国土交通委員会 5号 2009-03-10
<質問要旨>
① 長期優良住宅法案が成立し、どのように豊かな国民生活の実現がはかられるのか。そのイメージについて
② 安価な既存住宅の診断、評価技術の開発および普及について
③ ウッドマイレージについての所見
④ 木材の地産池消を促す、金銭的なインセンティブについて
⑤ 住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術を加えた意図について
⑥ 伝統工法について長期優良住宅との関連でどのように捉えているか
⑦ 伝統工法の構造計算について。東日本と西日本で詳細設計マニュアルが異なることはあるか
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
まず初めに、法案全般につきまして御質問をさせていただきたいと思います。もう先ほど来からお話もございますが、最初、大臣にお聞きしたいと思います。
今回提出されましたこの長期優良住宅法案が仮に成立した場合に、首尾よくスタートを切って、どのように、目的にも書かれておりますこの豊かな国民生活の実現ということが図られるのかというイメージをまず持たせていただきたいと思います。
先ほど、具体的なお話として、2、3年後に新築住宅の10%ぐらいがいわゆるこの長期優良住宅になると、こういうイメージをおっしゃられました。もうちょっと長い目で、例えば10年後に日本の全世帯のどのぐらいがこの長期優良住宅になっているのかと、このイメージがもしおありになりましたら大臣からお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(金子一義君) 少し長い目でどういうイメージが出てくるのかと、西田委員の御質問であります。
建て替えコストが減少していきますので、当然でありますけれども住居費負担が軽減されてくるという、ある意味ほかにお金が使えると。もう一つは、この住宅、適切に維持保全が行われてまいるという前提でありますので、売却時におきましても一般の住宅に比べて資産価値が高く評価されると。言わば、自分の持っている資産の価値の向上、価値の維持、これが図られると。また、必要に応じてリフォームすることで、多くの国民にとりまして、新築購入の場合と比較しまして、より安く良質な住宅が手に入るという選択肢が広がる、いい住宅が流通市場に加わってくるということ、それから、まだありませんけれども、リバースモーゲージ等々新たな金融措置によって我々のまた老後の生活の対応というのも新しい分野が広がってくると、そんなイメージを今持っております。
○西田実仁君 先ほど来お話ありましたのは、2、3年後の新築住宅では1割ぐらいということでございますが、今後、現実のことを考えますと、新築のいわゆる長期優良住宅がどんどん増えていくということよりも、やはり既存の住宅のリフォーム等によりましてこうした長期に長もちする住宅というものが増えていくということが現実的かなという感じもいたします。
とするならば、既存住宅の診断あるいは評価技術ということを、信頼のおけるもので、しかも安価にそうした診断、評価ができるということが必要になってくると思っておりまして、そうした既存住宅の診断また評価技術の開発及び普及につきましてどのような取組をなさるのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(和泉洋人君) 今委員御指摘の既存住宅の性能評価でございますが、既に住宅品確法に基づきまして既存住宅の住宅性能表示制度がございますが、実際問題は、住宅の劣化等の状況について目視とかあるいは計測等による現況検査でございますので、なかなか新築のようにはいかないと。そういったこともございまして、実際の評価戸数でございますけれども、新築の方の設計住宅性能評価はもう既に累積113万に対しまして、既存の方は現時点では1600戸ぐらいでございます。
既存住宅の性能評価を通じた既存住宅の流通、非常に大事でございますので、今の限界を踏まえまして、既存住宅のより簡易でかつ信頼のおける評価法、こういったものについての今技術開発をしておりまして、そういった成果を踏まえて、更に既存住宅の流通あるいはこの長期優良住宅の改修への拡大ということについて努めてまいりたいと、こう考えてございます。
○西田実仁君 まさに、そうした信頼のおける評価ないし診断技術というものが安価で提供されていくことが長期優良住宅を広めていくことに大変重要であると、こう思っておりますので、その開発普及に是非とも努めていただきたいと思います。
それでは、法案についてお聞きしたいと思いますが、第1条の目的のところには、様々書いてございますけれども、住生活の向上及び環境への負荷の低減ということが記されております。この環境への負荷の低減ということにつきまして、これを指標化する、数値化をするというのはなかなか難しい問題であろうかと思います。
