189-参-我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会-004号 2015年07月29日
○西田実仁君 おはようございます。公明党の西田実仁でございます。
昨日から当委員会が審議をスタートいたしました。用意しました質問をする前に、冒頭、まず二点、昨日の委員会を受けまして総理に見解を伺いたいと思います。
昨日、存立危機事態への対応ということが戦争への参加なのかという質疑が行われたと承知しております。この存立危機事態というのは、我が国がまだ直接攻撃を受けていない、しかし我が国と密接な関係にある他国に対する攻撃があって、それによって我が国に対して我が国が直接攻撃を受けたと同様の重大かつ深刻な被害が明らかである、こういう事態を存立危機事態というわけであります。この存立危機事態への対応が戦争への参加なのかどうかという質疑だったというふうに承知をしております。
戦争という概念は、昨日もございましたけれども、これは国際法上違法でございます。そして、この戦争という言葉には、侵略戦争とかあるいは違法な武力の行使といったニュアンスがあるのではないかというふうに思うわけであります。我が国が直接攻撃を受けて対応する個別的自衛権の措置の際、戦争に参加するとは言わないわけであります。
そこで、今回の平和安全法制における、憲法九条の下でさえ許される自衛の措置というものが、我が国に対する攻撃があるときはもちろんでありますけれども、まだ我が国に対する攻撃がなくても、密接な関係する他国に対する攻撃がきっかけとなって、我が国に甚大な影響を及ぼす明らかな客観的な危険がある、こういうときに対応するというものでございまして、これを戦争への参加というふうに呼ぶには、ちょっとというか、かなり違和感がございます。
そこで、こういう存立危機事態への対応というのは、戦争への参加ではなくて、我が国のあくまでも自衛のための措置でありますし、また我が国を防衛するための実力の行使であると、こういうふうに言わなければならないのではないかと思いますが、総理の見解をお伺いいたします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 西田委員御指摘のとおり、国連憲章の下では戦争は違法化されています。国連憲章の下で違法でない武力の行使は、個別的自衛権によるもの、集団的自衛権によるもの、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置の三つのみであります。これらは、国連憲章の下で違法とされている戦争とは明確に区別されています。
我が国が新三要件が満たされた場合に行う武力の行使は、あくまでも我が国の自衛のための措置であり、国際法上も正当な行為であります。にもかかわらず、戦争をする、戦争に参加するという表現を用いることは、あたかも違法な行為を我が国が率先して行っていると誤解されかねない、極めて不適切な表現であると思います。我が国の自衛のための措置、我が国の防衛のための実力の行使という表現を用いることが適切であると考えます。
○西田実仁君 もう一つお伺いしたいと思います。
同じく存立危機事態への対応ということが、我が国への攻撃はまだないのにそれに対して対応するというのは先制攻撃ではないか、こういう趣旨の質疑も昨日あったかと記憶をしております。
そもそも、先制攻撃というのは、相手方が武力を行使していないにもかかわらず先に武力を行使すること、これが先制攻撃です。しかし、今回の存立危機事態における対応というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する攻撃があって、これが大前提なんですね、あって、それをきっかけとして、我が国に対して我が国が直接攻撃を受けたのと同様の重大かつ甚大な被害が客観的に明らかな、こういう場合に対応するものでありますので、こうした先制攻撃というような不法な、そもそも武力の行使をしている国に対して自衛の措置をとることは先制攻撃と呼ぶことは適切ではないと、このように思いますけれども、総理の見解をお伺いします。
○国務大臣(岸田文雄君) 国連憲章におきまして自衛権が認められているのは、武力攻撃が発生した場合に限られています。したがって、いわゆる先制攻撃のように、何ら武力攻撃が発生していないにもかかわらず我が国が自衛権を援用して武力を行使すること、これは国際法上合法とは言えません。
一方、集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化される権利とされています。ここにおいては、他国に対する武力攻撃の発生、これが大前提であります。この集団的自衛権は、国連憲章上、加盟国に認められた固有の権利です。個別的自衛権、さらには国連憲章第七章における集団的安全保障と併せて、武力の行使の違法性を阻却するものとして認められております。ですから、国際法上合法と言えない先制攻撃とこの集団的自衛権、これは全く異なるものであります。
そして、昨日の議論で、この二つ、先制攻撃と見えるのではないか等、これ混同される可能性がある、こういった指摘がありましたが、これは、集団的自衛権を行使しますと、その後、国連の安保理に対しましてしっかりと報告をしなければなりません。これは内容をしっかりと説明する義務が生じるわけです。
また、今回、限定された集団的自衛権の行使を新三要件に基づいて行使するということにつきましても、国内法においてしっかりと対処基本方針を策定して国会に承認を求める、こういった手続もあります。これは混同されることはないと考えております。
○西田実仁君 それでは、質問に、用意されたものから入りたいと思います。
なぜ今平和安全法制なのか、国民の皆様方を守るという視点から具体的に議論を深めなければならないというふうに思います。今回の平和安全法制が違憲なのか合憲なのかということにつきましても、まさにこの日本を取り巻く安全保障環境の変化をどう見るかに懸かっているわけであります。
なぜならば、今回の平和安全法制の中で、従来から政府が取ってきた基本的な論理、考え方は変えておりません。しかし、その当てはめを変える、それは日本を取り巻く安全保障環境がどう変わったのかという認識によって変わってくるわけでありますので、ここが大変重要になってくるということであります。
また、安全保障環境、これに対する認識を共有できるのであれば、この参議院での議論というものもより充実されていくんではないか。そうした環境変化にどう対応するのか、政府が提出した法案で十分なのか、それとも何か別の対案があり得るのか、はたまた何もしないでよいのか、こうした議論こそ参議院にふさわしい生産的な議論ではないかというふうに思います。
そこで、最近、様々新聞の投書等も拝見をいたしますと、こんな投書がございました。この法案、平和安全法制の推進派というのは、海外進出を進める中国や核、ミサイルを開発する北朝鮮の脅威を挙げると。しかし、冷戦時代にもソ連の脅威が強調されていた。爆撃機や軍艦が日本周辺に頻繁に出没し、核、ミサイルが日本を射程に入れているとも言われたと。そうしたソ連の脅威が言われていた冷戦期とはどう今の日本を取り巻く安全保障環境が変化しているのか、どう厳しくなっているのか疑問だと、こういう否定的な投書でございましたが、この当時と比べて、じゃ、今どう違うのか。私の考えでは、一番大きな変化は、一つは軍事技術の高度化であろうと、そしてもう一つはアジアにおけるパワーバランスの変化である、このように認識をしておるわけであります。
