国交委員会・第20号 2006-05-30
【質疑事項】
住宅基本法案に関する件
1.住宅政策における住宅基本法案の位置づけ
2.住宅のセーフティーネットについて
3.伝統木造建物への支援について
○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
まず初めに大臣に、今法案につきまして、その位置付け並びに具体的に、基本法でございますので、住宅に関しまして、また住生活ということに関しまして、この法案が成立した場合にどういうことを国民は期待できるのか、具体的に住生活がどう変わるということを期待していいのか、そのことにつきましてまず概括的に大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(北側一雄君) 今日午前中からの質疑で出ているところでございますけれども、今後の住宅政策につきましては、住宅の量の確保から住宅の質の向上というところに本格的に転換をさせていただきたいというふうに考えております。
基本理念として、良質な住宅の供給、また良好な居住環境の形成、さらにはこれから市場を活用していこうとするわけでございますけれども、そうした市場の整備と、一方で消費者利益の保護と図っていくということ、さらには住宅のセーフティーネット、居住の安定を確保していく、こうしたことを今回の法案の基本理念として定めさせていただいたところでございます。
そのために、国、地方公共団体はもちろんのこと、事業者、さらには居住者等の責務についても明示をさせていただきまして、今後、基本計画を作らせていただくわけでございますが、その中で住生活の質の向上に関する目標を具体的に定めまして、バリアフリー化等々そうした目標を定めまして、そうした指標によりましてその達成度合いを評価をしていく、そうした計画制度を創設をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。
これからは住宅というものを次の時代の人たちにもきちんと使っていただける、後世にちゃんと残していけれる、そうした魅力ある住宅ストックをやはり形成をしていく必要がありますし、また住環境の形成を図っていく必要があると考えているところでございまして、そうした目標に向けてしっかりとこれから具体的に進めさせていただきたいというふうに考えております。
○西田まこと君 今大臣からは、この住生活基本法におきまして、これが成立した暁には様々な具体的な、先ほどのお言葉でおかりすれば、アウトカム目標、具体的な成果目標というものを決めて、そしてそれを達成していく中で、言わばもっといい家に住みたいと、もっといい住生活を送りたいと、こういう国民の期待というものにこたえていけるんだというお話があったと思います。
その中でバリアフリーというお話もございました。もっといい家に住みたい、もっと良い住生活を送りたいという場合のもっといい家というのは一体どういうものなのかというのは、それぞれ個々人で当然違ってくると思うんです。しかしながら、概括的に申し上げますと、バリアフリーのことに表れているように、バリアフリーで幾ら段差がなくなっても、そもそも、我が家もそうですけれども、車いすで通れないような狭い廊下だったりするわけでありまして、もっといい家といった場合には、もちろん安全ということももちろんあります、一方で、もっとやっぱり広い家に住みたいという期待、希望というものも大変根強いというふうに思うんですね。
その意味でまいりますと、より質のいい住生活、住宅ということで考えたときに、住宅政策だけでそれが達成できるだろうかということを大変強く感じるわけでありまして、当然そこには土地政策も絡んでこなければならないというふうに思うわけであります。
そこで、政府参考人にお聞きしたいと思いますけれども、この本基本法を受けまして、今後土地政策としてどういうことが考え得るのか、その絡みをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(山本繁太郎君) 住生活基本法の理念のところで、第3条では、住宅そのものが質がいい、良質の住宅をきちんと供給していくんだということをうたっております。第4条で、これを一つ一つの住宅だけではなくて、居住地全体、居住市街地全体の住環境を追求していくんだということをうたっております。
これは実は土地基本法の基本的な理念で、土地が要するに単に財産として所有の対象になるだけではなくて、周辺全体にいろんな影響を及ぼす社会的な存在であるということをうたっているのと、それを居住環境という観点から特別に規定したものでございまして、住宅が土地に付着して、しかも一つ一つではなくて、特に都市の居住形態であればみんなと一緒に暮らすんだということに着目して、その観点から、質のいい住宅が供給されるようにあらゆる主体が同じ方向で努力をしていくということを明確に基本法で掲げて、これから努力をしていくということを明らかにしているところでございます。