しかしながら、一つの試みとしては、例えばフードマイレージにちなんでのウッドマイレージということが言われているわけでございまして、木材の生産地から消費地までの輸送距離を木材の量に掛け合わせるものでありまして、NPO法人が普及に努めておられます。木材の輸送に関する新しい環境指標というような位置付けもなされており、京都府におきましては、ウッドマイレージCO2認証制度を既に始めております。これは、京都府で生産された木材の産地証明に加えて輸送時に排出される二酸化炭素を数値で示すことによって、地域の木材を利用することを進めて地球温暖化防止策を推し進めようと、こういう制度であります。当初、間伐材製品にのみ限定して運用されておりましたけれども、平成17年からは、住宅などに使われる一般木材についてもこの認証制度が対象に入っているということでございます。地産地消という観点からも、またもちろん環境という観点からも、このウッドマイレージということについてはもっと推し進めていくべきではないかというふうに私自身は思っているわけでございます。
本法案の目的に環境への負荷の低減というのがございまして、その一つの指標としてこのウッドマイレージというのは有用ではないかと、こういうふうに存じます。大臣はこのウッドマイレージにつきましてどのような御所見をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(金子一義君) 御指摘のとおり、国産材を活用しました木造住宅の振興、今度の法案にも盛り込ませていただいておりますけれども、環境負荷の低減に間違いなく資すると認識しております。
○西田実仁君 今御指摘いただいたとおり、第4条には、今回、衆議院において修正が入っております。すなわち、国が基本方針を定めるに当たりまして、国産材による木造住宅への配慮ということが第3項に設けられております。
今御指摘いただいたわけでございますが、国産材と、特に外国材の地球環境への負荷ということの違いを表す指標としてこのウッドマイレージは大変有効であるというふうに思います。この法第4条第3項の趣旨を生かすために、国が定めるべき基本的な方針ということにこうしたウッドマイレージのような考え方を盛り込んでいくということについて、大臣はどのようにお考えをお持ちでしょうか。
○国務大臣(金子一義君) ウッドマイレージにつきまして、現時点での話なんですけれども、民間において検討をされておられます。今後、関係者、関係方面、そういう民間での検討あるいは林野行政における位置付けというのも状況を見ながら、住宅行政としてどのような対応が可能かを検討してまいりたいと思っております。
○西田実仁君 是非、積極的な御検討をお願いしたいと思います。
農水省さんにも今日は来ていただいておると思いますけれども。
農水省といたしましては、ウッドマイレージとは異なると思いますけれども、木材、特に国産材を利用することによる環境貢献度のこの定量的な評価手法、これについては現在どのように取り組んでおられるのか、また、今後どのように進めていくのかということについてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(針原寿朗君) 林野庁でございます。
今先生御指摘のとおり、環境への負荷の軽減を数値化する努力、これは京都議定書目標達成計画におきまして見える化という言葉で表現されておりますが、政府全体でその取組を進めております。
とりわけ木材は、空気中の二酸化炭素を吸収し固定化するという大事な役割を担っているわけでございますし、また、加工に使うエネルギーも少なくて済むということで非常に環境に優しい問題でございます。これを環境負荷軽減を見える化することによって、国産の木材を息長く何回でも使いながら新しい社会をつくるということに貢献するということもございますので、現在、林野庁では本年9月からそのための検討会を開催しております。
この検討会におきまして、現在におきまして、三つの指標でもって構成しようかと思っております。一つは、CO2の削減量を数値化する。生産、輸送過程における省エネ効果でございます。二つ目は、この木材製品、住宅を含めた木材製品がどのぐらいの炭素をためているか、これも数値化しようと。三つ目は、間伐材を使った製品の場合はそれを使うことによりどれだけの間伐が面積として進むのか。この三つの指標を出すということでございます。
今のウッドマイレージの考え方でございますが、1番目の生産・輸送過程における省エネ効果を算出する過程でこのウッドマイレージとしての数値化も含まれる、包含されるものと考えております。
以上でございます。
○西田実仁君 ありがとうございました。
今日は衆議院から修正案提出者として三日月議員にもお越しいただいておりまして、お忙しいところ、ありがとうございます。
済みません、一つしか御質問がありませんで申し訳ございませんけれども、これをお答えいただいたら、委員長のお許しが出れば御退席いただいても構わないと思っておるわけでございます。
第3条の第4項について修正が加わりました。「国は、長期優良住宅の普及を促進するため、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術を含め、長期使用構造等に係る技術に関する研究開発の推進及びその成果の普及に努めなければならない。」と。こういうふうにして、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術ということが入ったわけでありますが、この意図を是非お聞きしたいというふうに思って、今日はわざわざお越しいただきました。