こうした日本を取り巻く安全保障環境の議論の大前提は、大事なこととして申し上げますと、事実としての安全保障環境の厳しさを認識するということでありまして、何か特定の国の脅威をあおることで法制を整備するべきことではないということであります。抑止力を高める法制度の意義は当然強調されてしかるべきでありますけれども、抑止力の向上が決して軍拡競争のようなものにつながってはならない、安全保障環境の厳しさに対応する抑止力の向上が外交で諸課題を解決する推進力になるということが大切であるということをまず強調しておきたいと思います。
その上で、客観的な事実として、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさについて政府の認識を順次問うていきたいと思います。
パネルをお願いいたします。(資料提示)
これは、一昨年、政府が閣議決定をいたしました国家安全保障戦略の抜粋であります。「我が国を取り巻く安全保障環境と国家安全保障上の課題」ということについて三つ挙げられております。特に、一番目は「アジア太平洋地域の戦略環境の特性」であり、二番目には「北朝鮮の軍事力の増強と挑発行為」、そして三番目には「中国の急速な台頭と様々な領域への積極的進出」、この三つが掲げられております。
まず、この国家安全保障戦略で言うところの「北朝鮮の軍事力の増強と挑発行為」ということに対しまして、日本を含む地域の安全保障環境にとって具体的にどのような課題と認識をされているのか、また、それに対する対処は日本単独で可能なのか、それとも日米等の共同対処が必要なのか、できるだけ分かりやすく総理にお答えいただければと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) まず前提として、この国家安全保障戦略を策定していく上においても、ここに書かれておりますように、日本を取り巻くアジア太平洋地域の戦略的な安全保障上の環境が大きく変わっている。その中においては、パワーバランスの変化、軍事技術の向上、委員が御指摘された大きな変化があるわけであります。
北朝鮮については、日本の大半を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備をし、発射されればおよそ千キロメートルを僅か十分で到達するという状況にあります。また、二〇〇六年以降、三回の核実験を繰り返し、ミサイルに搭載できる核兵器の開発を進めているなど、地域の安全保障に与える脅威が深刻化をしています。このような北朝鮮のミサイルの脅威に対しましては日米で構築しているミサイル防衛体制が必要不可欠であり、日米の共同対処が死活的に重要であると考えています。
また、中国につきましては、公表国防費が一九八九年以降ほぼ毎年二桁で伸びておりまして、過去二十七年間で四十一倍でありまして、今年度においては中国の国防費は日本の防衛予算の三・三倍に達しており、軍事力を広範かつ急速に強化をしています。
東シナ海においては、尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入が繰り返され、境界未画定海域における一方的な資源開発が行われています。南シナ海においては、中国が活動を活発化をし、大規模かつ急速な埋立てを一方的に強行している。このような既存の国際秩序とは相入れない独自の主張に基づき力による現状変更の試みを行っている。こうした中国の姿勢は、その安全保障政策に関する透明性の不足と相まって、我が国を含む国際社会の懸念事項となっています。
中国に対しましては、戦略的互恵関係の考え方に立って関係を改善をしていくとともに、中国による力による現状変更の試みに対しては、我が国としては、事態をエスカレートさせることなく、引き続き冷静かつ毅然として対応していく考えであります。
いずれにいたしましても、こうした安全保障環境の変化に対して、まずは大切なことは、外交を通じて平和を構築していくことが重要であることは言うまでもありません。そして同時に、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中においては、日米安保体制を更に強化をするとともに、地域の内外のパートナー国との協力関係を深めることによって紛争や戦争を未然に防ぐ力を整えていくことが重要であります。それがいわゆる抑止力でありますが、抑止力を一層強化をし、紛争を未然に防いでいかなければならないと、こう考えているところでございます。
○西田実仁君 今お話がございました例えば北朝鮮の弾道ミサイル、大変に軍事技術自体が高度化している、飛躍的に向上しているということでありますので、それへの対処は日米の共同対処によらなければならないという御指摘でありました。
そうでありますので、例えば、日本海の公海上で北朝鮮のミサイルを警戒監視しているアメリカのイージス艦に第一撃があったと、そのときに、それによって我が国の存立また国民の権利が根底から覆されるような客観的で明らかな危険があるようなときには、やはりそれを対処しなきゃならないということで、今回、法整備がなされているんだろうというふうに思います。
中国の御指摘もございました。その中で、特に力による現状変更の試みという御指摘もございました。こうした試みに対しまして、では、日本はどう対応しているのか、まさに日本だけで対応することができるのか、それとも日米それぞれが役割を決めて一体運用していくことが不可欠なのか、こうした点についてお聞きをしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど、中国の軍拡の状況、東シナ海、南シナ海における行動についてお話をさせていただきました。まずは、国際社会において、こうした力による現状変更は認められないというこの認識を共有することが極めて大切であろうと思います。
ですから、問題が生じたときには国際法にのっとって主張すべきであるということ、こうした武力や力によって威嚇をしてはならない、そして問題があれば平和的に解決をするという三原則について、昨年もシャングリラ会合で訴え、多くの国々の賛同を得たわけでございます。こうした国際社会の理解が言わば中国の政策的な変更につながっていくことを期待をしたいと、こう思っているところでございますが、そうした意味におきましても、国際社会との連携を強めていく、そしてその連携の基軸は日米同盟であろうと思います。
同時に、中国に対しても直接働きかけを行っていく必要もあるわけでありますし、関係も更に改善させていかなければなりません。習近平主席との二度にわたる会談を通じまして、戦略的互恵関係の考え方について日中関係を改善していくことで一致をしています。日本と中国は地域の平和と繁栄に大きな責任を共有しており、今後も様々なレベルで対話を積み重ねていきながら、安定的な友好関係を発展させ、国際社会のそれは期待でもありますから、そうした期待に応えていきたいと考えているところでございます。
○西田実仁君 こうした、今総理から、現状の認識、またそれへの対処のお話をいただいたわけでありますが、そこで防衛大臣にお聞きしたいと思います。
今回のこの平和安全法制全体の法整備によりまして、特に日本とアメリカとの一体運用がどう強化されていくのか、その法制との関連を具体的に分かりやすくお答えいただければと思います。
○国務大臣(中谷元君) 日米同盟は、我が国の安全保障の基軸でございます。我が国に駐留する米軍のプレゼンス、これは地域における不測の事態の発生に対する抑止力として機能いたしておりまして、西田委員も御指摘のとおり、我が国を取り巻く安全保障環境、これは一層厳しさを増しておりまして、こうした中で我が国の平和と安全を確保していくためには、平時からグレーゾーン、また集団的自衛権に関するものも含めて、あらゆる事態に切れ目のない対応が日米が一層協力をして実施できるようにしておくということが必要でございます。
