国土交通委員会・14号 2006-04-27

【質疑事項】
○政府参考人の出席要求に関する件
○派遣委員の報告
○高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案(内閣提出)

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
これまで様々な審議、質問がなされてきまして、私としても幾つか確認をさせていただきたいことがございまして質問をさせていただきたいと思います。
これまで何度かこうしたやり取りがございました。その代表的な一つには、本法案の「目的」のところに「高齢者、障害者等」と、こういうふうに書かれている。にもかかわらず、「定義」のところに行くと「身体の機能上の制限を受ける者」と、こういうふうになっていると。これは分かりにくいというか、誤解を生むんではないかとか、そういう御指摘がございました。これにつきましては、あくまでも本案の目指すところは、もうすべての障害者の皆様方あるいは高齢者の皆様方が対象であると、こういうことで御答弁がありました。とはいっても、そこはやはり心配であるという声は聞こえてくるわけでございまして、それについて、ではどうするのかというと、施設の設置管理者に対してのバリアフリー化のための基準、ガイドライン、これでしっかりと担保するんだと、すべての障害をお持ちの方が対象であるということをそこで担保していくんだと、こういう御答弁もございました。
そこで、改めてお聞きしたいと思っております。この基準あるいはガイドラインというところにつきまして、じゃどういう、具体的に、すべての障害のある方が対象であるということが担保されるのか、その幾つかの想定される事例というものをまずお示しいただきたい。さらに、この基準やガイドラインを作成する際における高齢者や障害者の皆様方、その他当事者を含めた関係者からの参加というものがどうしっかりと担保されるのか、この二点につきまして、政府参考人からお聞きしたいと思います。

○政府参考人(竹歳誠君) 身体障害をお持ちの方だけではなく、知的、精神障害者の方、また発達障害者の方々が、すべての障害をお持ちの方々にこの法案は対応しようとするものでございまして、これらの方々が移動し、また施設を利用するに際して利便性や安全性を向上させることができる施策を関係者の御意見を伺いながら検討していきたいと思います。
具体的な基準等の例示でございますが、まず精神障害者の方々、今まで様々な要望を承ってまいりましたし調査もしてまいりました。そこから伺った問題は、疲れやすい、それから薬を飲んでいるために水飲み場が必要、それから薬の副作用で足下がふらつく、暗い空間は不安、不安感を解消するために座るベンチが必要などの御要望をいただいております。
これらのうち、例えば疲れやすさという問題につきましては、既に休憩施設の設置という形で基準に位置付けられておりますが、今申し上げましたような御要望につきまして、関係者の御意見も伺いながら、さらにどう基準化していくかということを進めてまいりたいと思います。
それからもう一つ、知的障害をお持ちの方でございますが、これらの方々は、例えば誘導ブロックなど、ちょっとした段差でもつまずいてしまう者がいる、それからトイレの機能が多様化してその利用方法が理解できない、それから複雑な操作が必要な機器は苦手であるとか、それから日常行動をパターン化して対応しているので、例えば電車の発車番線が急に変わったというようなことになると戸惑ってしまうというような様々な悩みをお持ちだと、要望をお持ちだということでございます。
この中には、例えばトイレの問題ですと、例えば規格の統一化とか、それからICカードとか、そういう複雑な操作なしにできるような試みができるんではないかと思いますが、この点についても関係者の方の御意見を伺いながら、基準化、ガイドラインを作ってまいりたいと思います。
それから、共通の課題として、これは既にこの委員会でも御指摘がございましたけれども、分かりやすい表示という意味で、むしろ情報過多が混乱を招くというような問題もございまして、こういう問題につきましては、統一された図記号、ピクトグラムの採用等が必要になると思います。
それから、いろいろな御要望に対して、実はこの物理的な空間として何ができるかということを今申し上げたのでございますが、技術の発達も待ちながら、技術が追い付かない場合にはやはりソフトで対応していくことということも大変大事だと思います。したがって、基準作りと併せまして、既に例えば国土交通省としても、「「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」」というようなマニュアルを作成し配付する等も行っておりますが、先日、山本先生からも御指摘ございましたように、コミュニケーションボードを活用するとか、そういう公共交通事業者におきます接遇の在り方とか各種システムの改善についても検討し、推進してまいりたいと考えております。