これは普通の文章でいきますと、長期使用構造等に係る例えば伝統的な技術というような、伝統的な技術というのが当然、木材の使用に関する伝統的な技術というのは当然長期使用構造等に係る技術の中に含まれるんだろうというふうに理解をしておりますが、そこはちょっと確認したく、言えば、なぜここを加えたのかという意図についてお聞きしたいわけであります。
そして、あわせて、この伝統的という意味は、住生活基本法におきましても同じような文言がございますけれども、それと同じ意味を指しておられるのか、また木造住宅の建築方法の一つである伝統工法、これも包含しているのかということについて是非お答えいただきたいと思ってお越しいただきました。よろしくお願いいたします。
○衆議院議員(三日月大造君) 民主党の三日月大造です。提出者を代表して御答弁申し上げます。
その前に、西田委員、御質問をありがとうございます。格調高い参議院での答弁に緊張しておりますが、頑張って答弁したいと思います。また、いろいろ議事録を拝見いたしますと、先生、住生活基本法の制定の折にもこの分野で大変深い審議をされておりまして、並々ならぬお思い入れやこれまでの御尽力に敬意と、そしてまた共感を表したいというふうに思います。
その上で、政府から出されましたこの法案の長期に優良な住宅の提供と流通を促進していこうという、この趣旨には私たちは賛意を持ったんですけれども、より良い法案にすべく修正を行いました。
大きく言って、三つあります。御案内のとおりだと思うんですけれども、やっぱり木造、木材、特に国産材を振興する、見直すきっかけの法案にしたいということ。二つ目は、やっぱり担い手、人材、工務店、大工さん、こういった方々の力になる法律にしたいということ。三つ目は、やっぱり記録、家歴、そういったものの保存により有効な法律にしたいということであります。
先生お尋ねの第3条4項の修正の意図はということですけれども、これは二つあります。一つは、日本の長期優良住宅には木材使用の伝統的な工法というものが含まれるんだということを明確に示すためです、一つは。もう一つは、お話ありましたように、平成18年に住生活基本法が制定されて、第7条第2項に住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るための情報の収集、提供というものが位置付けられましたけれども、この基本法の精神を具現化をして、我が国古来の日本の気候風土にも適した在来工法である木造軸組み工法などの伝統的な技術を維持、継承するために特に、特出しをしてこの4項のところに含めさせていただいたということでございます。
したがって、その中身についてはすべて含まれるということで理解をしていただきたいと。
ありがとうございました。
○西田実仁君 大変に明確にお答えいただきまして、ありがとうございます。もし委員長のお許しが出れば、三日月議員に関しましてはありがとうございました。お世話になりました。
今御指摘いただきましたとおり、この修正文におきましてはやはり伝統工法というものはすべて含まれる、あるいは特出しをして明確にしたかったという修正案提出者による御答弁でございました。
そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、この伝統的な技術の継承ということについて、国交省としては、あるいは大臣としては、その中身どのようにとらえておられるのか。いわゆる、私がお聞きしたいのは、伝統工法が本法案が目指す長期優良住宅とどういう関係にあるべき、あるいは今後そういうふうになっていくべきなのかと、とらえておられるのかということについて、大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(金子一義君) 江戸時代後期までに建てられました住宅、国の指定の文化財だけでも、木造住宅でありますが、約380件あると、長寿命の木造住宅の実績があります。私の出身地も飛騨のたくみという在来工法の地域、山下先生も御一緒でありますけれども、そういう地域であります。
我が国の伝統木造技術を継承しましたいわゆる伝統工法につきましては、地域や事業者により様々な取組がなされておりますし、多様な工法が今用いられてきております。これらの工法による住宅も本法案に基づく長期優良住宅の対象に当然含まれるものということで、更に育ててまいりたいと思っております。
本法案の衆議院における審議では、木材の使用に関する伝統的な技術を含め、研究開発の推進等に努める旨の修正について、先ほどお話ありましたとおり、全会一致で可決したところであります。
○西田実仁君 ありがとうございます。
私、埼玉が地元でございますけれども、埼玉にもこうした林業に取り組んでいる方が多くいらっしゃいますが、そこで、小さな製材所とかいわゆる大工さんからもこの伝統工法に関しましていろいろな御要望をいただいております。