今回、平和安全法制、これを整備をすることをお願いしておりますけれども、これが実現しましたら、例えば平素から米軍の艦艇等の防護、これを行うことが可能となりまして、自衛隊と米軍の連携した警戒態勢等の強化につながります。また、重要影響事態、この事態におきまして、米軍に対してより充実した支援を行うことが可能になります。また、存立危機事態、先ほど日米のミサイル防衛のお話をいただきましたけれども、自衛隊と米軍の一層緊密な協力関係、これが可能となりまして、さらに、これらの新たな活動を効果的に遂行するために、平素から幅広い種類の訓練そして演習、これを実施できるようになります。
これらによりまして、様々な危機に対応する日米の共同対処能力、これは飛躍的に向上いたしまして、もし日本が危機にさらされたときには、日米同盟、これは完全に機能をするようになります。また、そのことを世界に発信をすることによって、紛争を未然に防止をする力、すなわち抑止力、これは更に高まり、日本が攻撃を受ける可能性、これは一層なくなっていくものだと考えております。
○西田実仁君 ただいまは、抑止力の強化、向上ということがこの平和安全法制によって成し遂げられるというお話をいただきました。
他方、先ほど総理も少しお話をされましたけれども、中国は、例えば海洋における不測の事態を回避、防止するための取組にも大変強い関心を示しているわけであります。一昨年九月には、日中防衛当局による海空連絡メカニズムの早期運用開始に向けた協議の再開で原則一致をいたしました。昨年十一月の日中首脳会談の成果を踏まえまして、今年六月には第五回目の共同作業グループ協議も実施をされております。
抑止力を高めるということはもちろん大事ですが、当然に多国間の対話、また二国間の対話も併せて行うべきでありまして、そこで、まず日中間の海空連絡メカニズムにつきまして防衛大臣にお聞きしたいと思います。
この海空連絡メカニズムは、具体的に日中間でどのような意思の疎通が図られるようになるのか、それは日中間の課題解決にどんなことが期待されるのか、その早期運用開始の見通し等も併せてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 日中防衛当局間の海空連絡メカニズム、これは現在、まず定期会合の開催、ホットラインの設置、艦艇、航空機間の直接通信、これで構成するということで日中間で合意をいたしております。
このメカニズムというのは、まさに不測の衝突を回避をすることでございまして、海空域における不測の事態が軍事衝突あるいは政治問題、これに発展をすることを防止をするということを目的とする日中防衛当局間の枠組みでありまして、このメカニズムの早期運用の開始、これは日中の相互信頼、そして相互理解、この増進及び防衛協力強化に資するものと考えております。
この具体的内容につきましては、鋭意日中間で調整をしているところでございまして、現時点において署名又は運用の開始時期等の詳細について固まっているわけではございませんが、現在、協議を実施をいたしておりまして、このメカニズムの早期運用の開始に向けて、引き続き努力を重ねているところでございます。
○西田実仁君 一昨年、政権交代してすぐでありました一月の二十五日、我が党の山口代表は訪中をいたしまして、総理から親書をいただき、習近平氏と約七十分間意見交換をいたしました。その際、この海空連絡メカニズムの早期開始を山口代表から強く促させていただきまして、先方からも、様々な課題に対する立場とか意見というものは違う、しかしこの立場や意見が違うことが問題なのではなくて、それを対話とそして協議によってコントロールしていくことが大事であると、こういう趣旨のお話がありまして、あくまでも話合いによって問題を解決をしていくということが強調されたわけであります。
昨年七月一日の閣議決定におきましても、戦後日本が歩んできた平和国家としての歩み、それは、やはり外交とそして抑止力ということが車の両輪のようにしてそれを成し遂げてきて、それを更に強固にするものが今回の平和安全法制であると、こういうお話も閣議決定されたところであります。
そこで、総理にお伺いいたしますが、中国との信頼醸成のためにどのように今後動いていかれるおつもりなのか、首脳会談についてどう考え、見通しを持っておられるのか、これについてお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日中関係というのはまさに最も大切な二国間関係の一つであろうと、重要な二国間関係の一つであると、こう考えておりますが、例えば東シナ海につきましては、この海を平和、協力、友好の海とするため協力していくことで一致をしております。東シナ海の資源開発に関する日中間の協力について一致をした二〇〇八年六月合意を実施に移すことは両国共通の利益であり責任であろうと、こう考えております。
そして、中国との関係におきましても、様々なレベルで対話を積み重ねながら安定的な友好関係を発展させていきたいと、こう考えておりますが、次の日中首脳会談につきましては現時点ではまだ何も決まっていないわけでございますが、私の対話のドアはいつもオープンであり、国際会議など様々な機会を捉えて実現をしていきたいと考えています。
また、私から習近平国家主席に対しまして、昨年十一月の日中首脳会談の際に、ガス田開発を念頭に東シナ海での協力の必要性に言及をいたしました。さらに、本年四月の日中首脳会談においては、東シナ海で緊張状態が継続していることを指摘をしつつ、二〇〇八年六月合意の実施に向けた協議を加速させたい旨を働きかけを行っております。
先ほど既に指摘をされました海空の連絡メカニズムにつきましても、これは第一次安倍政権の際に、首脳会談の際、先方に申入れを行ったところでございますが、残念ながら実質的には動かなかったのでございますが、先般、御紹介されたように、山口代表が訪中をされ、そしてその後、私が二度にわたって首脳会談を行ったことによって、やっとこれが動き始めているわけでございます。
ガス田の問題もそうでありますが、対話を通じて問題を解決をしていくべく努力をしていきたい、我が国としてもこのような働きかけを継続していくとともに、戦略的互恵関係の原点に立ち戻る、常に立ち戻りながら両国関係を両国で発展させていくように努力をしていきたいと思います。
○西田実仁君 今御指摘ありました二〇〇八年の日中共同声明、この協議を更に加速をしていくと、こういう話もいただきました。
次に、平和安全法制によって抑止力がどう高まるのかという先ほど来からお話がございますが、もう少し踏み込んでお聞きしたいと思います。
今回の法整備により、これまでできなかった対応でできるようになるものにはどういうものがあるのか、今回の法整備でどう抑止力が高まるのか、言い換えれば、どう紛争を未然に防ぐことができるようになるのかというところが一番大事なところであります。
そういう意味では、有事にこういうふうに対応ができるということは、もちろん万が一の備えでありますし、国民の生命、自由、幸福追求権を守るという意味では最も大事でありますけれども、またそれ以上に、そうした有事にならないように、平時から、平素からどのような対応ができるのか、紛争を未然に防ぐことができるのか、ここが最も大事なところであろうかというふうに思います。
