189-参-財政金融委員会-007号 2015年04月07日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
まず初めに、保険代理店の委託型募集人制度の適正化に関しましてお聞きしたいと思います。
委託型募集人の適正化期限が、この間の三月三十一日でございました。それが過ぎまして、元々この委託型募集人の適正化というのは、保険業法に定める再委託の禁止に該当する可能性があるということから、その是正を図るという名目でございました。
その結果、地域の特に保険代理店等が取るべき選択肢というのは、今まで、いわゆる保険営業マンの方を直接雇用するとか、あるいは役員として、あるいは出向契約とか派遣契約とか三者間スキームと、様々対応案としての提示がなされておりました。
そこで、まず金融庁にお聞きしたいと思いますけれども、委託型募集人の適正化期限が過ぎました。各保険会社から金融庁に対しまして最終報告というのがなされているかと思います。まだ一週間もたちませんのでどうなのか分かりませんけれども、この保険代理店がどういう対応をしているケースが多いのか、何か傾向があるのか、この際もう廃業しちゃっているのが多いのか、あるいは直接雇用がやはり増えているのか、こういう傾向についてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(森信親君) 保険募集に係る再委託につきましては、各保険会社に対し、本年三月末までに適正化を図った上で、今月末、四月末までにその結果を報告するよう求めているところでございます。なお、少額短期保険業者については、財務局を通じますので、五月末までに金融庁に対して報告がなされることになります。
現在、そういうわけで、保険会社において結果の取りまとめ中でございますので、現時点において確たることを申し上げることができる状況にはございませんが、一部の会社からのヒアリングをしております。それによりますと、引き続き保険募集に従事する者の中ではやはり雇用による形態が最も多く、それに、個人代理店となる事例、これは三者間スキームというのが多いと聞いておりますが、それに次ぐものと見込んでおります。他方、様々な理由により今回の適正化を機に引退するなど、廃業する者もかなりの数いるものと見込まれるところでございます。

○西田実仁君 まさに今はまだ途中なんですけれども、直接雇用というのが一番ヒアリングでは多いという話でした。また、廃業、引退をする例も多いということでございます。
直接雇用というのは、言うまでもありませんけれども、外務員から直接雇用するわけでありますので、様々なコストというのが経営側としては掛かってくるわけであります。社会保険の加入もしなければなりませんし、代理店が新たに負担すべきコストというのは当然のことながら上がってくるわけであります。
そこで、こうした新たな制度というか、委託型募集人の適正化ということによって地域の、これはまさに地域を支えている代理店、中小のプロ代理店、これが地場でどういうふうになっているのかということをきちんとやはりフォローしていく、検証していくということが私は大事ではないかと思います。
もちろん、法律違反になるようなことになってはいけないので、適正化は図らなきゃならないんですけれども、同時に、やはりこれまで地域でそうした代理店がかなり様々な形で活躍をしてきたわけでありますので、その地域経済に与える影響等々については、きちんと報告を受けた上でフォローしていくということが必要ではないかと思いますけれども、どのような対応になるのか、大臣にお聞きします。

○国務大臣(麻生太郎君) 保険の代理店につきましては、これは適正化という一連の流れに伴って、これまで委託契約を締結した人に対しては、これは直接雇用する例というのも結構あります、数としては。
金融庁としては、これまでも業界関係者などに対するヒアリングというのはそこそこやらせてきていただいたんですが、継続的かつ丁寧な対応というのをやらないと、何となく一律でぱっとなんて線引けるようなものじゃないよと、地域によって差があるからという話をしてきたところです。
今後さらに、保険代理店と直接ヒアリングをするなど、保険代理店に対するモニタリングというのは今後とも続けていく必要があろうと、そのように考えております。

