そういう趣旨の論文を書かれておられますが、ここで量的金融緩和につきまして3点に着目をされて論文が展開されてお りました。
私の理解の範囲でまとめますと、3つの異常が今起きているということを指摘されたんだと思っております。1つは、今ございましたとお り、資産規模が非常に異常に膨らんでいると、日銀の資産規模が異常に膨らんでしまっていると。2つ目には、長期金利が異常に低くなってしまっていると。そ して3つ目には、コール市場が異常に縮小してしまっていると。須田先生はそのように、特に3つの異常とか言っていませんけれども、私が理解した範囲で言い ますと、この3の異常が今起きてきていると。
これをどう正常化していくのか、またそのときにどうコストを考えて、調整コストを中長期的にも見なければならないのかという御指摘だったかというふうに思っておりますけれども、1つ目のこの資産規模の異常な膨らみにつきましては今お話しいただきました。
2つ目のこの長期金利というのは、いろんな意味合いありますけれども、私の理解では、将来の期待収益率というものを示している長期金利が限りなくゼロに近 づいているということは非常に異常であるというふうに思っているわけでございますけれども、その背景にはこの短期資金の供給オペ期間が大変長期化する、こ ういう中で長期金利も限りなくゼロに近づいてきている。欧州なんかに比べるとかなり長いということも指摘されているとおりでありますけれども、こうした長 期金利の異常な低さということは、やはり総裁、これは量的金融緩和政策の1つの副作用のゆがみの1つとして考えていいものなんでしょうか。

○ 参考人(福井俊彦君) 債券市場の動きを見ておりますと、御指摘のとおり、長期金利の水準がかなり低くなっている、それから国債とその他民間債、あるいは 民間債の中でもいろいろな信用度の違う債券の利回り格差というものを見ましても、その格差が小さくなっている。まあスプレッドが小さくなっているという言 い方をしておりますが、そうした特徴的な現象が今市場に出ていることは確かでございます。
私どもの判断でございますが、今こうした相場形成ある いはスプレッドの動きを即異常な形成のされ方がされているというふうに即断はいたしておりません。まだ、それだけ日本経済の将来を多くの方がごらんになっ たときに、将来の期待成長率あるいは将来の期待インフレ率というものがそんなに高くない、むしろまだかなり低いんだと。したがって、そうした人々の多くの 実勢判断というものを反映した相場形成という枠内にこうしたもろもろのイールドカーブの形成ないしはスプレッドの形成が行われているというふうに判断して おります。
私どもの量的緩和政策、特にこれをCPIが安定的に0%以上まで続けるというこのコミットメントが一番期間の短い金利からやや長めの 金利に至るところまで下方に抑止力を持っているということも確かでございます。それがずっと長い長期金利にまでどれぐらい影響が及んでいるかは必ずしも検 証できませんが、ある程度長い金利にまで下方に抑止力を持っているということは確かでございますが、私どもが注意しなければなりませんのは、そうした、何 と申しましょうか、市場の金利の形成のされ方の中に、市場関係者の心象風景として、つまり心の底で、やっぱり刻々と変化する経済の動きが着実にこの市場に 表出していくという市場本来のビビッドな動きを、これを鈍らせるような何か過剰な安心感を与えてはならぬと。この点だけは今後ともよく注意していかなけれ ばいけないということでございまして、現在ただいまの金利形成が異常だというふうな判断は必ずしも持っていないんでございます。

○西田ま こと君 今後につきましては、1つはアメリカの金利が非常に上昇傾向にあると。また、日本におきましても、その長期の金利が期待収益率を表すとすれば、今 政府が取っておる政策が成長をしていくということを前提とすれば、人為的に金利を低くして、長期金利もまあ結果的に低く抑えていくということもかなり難し くなるのではないかということも考えるわけですけれども、いかがでございましょうか。

○参考人(福井俊彦君) 長期金利は、日本経済自身 の将来の期待成長率、将来の期待インフレ率の変化を正直に表すでしょう。そのほかに海外の金利の変動の影響も受ける。長期金利はかなり連動性を持って動く ところがございます。そういうことがございます。しかし、私どもが注意しなければいけないのは、そうした実勢に基づく金利の形成のほかに、人々の期待が乱 れてリスクプレミアムが大きく付くことによって長期金利の形成にゆがみが生ずるということをいかにうまく避けていくかということだと思います。
そういう意味では、日本銀行の金融政策姿勢、物の考え方、そして政策姿勢というものに対して、常に市場関係者に正しい理解を持っていただくということが大 事でございますし、特に長期金利はそのベースに長期国債の利回り形成ということがございます。委員御指摘のとおり、日本におきましては大量の国債発行残高 があるという状況ですので、財政規律が確固たるものであり続けるということがリスクプレミアムが不必要に大きく増大しないもう1つの非常に重要な欠かせな い条件だというふうに思っています。