○西田実仁君 今、想定される例示をしていただきましたが、もう一つ私が御質問させていただいた、いわゆる関係者からの参加の担保ということですね、これにつきましても御指摘いただきたいと思います。

○政府参考人(竹歳誠君) これは、本法案第四条の国の責務というところに、こういう基準作り、ガイドライン作りは国の基本的な仕事になるわけでございます。基本方針、それから具体的な措置を策定するときには関係者の方々の意見を反映させるために必要な措置を講じた上でやるということで、実は今の基本方針についてもパブリックコメント等は行っておりますが、更に充実した意見をいただくような措置を講じていきたいと考えております。

○西田実仁君 続きまして、今、加藤先生からも御指摘ありましたが、私も重ねて御質問させていただきたいと思います。
このいわゆるスパイラルアップ、継続的発展ということを目指しまして、この委員会でも参考人の方から大変貴重な御意見、また様々な御要望というものを伺ったわけでございます。その中で、特にこの乗車拒否とかが幾多も事例があるということもお話しいただきました。
ただ、こうしたいわゆる被害というものにつきましては、当然のことながら、高齢者や、また障害のある方が自己申告という形で初めて発覚するのが、まあ当たり前ですけれども、その拒否した側が何か自己申告するということは普通余り考えにくいわけでございまして、そういう意味では、その当事者の皆様方の御意見を、あるいは御要望をしっかりと受け止めていくということが非常に大事になってくると私も思っております。
さらに、それは単なる苦情を受け付けるということを超えて、より良くユニバーサル社会あるいはバリアフリー社会をつくっていくために、本当にその当事者の方しか分からない、逆にそれが大変に貴重な御意見であるということも実感をしているところであります。そうした御意見をしっかりと受け止めていく、そのための機能の強化ということがやはり求められるというふうに思っております。
場合によってはでありますが、私は組織論のことを申し上げるわけではございませんが、例えばタクシーセンターというのが、財団がいいということを言っているわけでは全くありませんが、機能として申し上げておりますが、タクシーセンターなどでは、苦情を受け付けてその事案を選別し、さらにそれを調査、通報、参考と分けて、場合によっては事業者にしっかり通知して、警告あるいは監査ということを行うという一連の流れが非常に安定をして、より良くしていくために、そうした御意見をいただいて生かしていくということが非常に安定したシステム化されておりますし、また要望の受付についても二十四時間、あるいは当然メールで受け付けるというような形にもなっております。
こうした当事者の皆様からいただく御意見を安定してちょうだいし、それをより生かしていく、そういう機能の強化、それを国が直接、個別で今やっているという話ですが、それがいいのか、都道府県や市町村、あるいは別の何か組織が必要なのか、そこはこれからしっかり検討していく必要があると思いますけれども、これを、いわゆる単なる苦情処理ということではない、もうちょっと本当に前向きに受け止めていく姿勢、また機能の強化ということがどうしても必要であると私は強く思っておりまして、ここは是非大臣に御答弁いただければと思います。

○国務大臣(北側一雄君) 先ほど来、苦情を受け止めていく、また改善を図っていく、こうしたことにつきまして、行政としても、先ほど来お話ししていますように、ホットラインステーションというのをつくりまして、設置をいたしまして、個別の対応はさせていただいているところでございます。
公共交通事業者におきましても、今回の法律案の中の第八条の五項のところに、公共交通事業者は、その職員に対し、移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うように努めなければならないと、こういう規定がございます。
幾つかの鉄道事業者等の中には、サービス介助士資格の取得を積極的に進めていると、そうした事業者もございまして、こうした専門家の育成、また配置をしていくとしたことが非常に重要であるというふうに思っておりまして、事業者のこうした取組についてしっかりと更に私どもも促進ができるようにしていきたいというふうに思っております。
また、公共交通事業者を含む施設設置管理者の責務といたしまして、同じく法案の第六条で、「移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と、こういう規定があるわけでございますが、この中には当然、利用者の方々の意見についての対応を含めてしっかり措置を講ずる責務を規定をしているところでございまして、このバリアフリー化に係る苦情処理につきましても、こうした責務に基づきまして適切な対応がなされていかないといけないというふうに考えております。
こうした公共交通事業者を含む施設管理者等に対してもしっかり周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

