○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
今回の放送法改正の大きな目的であるNHKによるインターネット配信の必須業務化につきましては、新聞社などでは、なし崩し的な業務肥大の懸念、疑念が拭えない、あるいは民業圧迫の懸念があるなどの批判もありますが、大事なことは、これによりまして視聴者、利用者にどのようなメリットがあるのかということではないかと思います。
公共放送ワーキンググループ第一次取りまとめにも、国民・視聴者の目線を常に意識して検討とあります。問われるべきは、国民の便益、利用者目線で将来の公共放送の担うサービスはどうあるべきかではないかと思います。その意味で、公共放送ワーキンググループが取りまとめた報告書にあるように、情報空間の健全性の向上というネット配信必須化の根拠の一つはとても重要であると考えます。
インターネット上で生じているフィルターバブルやフェイクニュースなど、偽・誤情報があふれているネット空間において、確かな情報源としてのNHKの信頼は厚いと思います。そうした信頼されているメディアとしてのNHKが、今回の法改正を契機にインターネット空間の健全化にどう貢献していくのかという視点が重要ではないかと考えます。
放送法第四条一項には番組編集準則、そして第八十一条一項には、第四条第一項に定めるところによるほか、次の各号に定めるところによらなければならないとして、番組編集準則の特例が課されております。
そこで、まず総務大臣にお伺いいたしますけれども、総務省が取りまとめたデジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会におきましては、放送法第九条に基づく訂正・取消し放送制度の積極的活用を提言されておられます。NHKのインターネット活用業務の必須業務化に伴い、フェイクニュースがインターネット空間にばっこすることがないよう、いかにして番組の質の向上を図るのか、今回の法改正において、放送法第四条一項番組編集準則や八十一条一項番組編集準則の特例などを駆使してNHKがインターネット空間の健全化にどう貢献していくべきと認識しているのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(松本剛明君) 委員からも御指摘があったところかと思いますけれども、今、国民・視聴者の多くの皆様は主な情報入手手段としてインターネットを利用しつつある状況で、視聴スタイルが大きく変わってきております。一方で、情報空間が拡大して、偽・誤情報の流通、拡散が深刻化するといった社会環境も大きく変わってきておりまして、情報空間の健全性の確保は民主主義の基盤でもあり、大変重要な課題である、御指摘のとおりかというふうに思います。
その中で、放送法に基づいて質の担保された放送番組が国民・視聴者に提供される環境を整えることは大変大切であると考えておりまして、本法案におきましては、NHKに対し原則として全ての放送番組についてインターネット配信を義務付けることとしておりますが、これによりまして、御指摘の第四条第一項、第八十一条第一項に基づいて、NHK自らが編集した質の担保された放送番組がテレビ等を設置しない方々に対してもインターネットを経由して継続的、安定的に提供されることとなります。
NHKさんにおかれましても、正確で信頼できる情報やコンテンツ、多角的な視点を提供し、インターネットを含めた情報空間の健全性を確保するということは大変大切なことで、健全な民主主義の発達に資するという公共放送の役割は一層高まっているという御趣旨の答弁をされておると承知をしており、しっかり公共放送としての役割を果たしていただきたいと考えているところでございます。
なお、総務省としても、情報空間の健全性の確保について、デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会を立ち上げて検討をしております。この夏頃の取りまとめに向けて、偽・誤情報の流通、拡散の問題への対処と表現の自由の確保、これら両方をしっかりと見つつ、制度面を含めた総合的な対策の検討をいたしてまいりたいと考えております。
