187-参-憲法審査会-002号 2014年10月22日
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
参議院の憲法審査会は、参議院憲法調査会報告書を踏まえ、衆議院とは異なる独自性ある議論を行うことを旨として運営されてまいりました。一昨年の常会では、「東日本大震災と憲法」ということで人権、統治機構、国家緊急権が議論され、昨年の常会では「二院制」、「新しい人権」がテーマとされてまいりました。そして、前常会では懸案の国民投票法を整備する内容の改正が行われました。今回、憲法審査会長、会長代理を始め審査会メンバーが大幅に替わったことから、憲法論の原点を再確認する議論を行う必要があると思われます。
そこで、まず、公明党の憲法に対する基本的な立場を述べたいと思います。
それは、憲法の骨格を成す恒久平和主義、基本的人権の尊重、国民主権主義の三原則は人類の英知というべき優れた普遍の原理であり、平和、人権、民主の憲法精神を国民生活と日本社会の隅々まで定着させ、開花させる闘いに全力を尽くすというものであります。
憲法改正については、現憲法は優れた憲法であり、平和、人権、民主の憲法の三原則を堅持しつつ、環境権など時代の進展に伴い提起されている新たな理念を加えて補強する加憲が最も現実的で妥当であるとの考えであります。
国権の最高機関とされる国会は、本来、政府と官が法を誠実に遵守するよう見張る立場にあり、とりわけ政府から距離を置くことができる参議院は監視を行うにふさわしいと考えます。参議院の行政監視機能の強化は、二院制支持者の共通の認識となっております。
本来、良識の府である参議院では、公共の利益の実現を超党派で目指すよう努力すべきであります。その際、特に行政の組織、人事に対する統制という観点、すなわち、政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院という観点が重要であり、この観点での参議院の役割論を深めるべきことを強く訴えたいと思います。
参議院の行政監視機能の強化と併せて、参議院の決算重視も重要です。ただ、決算審議の目的は予算審議へのフィードバックであり、予算審議と決算審議は本来一体のものとして行われるべきであり、単純に衆議院は予算、参議院は決算と役割を分けることには慎重でなければなりません。むしろ、衆参それぞれの特徴に応じた審議をする前提で参議院の決算重視の内容を考えるべきであり、年金制度や特別会計制度等、数年度にわたり長期的検討を要する事項に、より重点を置いた決算重視の審議を行うべきではないでしょうか。
大震災に関する議論も参議院憲法審査会の特徴であります。
本年、広島市等を襲った豪雨による土砂災害や御嶽山の噴火では、誠に残念ながら多大な犠牲者が出ております。国民一般にも自然災害への対策の重要性が認識されつつあり、中央防災会議防災対策推進検討会議最終報告では、自然災害による国家的な緊急事態への対応の在り方について憲法審査会で議論するよう求めております。
なぜなら、首都直下地震などの巨大災害に迅速に対応するためには、国会の開会中でも行政府の権限、すなわち緊急政令を認める必要がある場合が考えられますが、立法府と行政府の関係の根幹、三権分立の在り方が問われる憲法問題となるからであります。ここでは私権制限と併せて人権保障のために行政をどのように統制していくかが問題の本質であり、災害対策基本法第百九条第四項にある、いわゆる議会拒否権制度をどのように組み込むかが最重要の論点となると考えられます。
災害と憲法は本審査会の重要課題と言えるのではないでしょうか。今後、活発な議論がなされることを期待したいと思います。
以上でございます。