○西田まこと君 最初、総論的なお話でございますけれども、今回のこの基本法の中には、13条におきまして、住宅に関する適切な情報の提供ということがうたわれているわけでありまして、私はこれは大変に重要であるというふうに思っております。
既にホームページでも拝見いたしましたけれども、国交省としましては、ホームページ上で不動産取引価格というものを、まだ限定的でございますけれども、国として提供なさっている。
これは、例えばアメリカなどでは、これも私、ホームページを見ましたけれども、住宅の市場価格というものはすべてもう民間が無料で提供しておりまして、そのホームページに広告を打ったりして、そこでそういう一つのビジネスモデルが成り立っている。そのぐらい、ホームパーティーの大きな話題になるほど住宅価格ということに関しては、メンテナンスがいいとか中古市場が育っているということもありまして、アメリカの場合は大変に大きな話題になっている。ですから、民間がやっても成り立つという。
今回、今国として、国交省としてこの不動産取引価格の公開というものを始めましたけれども、これはどうなんでしょうか、いつまで国がずっとやっていくんでしょうか。当面整備していくということなんでしょうけれども、その辺のお考え、もしありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(山本繁太郎君) 市場が整備をされて、価格情報というのは市場インフラの非常に大きな、最も重要な要素でございますので、価格情報についての提供が御指摘いただいたような形で民間のビジネスとして行われるようになれば、公が関与する余地ももう当然なくなるわけでございますけれども、なかなかマーケットの状況を的確に、公平に消費者の皆様に提供するというところが十分でないという点に着目しまして、今は公が特に不動産取引の登記の情報をベースにやっているわけですけれども、そういうものを導入として、究極の姿としては民間ベースによる市場インフラとして整備されると有り難いということで公の努力を重ねているところでございます。
○西田まこと君 この住宅に関する情報というのは、価格のみならず、むしろその価値ということがどれだけマーケット、市場におきまして共有されるかということが大変大事だと思っております。市場重視ということがこの一つの大きな柱にも今基本法ではなっているわけでございまして、私が特にここで申し上げたいのは、いわゆる家歴書と言われる、家の履歴情報をいかに整備していくのか、あるいはそれを公開していくのかということであります。
これは、供給する側が住宅に関する、例えばどういう構成材を使っているのかとか、あるいは検査をどういうふうに行っているのとか、あるいは増改築の履歴、こうした住宅に関する情報、価格のみならず、今は価格だけが公開されていますけれども、もっとその価値のところまで踏み込んだ言わば家歴書というものがきちっとデータベースとしても構築されていく、そのことによって中古住宅の取引もより活発になっていく、このように思いますけれども、この点につきましてはいかがでございましょう。
○政府参考人(山本繁太郎君) 住宅市場を整備するという観点から非常に大事な点を指摘していただいたと思います。
国民が多くの資産を不動産という形で保有する中で、市場重視、ストック重視の住宅政策への本格的な転換を図る上で、適切に維持管理された住宅の資産価値が市場で適正に評価されるようにするための中古住宅に関する情報提供を始めとした市場の環境整備は誠に重要であると思います。
こうした観点から、まず中古住宅の質についての情報を既存住宅性能表示制度ということで取り組んでおります。まだまだ非常にプリミティブな段階ですけれども、これを更に拡充していく必要があると思います。
それから、市場で宅地建物取引業者が価格査定をいたします。一番合理的な手法だということで価格査定マニュアルを作っているわけですけれども、その中で中古住宅の質とか管理の状況が適切に評価されるように査定項目を追加するといったようなことも行っております。
中古住宅の質、価格が適正に評価される市場環境の整備に取り組む必要があると思っております。
また、今御指摘がありました住宅の修繕などの履歴情報の提供でございます。
これは、今そのための仕組みとして、まずマンションについて、マンションの修繕などの履歴情報を登録して、取引したい人がこれを閲覧できるというシステムをマンション履歴システムということで導入をいたしまして、今年度から本格的運用を開始する予定にしております。
こういったことは非常に市場重視の政策にとってクリティカルな話でございますので、良質な住宅の資産価値を確保する努力が適正に評価されるということを通じまして住宅資産が最大限に活用されますように、市場の環境整備に取り組んでまいりたいと思います。