そこで、自衛隊が米軍等の部隊と連携して活動し、有事には至らないように、紛争を未然に防げるように、連携活動をしている際にお互いの武器を守り合う、いわゆる武器等の防護、これにつきまして、その基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
合衆国軍隊等の部隊と自衛隊とがお互いの武器等を守り合うことができるのは双方どのような連携活動を行っているときなのか、お聞きしたいと思います。
○大臣政務官(石川博崇君) 私からお答え申し上げます。
御指摘の今般新設させていただきます武器等防護の規定、自衛隊法第九十五条の二でございますが、我が国の防衛に資する活動というのはどういう活動なのか、どこまで含まれるのか、公明党を始め、与党協議の場でも精力的に御議論いただいたところでございます。この我が国の防衛に資する活動とは、例えば平素から行われるものといたしまして、弾道ミサイルの警戒を含む我が国の防衛に資する情報収集・警戒監視活動や、自衛隊と米軍等が各種事態、状況の下で連携して行う活動を想定した共同訓練が考えられます。また、重要影響事態に際しまして行われます輸送、補給等の活動が考えられるところでございます。
また、本条に基づく警護の対象となる外国軍隊の部隊というものはどういうものなのか、これについても御議論いただいたところでございますが、この外国軍隊の部隊とは、自衛隊と連携してこのような我が国の防衛に資する活動に従事する部隊であり、また自国の部隊等の警護を我が国の自衛隊に依頼するという事柄の性質から、情報分野を始め防衛分野において我が国と緊密な協力関係にある国におのずから限られると考えております。
以上でございます。
○西田実仁君 今お話がありました、今回の自衛隊法九十五条を改正して九十五の二にこの武器等防護の拡大ということが盛り込まれたわけでありますけれども、今お話しのように、防衛大臣が判断をするというふうになっているのはなぜか、また内閣がどう関与していくのか、これにつきましてお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(石川博崇君) お答え申し上げます。
今般、この武器等防護の警護を行うか否かを防衛大臣が判断するものとさせていただいております。これは、警護の要請のあった米軍等の部隊が自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動を行う米軍等の部隊に該当するか否か、また、自衛隊が警護を行うことが必要か否かの判断について、当該活動の目的、内容のほか、周囲の情勢等の様々な関連情報を踏まえて判断を行うことのできる立場にある者により行われる必要があることから、自衛隊の隊務を統括する防衛大臣が行うこととさせていただいております。
ただし、警護を行うか否かの判断につきましては、より慎重な判断を確保する観点から、警護の要請があった場合における手続等に係る運用上の枠組みや重要影響事態における運用等については、国家安全保障会議における審議も含め、内閣の関与を確保した形で進めていく考えでございます。
○西田実仁君 今お話がございましたように、抑止力を高めていく、そのために日米の共同対処能力を向上させる、それは平時からいろんな手だてをしてできるようにしよう、していこうというのが今回の平和安全法制でありますが、だからといって、いつでもどこでも米軍等と自衛隊がお互いの武器等を守り合うという、そういう野方図なものでは一切ないということも今御指摘がありました。情報収集とか共同訓練とか、あるいは警戒監視とか、こういうものに限られるということでありますし、防衛大臣のそれは判断をする、そこには内閣がきちんと関与をしていくと、こういうことまで二重三重に掛けているというふうに理解をしてございます。
また、こうした平時から警戒監視とかあるいは情報収集活動の際にお互いの武器等を守り合うことができるというふうになれば、双方の連携活動がより円滑に進められるということは間違いございませんし、未然に紛争を防ぐ、そうした抑止力も高まる効果が期待できるわけであります。また、今お話がありましたように、共同訓練も、これまで参加できなかったことも参加できるようになる。そういうことになれば、様々なシナリオを想定した演習に加わることができますし、それだけ想定外の事態への対応力も強まり、戦争にはならない、紛争を未然に防ぐことにもつながっていくのではないかというふうに思っているわけであります。
そこで、この平和安全法制、今細かいお話も含めてしていただきましたけれども、総理に全体としてお聞きしたいと思いますが、今回のこの平和安全法制がいかに抑止力を向上させるのか。国民の皆様方には二度と戦争は御免だという大変強い思いというものがあります。それは、当然それをしっかりと受け止めて、そして今回の平和安全法制によって、全体として、平時から有事に至るまでの切れ目のない法整備によっていかに抑止力が向上されるのか、未然に紛争を防ぐことができるのか、分かりやすく国民の皆様に総理からお訴えをいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 七十年前、我が国は二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないとの不戦の誓いを立て、これを七十年間、ひたすら平和国家としての歩みを進めてきたところであります。同時に、地域の平和、安定、繁栄のために貢献をしていくことはまさに日本の平和にもつながっていくという考え方から、アジアの地域、特にそうした国々に対する支援も行いながら、またPKO活動にも参加をしたところでございます。
平和国家としての歩みは今後も決して変わることはございません。また、外交を通じて平和を守っていく、今後も地球儀を俯瞰する視点から積極的な平和外交を展開してまいります。
その上において、万が一への備えも怠ってはならないわけでありまして、今回の平和安全法制が実現すれば、国民の命と平和な暮らしを守るために、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまで、あらゆる事態に対して切れ目のない対処が可能となるわけでございますし、先ほど来防衛大臣も答弁しておりますように、我が国の安全保障政策の基軸である日米同盟のきずなは更に強化されていくことによって、戦争を未然に防ぐ力、抑止力はより強化されていくことになるわけでございますし、また、日本が更に国際社会と連携して地域や世界の平和維持、発展のために協力していくことによってより世界は平和になっていく、このための平和安全法制であるということでございます。
○西田実仁君 今、総理からその思いを伝えていただきました。
そこで、今度は、平和安全法制全体に対しましての我が党側も与党協議を通じまして訴えてきたことを中心にお話をさせていただきたいと思います。
パネル三をお願いしたいと思います。
今回、公明党は、この平和安全法制全体につきまして、政府の恣意的な運用を防ぐ意味から言わば三重の歯止めというものを掛けさせていただいております。その一つはここにありますように憲法の適合性という憲法上の歯止めでございますし、また法制度、法制上の歯止め、さらにはその政策をやるかどうかという政策判断の歯止め、この三重の歯止めでございます。
まず、憲法上の歯止めにつきましては、憲法九条、戦争をしてはならない、戦力を持ってはならないという憲法九条と、もう一方、憲法十三条、国民の生命、自由、幸福追求する権利を守っていかなければならないと、この九条と十三条の整合的な解釈から導き出されます、許容される自衛の措置というものを、これはあくまで自国防衛、国民の権利を守る場合のみでありまして、それを新三要件と、これまでの三要件を旧三要件といえば、今回は新しく新三要件として過不足なく全て法律に書き込むべきであると、こう与党協議でも主張してまいりました。