一言で言うと、改正建築基準法の下でこの伝統工法が崩壊してしまうという懸念を持っていると、こういう御要請でございます。その方々からの御意見では、法律によって技術が縛られてしまってその継承が非常に難しくなっているという御要望。技術的なことですので余り詳しくは申し上げられませんけれども、今大臣がお答えいただいたとおり、この長期優良住宅を進めていこうというのであれば、伝統工法を生かしていくということも、あるいは育てていくということも大事だと私も思います。
そこで具体的にお聞きしたいわけでありますけれども、この伝統工法による建物の構造計算は限界耐力計算法が用いられているわけであります。昨年6月の改正によりまして、この限界耐力計算法を用いた構造計算については新設の適合性判定機関、適判機関によるピアチェックが求められるようになりました。
現在、関東地域におきまして適判機関によるピアチェックを受けた伝統工法による建物はございますでしょうか。
○政府参考人(和泉洋人君) 手元に資料がないもので、恐縮でございますが、後ほど御報告させていただきたいと思います。
○西田実仁君 私が知る限りはまだ今のところはないというお話を昨日、お電話で室長さんかな、いただきましたけれども。関西地域においては、私が知る範囲では3件ぐらいあるという話をお聞きしております。
一つには、関東版と近畿というか関西版でまず構造計算の費用がかなり異なるという御指摘がございます。関西では30万程度での費用が、関東では実験データ集める費用などを含めて総計200万も掛かるというような話もございます。
なぜこういうことが起きてくるのかということについてお聞きしたいと思いますけれども、一つは、この伝統工法の構造計算を円滑に進めていくマニュアルと言われるものが東西で異なっているというわけであります。通称近畿版と呼ばれる財団法人日本建築総合試験所がかかわっているマニュアル、「伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル」、ここにおいてはこの伝統工法というものが認められている。しかし、東日本のこの住木、日本住宅・木造技術センターでございますけれども、ここのマニュアルでは認められていないと。ちょっと申し上げさせていただきたいのは、この東日本の住木版の方でございますけれども、このマニュアルには明確に書いてございますのが、伝統工法などにも適用できる普遍的なものではないと、こういうようにこのマニュアルには書いてある。つまり、伝統工法はこのマニュアルの対象ではないんだということが明記されております。
これに対しまして近畿版の方ですけれども、先ほど申し上げました財団法人日本建築総合試験所、こちらが出しているマニュアル、「伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル」という本ですけれども、ここにはこの伝統工法ということが対象になるというふうに書かれております。
つまり、この東日本版と西日本版、近畿版とでは伝統工法に対する考え方が異なっておりまして、これが伝統工法に携わっている方からしますと、特に東日本におりますとなかなか、この適判機関が結局このマニュアルに沿った形で審査をするということもございまして、伝統工法による建物が建てにくくなっていると、こういうお声があるわけでありますけれども、この東西で伝統工法の構造計算に係る手法あるいはマニュアルがこうして異なっているということについて、現状をどのように御認識をされているのか、また今後どうされていくのかについてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(和泉洋人君) 今委員御紹介の二つのマニュアルでございますが、まずそもそも伝統工法といった場合に非常に幅が広いんだと思います。
今御紹介の関東とおっしゃいました財団法人日本住宅・木材技術センター発行のマニュアルの対象は、どちらかというと、その耐力壁等を設ける、いわゆる伝統工法のこちらの極から見れば一般の常識と近いものを相手にしているというふうに理解しています。片や関西版とおっしゃったものは、関西地域の専門家を中心にまとめられたものでございまして、いわゆる極めて典型的な伝統的な継ぎ手、仕口等だけで構成するような軸組み工法を想定して作られたと。当然、関西版のマニュアルを使って設計することも可能でございますので、関西と関東で、関東は関東のマニュアルしか使えない、関西は関西のマニュアルしか使えないということはないわけでございますが、そういった違いがあったのかなと。
現在、そういった御指摘もあるものですから、両方のマニュアルは各々専門家が関与しますので、両方のマニュアルに関与した学識経験者による委員会をつくりまして、その交通整理をしっかりやろうというようなことで委員会を設けまして、今整理をしているところでございます。