○西田まこと君 今、マンションにつきましてはそういった履歴情報のデータベース化構築というものが進んでいるということでございますけれども、これから順次戸建てにつきましても進んでいくというふうに期待したいと思います。
第5条に関して、今の家歴情報に絡めてでございますけれども、第五条におきましては、この「居住のために住宅を購入する者等の利益の擁護及び増進」というところでございます。私はここで、特に持家あるいは分譲マンションでも、住宅にまつわるこれまでの数々の悲劇ということについて申し上げたいと思います。
特にこの住宅ローンについてでございます。住宅ローンについては、先ほどもお話があったように記憶しておりますけれども、土地神話の下で、いわゆる住宅すごろくというような形で買い換えていく、それで上がっていくという、そういうハッピーなお話はもう過去のものでございます。土地を買って次々に買い換えていく、それは当然価格が上がっていくということが前提だったわけでありますが、今やそうではない。
そこで起きている悲劇は、やはり失業あるいは仕事失ってしまう、収入が途絶えてしまうといったときに、家を売ってもなかなかその残債が返すことができない、そのまま残ったままだという問題がかねてより指摘されておりまして、これをどういうふうにしていくのかというところで、よく言われるのは、いわゆるノンリコース化ということであります。非遡及型のローンということでございまして、簡単に言えば、将来の収入のキャッシュフローを基にして銀行はそれを担保にして融資をするわけでありますが、そうではなくて、建物そのものの価値、それを担保にして、債務はそこの限りで及ばないと。つまり、収入のキャッシュフローということではなくて、建物の価値そのものに、換価価値に依存した融資あるいは住宅ローンの在り方、これが住宅のノンリコース化ということでございまして、そのためにはやはり今申し上げた、価格のみならず価値、家の価値情報ということもきちっと公開をされてないと、これはもう金融機関もそんな簡単にノンリコース化というのはできないわけであります。
この第5条に絡めて申し上げさせていただければ、この住宅ローンのノンリコース化ということも、これはやはりすぐにはなかなか難しいかもしれませんが、そのための環境整備を、やはり住生活の基本法にこれだけうたっているわけですから、これ具体的に進めるべきだと思いますけれども、いかがでございましょう。
○政府参考人(山本繁太郎君) これも先ほど御指摘いただきました、市場環境を整備して住宅の価値がきちんと評価されるという環境を整備するという課題と実は表裏の関係にある課題でございますが、非常に大事な課題だと思います。
ノンリコースローンというのは、借金をしたその借金を返済する責任を最終的には融資対象の財産に限定するという約束をあらかじめ貸手と債務者が結ぶというものでございます。財産を差し上げれば、あとそれ以上のことを追及されることはないというのがノンリコースローンのポイントでございますが、実は我が国において、伝統的にはこういうお金の貸し借りの契約というのは存在しなかったんですが、近時、ビルとか賃貸住宅などの不動産関連融資の分野でどんどん出てきております。これは、不動産開発して建物ができて、その床を賃貸に付しますので、その賃料をベースにそれで借金を返していくと、その収益に着目したローンでございます。返済不能となった場合は、その収益源である財産を渡す、債務者としては渡すと、それ以上は遡及されないというローンでございます。ただ、住宅ローンについては、このようなノンリコースローンになっているものは見当たらないのが現実でございます。
それじゃ、西ヨーロッパとか北米について、住宅ローンについて、契約上そういうノンリコースの住宅ローンが存在しているかということで探してみるんですが、そういうふうなことが行われているのはまだ発見しておりません。ただ、米国なんかでも中古住宅市場が非常に発達しておりますので、住宅物件の売却で債権すべて回収して債務者に掛かっていくことはしないということが、結果として回収は行われないというふうに理解しております。
我が国の住宅ローンについて、このようなノンリコースローンを直ちに導入するというふうに考えた場合は、先ほど正に御指摘いただきましたように、マーケットにおける、市場における住宅の価格の評価とかいろいろな制約条件がありますので、価格がどんどんどんどん下がってしまうと、だから物を渡しても債務が回収できないといったような事情がありますので、結果としてノンリコースローンを設定するときのローンの条件、具体的には金利とかそういった融資条件の低下につながるといったようなことになります。
したがって、短期的にこれを検討、導入を検討するというのはなかなか難しいとは思いますけれども、住宅政策の観点から非常に大事な課題だと思いますので、しっかり検討してまいりたいと思います。