そこで、次のパネルを御覧いただきたいと思います。
このパネルは憲法九条の下で許容される自衛の措置ということで、新たな三要件は過不足なく全て法律の中に書き込んでいるということを書いてございます。
この㈰、㈪、㈫という新三要件、この全てを満たさなければ自衛の措置は発動できません。つまり、武力の行使はできません。その際、国会承認の対象となる対処基本方針には、第一要件に当たる具体的な事実はもちろんでありますけれども、㈪、第二要件、「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき」と、この第二要件につきましても、その理由の明記が義務付けられております。事態対処法九条二項一号ロでございます。これも我が党の強い主張によって盛り込まれたわけであります。この規定は従来の旧三要件にはなかったものでありまして、武力攻撃事態対処法に定めはありませんでした。
我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないということを対処基本方針に記すということは、政府が国会に対して、他に適当な手段がないという、その説明責任を負うことになるのではないかというふうに理解してよろしいのか、総理にお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今委員がお示しをいただきましたように、我が国として武力の行使を行うことが憲法上許容されるのは新三要件全てを満たすときだけであります。
そして、委員御指摘のとおり、新三要件のうち第二要件については、今回の法整備において、新たに事態対処法改正案第九条において、武力攻撃事態又は存立危機事態に至ったときに、政府が策定する対処基本方針に、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由についても明記することを義務付け、これを含め直ちに国会の承認を求めることとしているわけであります。
自衛の措置としての武力の行使はあくまでも最後の手段であり、紛争の平和的解決のために外交努力を尽くすことが当然の前提であります。そうした他の手段を尽くさずして武力の行使を行うことが憲法上許容されないことは当然であり、これを国会や国民に対してしっかりと説明する責任を政府に義務付ける今般の法案は、武力の行使についての明確な歯止めとなっていると考えております。
○西田実仁君 今お話がありましたように、他に適当な手段がないということを政府が国会にきちんと説明をする、その義務が負わされたということでございます。そうであれば、仮に、任務遂行中に他に適当な手段があるというふうに判断した場合、それは国会が対処措置を終了すべきことを議決するということがあった場合、政府は対処基本方針の廃止について閣議の決定を求めなければならないというふうに考えられます。
と申しますのも、現行の武力攻撃事態対処法第九条第十四項にはこのように規定されております。「内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。」と、このように規定をされております。
今回の平和安全法制全体でもこの武力攻撃事態対処法第九条第十四項は変わらないと思いますので、申し上げたとおり、他に適当な手段があると国会が判断をしてこの任務をやめるべきであると、こういうふうに決めたときには直ちにこれはやめなければならなくなると、こう理解してよろしいのか、総理にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 西田委員御指摘のとおり、この新三要件の第二要件については、武力の行使を開始するための要件であるとともに、これを継続するための要件でもあるわけでございます。したがいまして、存立危機事態を認定した後に、我が国の存立を全うし、国民を守るための他の適当な手段がないとは言えなくなった場合におきましては、新三要件を満たさなくなるために、武力の行使を含む対処措置、これを終了しなければなりません。
この事態対処法の第九条において、内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したとき、これは対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならないと規定をされておりまして、今回の規定、法整備においても改正をしておりません。したがいまして、武力攻撃事態等において、存立危機事態においてもこれは変わるものではないということでございます。
○西田実仁君 変わるものではないということでありますので、それだけ国会の責務は大変に重いというふうに思います。
続いて、自衛隊を海外に派遣する際の三つの原則、自衛隊の海外派遣三原則についてお聞きしたいと思います。
公明党は、与党協議におきまして、法制度上の歯止め、すなわち自衛隊を海外に派遣する際の三原則を新たに設けるよう主張をいたしました。それは、自衛隊の海外派遣が時の政府の自由になり、無制限な派遣になるという懸念に対する歯止めでございます。すなわち、この三原則は、第一に国際法上の正当性の確保をされなければならない、第二に国会の関与など民主的な統制が必要である、そして第三に自衛隊員の安全確保、この三つの原則、自衛隊の海外派遣三原則を主張をいたしました。
パネルを御覧いただきたいと思います。
まず、国際法上の正当性の確保についてでございますが、ここにございますように、例えば、国際平和共同対処事態における協力支援活動は、国連の総会又は安保理の決議が存在する場合として、法文上、国際平和支援法、この三条一項一号に定めをしております。
また、国際連携平和安全活動におきましても、次のいずれかが存在する場合ということで三つ法律によって定めてございますが、その中で、例えば㈪の次の国際機関が行う要請というところで、国連の難民高等弁務官事務所又は欧州連合、こうしたことを定めているわけでありまして、全て要件が法律によって定められております。どこかの国が言ったからとか、あるいは時の政権が恣意的に自衛隊を海外派遣するというようなことには当然ならないわけであります。
続いて、国会承認のパネルに移っていただきたいと思います。
三原則の二つ目、国会の関与など民主的統制ということにつきましては、議会制民主主義の日本にありましては国民の皆様こそ最大の歯止めであるということの確認でございます。
特に、ここに挙げました幾つか、重要影響事態、我が国の平和と安全に関わるところ、原則、事前の国会承認、あるいは国際平和共同対処事態、ここはいわゆる後方支援の一般法のところでございますけれども、これは当初、事前に国会の承認を得ることを基本とするという議論もございましたけれども、しかし、我が党が与党協議の中で大変強く主張をいたしまして、例外なき事前承認という形になったわけでございます。
その他、ここにございますように、国際連携平和安全活動、あるいは存立危機事態への対処のための防衛出動、船舶検査活動と、それぞれ国会の関与など民主的な統制を図るべく、きちんと法律によって定めさせていただいているわけであります。
それだけ国会の責任は大変重くなっているということでありますけれども、ここでちょっと気になるのは、何を国会承認するのかという、より具体的な話であります。
