204-参-憲法審査会-003号 2021年05月26日
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
本改正案は、憲法改正国民投票の投票人の投票しやすい環境を整えるということを目的として提出されています。改めて、今回の改正の必要性を基礎付ける立法事実とその意義について、発議者から説明を求めたいと思います。その際、七項目は民主主義の基盤に関わるとの昨年十一月の衆議院憲法審査会でございました。そうしたことの具体的な意義を踏まえながら御答弁をお願いしたいと思います。
○衆議院議員(北側一雄君) 投票機会をできるだけ保障していく、また、投票の利便性をできるだけ拡大をしていくということは、やはり有権者の方々、投票者の方々が投票しやすい、また投票できると、こういう環境、条件をしっかり整えていこうというのが今回の七項目のそれぞれの趣旨なんだというふうに理解をしております。
例えば、共通投票所制度、投票日当日に大型の商業施設等々で投票ができる、投票しやすくなります。また、船員の方々、長期で海に行っていらっしゃる、そういう方々の投票権を保障していく、また拡大していくというのが今回の七項目のそれぞれの趣旨でございまして、そういう意味では民主主義の基盤に関わるものというふうに申し上げたところでございます。
○西田実仁君 次に、投票所に入場可能な子供の範囲の拡大の意義、そして若年層の投票率の向上についてお伺いいたします。
平成二十八年の公選法改正によりまして、投票所に入ることができる子供の範囲が、幼児から児童生徒その他の十八歳未満の者に拡大をされました。この改正は、選挙権年齢の満二十歳以上から満十八歳以上への引下げが実現し、また、各選挙を通じまして若年層の投票率が低くなる中で、選挙人である親が子供を投票所に連れていき、現実に投票している姿を見せることが将来の有権者への有効な啓発、すなわち主権者教育に資するという考えなどから提案されたものでありました。
今回の改正案によって、憲法改正国民投票法についても公選法と同様、投票所に入ることができる子供の範囲が拡大されます。国民投票という貴重な機会を将来の有権者となる子供たちに実際に見せることは、まさに大変効果的な主権者教育になり得ると考えますが、本改正項目の趣旨について、主権者教育として持つ意義、効果という視点を含めながら、発議者の見解を伺いたいと思います。
○衆議院議員(船田元君) 今、西田委員御指摘のとおり、投票人である親が子供を投票所に連れていって現実に投票している姿を子供に見せるということは、子供たちに早い段階から、社会の一員として、また将来の有権者としての自覚を持ってもらう、こういう意味で大変重要だというふうに思っております。私は、これを体験的主権者教育とか、あるいはリアルな主権者教育だというふうに位置付けております。
このような観点から、今回の改正案においては、投票人は十八歳未満の者であれば誰でも同伴することができるよう措置をするということでございまして、このことと併せて、主権者教育につきましても更に力を込めていかなければいけないと考えております。
○西田実仁君 若年層、十歳代の投票率を見てみますと、選挙権年齢が引き下がりました最初の国政選挙は平成二十八年の参議院選挙でしたが、このときこそ四六・七八%であったものが、その後、平成二十九年の衆院選では四〇・四九%、令和元年の参院選では三二・二八%と、残念ながら低下傾向にございます。
昨今の国政選挙において若年層投票率が軒並み低下傾向にあることをどのように受け止めておられるでしょうか。また、今回の改正を一つの契機として、憲法改正国民投票に関する若年層への関心の喚起、ひいては選挙一般についての関心の喚起につなげていくことが重要ではないかと思いますが、発議者の見解を伺います。
○衆議院議員(逢沢一郎君) 西田先生と全く同様の問題意識、また、ある意味で危機意識を持っているところでございます。
私は、ここ数年、自由民主党選挙制度調査会長として、投票環境の整備、一人でも多くの皆さんに利便性を確保する中で選挙していただく、投票していただく、そのことに努力をしてまいりました。これからも多くの皆様と一緒に努力を続けていかなくてはならないと思っておりますが、しかし同時に、今御指摘のような現実を直視する、そのことも大切であろうかと考えております。
御指摘のように、例えば平成二十九年の衆議院選挙での二十代の投票率は約三〇%、三十代の投票率は約四〇%と報告をされております。この数字は、令和元年に行われました参議院選挙でもほぼ同様の水準であったと理解をいたしております。
全体として若年層の投票率が低くなっているという点についてしっかり認識をし、そのことに対応する努力を不断に重ねてまいりたいというふうに思います。若者の政治への関心を高め、投票率を向上させる、このことへの努力が非常に重要でございます。
また、憲法改正という国民の権利義務や国の将来の在り方という大きな問題につきましては、若年層への問題意識を持っていただくということは当然大切なことでありますが、若い世代と同時に、働き盛りの世代の皆さん、あるいは高齢者の皆様、国民挙げての議論が大事になってまいりますので、国民投票広報協議会による広報や、あるいは国民投票運動を促進をすることによりまして、若年層の関心、また国民の皆様全般に対する関心の高まり、そのことが実現できるように努力をしてまいりたいと思います。よろしくお願いをいたします。