○西田まこと君 続きまして、今回の基本法の2つ目の大きな柱というか、私が特に取り上げたい別の柱としては、やはり住宅のセーフティーネットということがあろうかと思います。本日も公団の自治協の皆様方大勢傍聴に来ていただきました。
これにつきまして、まず初めに、いわゆる住生活の安定の確保、この住生活の安定の確保のその意味につきましてお答えいただきたいと思います。
○委員長(羽田雄一郎君) だれに。
○西田まこと君 これは局長から、じゃお願いします。
○政府参考人(山本繁太郎君) 住生活基本法案の中で、理念の第5条でございますけれども、本当に住生活を豊かにするために、市場の力を使って消費者主権を確立してきちんと実現をしていくということを正面に掲げているわけでございますけれども、市場でなかなか適正な居住を確保できない世帯に対してどのような理念を持って取り組むかというのが第6条でございます。居住の安定の確保を図ると。
これは、住生活の安定、向上に関する施策の推進は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であるということに着目して、低額所得者、被災者、高齢者、子供を育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を図られることを旨として行われなければならないとうたった上で、具体的な施策を第2章で掲げておりまして、第14条に居住の安定の確保のために必要な住宅の供給の促進等という基本的施策をうたっております。
この中で、国及び公共団体が公営住宅を中心に賃貸住宅の供給の促進その他の必要な施策を講ずるとうたっているわけでございまして、市場重視、ストック重視の考え方で進めるのであれば、なおさらこの六条の考え方に立って国と公共団体が協力をして配慮を要する世帯に対して的確なセーフティーネットの設定と運用を図っていく必要があるという考え方を示しているところでございます。
○西田まこと君 住宅困窮者に対する安全網を張っていくということであります。
ここで、公団自治協の皆さんがアンケートを取られておられますけれども、その数値を若干紹介したいと思います。
今現在お住まいの方々、二つの特徴があると。一つは高齢化、そしてもう一つは収入が低下している、この大きな二つの特徴があるわけであります。細かい数字はもう申し上げません。そして、今実際に公団にお住まいの皆さん、機構住宅にお住まいの皆さんの収入面でいきますと、そもそもは、私の理解では、公営層という公営住宅があって、そして機構住宅があって、そして公庫が対象とする持家等の層があってという、最初はそういう住宅政策でこれまで来たと思うんです。
ところが、そういう意味でいきますと、公団にお住まいの方はいわゆる中堅所得層だということになっているわけですね。所得分位でいえば第三分位の中堅所得層というように本来はなっている。しかしながら、実際にはどうかというと、これはいただいたアンケート調査を見ても、いわゆる第三分位の方々、いわゆる中堅所得層の方々は8%ぐらいしかいない。これは現実はこうなっているという、まずここから議論を始めなければいけないと私は思います。
その上でお聞きしたいと思っていることがございまして、機構の今日は理事もお越しいただきましてありがとうございます。お聞きしたいと思いますが、こういう現状の中で、年金生活を送っている方々、ここは収入の増加が見込めない、そういう住民の方々に対しまして、今市場家賃と公営家賃と、真ん中で中間家賃とを設けて、いろんな軽減措置を設けているということは承知しておりますが、3年ごとに家賃改定を行っている。そこで、どういう軽減措置がとられているのか、ちょっと概要、簡単で結構ですので、御説明いただけますか。
○参考人(尾見博武君) お答えを申し上げます。
今先生がお話しになりましたように、市場家賃化に伴いまして、継続家賃の改定につきましては統一的なルールに従って3年に一遍改定をさせていただいているところでございます。これに伴いまして、やはり居住の安定という観点からは、高齢者の方あるいは母子世帯の方、障害者の方、生活保護世帯の方、そういう方々に関しては、やはり引上げが大幅にならないようにというようなことで抑制のための措置を講じているわけでありますが。
今先生少しお話をいただきましたように、一つは特別措置というものがございます。これは、お話がございましたように、いわゆる市場家賃、近傍同種の家賃と公営並みの家賃の間に一つの線を引きまして、そこのところまで、中間水準を超えるような場合には中間水準まで家賃を据え置くというようなことであります。これについては国から補助をいただいてこういう措置を講じています。さらに、中間水準に達しないケースで上昇するケースもございますが、こういうことにつきましては機構の経営努力の結果として抑制措置を同じようにさせていただくという考え方を取っております。