加えて言うと、その限界耐力計算法というのは非常に高度な計算法でございまして、できればそういった高度な計算法を使わないでもっと簡易に、その実際の構造の性能を踏まえて簡易にできる仕組みが必要だと、こう思っておりまして、これについては、例えば実際に伝統的な構造物を造って、それをE—ディフェンス、あの兵庫県にある、ああいったもので揺すって、もう実際のデータを取って一々構造計算をしなくたってやれるような仕組みなんかも必要なんじゃないかと。まあいわゆる限界耐力計算法を使うような詳細設計法と簡易設計法、こういったものもできればよりスムーズに伝統的な木造建築が普及するのではないかと、こういったことも考えておりまして、両マニュアルに関与しました先生方の御指導も賜りながら、国費を投入して現在そういったものについての新しい展開についての作業を今進めていると、こういった状況でございます。
○西田実仁君 まあ3年後までにはそうした統合を行いたいと、こういうお話と事前にお聞きしております。
しかし、今おっしゃったような限界耐力計算法は大変複雑な難しい計算であるというお話でございますけれども、しかしそうしますと、これを統合したときに限界耐力計算法による建物というものを排除するということではないということですよね。そうしますと、統合したときに東日本の方に住木センターで国庫補助全額を出して、こうした計算法をたしか今開発をされているんだというふうに思います。
しかし、3年までの間は、先ほど近畿版でも別に適判機関から受けられるよという話ですけれども、実際には関東の県とかに行きますと、県が指定をする適判機関においては、これは東日本版、住木版しか駄目なんだと、近畿版は適用されないし、また近畿版の方でそうしたピアチェックを受けることはまかりならぬと。あるいは指定をしなければそういうふうになってしまいますので。現実にはその3年の間、東日本版だけでピアチェックを受けようとすると、例えば石場建てのような伝統工法による建物は建てられないということになってしまうわけですけれども、この辺どのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(和泉洋人君) まず、基本的なかつ抜本的な解決策について今作業しているということでございますが、仮に今委員御指摘のようなことがあれば、そんなに数が多いわけでもございませんから、私ども、木造住宅振興室という部署がございます、そこで個別に話を聞かせていただいて、スムーズに、もちろん安全性の確保は必要でございますけれども、円滑な手続が進むように個別にも応援させていただきたいと思いますので、是非、そういったことについては御指摘、あるいは個別案件についてもそういった観点からの御指導を賜りたいと思っております。
○西田実仁君 先ほど私が御質問してマイクを通さずに首を振られて答えてしまいましたので、もう一度マイクを通じて議事録にお言葉を残していただきたいのは、この3年間でやる統合ですね、簡易設計と関西の詳細設計の統合、これは決して関西版の方、詳細設計、いわゆる性能規定の方は排除するものではないということについて御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(和泉洋人君) 中身はこれから詰めるわけでございますが、基本的な方向として、そういった高度な計算をするアプローチもあるし、現にそういったことを施行している方々もいらっしゃいます。片方で、現場を考えると、もっと簡易に、しかもデータをちゃんと集めてといったアプローチもあると思っていますんで、両方が併存する形できっちりと様々なニーズにこたえられるような形で整備していきたいと、こう考えてございます。
○西田実仁君 今おっしゃっていただいたとおり、両方が併存するということでありますので、近畿版で行っている伝統工法に携わっている方は大変に安心をされるんだろうというふうに思っております。
あわせて、先ほどもお話があったんですけれども、近畿版を使っている関西の方の適判機関によってピアチェックを受けるということは法的には違法ではないということでしょうか。
○政府参考人(和泉洋人君) 建築基準法のピアチェックは、委員御案内のように、法律上は知事がやると。で、知事が適判機関を指定すればその適判機関がやるということでございますから、当該都道府県の中でどの適判機関を使えるかは知事の指定に依存しますので、例えば東京都において東京都知事が指定していない適判機関を使うことは困難だと思います。
○西田実仁君 そうしますと、埼玉に例えばある業者は、埼玉県知事が指定しない例えば近畿版を扱っている適判機関ではなくて、関東だけだと、目が行き届くところの適判機関しか駄目だというふうに指定をしますよね。そうしますと、事実上、申し上げた近畿版による伝統工法は建てられなくなってしまうわけでありますけれども。
○政府参考人(和泉洋人君) 中身は専門家に精査していただいた方がいいと思うんですけれども、要は、今の問題は、適判機関がどこであろうと確立された技術についてのピアチェックについては、機関によって違った結果が出ては困るということでございますので、こういった作業をする中で、適判機関がどこであろうと確立された技術に基づく設計については、同様のチェックが行われるような意思疎通と申しますか、技術に関する情報の共有化というものについては、この問題だけじゃございませんけれども、なお引き続き努力してまいりたいと、こう考えております。
