決算委員会・第11号 2005-05-16

【質疑事項】
1.(財)国際教育情報センターの破産について<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
山下委員に続きまして、私の方からは、当委員会で4月11日にも取り上げさせていただきましたけれども、文科省、その際は文科省所管の財団法人の破産につきまして取り上げさせていただきました。
本日は、外務省所管であります財団法人国際教育情報センターが昨年11月に破産に陥りまして、その件につきまして、公益法人、本来は公益を守るべく存在する組織である公益法人が逆に公益に対しまして害をなすというようなことが繰り返されてはならないという思いも込めまして、その事実関係等について大臣また政府参考人の皆さんにお聞きしたいと思います。
この財団法人国際教育情報センターといいますのは昭和33年に設立された財団でございまして、歴史教科書に関する民間交流の担い手として大変な有意義な仕事、事業をこれまでにも重ねてまいりました。とりわけ、今、日本と中国、あるいは日本と韓国といったアジア諸国との様々な歴史問題、また教科書問題等が大変に大きなテーマになっているときに、そうしたことを民間で、その第一線で担ってきたのがこの財団法人、センターなわけでございます。こうした事業の重要度にかんがみまして、これまで昭和33年から累計で26億円もの税金がつぎ込まれ、また維持されてきたわけでございます。
町村大臣も、たしか九七年だと思いますけれども、文部大臣の際に、都内のホテルで開かれました、このセンターが取り仕切りました日中友好歴史展にも御参加されているかと思いますけれども、今回、こうした財団が、長い歴史を持ち有意義な事業をしてきたにもかかわらず破産に至りました。そのことにつきまして、まず大臣から率直な御感想をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(町村信孝君) 西田委員御指摘のこの財団法人国際教育情報センター、私もたしか文部大臣のときに、その展示会ですか、都内ホテルで開かれたものだったと記憶をしておりますが、そこに参加をして、その折、賀陽理事長ともお目に掛かった記憶がございます。その時点で、もうかなりお年ではあるかなと思いましたが、しかし大変な情熱を込めてこの事業に取り組んでおられるという姿に大変感銘を受けたことを覚えております。
今、ちょうど委員からお話のあったような、外国の教科書とか辞書とか、そういうものに誤りがないかどうかきちんとチェックをしたり申入れを行ったり、非常にいい活動をしている団体だというふうに思っていたわけでございますけれども、債務超過で再建不能ということで破産をしてしまったというのは、私自身、残念な思いは個人的にはいたしておりますけれども、運営に責任を持つ理事の判断で、理事さん、理事長以外理事全員が破産やむなしという判断をされたということなものですから、やむを得ない選択であったのかなと、こんな思いがいたしております。