先ほど申し上げました、この例外なき事前承認になりました国際平和支援法におきましては、基本計画を添えて国会承認というふうになるわけでございますけれども、一方、我が国の平和と安全に関わるところの重要影響事態法におきましてはそうした定めはございません。承認の対象となるのは、法文上「対応措置を実施すること」というふうに定められておりまして、基本計画は国会報告はされるんですけれども、いわゆる承認案件に後方支援一般法のように添えて基本計画が国会に出されるわけではございません。
そこで、重要影響事態安全確保法に基づく国会承認案件には、一体何を具体的に記載するのかについてお聞きしたいと思います。
今申し上げましたように、我が国の平和と安全に関わる重要影響事態、これにつきましてはその基本計画は閣議決定をされます。したがって、閣議決定される前には当然与党の協議というものがあって、それの段階で既に何を国会承認にかけるかということについては恐らく相当の情報がもう公開されているんだろうというようには思われますけれども、国会として責任ある判断を下すためにも、内閣から当該対応措置に係る十分な情報というものが提供をされなければ責任ある判断はできないと、このように思うわけでありまして、この重要影響事態安全確保法に基づく国会承認案件にどういった内容を記載していくのか、十分な情報提供はなされるのか、これについてお聞きしたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 重要影響事態法におきましては、自衛隊による後方支援活動、捜索救助活動、船舶検査活動、この実施につきましては国会承認を求めるとされておりまして、その承認に際しましては可能な限り最大限の情報を開示して丁寧に説明をする考えでございます。
そのために、国会に提出する基本計画、ここには重要影響事態に際し自衛隊が実施する後方支援活動等の内容等を具体的に記載することとしておりまして、さらに、今回の改正におきまして、新たに事態の経緯、我が国の平和及び安全に与える影響、我が国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由、これを基本計画に記載することを法定化をいたしまして、政府として国会に対してしっかりと情報提供を行うことを一層明確にしたところでございます。
○西田実仁君 国会承認について、存立危機事態への対処のための防衛出動に係る点をお聞きしたいと思います。
昨日も議論がございました。存立危機事態であっても武力攻撃事態等にはならないケースがあり得る、これは別の観点、概念であるためということが議論を、衆議院でも、昨日もされていたと承知しております。ただ、現実の安全保障環境を踏まえたときには、存立危機事態に該当するような状況は同時に武力攻撃事態等、すなわち日本が直接攻撃をされるような事態に該当することが多いというふうに整理をされております。論理的には確かに武力攻撃事態等と存立危機事態が重ならない場合が例外的にあり得るといたしまして、そうした重ならない極めてまれなケースにおける国会の関与はどうあるべきなのか、これについて議論をしたいと思います。
こうした存立危機事態でしかし武力攻撃事態等ではない場合の国会承認、これは、我が党としては、そうした極めてまれなケースというのは、時間的な余裕ということも考え合わせますと、国会の承認は事後ではなくて事前の国会承認になるんではないかと理解をしておりますけれども、総理、この点いかがでございましょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は同時に武力攻撃事態等にも該当することが多い、委員の御指摘のとおりでありますが、そう考えられますが、存立危機事態に認定されるような場合が同時に我が国に対する武力攻撃が予測あるいは切迫しているとは認められないこともあり得るわけであります。存立危機事態を認定して自衛隊に防衛出動を命ずる場合には、事前の国会承認により難い場合に事後承認が認められておりますが、原則はあくまでも事前承認であることから、政府として、存立危機事態であるが武力攻撃事態でない場合も含めて可能な限り国会の事前承認を追求していく考えであります。
そこで、そうでない場合としては、例えばホルムズ海峡の機雷封鎖に起因する存立危機事態ということが考えられ得るわけでございますが、ホルムズ海峡における機雷封鎖に起因して存立危機事態を認定し、自衛隊に防衛出動を命ずる場合には、基本的には国会の事前承認を求めることになると想定しております。
○西田実仁君 具体的な事例も引きながらお話をいただきました。可能な限り事前承認、特に例外的にホルムズの話もなさいましたけれども、これは事前承認というお話でございました。
続いて、三原則の三つ目、自衛隊員の安全の確保というパネルに移りたいと思います。
自衛隊員の安全確保につきましても、パネルのように、全て関連規定が法案に盛り込まれております。それぞれ、安全配慮規定あるいは実施区域の設定等々でございます。
衆議院の特別委員会は私の地元の埼玉において参考人質疑が開催されましたが、その際、埼玉県の商工会連合会また防衛協会の会長でもある佐伯鋼兵氏は、自衛隊のリスクを強調し、自衛隊員やその家族に無理に不安を抱かせるべきではない、リスクを最小限にする処置や、名誉や処遇も含めてどのように支援するかを建設的に議論すべきではないかと指摘をされておりました。全く同感でございます。
そこで、まず、国際平和支援法におきまして、後方支援活動を行っている際に状況が変化した場合に、現に戦闘行為が行われている現場となっているかどうかは誰がどのように判断するのか。現場の指揮官が判断するんでありましょうけれども、かつて、防衛大臣がそうした現場で判断するときには、ある種の外形標準のようなものを設けてより判断をサポートすべきではないかという議論もあったかと記憶しております。
防衛大臣にお聞きしたいと思います。後方支援における休止、中断の判断について、それをどのようにお考えなのか、お聞きします。
○国務大臣(中谷元君) 後方支援活動等を行っている自衛隊の部隊が活動している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至ったか否か、そのようなことにつきましては、その部隊等の長又はその指定する者、これが、そのような、人を殺傷し又は物を破壊する行為が現に行われているか否かという明らかな事実により客観的に判断をし、一時休止するなどして危険を回避することとなります。このような一時休止等の仕組みは、旧特措法、これと変わりはございません。部隊等の長がかかる判断を適切に行われるようにすることも含めて、具体的な運用の在り方については引き続き不断に検討してまいる所存でございます。
その上で、このような事実関係を含む現場の部隊等からの情報、また他国政府からの情報等を踏まえて、防衛大臣が活動現場において現に戦闘行為が行われているかどうかを最終的に判断し、もし戦闘行為が行われるに至ったと判断する場合には、活動を円滑かつ安全に実施することが困難であるとして、防衛大臣は、活動の中断又は実施区域の指定の変更、これを命じなければならないというふうにいたしております。
○西田実仁君 自衛隊が後方支援する際の実施区域の指定につきましてお伺いしたいと思います。
一昨日の本会議におきまして、我が党の荒木議員からの質問に対しまして、総理は、後方支援における実施区域の指定に関して、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなく、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について、戦闘行為がないと見込まれる場所を指定します、したがって、攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことは従来と変更ありませんと、このように答弁をいただいております。