○西田まこと君 これも午前中に大久保委員からの御指摘もありましたが、今総裁が言われた市場に正し い理解をしてもらうということが非常に大事なわけですが、札割れが一時的に、まあ結果的に生じて、もうそれは技術的なものであるということがあって、その 残高目標の下げは決して引締めではないんだという確認がたしかあったと思いますが、市場に正しく理解してもらうということになりますと、そういうふうに引 締めだというふうに受け取ることもないとは言えないんじゃないかと。
そこで、そうした残高目標の下げを引締めと誤解されないために、むしろ物価 安定目標を設けた方がいいんじゃないかというような指摘もございます。当時、もう御存じのとおり、アメリカのCEAの次の委員長バーナンキさんはインフレ ターゲット論の急先鋒というか、ということでもありますし、またグリーンスパン議長も、来年6月でしょうか、退任後につきましては、分かりやすい指標で金 融政策を取っていくという傾向にアメリカは今あるわけでございますが、今申し上げました正しい金融当局の、当局の金融政策の意図を市場に知ってもらうため に量的緩和政策から物価安定目標に分かりやすく変えていくという、こういう提案は幾度となくされておりますが、改めてまた総裁にお聞きしたいと思います。 これも午前中に大久保委員からの御指摘もありましたが、今総裁が言われた市場に正しい理解をしてもらうということが非常に大事なわけですが、札割れが一時 的に、まあ結果的に生じて、もうそれは技術的なものであるということがあって、その残高目標の下げは決して引締めではないんだという確認がたしかあったと 思いますが、市場に正しく理解してもらうということになりますと、そういうふうに引締めだというふうに受け取ることもないとは言えないんじゃないかと。
そこで、そうした残高目標の下げを引締めと誤解されないために、むしろ物価安定目標を設けた方がいいんじゃないかというような指摘もございます。当時、も う御存じのとおり、アメリカのCEAの次の委員長バーナンキさんはインフレターゲット論の急先鋒というか、ということでもありますし、またグリーンスパン 議長も、来年6月でしょうか、退任後につきましては、分かりやすい指標で金融政策を取っていくという傾向にアメリカは今あるわけでございますが、今申し上 げました正しい金融当局の、当局の金融政策の意図を市場に知ってもらうために量的緩和政策から物価安定目標に分かりやすく変えていくという、こういう提案 は幾度となくされておりますが、改めてまた総裁にお聞きしたいと思います。