○西田まこと君 こうした特別措置並びに特例措置の対象でございますけれども、これは先ほど私の分類でいきますと、いわゆる公営階層を対象とした激変緩和措置と考えてよろしいんでしょうか。
○参考人(尾見博武君) 一応、収入の要件として25%以下ということですから、広い意味での公営階層に近い水準だと思います。それに、あとは年齢の要件でありますとか、例えば高齢者ですと65歳以上とか、そういう要件を加味しておるところでございます。
○西田まこと君 つまり、この激変緩和措置につきましては、そうした収入とか年齢とか、そういういわゆる公営階層を対象とした激変緩和措置的な色彩を非常に強めているということであります。
公営住宅に関しましては、もう先ほど午前中もお話ございましたが、いわゆる応益応能家賃ということで両方の要素があるわけでございます。算出の仕方見れば一目瞭然でございますが、所得の15から18%を占める応能家賃、これに応益度を示す規模係数を掛けていく、これが公営の住宅の家賃の決め方。
そして、今理事がおっしゃいました公団住宅に関する激変緩和措置も、実は公団の家賃そのものは市場家賃上がればいろんな激変緩和措置あるけれども、それに伴って基本的に上がるということの考え方でいえば応益家賃であるという多分考え方を取っているのかもしれません。
しかし、実際にそこに住んでいる人は、先ほど私が申し上げたとおり、公営団地の階層の人たちがもうほとんどでありまして、そういう意味では、公団のそもそもねらいにしていた中堅所得層はもう10%を切っている、こういう現実、この現実を踏まえた上でそういう激変緩和措置をとられているんだろうというふうに私は理解しているわけでありまして、そうした現実を見た場合に、この家賃改定につきましては、必ずしも応益的な家賃だけではなくて、応能的な要素というものをもうちょっと考慮して検討していくという必要があるんではないかと思いますが、いかがでございましょう。
○参考人(尾見博武君) 先ほど申し上げました特別措置ないし特例措置は、公営並みに抑えるということではございませんで、先ほど言いましたように、公営並み家賃とそれから市場家賃の間に中間水準という線を設けまして、そこに収れんさせていこうと。上昇する場合の抑制幅というか、そういうものを一定の配慮を加えていこうと、こういう考え方であります。
基本的には、私どもは、これは平成11年以降、住宅宅地審議会の御議論をいただいた上で、機構法第25条において、近傍同種の住宅の家賃の額を基準とするということがきっちり定められておりますので、居住者の皆様からはやはり住宅の応益性に応じた家賃をちょうだいするという、こういう仕組みになっているものだというふうに認識しております。
○西田まこと君 そういう意味では、中間家賃ということは理解しておりますけれども、結局、年金生活者の方々のように、収入が増えていくのであればそれに応じて払うのはもちろんそれは構わないわけでありますが、増えていかない方々が、やはり居住の安定と考えたときに、激変緩和措置はあるけれども、やはり市場家賃上がれば当然、緩和されたとしても少しずつ上がっていくんじゃないかという、そういう不安感というものを持っているということは是非御理解いただき、そこに応益的な家賃のみならず応能的な家賃という要素も強めていくということが必要ではないかと訴えさせていただきたいと思いますが。
ちょっとここで、補助金というか、これは国交省にお聞きしたいんですけれども、いわゆる今の公団家賃におきましては特別措置は2種類ございまして、この2種類とも、激変緩和措置を設ける場合には半分国からの出資金か財政的な支援があるというふうに理解しております。しかしながら、もう一つ、実は機構さんが独自にやっておられる激変緩和措置、特例措置の方でございますけれども、これについては取り立てて国からの財政的な支援がないようでございますが、これはどうしてこうなっているんでしょうか。
○政府参考人(山本繁太郎君) 特殊法人改革の基本的な考え方に従いまして、都市再生機構、独立行政法人になりまして、独立行政法人という法人の性格にのっとって、政策的に必要な部分については的確に公的資金を投入いたしますけれども、市場で自らの責任で政策目標を達成するという部分については、しっかりそういう形で仕事をしていくというその仕分がなされたということでございます。
賃貸住宅の経営に関連しましては、特に建て替えの際に家賃の非常に大きな変化が生じるわけでございますけれども、しかし、過去の劣悪な賃貸住宅ストックをきちんと更新して将来にわたって使えるようにするという政策目的も非常に大事でございますので、特に機構の賃貸住宅の建て替えに当たりましては、公共団体ともきちんと連携をしていただいて、例えば土地利用を高度化することに伴って余剰が出てくる土地を的確に活用していくということなどと併せまして、公営住宅も併せて供給すると。さらに、機構が、高齢者向けの優良賃貸住宅制度を活用して、これには国からの助成も出ますので、そういうふうなことで的確にニーズに応じた住宅を供給することで対応を図っていくと。その際、政策目的に応じて必要な助成は国から講じていくと、そういう考え方で臨んでいるところでございます。