法律におきましては、防衛大臣が円滑かつ安全に活動し得る場所を指定すると、このように書かれているわけでありますが、その運用方針としては、今申し上げた、総理から答弁いただいた、戦闘行為がその期間中発生しないと見込まれる場所であると、こういうことでございます。これがどう担保されるのかということについてお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自衛隊による後方支援の実施に際して円滑かつ安全に実施することができるように実施区域を指定するとの規定は、法律上、防衛大臣に対して安全に活動できる場所を指定することを義務付けているものであります。円滑かつ安全に活動できるという要件は重いものであり、今現在戦闘が行われていないというだけではなく、部隊等が現実に活動を終えるまでの間、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することは当然であります。
具体的には、今般の法制においては、実施区域は防衛大臣が定める実施要項の中で指定します。そして、法律上、防衛大臣は、実施要項について、内閣総理大臣の承認を得た上で自衛隊の部隊等に対応措置の実施を命ずるものとしています。このように、実施区域の指定については、内閣の長たる内閣総理大臣が、内閣全体として得た情報等に基づき、実施要項の承認を通じて適切に判断をします。
したがって、部隊等が現実に活動を終えるまでの間、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することは、内閣総理大臣及び防衛大臣が関与するプロセスを通して法律上十分に担保されております。
○西田実仁君 今総理から明確に御答弁いただきましたように、総理大臣また防衛大臣、内閣としてしっかり関与した上で、自衛隊の安全確保たる後方地域支援でそうした期間中にそうした戦闘行為が発生しないということがきちんと指定をされるという手続面に踏み込んでの御答弁もいただきました。
続きまして、今回の平和安全法制では船舶検査活動法も改正されております。与党協議におきましては、当初、船長の同意なしの船舶検査という議論もございました。と申しますのも、そもそも、この船舶検査活動法の制定時から、乗船検査において船長の承諾を要する、あるいは任務遂行型の武器使用が認められない、こういうことではその実効性についてどうなのかと、こういう議論があったわけでございますが、今回は、我が党の主張もございまして、船長のあくまでも同意なしにはなし得ないという形に整理がなされました。
こうした今回の船舶検査法の改正に当たりまして、船長の同意が全て必要というふうにした理由は何か、防衛大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 現行の船舶検査法は、強制措置、これに及ばない範囲で船舶検査活動を実施するということにいたしておりまして、乗船検査については船長等の承諾を得て行うということに規定をいたしております。これは、乗船検査に際しまして、不測の事態、これが生じることがないようにするとともに、船内における書類及び積荷の検査、確認を円滑に行うことを目的としたものでございます。
我が国による船舶検査活動を適切、円滑に行うため、法改正においても引き続きこの規定、これを維持をすることといたしておりまして、国際社会におけるこれまでの船舶検査活動の状況を踏まえれば、強制措置に及ばない態様であっても国際社会と連携をした取組の中で実効的な対処、これは十分可能であると判断をしたわけでございます。
○西田実仁君 それでは、先ほど三重の歯止めという話で憲法適合性、法制度の話をしました。そしてもう一つ、政策判断ですね。憲法には当然適合していなければならない、そして法律上もきちんと定められていなければならない、しかし、法律上できるからといって全てやるわけではない。これは、しっかりとした政策判断というものが必要になってくるわけであります。
その自衛隊を海外に派遣する際の政策判断として、三つの視点ということが掲げられてございます。本会議におきましても総理から御答弁をいただきましたが、この三つ、一つは我が国の主体的判断、そして二つ目には自衛隊にふさわしい役割、そして三つ目には平和外交努力と、この三つが政策判断として、その視点を持って、そして海外へ派遣するかどうかということを決めていくということでございます。これは大変大事な総理の御答弁であろうというふうに思っております。
政府として自衛隊を海外に派遣する際に、こうした三つの視点から判断したんだと国民の皆様に理解をいただく、理解を求めるということが大変必要でありまして、それをどう担保していくのか。この三つの視点から見た具体的な事実について、特に国際平和支援法におけます基本計画とか、あるいは国際平和協力法の実施計画とか、こういうものにしっかりとその三つの視点から導き出された事実というものが書き込まれていくんだろう、それで国民の皆さんにも理解を得ていくんだろうと、このように思うわけでありますが、総理の御答弁をお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 委員が今御指摘になったように、この平和安全法制が整備されれば、その要件、法律の要件を満たせば必ず自衛隊員が派遣されるわけではこれは全くありません。派遣ができるようになるという法制を整えたということでありまして、そして、その上において自衛隊を派遣するか派遣しないかは慎重なこれは政策判断を行うわけでございます。
そして、具体的に政策判断を行うに際しまして、一、我が国の主体的判断であること、二、自衛隊の能力、装備、経験等に照らして自衛隊にふさわしい役割であること、三、その前提となる外交努力を尽くすことなどを重要な視点として慎重に政策判断を行うことになります。
国際平和支援法の基本計画やPKO法の実施計画については、御指摘の趣旨も踏まえて適切な形で策定したいと考えております。
○西田実仁君 今総理からは、こうした三つの視点を踏まえて適切に実施計画あるいは基本計画に盛り込んでいくと、こういうお話でございました。
そこで、一つ一つちょっと掘り下げてお聞きしたいと思いますが、まず一番目の視点である我が国の主体的判断ということについてはどのようになされていくのかをお聞きしたいと思います。
よく言われますように、どこかの国が言ったからやる、派遣をするとか、あるいは法律上でできるから何でもやるんだと、こういうことが意図的に曲解されて言われたりすることがございますけれども、あくまでも我が国の主体的判断で派遣するかどうかを決めていく、日本にとって必要なのかどうかを決めていく、それは具体的にどう判断をする際の判断要素をお考えになっておられるのか、総理に御答弁をいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自衛隊の活動の実施に当たっては、我が国として主体的な判断に基づきこれを実施をしていくことは当然のことであります。