○西田実仁君 一つ飛ばしまして、ワーキンググループの提言には、今回のNHKのネット配信必須業務化のもう一つの根拠として番組視聴者の確保が挙げられています。ただし、NHKでは、二〇二〇年四月からNHKプラスを通して地上波テレビ放送のインターネット常時同時・見逃し配信を行ってきたことから、新たに加わるのはテレビを持たない利用者に対してNHKの番組を視聴することができるようにすることであり、かつ、そうした視聴者から受信料相当額の支払義務を課すことにあります。
そこで、NHKにお聞きしますけれども、テレビは持っていないがインターネットを利用しNHKが受信できるアプリを入れて受信契約を結ぶ人はどれくらいいると想定しておられるのか。NHKによるネット配信社会実証ではテレビを所有していない者がどれくらいいるかを把握していると思われるため、答弁いただきたいと思います。
また、今回の法改正に先立ちまして、新たに受信料を支払う視聴者はネット配信にどのような番組を望むといった意向調査を行っているのかも確認したいと思います。
○参考人(稲葉延雄君) 放送法の改正案は、放送と同じようにインターネット経由でもNHKのコンテンツをお届けすることをNHKに義務付けるものだと。同時に、インターネットのみでサービスの利用を開始した人には受信契約の対象として相応の費用負担をしていただくと、そういう内容だと承知してございます。
テレビを所有していない世帯がスマートフォンやパソコン等を使って配信を受信するための一定の行為をどの程度行うかなかなか分からないという面がございます。そのため、契約数やあるいは視聴者数にどのような影響が出るか算定することはなかなか難しい問題だと思っております。
放送法が改正された際には、放送と同様にインターネットを通じても公共放送としての使命を果たすことで、公共的価値に共感して、納得して受信料をお支払いいただける方を増やしてまいりたいというふうに思ってございます。
そこで、お尋ねのインターネットに特化した意向調査は行っているのかと、こういうことでございますが、こうした特化した意向調査としては行ってございませんけれども、NHKのサービスあるいは経営に対しての期待度、あるいはそれに対する実現度に関する調査などは定期的に実施してございまして、これらの調査も適宜分析しながら、今後も視聴者・国民の皆様の信頼と御期待に沿える放送サービスを提供してまいりたいというふうに考えております。
○西田実仁君 NHKの目的の一つに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務が定められております。この度必須となりますインターネット配信に関しましては、どうこの進歩発達に必要な業務を切り開こうとしているのか、お聞きしたいと思います。
○参考人(稲葉延雄君) 必須業務化は、視聴者・国民の皆様に放送経由でもインターネット経由でも同じ情報内容や価値、受益をもたらすこと、これが求められるというふうに考えてございます。インターネットにおける進歩発達に必要な業務についても、放送と同様に取り組んでいくということが原則だと思っております。
デジタル化の加速に伴いまして、インターネット上では不確かな情報があふれるといった、言わば技術革新の負の側面が課題になってございます。そうした中で、情報空間の健全性の確保に向けて取り組むことが公共放送NHKにとって重要な役割だというふうに考えてございます。
具体的には、インターネットにおけるコンテンツの透明性や信頼性を高めるために、NHK放送技術研究所がコンテンツの出所あるいは認証に関する標準化団体に加入する、その上で技術開発を進めているということがございますほか、安全なインターネット環境を提供するために貢献するため、新聞社あるいは民放あるいは公共、広告関連企業などでつくる技術組合にも加入してございます。
こうした取組を通じて、放送と同じようにインターネットの進歩発展にも貢献し、情報空間の参照点となる信頼できる基本的な情報を提供し、健全な民主主義の発展に貢献してまいりたいというふうに考えております。
○西田実仁君 番組の視聴者の確保を今回のネット配信必須化の根拠とするのであるならば、インターネット活用業務を例えば地上波テレビ放送から切り離して、テレビ非利用者を対象とした、地上波のテレビ放送では放送されない独自のインターネット番組を配信するとか、あるいはテレビ非利用者に多い若年層向けに特化した独自のインターネット番組を配信するとかも考えられるのではないかと思いますが、そうした検討は行っているのでしょうか、あるいは今後行う予定はあるのでしょうか。