○西田まこと君 この住生活基本法というところに、大きな柱に居住の安定ということがうたわれている以上、この基本法を基にしてこれから個別法をその理念に沿って変えていくということになると思います。そこの意味では、居住の安定ということが強くうたわれている以上、やはりこの例えば公団住宅一つ取ってみても、居住の安定を期するための施策として、基本法ができてこういうふうに変わったというところがやはりないと、別に何の変わりもないと、今までと同じ枠組みだけでやっていくというのであれば、そもそもじゃ基本法の理念とは何かということになってしまうと思います。そこは是非、これからしっかりと個別法として検討していただきたいと思います。
そこで、ちょっと具体的な話ですが、よく私のところに住民の方から御相談が来ます。高齢者、先ほど申し上げましたように、家賃が3ヶ月滞納してしまいますと、この契約書の第18条によりまして、催告によらず契約の解除ができるというふうに規定をされているわけであります。これは事実です。しかしながら、機構のいろんな文書等を読みますと、決して3か月たったから、はいさようなら、出ていけということではなくて、きめ細かく、分割払も含めて対応しているんだというような資料も随分といただいているわけであります。
しかし、実際に住んでおられる方は、もう生活保護を申請しようと思って何とか分割でも払おうというようなお気持ちがあっても、もうやいのやいの言われているというようなこともございまして、機構本社の原則と、その実際の現場での窓口の対応がちょっとずれている面があるんではないかというふうに思っておりますが、この点もう一度確認をさせていただきたいと思います。
○参考人(尾見博武君) 家賃滞納の問題でございますが、今先生から御指摘いたされていましたように、契約上、3ヶ月以上滞納いたしますと、それは契約の解除ができると。これは判例も学説も、3ヶ月も滞納をすると賃貸人と賃借人との間の信頼関係が基本的に損なわれたというふうなことが言えるんじゃないかと、そういうことで、そういうことになっております。
あるいは、解釈上は無催告でもできることになっておりますが、私どもはその3ヶ月という時が至ります前に、電話とかはがきとかいろんな形で滞りました場合には御連絡をして、是非支払を滞らせないようにお願いしたいということをまず申し上げます。
3ヶ月以上経過した場合にも、いろいろお見えになって御相談を受けた場合に、実はいろんな家庭の事情があってということであれば、場合によってその公営住宅の方の窓口を御紹介をするとか、あるいは福祉事務所の方を御紹介をするとかいうふうなことで、生活保護の手当てというのをお考えになったらどうですかというようなことについても御相談に応ずるというようなことを徹底するようにと指導しているところであります。
さらに、その後の段階になりました場合にも、その次は裁判の訴えを提起するとか、あるいは強制執行の手続に入るとかそういうことがあるわけですが、その段階でも、お話によって、やはりまとめてお払いいただけるとか、そういう形の一種の和解的なことがあれば、直ちに元に戻って継続的な居住をしていただくというようにしているところでございます。
○西田まこと君 是非きめ細かくお願い申し上げたいと思います。
残りの時間、最後のテーマでございます。
私は、この基本法の中でとりわけ大変に重要だと思っているのは、第四条のところにおきまして「地域の自然、歴史、文化」、こういうことがきちっとうたわれている、住生活という、住まいということに関して地域性ということを、地域特性ということをきちっとうたっているということが大事だと思っております。
また、第7条第2項におきましては、一方で、この新しい技術の開発、「住宅の品質又は性能の維持及び向上に資する技術に関する研究開発」、これはいわゆる新技術の方ですね、こちらをうたって、それと全く並列をした上で「木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため、」云々かんぬんと、こういうふうに2つの新しい技術と伝統的な技術というものを全く並列にして、ともに重要であるということをうたっているという点も大変に私は重要であると思っております。
まず、大臣にお聞きしたいと思います。
いわゆるこの伝統工法と言われるものにつきまして、実は私も埼玉の飯能の西川材とか、あるいはときがわ村とか秩父とか、様々な林業を抱えております。
