国土交通委員会・23号 2006-06-08
【質疑事項】
○参考人の出席要求に関する件
○建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
本日は、四人の先生方、大変にお忙しいところ、ありがとうございました。
まず、小川参考人にお聞きしたいと思います。先生はこのペーパーの中でも管理建築士につきまして病院長並みの管理責任をという御提言をされておられまして、ほかのところでも同じような御提言されておられることは承知しております。
そこで、設計という行為と医療行為というものを比べたときに、例えばお医者さんが手術をする場合に、どういうメスを使うかとか、どういうやり方で手術するかというのは、これはそれぞれお医者さんが決めて、それによってコストも決まってくるということだと思うんですね。それは決して法律で決めているわけではないと。こういうやり方をやらなきゃいけないというのは事細かには決まっておりません。
設計という行為も、正に人の安全、命を預かるという意味では似ているようなところもありますので恐らくこういう比喩を使っておられるんだと思うんですけれども、設計行為ということにつきましては、かなり今回の改正案におきましても事細かに、構造耐力のところなんか特に大幅にボリュームアップしているような改正案にもなっているわけであります。
そこで、お聞きしたいんですけれども、今回の改正案で、方向としてはかなりそういう設計行為そのものをより厳しく規制していくということになると思うんですけど、そういう方向によって偽装をより防ぐことができるのか、また見抜くことができるようになる改正案になっているのかどうかという評価についてお聞きしたいと思います。
○参考人(小川圭一君) 今回出ていますのは、まず確認検査の厳格化、これもチェックの一つでございまして、建築の設計監理の場合には、まず設計事務所が設計をやるわけですが、その中で構造は構造専門の人がやります、設備は設備専門の人がやります、意匠は意匠専門の人がやる、それを全体で統括する責任者が全体の調整を取りながらやっていくわけです。この中で、その統括者がちゃんとしたものかどうかというチェックは事務所の中でされているわけです。たまたま、先ほど申しました一社出たというのはその中でのチェックで分かったわけです。
それから、設計が終わりますと、今度は建築の確認の方へ参ります。ここでもまたチェックがされるわけです。
それから、それが終わって、建設会社へ今度施工に入っていくわけですが、建設会社の中でも、ふだん数多く同じようなものをやっていれば、大体、歩掛かりと言いますけど、坪当たり鉄の鋼材量は幾らだとかコンクリート量は幾らだとか、そういうものを積算の段階でチェックをしていますし、実際に購入して施工をやっているわけですから、ここでもこれはどうかというのは分かるわけです。
また、設計監理の中で、監理者が見に行った段階で、通常的にこの程度のものというのは感覚として持っていますので、その中でも、これでいいのかということは、疑念がわいてくればチェックができるわけです。
そのように、建築の設計監理というのは四重、五重のチェックがあるんですけれども、今回何もそのチェックが働かなかったというのが問題なわけでして、チェックをいかに有効に生かしていくかというのが今後については非常に重要な点だろうというふうに考えておるところでございます。
○西田実仁君 ありがとうございます。
岡田先生にお聞きしたいんですけれども、いただいたペーパーにもございますが、建築確認が実際には許可のようになっているんじゃないかというように御指摘されていますね、このインタビューの中で。戦前の警察行政の下での市街地構造物法においては正に許可だったわけでありますけれども、戦後、GHQによって建築基準法ができて、民主化されることによってそれが建築確認になってきた。しかし、実際には、建築確認さえ通せば、工事現場でいろんな疑問を、今回の事件でもそうでしたけれども、疑問を実際に施工業者が感じたとしても、あるいは実際に働いている人が感じたとしても、建築確認通っているんだからということで何も顧みられることもなかった。という意味では検査自体も形骸化しているんじゃないかと。それだけ建築確認が非常に金科玉条のごとく扱われているんじゃないかという問題点も私はここで先生が言外に含まれているんではないかというふうに思うんですね。
建築確認が許可のように扱われているというこの現状につきまして、どういう問題点があるというふうにお考えでしょうか。
○参考人(岡田恒男君) 私がそこで申し上げましたのは、建築確認が許可になっているというよりは、エンドユーザーとしての消費者が、建築確認を出すときは、もう建築確認通れば、今おっしゃったように、それを許可だと言うかどうかは別にして、そうすると、これは耐震安全性も十分見ていただいたんだという期待を持って出しているんだということを申し上げたかったんです。ですから、見る方も、やはりこれは単に法律に合っているんだとか計算が正しいんだということではなくて、やはり多少裁量性を持たして、これはいい建築なんだかどうだかということも含めて少し踏み込んでもいいのではないかというふうなことを私は申し上げたんでございます。
おっしゃるように、通ってしまえばもう後はどうでもいいじゃないかという風潮がまかり通っているんだとすると、これは決して僕はいい建築は生産できていないと思いますし、そうすべきではないと思います。
○西田実仁君 あわせて、先生は、人の問題、人の養成の問題を指摘されております。私もそのとおりだろうというふうに思うんですね。特に、具体的に、先生が講師もお務めになっておられる国土交通大学校におきましても、建築主事の皆さんへのこうした構造の研修という枠がございますが、非常にまだまだ足りないんじゃないかと、私はそういう問題意識を持っておりますが、先生、その点はいかがでございましょうか。