○参考人(小池英夫君) お答えいたします。
放送法の改正案は、その提出理由として、NHKの放送番組が社会生活に必要不可欠な情報としてあまねく提供すべきものであり、テレビを持たない人にも継続的かつ安定的に提供するためとしております。インターネットでも放送と同じ情報内容や同じ価値を提供することが責務だと理解しておりまして、NHKとしても放送と異なる価値の提供を意図するコンテンツの提供は考えておりません。
一方で、放送と同じ情報内容や同じ価値をお届けするため、インターネットの特性に合わせた動画や記事を提供することも求められております。具体的な内容は検討中でありますが、継続的、安定的にお届けしていくことで、公共放送の使命、役割を果たしてまいりたいと考えております。
○西田実仁君 これ突き詰めていきますと、新サービスの話ということになって、また民業圧迫という批判も出かねないということなのかもしれませんが、新たなサービスが加わることなく、スマホでNHKの番組が視聴できるというだけでどれだけ新たな視聴者が確保できるのか、やや疑問であります。
NHKにおきましては、こうした新たな取組も特段なく、コンテンツ制作能力がどこまで磨かれていくのか不透明、これでは世界のコンテンツ市場において海外プラットフォーマーと太刀打ちできる日本の放送事業者は育たないのではないかと懸念しますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松本剛明君) NHKさんにおかれては、令和六年度予算において、情報空間が拡大する中でメディアを取り巻く環境の変化に対応するため、適切な資源管理とテクノロジーの力でインターネット配信にも提供されるコンテンツの質と量を確保するといった考え方を示しておられます。このような取組を通じてコンテンツ制作能力を向上させていただきたいと期待をするところでございます。
これまでも、NHKや民放においては、海外からの需要もある優れたコンテンツが多くあると認識をしております。海外のプラットフォーマーに太刀打ちするためには、海外への流通をも支えるプラットフォームを構築していくことが重要と考えております。
このため、我が国の優れた放送コンテンツの海外への流通を支えるプラットフォームとして、NHKを始めとする放送事業者にはコンテンツ産業の競争力強化に更に貢献いただくことを期待をいたしております。
総務省としても、放送、インターネット配信のプラットフォームの充実強化を図るとともに、コンテンツの4K化などの制作力の強化に取り組んでまいりたいと思っております。
○西田実仁君 NHKのインターネット活用業務の財源は、年間二百億に限るのでしょうか。この基準は、任意業務としてのインターネット活用業務を前提としております。今回、必須業務化に伴いまして当該基準を変更するおつもりなのかどうか、あるいは検討するのか、お聞きしたいと思います。
○参考人(小池英夫君) お答えいたします。
NHK全体の予算規模について申し上げますと、中期経営計画で掲げていますように、受信料一割値下げを堅持することに伴って事業収入は減少を見込み、今後コスト削減を行っていく必要があります。その中で、インターネット上においても公共放送の使命や役割をしっかりと果たしていくため、必須業務になった場合には、事業の効率化や生産性の向上を図りながら必要な予算を確保していきたいと考えております。
委員御指摘のように、現行制度ではインターネット活用業務が任意業務であることから、放送などの必須業務の実施に支障を来すことのないように上限を定めることが求められていると理解しております。必須業務になった場合には、放送と同様に予算、事業計画において予算を編成して、国会において御審議いただくことになります。サービスの設計を開始した段階であり、具体的な予算規模は今後精査していきますが、いずれにしても、いたずらに拡大することは想定しておりません。
○西田実仁君 NHKには国家からの表現の自由が保障されております。電波監理審議会や総務大臣からの外部統制ということではなく、本来、内部統制を重視すべきであると考えます。しかし、その内部統制たる経営委員会におきましては、昨年五月にBS配信の予算に関する事案を認め、その独立性、専門性に疑問符が付けられました。