○西田まこと君 このセンターにつきましては、平成13年4月3日の参議院の外交防衛委員会におきまして、当時の河野外務大臣がこのような答弁をされておられます。公益法人に対していろいろな批判がある昨今ではございますから公益法人について我々もいろいろ考えなければなりませんが、こういう非常に重要な仕事をしてくださっている、あるいは極めて必要な役割を担っておられるというところとは外務省としてはできるだけ連絡を取って、材料の提供だけではなくて、その他どういうサポートをする必要があるかということについてはよく考えて云々という、そういう公益法人、特にこのセンターの有している大変に重要な役割ということにかんがみて、できるだけ連絡を取りサポートしていくと、こういう当時の外務大臣の御答弁があったわけでございます。
しかし、今回、この破産に至る経緯を私もいろいろと調べて、また当事者にも、理事長にも御高齢ではございますけれども直接話をお聞きしました。また、関係者の方にも、いろいろと調べてまいりましたところ、率直に申し上げまして、この破産に至る経緯を眺めてみますと、まず、この歴史の長い財団の運営に当たりまして、主務官庁である外務省から、これまで適切な指導ないし監督がほとんどなされていなかったということが指摘できると思います。
そして、一たび資金繰りが悪化、先ほど債務超過というお話がありましたけれども、7千万円の債務超過でありました。私が前回、4月11日に取り上げた文部科学省の所管の財団法人は6億円の債務超過。基本財産はこのセンターの方が大きい、先ほどの文科省の所管と比べてですね。そういうセンターでございますけれども、ひとたび資金繰りが悪化したということが発覚しますと、外務省としてはかなり右往左往したんではないかというふうに正直言って見えるような節がございまして、再建への努力を決して促す、あるいは試みることもなく、言わばかなり計画的、意図的に破産への道をまっしぐらに進んだというふうな印象ばかりが正直言って目に付くわけでございます。
本日の質問に至るまで、私も外務省の当局の皆さんといろいろとやり取りをさせていただきましたけれども、3点指摘したいと思います。
まず、この財団が破産するに至った資料の収集等を要求いたしますと、本来、公益法人が出すべき、提出すべき財務諸表類、財産目録等も含めまして、最初に過去3年分を要求したところ、一部に欠落した諸表しか出てきませんで、資料がすぐにそろわないという状態がありました。
2つ目に、この破産に至る経緯のペーパーを、私、2回にわたりいただきましたけれども、1回目にいただいた資料と2回目にいただいた資料では随分と違うところが出てきておりまして、1回目の資料におきましては、要するに、理事長が御高齢で、事務局長が亡くなるという、そういう事務の停滞、これによって急速に資金が悪化したというペーパーが出されてきたわけでございます。
しかしながら、それが4月26日付けですが、今度、5月2日付けで出てきたペーパーでは、そうではなくて、本当の理由は、不況によってもう企業、個人からの会費、寄付収入が減少したことによるんだと、こういうペーパーが出てまいりました。
さらに、センターの破産、解散の経緯についてという時系列に追ってどういう経緯があったかということが記された資料も2種類出てきてまいりまして、5月10日付けでいただいたものの、実は私にいただいたのは5月10日付けのものですけれども、その前に内部資料として3月5日付けで作られているものに一部内容が違っておりまして、その内容の違うところは何かといえば、ひとつは、今日お見えになっていますけれども、近藤部長が理事長を説得したけれども、それはかなわなかったということ。そして、理事長からの回答として、センターの活動は縮小しつつ、債務は寄付金を集め徐々に返済するという趣旨のことが理事長からあったということ。さらに、理事長名で15年度提出されていないと外務省が言っていた収支決算書ないし貸借対照表が実は送付されたこと、銀行の借入れのためにということでございますけれども。こうしたセンターを継続していこうという理事長側の努力を告げる事実関係については、私にいただきました最初の資料はそこはあえて削除されているという不思議なことが起きておりました。これが二つ目。
そして3つ目には、実はこの破産後について、少なくとも今現状、この47年の歴史を持ち、様々な歴史の専門家の交流をし、教科書のやり取りをしてきた、いろんな資料あるいは財産があろうかと思いますけれども、現状でこの蓄積されてまいりました、26億円という税金を注ぎ込み、蓄積されてまいりました資料類が現在どこにあり、どのように保管されているかということについてすべてを掌握はされていないという、こういう事実であります。
そして、更に言えば、裁判所に今年2月に2度にわたって提出された申立書並びに上申書、こうした理事長側から出されてきたものについても、当局である外務省としては一切知らない、あるいは調べようともしていないという、こういう大変不自然な3点にわたることがございまして先ほどのような印象を私は持ってしまったわけでございますけれども、まず近藤部長の方から、今申し上げた指摘につきまして御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(近藤誠一君) お答えいたします。
まず、委員の下にお届けをいたしました資料でございますが、いろいろとファイルの中から適切なものを探してお届けをしたつもりでございます。
破産に至る経緯につきましても、私どもとしては、長引く不況による寄付金の減少あるいは外注の減少、そして補助金も若干ながら減りつつあると、そういうマクロ的な状況と、それからセンター自身のマネジメントの問題、そういったものが複合的にかみ合って、そういった客観的な事態に必ずしも事務の効率化ですとか整理統合といったことがなされていなかったという、そういう複合要因が今回の破産に至る重要な原因だったというように考えております。
それから、破産後の資料でございますけれども、私どもとしましては、すべての財産、資料等が管財人の下に一括して管理をされたわけでございます。その中で、特に重要と思われます外国の教科書、約1万冊でございますけれども、それが麗澤大学の方で引き取っていただくということで、その大事な資産が今後とも生かせるようになっていると。あるいは、外務省の方にも、これまでセンターが行ってきました様々な歴史家の、あるいは専門家の交流の報告書、そういったものもそれぞれ備えてございます。また、センターが発行してきました広報資料等につきましても、外務省を含めそれぞれのあて先に保管をされていると。
ということで、委員御指摘のように、すべて100%ではございませんけれども、主要なものについてはできる限り保存をし、今後のこの種の活動に生かしていくということで最大限の保存の努力をしてきた次第でございます。

○西田まこと君 もう時間もございませんので、その破産についてもちょっとお聞きしたいと思いますけれども、裁判所の方に確認をいたしましたところ、公益法人の破産、この場合は、このセンターの場合は破産申立てを11月1日にしていますよね。そして、その同日午後5時に破産宣告が発せられています。こうやって、申立てをして宣告をされるまでに同じ日になされるというのは極めて、極めて異例なことであるということが分かります。
最高裁判所に私の方で調べました。過去にわたりまして、公益法人が破産を申し立てて、そしてその日のうちに破産宣告をされるというケースがどのぐらいあるのか過去について調べてみましたら、1件だけありました。すなわち、このセンターの件であります。つまり、過去には一度もそうしたことがなされていない。異議申立てをするような期間が一切与えられていないというのはかなりまれなケースでございまして、なぜこのような形になったんでしょうか、御答弁願います。