○西田実仁君 是非、そうしたヒアリング等を行って、きめ細かく対応いただきたいと思います。
次に、前々回お聞きしましたが、税収の弾性値につきまして、今日も内閣府の審議官にお見えいただいておりますので、質問させていただきたいと思います。
前回この委員会で内閣府の方にお聞きしたときには、中期財政収支の試算が経済財政諮問会議に参考資料として出されておりますけれども、それは、今後の二〇二〇年に向けて税収の弾性値は一・〇であるという前提に、内閣府の持っているマクロ計量モデルで税収を算出した結果、事後的に租税弾性値が一・〇になるということでありました。それはこれまでの過去の実績からするとちょっと余りに保守的ではないかというふうに私が申し上げましたところ、内閣府からは、近年では名目成長率が非常に低くなっているという点に留意が必要である、あるいは景気が悪い状況から徐々に回復してくる局面では高い値を取る傾向があるといった理由を挙げられて、弾性値が一程度になるという姿は一つの自然な妥当性のある姿と結論されておられました。
しかしながら、私が前回示したのは、ここで言われたような最近の弾性値の実績ではありませんし、また景気が悪い状況から回復する局面だけを取り上げたものでもなく、これまでの長きにわたる戦後の景気循環の数値を取ったものであって、内閣府の方が前回言われたような一つの自然な妥当性のある姿というのには余り説得力がないのではないかというふうに思います。
実際に、長期のデフレ以前である第十一景気循環以前の二十年間の租税弾性値は一・五、前回申し上げたと思いますが、第二景気循環から第十五循環までは平均は一・四四でありますし、また第二から第十一で一・一、第七から第十一で一・二九、九から十一循環で一・五〇と、こういうふうに、長期で見てもとても一・〇という数字には収まらないということであります。
そこで、今日改めてお聞きしたいと思いますけれども、前回の御答弁で短期的にはともかく中長期の見通しにおいては租税弾性値一・〇は自然な姿と言われているのは何を根拠にしてそう言われているのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(井野靖久君) お答えいたします。
前回も申し上げましたとおり、税収弾性値がおおむね一・〇ということは税収とGDPがほぼ同じ伸びで伸びるということですので、すなわち税収のGDP比率が一定で推移するということを意味しているわけでございます。それで、先生御指摘のように、長期の関係で見てみましたときに、例えばかなり昔まで遡って、ちょっとデータの関係で手元には一九八〇年の税収のGDPの比率がございますけれども、国、地方を合わせたGDPに対する税収の比率を見ますと、一九八〇年で一七・〇、直近の決算が出ております二〇一三年度でも一七・〇ということで、ほぼ同じGDP比率になっているわけであります。これは、すなわち税収弾性値が長期にならしてみるとほぼ一・〇ということを意味するものであると理解しております。
誤解のないように申し上げますと、単年度ごとに計算された税収弾性値を長期にわたって平均を取った場合に、昔の一時点と直近の一時点をならして見た場合の税収弾性値とはかなり異なる姿になるということがございます。ならして見た場合には、このように税収のGDP比率がほぼ一定ということは、ほぼ一であるということと整合的な結果であるというふうに理解しております。
それからもう一点申し上げますと、いろいろな期間の取り方によってもちろん税収弾性値は異なってまいるものと理解しております。先生御指摘のように、いろんな過去の循環の局面を捉えますと、その時々で税収の弾性値、出てまいります。
〔委員長退席、理事若林健太君着席〕
一つここで申し上げたいのは、過去の景気循環の局面におきましては、日本の税構造が、現在は消費税が導入されておりますけれども、過去の高度成長期におきましては所得税中心の税構造、税体系であったわけであります。所得税の場合には累進構造を取っておりますので、経済が発展して物価が上がって名目GDPが伸びていく場合には所得のブラケットが上に上がっていきますので、税収弾性値が一をやや上回る構造がどうしてもそこには入ってまいります。近年では、もちろん所得税についてはそういった要素はございますけれども、消費税が導入され、その比率がかなり大きくなっておりますので、消費税は基本的にそういった累進構造を持っておりませんので、ほぼ理論的にも一に近いと思われます。
そういった税の構造の変化もあると思っておりまして、今後の中長期的な見通しにおきましては、ほぼGDPと税収が同じ程度で伸びるという姿を一つの自然な姿というふうに理解しているところでございます。