○参考人(福井俊彦君) 目先、量的ターゲットの引下げという ことを具体的に考えているわけではありませんので、ただいまの御質問には非常に答えにくいんですけれども、仮にそういう市場の流動性需要の実勢的変化を余 りにも無視し続けることがかえって量的枠組みの堅持ということと矛盾してくるというふうな場合に何がしかの調整をしなければいけない可能性というのは否定 できないと思いますが、それはあくまで日本銀行が積極的に流動性を切り詰めていくということではなくて、市場実勢の変化のうち、何がしかを後追い的に調整 させていただくというふうな極めて受け身の、何といいますか、後ろ回りの措置だと、そういうことを明確にしながらやらなきゃいけないだろうということが1 つでございます。
それと同時に、足早の引締めということを感じさせるリスクというふうなことがもし御指摘のようにあるとすれば、将来にわたっての我々の政策経路ということをやはりより明確にしながらやっていく必要があるということは確かでございます。
その場合に、インフレターゲティングというのがどうかというのは、これまた私どもの感覚からいきますと即座にはお答えしにくい非常に難しい問題でございま す。我々は、将来にわたる政策経路について予測可能性を強める、そういう意味でのコミュニケーションのやり方の工夫ということはこれまでもやってきており ますが、これから将来にわたっても幾重にもその工夫は積み重ねていきたいと思っております。
ずっと将来まで考えますと、インフレーションターゲ ティングというのは1つの選択肢かもしれませんけれども、今のところインフレーションターゲティングを入れるだけの諸条件が整いつつあるというふうには判 断していないのでございます。もっともっと手前に様々な条件整備があるということで、今回も展望レポートのカバーする期間を1年から2年に延ばしたと。そ ういうふうに長い見通しの上に立って日本銀行がこの先の金融政策運営をどのようにしようとしているかということが、経済の見通しと我々の政策姿勢と両方重 ね合わせてごらんいただけるようにしたいということでございまして、これは一例でございますが、今後ともこういうふうに我々の政策経路の予測可能性を高め ていただくための工夫は重ねていきたい。将来、いずれかの時点で本当にインフレーションターゲティングが選択肢の一つとして浮かび上がるかどうか、今のと ころはまだ予断を許さないという状況だというふうに思っています。目先、量的ターゲットの引下げということを具体的に考えているわけではありませんので、 ただいまの御質問には非常に答えにくいんですけれども、仮にそういう市場の流動性需要の実勢的変化を余りにも無視し続けることがかえって量的枠組みの堅持 ということと矛盾してくるというふうな場合に何がしかの調整をしなければいけない可能性というのは否定できないと思いますが、それはあくまで日本銀行が積 極的に流動性を切り詰めていくということではなくて、市場実勢の変化のうち、何がしかを後追い的に調整させていただくというふうな極めて受け身の、何とい いますか、後ろ回りの措置だと、そういうことを明確にしながらやらなきゃいけないだろうということが1つでございます。
それと同時に、足早の引締めということを感じさせるリスクというふうなことがもし御指摘のようにあるとすれば、将来にわたっての我々の政策経路ということをやはりより明確にしながらやっていく必要があるということは確かでございます。
その場合に、インフレターゲティングというのがどうかというのは、これまた私どもの感覚からいきますと即座にはお答えしにくい非常に難しい問題でございま す。我々は、将来にわたる政策経路について予測可能性を強める、そういう意味でのコミュニケーションのやり方の工夫ということはこれまでもやってきており ますが、これから将来にわたっても幾重にもその工夫は積み重ねていきたいと思っております。
ずっと将来まで考えますと、インフレーションターゲ ティングというのは1つの選択肢かもしれませんけれども、今のところインフレーションターゲティングを入れるだけの諸条件が整いつつあるというふうには判 断していないのでございます。もっともっと手前に様々な条件整備があるということで、今回も展望レポートのカバーする期間を1年から2年に延ばしたと。そ ういうふうに長い見通しの上に立って日本銀行がこの先の金融政策運営をどのようにしようとしているかということが、経済の見通しと我々の政策姿勢と両方重 ね合わせてごらんいただけるようにしたいということでございまして、これは一例でございますが、今後ともこういうふうに我々の政策経路の予測可能性を高め ていただくための工夫は重ねていきたい。将来、いずれかの時点で本当にインフレーションターゲティングが選択肢の一つとして浮かび上がるかどうか、今のと ころはまだ予断を許さないという状況だというふうに思っています。

○西田まこと君 最近、日銀のレポートでも、物価の予測をどうとらえる かという指標が諸外国と比較したレポートがございまして、拝読させていただきましたけれども、今総裁が言われたことは、将来の政策経路の予測可能性という ことの条件整備がなされていないと。その具体的な条件整備の条件とはそういう指標類のことをおっしゃっているんでしょうか。何をおっしゃっているのか、 ちょっとひとつ理解が足りないんですけれども。