○西田実仁君 ドメスティック・バイオレンス、ストーカー被害者に係る投票人名簿の閲覧許可の運用方針等についてお聞きしたいと思います。
平成二十八年の公選法改正のきっかけとなりました総務省の投票環境の向上方策等に関する研究会報告におきましては、近年、DV及びストーカー行為の認知件数が増加を続けていることを背景に、選挙人名簿の抄本の閲覧制度については更なる厳格な制度運用を求める声が強くなっている、また、DV及びストーカー行為等の被害者に係る選挙人名簿の抄本については、閲覧の申出がいずれの者からなされた場合にも、被害者に係る個人情報の閲覧を求めること自体が不当な目的があるものと疑われることから、原則として閲覧させないこととする方向で考えるべきと提言されています。
なお、この点につきましては、平成二十八年、当時の総務副大臣から、研究会の指摘があったことを踏まえ、本法案による改正に合わせ、その対応を検討してまいりたいという答弁もなされているところです。
そこで、まず総務省にお聞きしたいと思います。
DV、ストーカー被害者保護の観点から、選挙人名簿の抄本の閲覧について現状でどのような取扱い、運用がなされているのか、平成二十八年の総務省の答弁を踏まえて、その後の対応状況をお聞かせください。
○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
選挙人名簿の抄本の閲覧につきましては、公職選挙法上、閲覧事項を不当な目的に利用されるおそれがあると認めるときは、市町村の選挙管理委員会は申出に係る閲覧を拒むことができることとされておりまして、こうした観点から、総務省では、DV及びストーカー被害者に係る閲覧について、これまで数度にわたり留意事項を通知してきたところでございます。
さらに、総務省において開催した、御指摘の投票環境向上方策等に関する研究会報告において、被害者に係る選挙人名簿の閲覧については、申出がいずれの者からなされた場合でも、原則として閲覧させないこととする方向で考えるべきとされたことなどを踏まえまして、平成二十九年九月になりますけれども、加害者から被害者の選挙人名簿の抄本の閲覧の申出がなされた場合には、閲覧事項を不当な目的に利用されるおそれがある申出として閲覧を拒否すること、第三者から申出がなされた場合であっても、申出に係る選挙人が支援対象者である場合には、その閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認めるときとして閲覧を拒否することができるものであること、特段の申出がない場合には、被害者を除く申出であるとみなし、被害者に係る記載のある部分以外の部分に限って閲覧に供することを原則とすることを改めて通知したところでございます。
各市町村の選挙管理委員会におけるDV及びストーカー被害者に係る情報管理の具体のやり方について網羅的に把握しているわけではございませんが、例えば被害者が含まれない形で閲覧用名簿を打ち出す機能を選挙人名簿システムに実装するなど、総務省通知踏まえ適切に対応していただいているものと承知をしておりまして、引き続き対応について徹底してまいりたいと存じます。
○西田実仁君 その上で発議者にお聞きしたいと思います。
今回の改正案では、憲法改正国民投票の投票人名簿にも抄本の閲覧制度が創設される場合には、上記の選挙人名簿で懸念されている課題が投票人名簿にも当てはまることになります。
今後、仮に本改正案が可決、成立し、投票人名簿にも閲覧制度が創設された場合、DV、ストーカー被害者の保護を図る観点から、選挙人名簿と同様、厳格な制度運用が不可欠であると考えます。被害者保護の観点から、投票人名簿の抄本の閲覧許可についてはどのような運用がなされるべきとお考えか、発議者の御認識を伺います。
○衆議院議員(逢沢一郎君) ただいま総務省の方から選挙人名簿の閲覧の運用に関する説明がございましたけれども、本改正によりまして、閲覧制度の導入の趣旨が改めて明確にされるべきと考えております。
選挙における閲覧制度と同様に、選挙人名簿の内容確認手段につきましては、個人情報保護の観点から、閲覧できる場合を投票人本人が投票人名簿における登録の確認をする場合に限定をさせていただいているところでございます。
このため、投票人名簿の閲覧制度が運用される際には、選挙人名簿の閲覧制度の運用と同様に、DV被害やストーカー被害の保護が図られるよう、不適切な申請を確実に排除する等の措置が講じられ、厳格な運用がなされるものと理解をいたしております。
○西田実仁君 次に、洋上投票の対象の拡大についてお伺いしたいと思います。
二〇一六年、公職選挙法の改正によりまして、日本国民である船員が二人以下の場合でも洋上投票は可能と、その対象が拡大されました。不在者投票管理人者、立会人を置かずに洋上投票が可能となったわけでありますけれども、この二重投票の防止など、国民投票における公正性をどのように担保するのか、発議者にお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(逢沢一郎君) 改めて、拡大洋上投票の手続につきまして確認をさせていただきたいと思います。