○参考人(岡田恒男君) 構造だけじゃなくて、建築もほかの分野も全く同じだと思いますけれども、最近の建築の技術とか学問とか、そういったものの進歩は大変激しいものがございまして、目覚ましいものがございますので、常に新しいものに付いていく努力を、これは造る側も審査する側もしない限りいいものはできないと思います。
先ほどからお医者さんの話がよくいろんな面で出ますが、よく私なんかも感じますのは、医学の先生方、いろんな研修会によく出られておりますですね。病院に行ったときに、学会と書かれて主治医の先生がいらっしゃらなくてがっかりすることがございますけれども、やっぱりよく勉強されていると思います。私は、常々、学生や一般の技術者の方々にも、建築をやっている者もああいうことを見習ってもっと勉強しようじゃないかということを申し上げているわけでございまして、今お話にありました国土交通大学校、昔は建築大学校と言っておりましたが、主として行政の方々の大体係長クラスぐらいになられた方の研修の制度でございますが、私も二十年ほど時々講義に行かしていただいておりますから、ああいう制度を是非続けていただきたい。
その中で感じますのは、昔は半年とか一年ぐらい合宿して物すごい集中的な研修がされていたんですけど、だんだん現場の技術者、地方の自治体の方が多いんでございますが、そんなに、人が足りなくなって半年も空けられてもらっちゃ困るとかいうことで、コースが一週間になったり二週間になったり、だんだん短くなっているんで、やはりそういうもの、人を育てるのは時間が掛かりますので、是非そういうことを、役所の人もそうですし、民間の方々の研修というのも、今いろんな団体でも行われておりますが、もっともっと僕は高めていただきたいなと。結局は組織を動かす、制度を動かすのはもう人だというふうに確信いたしております。
○西田実仁君 尾竹先生にお聞きしたいと思います。
特にノンリコースローンの実現化、私もこれ大変大事だというふうに思っておりまして、先日、委員会でも別の法案でございましたけれども指摘さしていただきました。
ここで先生にお聞きしたいのは、このノンリコースローンを実現化することで建物の健全化が進むんだというように言われました。そういう多分展開もあるんでしょうけれども、現実にはノンリコースローンないわけで、その関係ですね、どっちが原因でどっちが結果なのかという。建物の健全化を進めることによって金融機関はノンリコース化をしやすくなるのか、それとも、やっぱりまずノンリコース化というのを何とか、難しいですけれどもやった方がいいのか、ちょっとこれはどっちもどっちかもしれませんが、是非お聞きしたいと思います。
○参考人(尾竹一男君) 最近、ノンリコースローンを適用したマンションの売買というものの広告を見ました。ですから、全くないというふうなことではないと思うんですけれども、やはりどっちが先かということと、今のマンション等についての担保価値が要望どおりにないんだろうというのが現実だと思います。
要するに、頭金なしで今マンションが買えるというふうなことが、当然今の状態でいけば六割とか五割とかになってしまう危険性があると。そうなると、それ以上の自己負担を持っている人じゃなければ売れないという結果になると思うんですけれども、本来、建物が長く健全であるためには、やはり途中でのリフォームだとか維持管理が必要になってくる。要するにノンリコースローンの幅がずっと来ていると、いわゆる返済が終わっていけばその後また借入れができて、基本的には修繕がしていけるというふうなことのメリットもあります。
ですから、私も幾つかの損保会社だとか銀行に声を掛けたことありますけれども、どこかが一個やってくれればやりますよと。だから、そのどこかが一個というのは何なのかなというふうな感じはするんですけれども、ですから、一つは、国家機関でお金を貸出しをしているようなところとか、それから、いわゆる質を上げるためには、一緒にお話ししましたように、住宅性能表示制度とかいわゆる住宅性能保証制度なんかも含めて検討して、健全な建物を造っていくことでノンリコースローンを普及を図るというふうなことを考えられた方がいいのかなというふうな気はしております。
○西田実仁君 片方先生にお聞きしたいと思います。
これ、ずっと意見陳述をお聞かせいただきますと、やっぱり諸悪の根元は民間開放であると、この確認検査機関の。という多分トーンがずっと貫かれておられるんだというように思うんですが、実際にその偽装を見抜けなかったという点では特定行政庁の中でも同じように、民間だけではなかったわけですが、これ、先生の御意見によりますと、やはりそうすると、特定行政庁の建築主事も見抜けなかったのは、弱体化したのは民間開放したからだと、こういうことに多分なるのかなというふうに思います。
となると、じゃこれを直すには今のこの改正案ではなくて、また元に戻すというか、ということが一番いいという御意見になるんでしょうか。それをちょっと確認しておきたいと思います。
○参考人(片方信也君) 御指摘の点は九八年のときにも申し上げていたことですので、やっぱり基本的には建築行政というのは公の事務であるべきであるというふうに思います。
その原則を貫くということを明確にした上で、現実の民間機関等も含めた検査機関の位置付けをし直すという方向が実際には具体的な方向だろうというふうに思っておりますが、望ましい方向は特定行政庁が確認業務というものを掌握するという方向がいいとは思っております。
○西田実仁君 終わります。