今後、その専門性などをどう担保していくのか、その実効性を担保するため経営委員会と執行部との役割分担をどう考えるのか、お聞きしたいと思います。
○委員長(新妻秀規君) どなたが答弁されますか。
○参考人(古賀信行君) 今委員がおっしゃったNHKの自主自律を堅持していく、極めて大事なことだというふうに思っております。そのためにも、経営委員会には大変重い責任があるというふうに認識いたしております。
衛星放送番組の配信対応問題を受けまして、NHKのガバナンスを強化する必要から、執行部に対して適切な予算の執行を求めるとともに、既に監査委員会によります稟議書の査閲等に取り組んでおります。
経営委員会は、経営の重要事項を議決し、役員の職務の執行を監督する機関でありますから、再発防止策に経営委員会、監査委員会に対する執行部からの情報提供の拡充が掲げられておりますとおり、経営委員会へ迅速な報告を求めるなど、執行部との間の意思疎通を円滑になるように図り、そのことによりましてNHK全体として再発防止策がきちんと実行される、こういう体制になることが望まれていると思います。そのための経営責任を果たしてまいりたいと、このように考えております。
○参考人(稲葉延雄君) 経営委員長が今御答弁したとおり、経営の重要事項の議決と職務の監督という経営委員会の役割と、公共放送の自主自律を守り、公平公正な報道、正確で信頼できる情報を提供するという執行部の役割とで、両者の役割が明確に分担されているというふうに認識しております。
経営委員会と執行部がそれぞれの役割を十分果たすことが重要でございまして、そのためには、経営委員会に適切な情報を提供するなど、しっかりと連携しながら、会長としてリーダーシップを発揮し、今後ともガバナンス強化にしっかりと取り組む決意でございます。
○西田実仁君 総務省は、令和五年十二月から開催している中継局共同利用推進全国協議会におきまして、地上波中継局の共同利用等について検討しておられます。NHKでは、民放との二元体制維持のために三年で六百億を費やす経営計画も立てております。
NHKの受信料は、言うまでもなく、公共放送の維持のために国民が負担すべき特殊な負担金です。しかし、この協議会発足式では、松本大臣、稲葉会長、遠藤民放連会長がそろって、放送ネットワークの効率化という表現により、放送設備を共同利用することで固定費削減を目指すことを意味しております。特殊な負担金が放送業界の維持発展のために使われていくということであれば、受信料の位置付けが変容していくのではないかという疑問も持ちます。
そこで、最後に総務省にお聞きしますけれども、中継局の共同利用実現に向けたスケジュール、取組はどのようになっているのか、事実上、NHKが民間放送事業者を支援することは受信料の根拠の変容と言えなくもないが、利用者への説明をどのように行っていくのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(小笠原陽一君) まず、スケジュールについてのお尋ねですが、それについて申し上げますと、昨年の法改正で可能となりました中継局の共同利用を早期に実現するため、昨年末、全国協議会を立ち上げ、総務省も交え、NHKと民放で協議を開始しておりまして、現在、共同利用会社の設置に向け、検討を進めております。さらには、ほぼ全ての地域において地域協議会を立ち上げており、対象となる中継局の選定等、具体的な検討が開始されることとなっております。
受信料に関するお尋ねですが、これまで総務省の有識者会議での議論において、NHKの役割として、放送コンテンツのプラットフォームとして放送番組の流通を支え、二元体制を基本とする我が国放送全体の発展に貢献する役割があるというふうに取りまとめいただいており、NHKにはプラットフォームとしての役割を果たしていただく必要があり、中継局の共同利用もその役割の一つというふうに考えております。
こうしたプラットフォームとしての役割を含め、公共放送であるNHKが、放送法に定められた業務を行い、組織を維持運営するために必要な財源を受信料によって賄うことは、受信料制度の趣旨にも沿うものと考えております。
なお、NHKの業務は、視聴者からのこうした受信料によって運営されているものでありますことから、受信料の使途については、NHKにおかれまして、視聴者に対し丁寧な説明に努めていただきたいというふうに考えているところでございます。
○西田実仁君 終わります。