まず、出航前に船員が指定市町村の選管から投票送信用紙及び確認書の交付を受けます。次に、出航後、投票に先立ち、船員が指定市町村の選管にファクス、ファクシミリで確認書を送信し、指定市町村の選管が船員にそれを受信した旨を連絡をいたします。その上で、選挙期日の公示後、船員が投票の記載をして、ファクシミリで送信をし、投票記載部分を封筒に入れ、必要事項記載部分を封筒に貼り付けます。最後に、帰港後、戻った後ですね、帰港した後に船員が指定市町村の選管に封筒を送致し、さらに、選挙人名簿登録地市町村の選管に送致をする。以上のような手続となっております。
このように厳格な一連の手続を経ることで、またファクシミリの送信も選管の業務時間内に限るとさせていただいておりますが、二重投票の防止、つまり不正の入り込む余地を極力排除した、そういったシステムを採用することといたしております。
○西田実仁君 公選法並びということで申し上げますと、令和元年に成立した改正公選法の内容のいわゆる二項目、すなわち天災等の場合において迅速かつ安全な国民投票の開票を行うための開票立会人の選任に係る規定の整備、また投票立会人の選任の要件の緩和につきましても、今後速やかに国民投票においても同様の措置がなされるべきではないかと考えますが、発議者の御所見を伺います。
○衆議院議員(逢沢一郎君) 既に公選法で措置をされております御指摘の二項目につきましては、改正法の施行後、令和元年七月の参議院議員通常選挙で円滑に実施をされたと理解をいたしております。したがいまして、この七項目案の成立後、各党の合意を踏まえまして、可及的速やかに国民投票法におきましても措置をさせていただきたい、そのように考えております。
そもそも、投票環境の向上のような事項につきましては、国民の利便性向上の観点から不断に検討、見直しが図られなくてはなりません。当然のことでありますけれども、七項目で終わりということではなく、引き続き必要な検討がなされるべきものと承知をしております。
○西田実仁君 これ以外にも、選挙の際に投票所に足を運ぶことが困難な高齢者や障害をお持ちの方の投票機会を確保するための郵便投票の範囲の拡大などを内容とする公選法の改正も議論されていると承知しております。また、現在の新型コロナウイルス感染症に感染してホテルや自宅で療養される方にも選挙における郵便投票の利用を認める特例法の議論がなされていることも承知しております。
国民投票法におきましても、最大限投票の機会を確保する必要性があることに鑑みまして、有事の際も含めて郵便投票の機会を拡充する方向での改正が必要ではないかと考えますが、発議者の御所見を伺います。
○衆議院議員(逢沢一郎君) できるだけ多くの方に、できるだけ多くの有権者の方に投票の機会を確保していただくために、この郵便投票というツールを適切に生かしていく、大変重要な視点であろうかというふうに思います。公選法におきます選挙につきましても、また国民投票法につきましても、早急にそれらの議論がなされ、適切に導入が図られる、そのことが望ましいと考えております。
まず、現行の郵便投票の対象範囲の拡大につきましては、例の介護保険制度におけます要介護度の方についてでございますが、現行では要介護度五の方に郵便投票の権利が与えられているわけでありますけれども、これを要介護度四及び三にまで対象範囲を拡大をする法案が与党において既に党内手続を終え、野党各党にも呼びかけを行わさせていただいている、そのような状況にあると理解をいたしております。
また、現在の新型コロナ禍の緊急事態におきまして外出自粛の要請を受けている有権者、選挙人の投票の機会を確保することも、参政権といった重要な憲法上の権利保障のために喫緊の課題であると考えております。このことにつきましては、まさに現在与野党におきまして特例的な郵便投票を整備する方向で議論がなされております。
もっとも、この特例法は、新型コロナ禍という特殊事情を踏まえました特措法を用意をされていると理解をいたしておりますが、すぐにも想定される選挙を念頭に置いたものでございまして、これを国民投票に導入するかどうかにつきましては別途の議論がやはり必要になってこようかと、そのように理解をいたしております。
○西田実仁君 最後に、修正条項について北側議員にお聞きします。
三年は当該条項に限定列挙された手続事項のみを議論する、あるいはそれが一段落した後に本体の議論に入るとの解釈が前提となっているのかどうか。これにつきましてどのようにお考えか、御認識をお伺いしたいと思います。
○衆議院議員(北側一雄君) 附則に書いてございます検討条項の中には、憲法改正の発議、また憲法本体の論議に関する言及というのは一切ございません。
かつて国民投票法を改正したとき、憲法改正の発議については、かつては十八歳投票権の問題等々三つの宿題というのがありまして、それは国民投票法の施行そのものとリンクをされておりました。したがって、そうした十八歳投票権の問題等について解決をしないと国民投票法そのものが動かないと、こういう状況だったわけです。しかしながら、この問題については、平成二十六年の改正によりましてこの三つの宿題を解決をいたしました。
したがって、今回はあくまでリンクはしていないわけでございまして、法制的には、これは憲法本体の議論はもちろんのこと、憲法改正の発議も法制的にはできるということでございます。
いずれにしましても、先ほど来述べておりますとおり、CM規制等の問題については非常に重要な問題でございますので、しっかりと各会派で議論を積み重ねまして、できるだけ早く一定の結論を出していきたいと考えております。
○西田実仁君 終わります。