○西田実仁君 済みません。要するに、どこが適判機関でもというんですけれども、結局、関東の適判機関においては、先ほど申し上げた、冒頭申し上げました住木センターの簡易型の方、このマニュアルに沿ってやっているわけなんですよ。
私が申し上げているのは、近畿版では認められるけれども関東版では認められない石場建てのような伝統工法があるということなんですよ。そうすると、県知事が指定しない、指定を許さないというか、指定したところが関東であると、近畿版では建てられるのに関東版では建てられない伝統工法が生じてしまうということが今起きていると。それ、3年後には統合する、それは結構、統合していただきたいんですけれども、その3年までの間、伝統工法が全然建てられなくなってしまうと、こういう問題をどうするのかということをお聞きしているんです。
○政府参考人(和泉洋人君) 先ほども御説明しましたが、そういったことが起きては困るので、もしそういった事実があるんであれば、まだちょっと大変掌握していなくて恐縮でございますけれども、今の委員の御指摘のようなことがあるとすれば、よく調べまして、経過措置としてどういうような対応が可能かというようなことと、最終的には、確立された技術を共有化して、それについては適判機関が違ったとしても同じ結果が出るような体制整備に努力していきたいと、こう考えております。
○西田実仁君 では、そういう問題が生じている場合には、是非、経過措置も含めて、本省の方で対応いただきたいというふうに思います。
引き続いて御質問をさせていただきたいと思います。最後の質問で、今日は文科省さんからもわざわざお越しいただきまして、ありがとうございました。
私がお聞きしたいのは、先ほど価値観というお話も局長がされたと思いますけれども、このストック型の住宅市場に転換をしていくということが住生活基本法、そして今回の長期優良住宅推進法の中にも盛り込まれている一つの哲学、考え方だろうというふうに思います。
その際には、選ぶ主体である住まい手の方の目利きの力ということも問われてくるのではないかというふうに思っております。住まいを長もちさせていくためにはこうした、当然供給側もそうですけれども、需要する住まい手の方の関与も欠かせないわけでありますが、しかし、私自身も実はそうですけれども、住まいに関する知識とかあるいは住まいに関する理解というのは、なかなかそれを身に付ける機会がこれまでの中で非常に少なかったというふうに正直思います。ですから、家を建てようというときには物すごい知識のギャップというのがあって、気苦労も多いし、分からないことだらけということでございます。こうした、今後、フローからストックという、あるいは量から質へというふうな住宅に関する転換が図られていく上で、選ぶ主体である住まい手の理解を深めていくということも国全体としてやっていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
そこで、学校で児童とかあるいは生徒に対しまして住まいに関する授業を行うこと、これも、今までとは質を変えていくわけでありますので、量から質、フローからストック、こう住まいに関する価値観そのものを転換をしていこうという中で、学校教育におきましてもそうしたことをベースにした、目利きの力を身に付ける、そういう授業等を行う必要があるのではないかというふうに思っております。
小中高のそれぞれの学習指導要領はまだできたばかりでありますし、そういうそもそもの哲学に基づいてのものではないと承知をしておりますけれども、今後、こうした国全体としてストックに転換をしていこうという流れの中で、学校教育についても、選ぶ主体、住まい手の教育ということについて是非取り組んでいただきたいと思っております。今後の対応についてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(徳久治彦君) ただいま御質問のあった点でございますけれども、小中学校の学習指導要領、これは学校で何を教えるかということについての国の基準でございますけれども、これにつきまして、住まいについては、家庭科なり技術・家庭科という教科におきまして、快適な住まいであるとか住居の機能とか住環境の整備ということについて指導要領で示しておりまして、これを踏まえまして、各学校においては、例えばでございますけれども、計画的な維持管理の必要性であるとか、メンテナンスを定期的に行って耐用年数を延ばすというような指導が行われておりますし、また、教科書の記述を見てみますと、既に住生活基本法、平成18年の法律なり、住生活の基本計画についての記述も教科書で取り入れられているような、そういうものも出てきております。
いずれにいたしましても、一般論として申し上げれば、児童生徒を取り巻くそういう社会状況の変化、例えば新たなこういう法制度ができるとか、新たなそういう国の施策が展開されるということになれば、それについて的確に教科書に記述をされ、学校現場で指導が充実されていくものになると考えております。
いずれにいたしましても、先生の御趣旨を踏まえまして、これらの指導が充実しますように努めてまいりたいと考えております。
○西田実仁君 終わります。