このいわゆる伝統工法、金物等は使わないで、そして筋交いも入れずに、逆に、清水の舞台もそうですし、また法隆寺等もそうでございますけれども、大変に長い寿命、また耐久性の高い建物、これには人類の、日本人の築いてきた大変に重要な、地震にも強いというお話もございまして、そのとおりでございまして、免震技術としても大変高い評価もされている。こうした伝統工法に対しまして大臣の御認識、またそこの支援に対する、この基本法に盛り込まれている精神、スタンスをまずお聞きさせていただきたいと思います。
○国務大臣(北側一雄君) 今委員のおっしゃったとおり、伝統的な木造住宅というのは、地域の木材等を生かしまして気候、風土に適した建て方がされております。床下の通気性がいいだとか、維持修繕が容易であるだとか、それから長寿命の木造住宅を実現する上でも非常に優れた特徴を有しているというふうに考えているところでございます。
平成12年の建築基準法の性能規定化によりまして伝統的な木造住宅でも構造計算を行うことにより建設することが可能となり、実際にそういう例も見られているところでございます。国におきましても、伝統的な木造住宅の再評価を進めるとともに、構造計算に必要なデータベースの整備だとか、それから、そもそも伝統的な木造住宅普及のための技術開発への支援だとか、担い手が不足しております、この担い手である大工技能者の育成等の取組を行っているところでございます。
今回、先ほど委員の方から指摘がございました、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の承継、向上を図るため必要な措置を講ずるというふうに明記をさせていただいたのもそういう趣旨からでございまして、引き続き、伝統的な木造住宅を建てやすい環境の整備等の取組を進めてまいりたいと考えております。
木造住宅は、アンケートを取りましても、木造住宅に住みたいとおっしゃっているのがたしか八割ぐらいあったかと思うんですね。また、これからの地球環境の保全ということを考えても、我が国の木材をしっかり活用して木造住宅を供給していくということはそういう面からも非常に重要な課題であると思っておりまして、しっかりとこの木造住宅が供給されるように施策を充実をさせていただきたいと考えております。
○西田まこと君 この木造住宅、今大臣からは、いわゆる伝統工法ということにつきましてもきちっとした評価と、またそれを建てやすい環境をつくっていくという、そういう御答弁をいただきました。
その上で、そういうことであれば、しかしながら今の現状がどうなっているかということをちょっと御紹介したいと思いますが、一つには、今おっしゃっていただいたように、いわゆる合法的に伝統工法を建てようと思うと多額の構造計算費用がまず掛かるという問題があります。普通の在来工法であれば告示等でもきちっと技術的な水準が定められておりますけれども、そうではなくて、自ら限界耐力計算等を行わなきゃいけないと、こういうことでまず多額な費用が掛かるという壁が一つあります。
そしてまた、この計算をしようと思ったときのデータの収集、先ほど大臣からはデータベースの構築というお話もございましたけれども、これも今のところはまずそれぞれがやらなければいけないということで、大変に、はっきり言って、建てていいと言われても建てにくいという、そういう今問題があると思うんですね。
この辺に対する支援というのはどう考えているんでしょうか。
○政府参考人(山本繁太郎君) 伝統的な技術をきちんと将来に向けて継承していくということを国の責務としてうたいましたので、そのために基準法の下で的確に伝統的な工法が使えると、スムーズに使えると、その大工さんがというふうにするための環境整備に力を尽くしていきたいと思います。
○西田まこと君 そういう意味では、その地域地域、正に生きている家、呼吸している家とかいう言い方もしますけれども、そういう伝統的な工法につきましては、正直言って、私も素人ですけれども、そう簡単に多分標準化できないんだと思うんですね。その地域の特性がございますし、そこに長くお仕事をされている大工の皆さん、そういう方々しか分からないようなこともあって、なかなか全国一律に画一化した工業生産できるものではない。
そこで、私は、この第7条の第2項、今大臣も強調していただきました、木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため研究開発等を行うという、ここのところは、是非ともその地域にいる、実際にいわゆる伝統工法を担っておられる大工の皆さん、こういう方々とともに研究開発をし、あるいはそうした方々の意見をきちっと聞いた上で、必ずしも簡単に画一化、標準化ができないこの伝統工法、これをもっと建てやすくしていくという、そういう現場の大工の皆さんの御意見がしっかりと通るようにしていかなきゃいけないと思いますけれども、国交省、いかがでございましょうか。