○西田実仁君 今大臣から御答弁いただきましたのは、正にこの第八条第五項におきます教育訓練の重要性ということも御指摘いただきました。これにつきましては、参考人の方からも御指摘があった点がございました。
すなわち、公共交通事業者等でいろいろと広く一般的に教育訓練を施していただくことも大事であります。同時に、やはりそういう障害のある方あるいは高齢者の方々がどういうところで困っているのかということをより良く知っている、まあ広く一般的に教育訓練を施していただくのと、一方で、専門家というか、そのことをよく分かっていらっしゃる方が、まあ民間の事業会社ですので仕方ないのかもしれませんが、人事異動で二年や三年で替わっていってしまうと、要するに分かってくれている人がいなくなってしまうというようなことを参考人の方からも御指摘いただきました。
こうした意味では、広く一般的な職員の皆さん、従業員の皆さんへの教育訓練ももちろん大事であります。同時に、専門家もしっかり育成していくという、そういうことがこの八条の第五項にも含まれていると、こう考えてよろしいのか、政府参考人からお聞きしたいと思います。

○政府参考人(竹歳誠君) 御指摘のとおりでございます。
このバリアフリー法、施行後五年ということで、今回改正案を御審議いただいているわけでございますが、やはりハードの整備は大変大事でございますけれども、ソフトの面が極めてそれを補完する意味でも大事だと思います。
それから、事業者の中には大変よくやっていらっしゃる方もいらっしゃるわけですけれども、中には、事業者によって対応が違うとか、それから同じ駅でも駅員さんによって違うとか、いろいろなやはり直接困った問題に直面された方から見ると何とかしてほしいということがあるわけでございます。
そういう意味で、私どももいろんな人材育成プログラムというようなことをやりますが、そういう中に、やはり現場のことをよく知っておられる方を講師にお招きするとか、そういうことでより現場に密着したような対応ができるような努力をしてまいりたいと考えます。

○西田実仁君 当事者の方々の御意見の反映ということでいいますと、第二十六条におきまして、市町村が策定します基本構想、ここにおいて、「協議及び基本構想の実施に係る連絡調整を行うための協議会を組織することができる。」と、こういうふうに規定されております。ここにおいていわゆる当事者の皆さんの御意見が、基本構想を策定する段階ではもちろん盛り込まれると、当然そういうふうに書いてあります。
加えて、連絡調整を行うための協議会を組織してそこでも反映されるということですので、ここは確認でございますけれども、そうした高齢者や障害をお持ちの皆さんの御意見は、構想の策定時のみならず、要するに策定するときだけではなくて、それがどう実施されているのかという、アフターフォローというか、そこでもきちっと反映されるというふうに読めばいいんでしょうか。この連絡調整という意味合いにつきましてお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(竹歳誠君) この連絡調整という意味でございますが、今御指摘のように、この基本構想に基づきまして様々な特定事業が行われていくわけでございます。この協議会におきましては、連絡調整という中で特定事業の実施段階に当たっていろいろな御意見等を反映させる、そういう場としてこの協議会を活用するということになると思います。
協議会につきましては、実は今回初めて法定化するわけでございますが、今までも基本構想、もうほとんどそういう任意の協議会をつくってやっておられました。しかし、そうすると、作るときだけじゃないかというようなお話にもなりかねないということで、今回の法律の中では、作るときだけではなくてその後のフォローもするというふうにきちっと明記したわけでございます。

○西田実仁君 そこは是非、本当に作る段階から実施、その後のことも、そこにしっかりと当事者の皆さんの御意見が反映してより良くなるように運用のほどをお願い申し上げたいと思います。
最後でございますが、この移動等円滑化の進展状況をしっかりとチェックしていくということも必要だという審議がこれまで随分となされてまいりました。
バリアフリーやユニバーサルデザインの進捗状況についてですけれども、国全体としては、例えば障害者白書とか高齢化白書、あるいは国土交通省における白書等についても指摘されていると思いますが、やはり生活者という視点に立ちますと、身近なところで、我が町でどの程度それが進展しているのかというような、エリアあるいは市町村単位におけますそうした特定事業ごとの移動等円滑化の進捗状況がきちっと、ここまで進んでいるということが発信される、そうした情報発信が身近なところで大変必要になってくるんじゃないかと思います。
そうした身近なエリア単位あるいは市町村単位におけます特定事業ごとのバリアフリーの状況をしっかり情報発信していくよう国としても促していくべきではないかというふうに思いますが、その点を最後お聞きして、終わりたいと思います。