○政府参考人(近藤誠一君) 本件の破産申立てを受けました東京地裁がどのような判断をされたのか私どもの知るところではございませんが、恐らく私の推測では、置かれた客観的な状況、特に理事が全員が、その時点の状況は極めて厳しく、債務を解消し、そしてまたこれまで続けてきた業務を改めて再開をするということは不可能であるというような判断をしていたという、そういう状況にかんがみれば、かなり早い決定ではありましたけれども、そういった客観情勢を判断した上での決定ではないかというふうに推測をしております。

○西田まこと君 この最高裁判所によりますと、今日はもう時間ないんでお呼びしませんでしたけれども、普通、一般的には東京地裁、東京地裁に出されましたけれども、東京地裁の場合も、専門部署があっても、公益法人の場合は普通は1週間から2週間掛かるのが普通であると。なぜならば、やはり債権者の数が非常に多いということもございます。
じゃ、即日にそうした宣告がなされる例はどういう例なのかということを更に聞きますと、余りそうした公益法人ではそうした例はほとんどありませんという回答が裁判所からありました。しかしながら、まれにあるとすれば、申立て代理人の弁護士が裁判所の方と内々で十分な話合いがなされている場合。この場合、このセンターの破産宣告の弁護士は外務省が推薦をした弁護士であります、そこに至る経緯はお聞きしましたけれども。また、債権保全の必要のために即日決定されることもありますと、債権が保全されない、分散してしまうと。こういう2つの条件から即日破産開始決定される場合が極めてまれに、特に公益法人の、個人の場合は別ですけれども、公益法人の場合はあるということであります。
しかし、この2つの点、今申し上げたとおり、ひとつは代理人の弁護士が裁判所の方と内々で十分な話合いをなされたというけれども、実はこの代理人の弁護士、理事側の代理人の弁護士でありますけれども、外務省が推薦して、外務省の顧問弁護士を独立された方がやっているという事実。そしてもうひとつ、債権保全のため、先ほどもおっしゃいましたけれども、現状が、全部ではないけれども、ほとんど把握されているかのようなお話をされましたけれども、裁判所に出されました申立て書あるいは上申書によりますと、これは、権限のない、管財人の命ではない、元職員が資料を勝手に倉庫から盗み出しているという、持ち出しているというような申立て書が裁判所に出されておりまして、これについても債権保全の必要のために即日決定されたと言うには値しない事実関係があるわけでございまして、どう見ても、やはりこの破産に至る経緯がちょっと乱暴ではないかというふうに正直言って思います。
しかしながら、もう既に破産してしまったことでありますし、今更取戻しもできないわけでございますけれども、もう時間もないので、あえてここから学び取ることが必要ではないかということについて申し上げさせていただきたいと思いますけれども、ひとつはやはり公益法人につきまして主務官庁が、このセンターでもそうでしたけれども、基本財産がもう23年前から取り崩されているということについ最近気付いたという、立入検査をしていても、預金通帳を見合わせて決算書に記載されている基本財産と合わないか合うかということも確認をしていないという非常にずさんな立入検査という状態が、直さなければならないというふうにまず思います。
と同時に、町村大臣にお聞きしたいと思いますけれども、この継続事業として今やっている、例えば標準日本語という事業が、中国の教育部直轄機関である人民教育出版社とこのセンターとの間で既に編集作業を終えている、そうした継続事業もあるやに聞いておりまして、今後の日中、日韓あるいはアジア諸国との様々な関係を考えたときには、このセンターが復活するということではなくて、こうした重要な機能を一刻も早く受皿として、あるいは新たな機関か分かりませんけれども、いずれにしても、この機能回復に早急にやはり取り組まなければならないんではないかということを非常に強く感ずるわけでございますけれども、大臣いかがでございましょうか。

○国務大臣(町村信孝君) 非常に重要な役割を担ってきたこのセンターに対する外務省が所管官庁としてどれだけきちんきちんと見てきたか。まあ定期的な立入検査をやってきたようではありますが、現実的にはこの基本財産の取崩し等のことに十分気が付かなかったということで、そういう意味では、所管公益法人の指導監督、十分ではなかったということは、率直にこれは反省をしなければいけないだろうと、こう思っております。
その上で、いろいろな仕事、先ほど近藤部長がお話ししたような、収集した資料は幸いなことに廣池学園麗澤大学の方でほとんど、大分、1万冊という書籍あるいは資料あるいは外国教科書というものが引き取られたということでありますが、委員御指摘のその彼らがやってきた事業に関するノウハウ、こういったものをうまく継承しなければ、本当に長年の補助金の成果も雲散霧消してしまうではないかという御指摘は誠にごもっともでございまして、限られた外務省の予算ではございますけれども、これらをうまく活用して、外務省あるいは民間でこういったことをやろうという方々を支援したり、あるいは外務省ベースでも何かうまくこういったノウハウが継続するような工夫をこれから大いにやっていかなければいけないと、このように事態を受け止めているところでございます。

○西田まこと君 終わります。ありがとうございました。