186-参-憲法審査会-003号 2014年05月21日
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
この憲法の改正手続につきましては、改憲に関して主権者の意思がどうあるかということを見定める法の手続でございます。したがって、その作成過程自体が我が国の民主主義の発展にとって極めて重要であり、国民の幸福追求のための人権保障の拡大と国民主権の徹底が憲法改正の視点であることを、この憲法改正手続を整備するに際しましても常に念頭に置いて論じるべきであるというふうに考えております。
今回の国民投票法の改正は、二〇〇七年に成立をいたしました同法が、二〇一〇年の施行までの宿題とされました投票権年齢の十八歳への引下げなど三項目が放置されたまま違法状態にあるため、是正する目的で、以下三つのポイントについて改正が行われると承知しております。
まず始めに、投票権年齢を施行から四年後に十八歳以上に引き下げるということ、二つ目に、公務員にも賛否の勧誘や意見表明を認めるけれども、法律で禁止されている政治的行為が伴う場合は行えないということ、そして三つ目には、国民投票の対象を憲法改正以外に拡大するかどうかについて更に検討を加えるということ、この三つであろうと思います。
今日は第一回目の質疑でございますので、この三つを、それぞれ基本的なことについてお聞きをしたいと思います。
今申し上げましたように、本改正案では、仮に法施行後四年が経過して、投票権年齢のみ自動的に十八歳となり、選挙権や成人年齢が二十歳のままでも構わないと、もちろん引き下げる努力をするということが前提でございますけれども、非常に簡素に申し上げるとそういう結論でございます。
憲法改正の投票権年齢については、衆議院の議論を見てまいりますと、選挙権年齢や成年年齢との整合性が非常に問題とされて、今も議論がございました。しかし、この際、そもそも憲法とは何かという原点に立ち返ってこの問題を考えなければならないと思っております。
憲法は、言うまでもなく、第九十八条にこう記されております。「憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」、このように定めております。憲法は主権者である国民が直接制定に関わる国の一番大事な規則、すなわち最高法規でありまして、選挙法や民法などの法律とは基本的性格を異にしている。憲法が小学校から教えられているのはそのためでございまして、選挙法や民法とは違う扱いになっていると承知をしております。
もう今は発行されておりませんが、かつて新制中学の教科書、文部省が発行しておりました「あたらしい憲法のはなし」にはこのように記されております。「こんどの憲法は、民主主義の憲法ですから、国民ぜんたいの考えで国を治めてゆきます。そうすると、国民ぜんたいがいちばん、えらいといわなければなりません。国を治めてゆく力のことを「主権」といいますが、この力が国民ぜんたいにあれば、これを「主権は国民にある」といいます。」。ここで留意すべきは、国民全体であって、国民一人一人とか一人の権力者とかではないことに注意をしなければならないと思っております。更に続いて、「憲法を改正するときは、国会だけできめずに、国民が、賛成か反対かを投票してきめることにしました。」。このように「あたらしい憲法のはなし」、戦後、文部省が発行いたしました教科書には書かれているわけであります。
そこで、発議者の船田発議者にお聞きしたいと思いますけれども、今私がるる申し上げましたように、憲法改正は国民全体に主権があることの具体化である、その意味から投票権者の範囲はできる限り広い方が望ましい、このように考えるわけでありますが、改めて発議者の見解をお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(船田元君) 今、西田先生から御指摘をいただいた、特に戦後すぐに「あたらしい憲法のはなし」ということで、当時の文部省が発行した冊子がありました。私も、リアルタイムでは見ておりませんけれども、その後、物心付いてから、あるいは憲法の問題に関わり始めてからこれを拝見をいたしまして、当時としてはまさに画期的なものであるというふうに理解をいたしました。やはり、戦前の様々な問題点、反省、そういうものを経ましてそういった新しい憲法についての一つの方向性をしっかりと示したという点では、大きな役割を持ったものだというふうに思っております。
そういう中で、今御指摘のこの憲法改正についての国民の参加ということでありますが、これ、やはり国民としての権利の最も大事な部分であると私は思っております。やはり、国の基本に関わる、全ての法律に優先して、その上に立つものということでございますので、それに対しての国民の意思を聞くということ、国民が意思を表明するということは、これは絶対に保障されなければいけないものだというふうに思っています。