○参考人(福井俊彦君) これまでも、例えば、もう端的な例は、CPIが安定的にゼロ%以 上になるまで今の枠組みを続ける、しかもその安定的に0%以上とは何かということは3つの条件に分解して御説明している、これらは1つの道具立てでありま す。さらに、そうした過程は、余り、経済が回復を続けても、物価上昇が起こりにくい経済という、そういう条件が続く限りにおいては、我々の金融政策の枠組 みの変化に至る過程あるいは枠組みの変化に着手し始めた以降も余裕を持って対処できるという言い方で今までのところは御説明申し上げております。
普通、金融政策というのは、何かの変化に対しては先取り的、予防的にやっていくというのが原則でございます。この原則とは逆に、余裕を持って対処するとい う言い方で、我々は何か慌てて先回りして皆さんを驚かせるような緩和修正措置をとるわけではないという言い方をしておりまして、これもまたある意味でコ ミュニケーションツールを1つ幅広くさせていただいているわけであります。
将来の物価目標的なものを設けるかどうかということになりますと、 我々としては、取りあえず消費者物価指数がマイナスの領域で動いているのをプラスの領域に持っていきたいと。中間目標かもしれませんが、非常に重要な目標 で、この目標すら通過していない段階で先々のインフレターゲット的なことを掲げることに、実践としての金融政策を行っていく上のコミュニケーションツール としては少し飛躍があるというふうにまだ判断し続けている状況です。これまでも、例えば、もう端的な例は、CPIが安定的にゼロ%以上になるまで今の枠組 みを続ける、しかもその安定的に0%以上とは何かということは3つの条件に分解して御説明している、これらは1つの道具立てであります。さらに、そうした 過程は、余り、経済が回復を続けても、物価上昇が起こりにくい経済という、そういう条件が続く限りにおいては、我々の金融政策の枠組みの変化に至る過程あ るいは枠組みの変化に着手し始めた以降も余裕を持って対処できるという言い方で今までのところは御説明申し上げております。
普通、金融政策とい うのは、何かの変化に対しては先取り的、予防的にやっていくというのが原則でございます。この原則とは逆に、余裕を持って対処するという言い方で、我々は 何か慌てて先回りして皆さんを驚かせるような緩和修正措置をとるわけではないという言い方をしておりまして、これもまたある意味でコミュニケーションツー ルを1つ幅広くさせていただいているわけであります。
将来の物価目標的なものを設けるかどうかということになりますと、我々としては、取りあえ ず消費者物価指数がマイナスの領域で動いているのをプラスの領域に持っていきたいと。中間目標かもしれませんが、非常に重要な目標で、この目標すら通過し ていない段階で先々のインフレターゲット的なことを掲げることに、実践としての金融政策を行っていく上のコミュニケーションツールとしては少し飛躍がある というふうにまだ判断し続けている状況です。

○西田まこと君 最後に、今総裁がおっしゃった、余裕を持って対応するということを言われま した。これは大事なことだと思います。ただ、一方で、当然のことながら、余裕を持って対応したことによって調整コストがそれだけ高まると。こういうことも 把握した上で余裕を持って対応していただき、メリットを大きくすることが必要になってまいります。
そういう意味では、あえてお聞きしますけれども、余裕を持って対応した場合の調整に伴うコストにどういったものがあるのか、これ最後お聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○参考人(福井俊彦君) もう典型的なものは、やはり市場機能をある意味で封殺しながら量的緩和政策を続けているということであります。この犠牲は時間が、距離が長くなればなるほどやっぱり積み重なっていくだろうというふうに思います。
そういう意味では、我々としては、早くこの量的緩和政策が枠組み修正ができるところまで実体経済を強くしていかなきゃいけない。したがいまして、金融政策 はゆっくりなんですけれども、金融機関に対する対応は一挙に我々は姿勢の変化を危機対応から金融高度化支援というふうにモードチェンジをして、企業と金融 機関の歩みの呼吸合わせが前向きにそろうようにというところから進めたいとしているわけであります。
世界経済、先進国の経済を見ておりますと、 やっぱり最近はインフレになりにくい経済になっているんですが、その割にやっぱり資産価格が早めに、まあ緩和された金融条件あるいは低めの金利に対して反 応しやすい状況になっている。日本の場合はまだそこまで随分距離があると思いますが、やはり日本の場合にも将来的にはいわゆる伝統的なインフレ率と資産価 格との間にギャップが生じないか、問題になるほどギャップが生じないかというふうなことをやっぱり注視していきたいと思っています。もう典型的なものは、 やはり市場機能をある意味で封殺しながら量的緩和政策を続けているということであります。この犠牲は時間が、距離が長くなればなるほどやっぱり積み重なっ ていくだろうというふうに思います。
そういう意味では、我々としては、早くこの量的緩和政策が枠組み修正ができるところまで実体経済を強くして いかなきゃいけない。したがいまして、金融政策はゆっくりなんですけれども、金融機関に対する対応は一挙に我々は姿勢の変化を危機対応から金融高度化支援 というふうにモードチェンジをして、企業と金融機関の歩みの呼吸合わせが前向きにそろうようにというところから進めたいとしているわけであります。
世界経済、先進国の経済を見ておりますと、やっぱり最近はインフレになりにくい経済になっているんですが、その割にやっぱり資産価格が早めに、まあ緩和さ れた金融条件あるいは低めの金利に対して反応しやすい状況になっている。日本の場合はまだそこまで随分距離があると思いますが、やはり日本の場合にも将来 的にはいわゆる伝統的なインフレ率と資産価格との間にギャップが生じないか、問題になるほどギャップが生じないかというふうなことをやっぱり注視していき たいと思っています。

○西田まこと君 終わります。