○西田実仁君 今日、朝、内閣府の方が説明に来られて数値を示されて、私も見たんですけれども、これ資料で出されておりませんけれども、今言われた安定的にGDPと税収の比率が保たれているというのは、そういうところだけの数値を出してきているんですけれども、八五年から二〇一三年まで見ていくと、税収弾性値は実際は一・三五なんですよ、国と地方を合わせて。ですから、一・〇になるようなものだけを数値を出してきて説明をしようと思ってもそれは無理があるわけでございまして、そのことを指摘しておくとともに、問題は、マクロ計量モデルから算出したということでありますので、言うまでもありませんけれども、計量モデルというのは経済の局面が変われば当然その局面に適合するモデルにしなければ正しい姿というのは見えてこないわけでありまして、これまで二十年来の長きにわたるデフレというものを前提にしたようなモデルでは、当然今後のことを、当然我々の今目指しているものはデフレから脱出をするという、脱却をするということでありますので、そうなってきたときにこのモデルで果たして本当に適合するのかどうかということが問われなければならないというふうに思います。
今回の財政収支の試算で重要なことは、こうした超長期のデフレから脱出してこれまでとは違った経済になるということを前提として見ていかなければ見まがうことになるというふうに思います。
〔理事若林健太君退席、委員長着席〕
今、御説明では、税目ごとに計量モデルを変えているんだという多分御説明なんだろうというふうに思いますけれども、実際に今のGDPギャップ、昨年の十—十二で約十二兆円ありますけれども、これが解消していくという、していかなければデフレからの脱却とならないわけでありますけれども、そうしたときには全くこれまでとは違う景色になっていくわけであります。
企業の設備投資が活発になって資本ストックが拡大し、付加価値が増加に転じる、経常利益は史上最高を更新していく、人件費も拡大に転じていく。そうなると、例えば法人所得の繰越欠損金も、〇八年度には九十・八兆円ありましたけれども、もう既に一三年度で六十八・六兆円に減少して、これは数年後には解消していくだろうと。そして、法人税の伸びが段層的に拡大するんではないかというふうに思われますし、雇用者報酬もこれは当然拡大をしていくと。先ほどおっしゃった税制改正はあるものの、所得税は累進構造を持っておりますので、一定の成長局面では弾性値が一を超えていくというのは、これは自然な逆に姿であります。当然、デフレから脱出すれば株価も上がってくるということからすれば資産課税も増えていくと。という全く違う景色が見えていくという前提で中長期の財政収支というものも見ていかなければ、私は、この数年来の当初予算と決算の数値が余りにも違うということ自体が財政再建を真にやろうと思うのであれば問題ではないかというふうな問題意識を持ってございまして。
そういう問題意識で一つ具体的なことをお聞きしますけれども、マイナンバーの制度が導入をされます。そうすると、一定程度の所得捕捉率が高まる、改善するということが期待はされているわけでありますが、この内閣府が持っておられる計量モデルではどの程度そうした効果を見込んでいるのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(井野靖久君) お答えいたします。
マイナンバー制度の導入によりまして、より正確な所得の把握が可能になるものと考えられるわけでありますけれども、現段階では、その効果につきまして定量的な把握が難しいことから、計量モデルの計算には織り込んでいないところでございます。
こうした効果については、より具体的な定量的データが得られた段階で検討したいと考えているところでございます。

○西田実仁君 盛り込まれていないということであります。
最後に大臣にお聞きしたいと思いますが、一国の財政を論じるに当たって、やはりなぜ租税弾性値が一・〇というふうにとどまるのか。これは内閣府の一つの参考資料ですから、別にこれにこだわる必要はないのかもしれませんが、しかし、財政諮問会議に出されている収支計算であります。そうした租税弾性値が一・〇にとどまるということを仮に前提とするんであれば、あるいは財務省の場合は一・一とかに機械的に試算しているのも承知しておりますけれども、そうした新しい経済、全く違う景色の経済にしようと我々はしているわけでありまして、そのときに、これまでの長期にわたるデフレと同じような発想で、あるいはそういうモデルで財政再建を考えるということが本当にどういうことなのかということを国民に、いずれにしても税収弾性値が一・〇と仮に置くんであれば、あるいは一・一と置くんであれば、なぜそうなのかということをやはり国民の皆さんに対してきちんと説明する責任が、財政を論じるんであれば出てくるんではないかと思いますが、大臣の最後に御所見をお聞きします。

○国務大臣(麻生太郎君) 先ほど内閣府からの説明もあっていたとおりですが、これは御存じのように、税収弾性値というのは単年度でやりますとえらくぶれが大きいというので、計算方法がそういう計算方法になっておりますので、名目成長率が二%で伸び率が二・二%だと仮にした場合は、税収の弾性値は二・二割るの二ですから一・一ということに、簡単に言えばそういう計算になるんですが、これが仮に名目成長率が〇%とか〇・一とかいうことになって税収の伸びが一ということになりますと、一を〇・一で割りますといわゆる弾性値は一〇ということになりますので、一挙にぼんと跳ね上がる形になりますので、単年度でやりますとばらばらにかなり差が出るということでありますので、分母になります名目成長率がゼロに近い数字になるほど極端に大きな弾性値が出るということなどがありますので、最近の、この二年ぐらいは随分変わってきた絵になっているじゃないかというのは間違いなく御指摘のとおりです。なっておりますが、その前のことを考えますと、異常値の影響というのを排除できないというのはもう正直なところだと思っております。
したがって、課税ベースが名目成長率に連動しておりますので、基本的には弾性値が一と考えられる消費税につきましては、その税収シェアが拡大をしておりますので、累進課税を取っているための弾性値は一以上ということで考えられるので、所得税につきましては、累進構造の中期的な緩和、フラット化しているということだと思いますので、税収弾性値もバブル期以前と比較してえらく高まっていると考えられるかと言われると、今そこまでまだちょっと、二年目でもありますので、ちょっとそこまでの自信もありませんので、中期的には一に近い数値を想定しておいた方が妥当ではないかというように今の段階では考えております。

○西田実仁君 終わります。