そういう中で、やはりその対象の範囲、国民投票権者の範囲ということについては、これはできるだけ多くの人々に参加していただくということが必要であり、私たちは、現行法の中でも、いわゆる収監をされている人々や、あるいは公民権停止を受けている人々にも投票権を与えるということにいたしたわけでございます。
そして、年齢ということを考えれば、それはゼロ歳からという話もなくはないと思いますけれども、ただやはり現在の成年年齢等も考えまして、高校三年生で十八を迎えるわけでありますが、十八歳以上ということで対応することがやはり大事ではなかろうかと、こういうことで、投票権年齢を十八歳以上にするということについては大方の合意をいただいているんじゃないかと理解しています。
○西田実仁君 次に、公務員の政治的行為の制限についてお聞きしたいと思います。
憲法改正は、今申し上げました、主権者である国民が直接制定に関わる国の一番大事な規則、最高法規の改正であることは決して忘れてはならないと思います。公務員も主権者である国民の構成員であり、投票権者として憲法改正に直接関わる立場にございます。さらに、人権保障の拡大と国民主権の徹底は民主主義国家の歴史の流れであることを考えますれば、公務員の市民的、政治的権利を拡大する方向で検討すべきことは議論の余地がないと思います。
ただ一方で、民主主義国家における公務員とはどのような存在なのか、その理念を明らかにすることも不可欠でございます。国民主権の下で、公務員は主権者である全国民に共通する社会一般の利益のために働かなければならない、憲法十五条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と定められているわけであります。
そこで船田発議者にお聞きしますけれども、この原理原則から、憲法改正、国民投票をめぐる問題を検討する際、本案の附則にございます、法施行後速やかに規制の在り方を検討するとされております、組織により行われる勧誘運動、署名運動、示威運動については、どのように考えるべきとお考えでしょうか。
○衆議院議員(船田元君) 私ども、この公務員の運動の在り方ということについて議論いたしたわけでございますが、大前提としては、公務員もやはり国民、主権者の一人である、したがって、少なくとも意見表明それから勧誘行為についてはできる限り自由であるのが望ましいということが一つ、要請としてあると思っています。しかし同時に、公務員の皆様は、大変社会的な地位もありますけれども、その影響力というのも大変大きいというふうに思っております。だからこそ、公務員の政治的中立性の担保、確保ということが国家公務員法でも地方公務員法でも規定をされていると、こういう状況にあります。
この二つの大前提をどうやって両立をさせようかということでずっと議論をしてきたわけでありますけれども、そういう中で、やはり純粋な勧誘ということについてはよいけれども、他の政治的目的を持った行為というのは、これは禁止をしようと、こういうことで切り分けをさせていただきました。
そうなりますと、今度新たに、組織による勧誘運動というのはどうなんだろうか。やはり、組織を使いまして、しかもその組織による活動の中で、公務員自体がその指導をしたり企画をしたり、こういうことをやった場合に果たしてどういう影響が出るのかということについては、やはり大きな影響が出ることを私たちは懸念をしたわけでございます。
与党の中におきましてはこの方向性を一応決めさせていただきましたけれども、野党との話合いの中では、やはりまだ組織によりというものの、組織の態様や、あるいはその公務員が指導をしたり企画をするという、その行為というものをもう少し詳しく分析をする必要があると、こういうことで検討課題として附則に入れさせていただきましたけれども、最初に国民投票が行われるまでには一定の結論を得たいと、このように考えておる次第でございます。
○西田実仁君 次に、国民投票の対象の拡大についてお聞きしたいと思います。
国民投票の対象の拡大につきましても、人権保障の拡大と国民主権の徹底が民主主義国家の歴史の流れであることに留意をしなければならないと思います。人権保障の拡大と国民主権の徹底を図るためには国民投票の対象を拡大する必要があることは論理上当然であり、積極的に検討されてしかるべきと考えますが、発議者はどのようにお考えでしょうか。
○衆議院議員(船田元君) お答えいたします。
いわゆる一般的国民投票制度の導入ということにつきましては、これはやはり憲法の持っている問題と同時に、国民投票という中で果たしてどこまでこの憲法改正以外のテーマについて議論ができるのかと。こういうことは、当然議論をこれからも続けていかなければいけないと思っております。