○政府参考人(山本繁太郎君) 非常に大事な点を御指摘いただいたと思います。技術は、先進的な技術であれ伝統的な地域技術であれ、それを使う技能者に化体しているわけでございます。大工技能者に技術は化体しているわけでございまして、御指摘のような地域に根差した大工技能者が地域の気候、風土、文化等に応じた木造住宅建築を担っていただいているという認識に立ってこの問題に取り組む必要があると思います。
ただ、現場といいますか、現状を見ますと、木造住宅生産を支える大工技能者自体が、1980年には94万人でございましたけれども、2000年には65万人にまで減少し、なおかつ高齢化していると。60歳以上が1980年6.6%から2000年には19.1%ということで、もうどんどん高齢化が進んで、伝統のたくみの技術の継承が非常に危殆に瀕しているわけでございます。
そういう状況を踏まえて、できるだけまず大工技能者をきちんと育成していかなきゃいかぬという観点から、地域の棟梁の下での実習を中心にした大工育成塾という事業に取り組んでおります。それからもう一つは、今御指摘いただきました地域の生産者と一緒に伝統的な技術継承の取組活動が行われるとき助成をするといったような取組も行ってきているところでございます。
今後とも、こういった施策を積極的に展開しまして、御指摘いただきました問題意識を踏まえて、我が国の伝統的な木造軸組み住宅を支える技能者の育成、定着に努めてまいりたいと思います。
○西田まこと君 このいわゆる伝統工法につきましては、耐震性からいっても大変にユニークな技術であると。
私もなかなか実感として分からなかったわけですけれども、例えばよく言われるのは、車の中でコップに水を入れてボルトできちっとつないだような水と手で持っているのとどっちがこぼれにくいかというと、それは明らかでありまして、手で持っている方が、まあいわゆるボルトできちっとくっ付けちゃうと逆に揺れに弱いというそういうこと、それはもう卑近な例ですけれども、そういう免震技術というものもこのいわゆる伝統工法には備わっている。だからもう長い風雪に耐えて、今も生き残っていると思うんですね。
そしてまた、その地域の特性に応じている。今局長からもお話ございましたけれども、やはり地域や風土を熟知した力量ある大工の皆さん、この方々の意見を、何か中央の偉い先生がこうだというふうに言うんではなくて、その地域のそれぞれの特性をよく熟知した大工さんの意見をきちっと聞いてこの技術の継承を図っていかなきゃいけない。
今局長からは、そういった大工の塾をつくっておられるというお話がございましたけれども、これはどのぐらいの予算が付いているんでしょうかね。たしか、記憶では年間で100人ぐらいとかそのぐらいの規模だったようにも思いますけれども、この予算がどのぐらい付いているのか、またそれを、なかなか減ってきているというお話もございましたけれども、私が聞くところでは、地方では決して減っているわけじゃなくて、仕事がないからなかなか出てこないけれども、そういう場があればまだまだ都会に比べれば地方にはそうした伝統的な技術を継承している人も随分多いというふうにも聞いておりまして、この予算、どのぐらい付いているのか、また今後そうした育成に力を入れていくということであれば、もうちょっとその予算の拡大も含めて支援していくおつもりあるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
○政府参考人(山本繁太郎君) これは平成15年の秋から始めました。東京、大阪、名古屋、福岡の4ヶ所で3年間棟梁に実習を積んでもらうというものでございます。
平成15年の10月に入塾した者は今年の秋に卒業するわけですけれども、これは52名でございます。一昨年の4月に入塾しましたのが97名、昨年の4月に入塾しましたのが101名、今年の4月は81名となっております。非常に棟梁たちも意欲的に取り組んでいただいていますんで、今回、住生活基本法が成立した暁には是非更に大きな旗印を掲げて取り組んでもらいたいと思うんですが……(発言する者あり)予算でございますが、国土交通省の補助は17年度で4億円、今年度も4億円いただいております。
○西田まこと君 是非この住生活基本法を作って、これだけ条文の中に新しい技術の開発と全く並列でこのいわゆる木材を使った伝統的な技術の継承ということをうたっているわけであります。
そういう意味では、やはりこれも基本法を作った以上、何か事が変わっていかなければ、今までと全く同じだったら本当にそれは仕方ないわけでありまして、施策の上でしっかりと反映していただきまして、このアウトカム目標の一つにも恐らく長寿命化ということが入ってくるんだと思うんですね。そのときにはこうした、歴史に耐えてきた、もう実証済みのこういういわゆる伝統工法というものがもっと重視されて、またそういうことに対する支援も行われることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。