この主体的判断に当たっては、まず、政府として入手できるあらゆる情報を総合的に判断、分析をしまして、国家安全保障会議において十分な審議を行い、内閣として意思決定を行います。その上で、内閣としての意思決定の根拠となった情報等をしっかりと公表し、自衛隊の活動の実施について国会の承認をいただくことになります。しっかりと国会の御承認をいただいて自衛隊は活動するということになるわけでありますし、その上で、このようなプロセスを経ることで、当該活動の実施が我が国の国益にかなうものかどうか、国民の理解を得られるものかどうか、しっかりと主体的な判断がなされるものと認識をしているところでございます。
○西田実仁君 今お話がありましたように、我が国の国益あるいは国際情勢、そして国民の皆様方の利益、理解、こういうものなどを日本にとって必要かどうかと判断をしていかれるということであります。
その我が国の主体的判断という意味でいいますと、例えばISILに対する作戦の後方支援、これは実施するお考えがあるのか、一つの事例として総理に御答弁いただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今御指摘をいただきましたISILに対する作戦の後方支援について、国際平和支援法の下で我が国が後方支援を行うためには、要件となる国連決議の存在に加えて、我が国が国際社会の一員として主体的かつ積極的に寄与する必要があるかを含め、法律に定めた要件を満たすか否かを個別具体的に判断し、かつ事前に国会の承認をいただく必要があります。
そして、その上で申し上げれば、政府としては、政策判断としてISILに対する軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはありません。ISILに対する作戦への後方支援を行うことは全く考えていない。これは今回の法案が成立した後であっても変わりはございません。
我が国は、今後とも、難民、避難民に対する食糧・人道支援など我が国ならではの人道支援を拡充し、非軍事分野において国際社会における我が国の責任を毅然と今後も果たしていく考えであります。
○西田実仁君 あくまでも我が国の主体的判断としてISILに対する作戦の後方支援は行わないと、こういうお話もございました。
三つの視点の二つ目でございますけれども、自衛隊にふさわしい役割とは一体何かということについてお聞きしたいと思います。
自衛隊の能力、装備、また経験などから、今回の平和安全法制が成立をいたしたとしても、何でも自衛隊ができるわけでは当然ありません。一定の制約があると承知しております。自衛隊はあくまでも専守防衛の自衛隊でありますし、また財政制約も当然あります。この自衛隊にふさわしい役割について判断する際のその判断要素は一体どういうものなのか、お聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自衛隊にふさわしい活動は何かということでございますが、国際協力を行うに当たりましては、自衛隊にふさわしい役割を果たすことが重要と考えています。したがって、今回の法整備が行われた後であっても、実際の自衛隊の派遣に当たっては、当該派遣が国益に資するものであるかどうか、また自衛隊の能力、装備、経験等に適合するかについて考慮する必要があると考えています。
具体的に申し上げますと、例えば、自衛隊の国際平和協力活動は我が国の防衛に支障のない範囲で行われるべきであること、また我が国が適切に対応することが可能な分野であるか、派遣地において自衛隊が十分に活動できる治安情勢であるかなど、自衛隊の能力が適切に発揮できるものであること、さらに活動の実施が派遣地の現地社会や国際社会から評価され、さらに我が国の国民からも支持されるものであることなどを、そうしたことなどを考慮する必要があると考えています。
こうした要素を考慮した上で、我が国が国際社会の一員として、国際社会の平和と安全により一層積極的な役割を果たせるよう取り組んでいく考えでございます。
○西田実仁君 三つの視点の三つ目でありますが、平和外交努力、これは前提として外交交渉を尽くしていく上で判断をするという意味であろうかと思います。加えて、非軍事分野での貢献も必要であると。今年二月に、開発協力大綱の基本方針の第一には「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」を挙げておられます。
そこで、総理にお聞きしたいと思いますが、日本ができることは何か、どう取り組んでいくのか、この非軍事的協力について総理の決意をお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国は、人間の安全保障の視点に立ちまして、紛争終結後の平和と安定、安全の確保のため、ODA等を活用して緊急人道支援から復旧復興・開発支援まで切れ目のない支援を行うなど、国際社会から高い評価を得ています。
また、今回の法整備においては、紛争終結後の国に対する人道復興支援や国づくり支援等にも更に貢献できるよう、PKO法を改正することとしています。また、このような取組として、例えばカンボジアに対しては、我が国初のPKOを派遣し、同国にとって最大の援助パートナーとして社会開発の促進やガバナンス強化等のODAを通じた支援を行ってきています。
こうした協力は、戦闘行為が当面終結した後、内戦に逆戻りしないようにする上で有意義であり、積極的平和主義の考え方の下で今後とも一層強化をしていきたいと考えております。
○西田実仁君 今総理から三つ目の視点として平和外交努力、特に内戦に逆戻りしないようにするために日本ができることを挙げていただきました。
残り僅かでございますが、PKO協力法について少しだけお聞きしたいと思います。
今回の国際平和協力法におけます自衛隊員の安全確保ということにつきましてお聞きしたいと思います。
新たに安全確保業務が追加をされました。国連PKOが住民等の防護に当たるようになった背景は一体何なのか、国連が持っている防護を必要とする基準は何か、またいわゆる安全確保業務はどのように実施されていくのか、国連PKOの実態に即してお聞きしたいと思います。
またあわせて、防護を必要とする住民等の存在が認められれば、派遣先国の領域内であればどこでも自衛隊が出向いて安全確保業務を実施するのか、この安全配慮規定というものに絡んでお答えを最後いただきたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 近年の国連のPKO活動、こういった活動におきましては、国家間の紛争から内戦型のような紛争への対処が必要となってきているところでございまして、任務が多様化をする中で、切迫した暴力からの脅威、これから住民の保護等を始めとする安全な環境の確保、これが重要な任務となっておりまして、それぞれ住民の防護を含めた各業務を行うに当たっては、PKOのマンデート、これに基づき、国連が定める武器使用基準によって各国がそれぞれ定める規定に基づき行うものと承知をいたしております。
したがいまして、我が国が業務を行うに当たっては、このような基準の範囲内で、改正PKO法を根拠として、我が国が定める武器使用権限を含めた隊員の行動基準に基づき対応を行うということでございます。
また、住民の防護等につきまして、自衛隊を派遣する際に、国連等と合意した活動地域の範囲内におきまして、PKO等の司令部と治安情勢、また自衛隊の対応能力等の各種の要素を考慮して、調整した上で個別具体的に決定されるものでありますが、住民等の防護についても、かかる範囲において安全確保業務の一環として実施するものでありまして、派遣先の領域内のどこでも出向いて実施をするものではないと。常に隊員の安全、これに重視をして活動を実施したいということでございます。
○西田実仁君 終わります。どうもありがとうございました。