ただ、私どもとしては、日本国憲法の予定している間接民主制との関係、一般的国民投票は直接民主制の一つの形態であろうと思われますので、その直接民主制と間接民主制との関係がどうなるのか。あるいは、その投票の対象として何をテーマとするのか、これを誰が選ぶのかという問題もあります。それから、その国民投票の結果、これは強制するということはないと思っておりますけれども、どの程度、あるいはどういう場合にこれを尊重し、あるいはそれを国政に反映をしていくのか。その在り方についてまだまだ議論すべきものが多々あるというふうに思っております。
私どもとしては、宿題の一つでもございますので、これについて新たに、先ほど議論にもありましたように、その意義、それから必要性の有無、その有無を取ったということ、あるいは、更に検討を加えるということで、更にという言葉を付け足して、改めて附則に置き直したという形でございます。
さらに、先ほども申し上げましたように、憲法審査会が四、五回開かれるのであれば、そのうちの一回は一般的国民投票制度を検討するための審査会にすると、こういうようなことで前向きに検討していこうということも各党の間で合意をされておりますので、これを誠実に追求をしていきたいと考えております。
○西田実仁君 それに関連しまして、内閣法の第五条には、「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。」とございます。ここには、憲法改正案の提出ということはどこにも書かれていないわけでございます。もちろん、今、その他の議案というところに憲法改正案を入れるというのは法律的な常識からしてあり得ないというふうに思うわけであります。
憲法改正案の提出については内閣には認めていないわけでございまして、憲法が持っている基本政策を変える変更というのも内閣の所管ではありませんで、本来国民が議論をすべきであるという意味から、憲法改正には他の法律とは異なって国民投票というものが課せられているものだと理解しております。
今、国民投票の対象を拡大することについて発議者から御説明がございましたけれども、一方で、国民投票にかけるべき憲法の基本原則に関わる変更について、解釈で変更できるというふうになれば国民投票法を整備する意味を失わせることにならないのか、発議者にお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(船田元君) お答えいたします。
今の件につきましては、既にこれまでも議論をしてきたところでございますけれども、やはり憲法の規範というものを考えますと、これは国民投票を行うことによってまさに民意を問うという大事な過程が当然あると思っております。
ただ、そういう中で、憲法の解釈の変更、憲法もやはり一つの法律の体系を成しておりますので、一般の法律と同様に一定の解釈の幅というのは当然認められるべきであると思っております。ただ、憲法の場合には、先ほども申し上げたんですけれども、その解釈として認められる範囲というか、あるいは遊びというんですかね、そういう部分はかなり狭くしておかなければいけないと私自身は思っているわけでございます。
そういう観点からしますと、現在の憲法の解釈の変更によって一つの方向性を見出していくということについては、やはり一定の制限をしっかりと加えながら議論をしていく必要がありますし、また、そのことについては、国会の中だけでの議論ではなくて、広く国民の皆様に理解をしていただく、場合によっては国民の皆さんからの意見あるいは意思というものを確認することも、場合によっては考える必要があるんじゃないかということで私のおとといの発言につながったと、このように感じております。
○西田実仁君 最後に、本法案が成立いたしますと、いつでも国民投票にかけられることになりまして、国会で憲法改正を発議し、国民投票にかけていくことができるようになるわけでございますけれども、改めてこの意義につきまして発議者にお聞きして、終わりたいと思います。
○衆議院議員(船田元君) お答えいたします。
今回は三つの宿題を解くということで、その結果として、現在の法律では何歳から投票していいのか分からない、これを明確に表すということができます。それともう一つは、公務員の運動の規制について、これまだまだ整理されていなかったわけですが、一定の整理ができたというふうに思っております。このことによりまして憲法改正の国民投票制度が実際に動ける、動かすことができる、こういう状況になったことは大変大きな意義があると、このように思っております。
もちろん、その具体的な憲法改正の中身の議論というのは全てこれからのことでございますけれども、これからの憲法改正の原案作りにも大きな影響を与えるものと理解をしておりますので、今回の改正法律案は、それが成立をすれば憲法改正の一つの入口に到達をしたと、このようなことで大きな意義がある、こう感じております。
○西田実仁君 終わります。